株式会社サンドラッグ

顧客情報を一元管理して問い合わせ対応等を最適化
“個客”中心のサービス提供を可能とする仕組みを確立

問い合わせ対応や問診のやり取り等の情報をService Cloudで一元管理。Experience Cloudで問い合わせサイトとMyPage、ならびにファンコミュニティサイトを実現。データ連携にMulesoftを活用しECサイトの短工期開発に寄与。

近年、EC事業・調剤事業に注力してきた株式会社サンドラッグですが、ECサイトと実店舗における顧客とのコミュニケーション情報を一元的に蓄積・管理できず、的確・迅速なサービス提供が難しい、という大きな課題を抱えていました。
そうした状況を打破するため、同社はService CloudとExperience Cloudの同時導入を決断。顧客との過去のやり取りや購買履歴等の情報をService Cloudに一元化し、お客様相談室における最適な応対や接客など、“個客”中心のサービス提供を可能とする体制を確立しました。また、ECサイト刷新にともなうデータ連携にMulesoftを活用し、短期間でのローンチに貢献。Experience Cloudを利用して設置されたお問い合わせサイトやMyPage、ならびにファンコミュニティサイトを通じて、顧客とのコミュニケーションの迅速化・円滑化を実現しました。オンライン・オフライン双方で顧客と接点を持つ小売業にとって学ぶところの多い、同社のSalesforce連携活用事例を紹介します。
 
 

1. EC・実店舗の問診・購買情報が個別に管理され、的確なサービス提供が困難

株式会社サンドラッグは、東京都府中市に本社を構えるドラッグストア大手です。1957年創業の同社は、1965年にチェーン展開を開始して以降、出店地域を日本全国へ広げ、2024年1月末時点でグループ1432店舗を展開しています。ドラッグストア事業だけでなく、グループ各社と連携し、店舗併設型・門前型の2形態の調剤薬局でサービスを提供する調剤事業や、ディスカウントストア「ダイレックス」を全国展開するディスカウントストア事業など、さまざまな領域にビジネスを拡大し、成長を続けてきました。

そうした中で同社は、2021年に発表した5か年の中期経営計画において、EC事業と調剤事業の強化を重点戦略の1つに据えています。そして、両事業をドラッグストア事業等と融合させ、さまざまな購買チャネルや顧客層をカバーすることで、2026年3月期に売上高1兆円の達成を目指すとしています。

もともと同社は、同業他社に先駆け、EC事業・調剤事業を積極的に進めてきました。それにより、直営および複数のECモールで運営するECサイトの売上は順調に伸長。特に新型コロナウイルス感染症の感染拡大以降は、実店舗へ行かずに医薬品を購入したいという社会的ニーズの高まりや、中国国内の深刻な医薬品不足による特需などを背景として、成長をさらに加速させています。

とはいえ、同社のEC事業・調剤事業に改善すべき点がなかったわけではありません。執行役員でEC事業部事業長の田丸知加氏は、2021年に入社した当時の状況をこう振り返ります。

「ECというのは後発のチャネルなので、そこで蓄積されるお客様のデジタル情報が、実店舗のお客様情報と連携されていないケースがどうしても多くなります。私が入社したときの当社もまさにそこが課題でした」(田丸氏)

実店舗・ECを問わず、医薬品や化粧品は、顧客からすると、薬剤師の問診なしには法律上購入できない、あるいは美容部員からアドバイスを受けながら選びたいという商品の多い、小売の中でも特にコミュケーションを必要とするものです。そして、そこでやり取りされる情報は、顧客の健康や美容に直結する、顧客側・サービス提供側の双方にとって極めて高い価値を有しています。にもかかわらず同社では、実店舗とECで情報をバラバラに管理し、連携・活用できていなかったのです。

「たとえばECでは、お客様と薬剤師の間で、年齢や病歴などの問診をメールでやり取りしますが、実店舗とは情報共有されず、またメールを消してしまうと履歴が残りませんでした。一方の実店舗では、美容部員がお客様の相談内容を美容カルテに記録するものの、紙の台帳のアナログ情報なので、各店舗での個別管理に留まり、薬剤師とお客様のやり取りに至っては紙にすら残されていませんでした。
そうした状況では、たとえリピートのお客様でも、前回と購買チャネルが違うと、それまでの相談内容などを踏まえた的確で迅速な商品やサービスの提案ができません。お客様からしても、過去のやり取りなどをご自身で確認して購入の参考にすることができません。早急に実店舗・ECにおけるお客様とのコミュニケーションを一元管理すべきだと考えました」(田丸氏)

 
 

2. コミュニケーション情報の一元化により“個客”中心のサービス提供が可能に

同社は、そうした課題を解決するソリューションとして、Service CloudExperience Cloudの同時導入を決断しました。田丸氏は、選定の理由についてこう話します。

「お客様の情報やカスタマーサービスの履歴を管理し、社内の生産性や顧客満足度の向上を図るためのさまざまなソリューションを比較検討しました。その際に重視したのは、オンラインの仕組みをオフラインにも適用できる拡張性と柔軟性があり、1つのプラットフォームで社内のオペレーションを統一できること。それを前提に、お客様と密にやり取りして情報を管理したり、お客様に過去の相談内容等の必要情報をわかりやすいビジュアルでお見せしたりする。そういう要件を実現できそうなのは、Salesforceだけだと感じました。
また、海外のドラッグストアが、Experience Cloudを活用してお客様とさまざまなコミュニケーションを取っている事例を見て非常に参考になったことも、決め手の1つになりました」(田丸氏)

加えて同社では、Salesforce導入と並行して、ECサイトをリプレイスする大規模なプロジェクトを進めていました。その構築にあたって、データ連携を容易にし、工期の短縮を図るために活用したのがMulesoftです。

「新ECサイトには、お客様がご自身で購入履歴やポイント履歴、商品の在庫状況などを確認できるようにするため、Experience Cloudを利用してお問い合わせサイトとMyPageを設置しました。また、新ECサイトへ基幹データを連携させるわけですが、短工期での開発を目指し、“つなぐ”機能に優れたMulesoftを使って作業時間の短縮を図り、結果として当初の想定よりはるかに早く新ECサイトをローンチすることができました」(田丸氏)

同社は2022年11月、新ECサイトのリリースに先行して、Service Cloudの利用を開始しました。既存の直営ECサイトや各種ECモールのECサイト、お客様相談室といったオンラインでの問い合わせや薬剤師とのやり取り、さらに実店舗で電子化した顧客対応の履歴など、すべてのチャネルにおける顧客の情報をService Cloudに集約。それにもとづいてコミュニケーションを最適化し、“個客”中心のサービスを提供する仕組みを確立しました。

「薬剤師やカスタマーサポートのスタッフは、Service Cloudでお客様との過去のやり取りなどをひと目で把握できるようになり、お問い合わせ対応のリードタイムがかなり短縮されました。     社内の生産性という点でも、何往復も必要だったメールでのやり取りを、お客様ごとに1つのケースで管理でき、格段に向上しています。
特に医薬品は、飲み合わせの問題などもありますし、極端にいえばお客様の命に関わる商品ですから、誰が対応しても的確な判断を瞬時に下して提供できるようになったことは、当社にとって大きな前進です。さらに今後、『このお客様は健康に関してこういうことでお悩みだから、近々開催されるこの相談会をお勧めしよう』など、お客様にとって最適な内容・タイミングで情報・サービスを提供する、さまざまな施策が可能になると考えています」(田丸氏)

 
 

3. 顧客コミュニケーションを円滑化し「すべてはお客様のために」をさらに追求

Experience Cloudを利用して設置されたお問い合わせサイトとMyPageにおいて、顧客は、ECサイトでの注文や支払いなどに関するさまざまな疑問をFAQを見て解消したり、フォームから簡単に問い合わせをしたりすることができます。また、薬剤師との過去のやり取りや購買履歴など、オンライン・オフラインを問わず、サンドラッグにおけるすべての履歴を自身で確認し、商品選びなどの参考にすることもできます。

「お客様と薬剤師の間では、病歴・注意事項などの問診のやり取りをし、最終的にお客様側から『すべて確認しました』というアクションがあって、ようやく注文・発送という流れになります。従来はそのやり取りをメールで行っていたので、見落としやアクションのし忘れがあれば、当然販売できませんでした。Experience Cloudによってすべての履歴が蓄積・可視化され、迅速でシームレスなコミュニケーションが可能になったことは、当社にとってはもちろん、お客様にとっても大きなメリットだと思います」(田丸氏)

さらにExperience Cloudを用いて、多様なお客様の声が集まるファンコミュニティサイトを設置しました。複数のゲーミフィケーション要素を組み合わせ、お客様が発信しやすい環境を提供し、お客様のロイヤリティを高める仕掛けを打ち続けています。同社はファンコミュニティサイトにおいても、「すべてはお客様のためにある」という経営理念を具体化するため、顧客中心の設計思想を持つSalesforceを採用し、小売業界における新たな顧客接点のあり方をリードするさまざまな施策を展開し続けています。

     

田丸氏は、Salesforce導入からまだ日が浅く、売上等における定量的な効果が出るのはこれからだとしながらも、「新ECサイトのアクセス数はおそらくかなりの倍率で増大し、売上に貢献するだろう」と予測しています。また、これまで収集できていなかった実店舗における顧客とのコミュニケーション情報を可視化・数値化し、顧客満足度のさらなる向上を図る施策などに活かしていきたい、と期待を込めて話します。

一方、従業員の意識や働き方については、Salesforce導入による好影響がすでに出始めているようです。

「実店舗のお問い合わせ対応のスタッフは皆、『Salesforceってなに?』というところからスタートしたのですが、開発パートナーの方とやり取りし、悩みながらも自分たちで要件を決めていきました。スタッフからは、そういう形でオペレーションの改革に携わったことについて、『初めてのことですごくいい経験でした』という声が上がっていました。今後の業務にもいい影響があると思います。また、お問い合わせに関する数値がデジタル化されることにより、KPIが見え、カスタマーサービスチームは日々、目標を持ちながら仕事ができるようになりました」(田丸氏)

従業員を店舗運営スタッフと調剤・OTCカウンセリングスタッフという2つの専門職に分けて業務を分担させる「1店舗2ライン制」を業界で唯一採用し、「安心・信頼・便利」を長年追求してきた同社。今回のSalesforceを活用した取り組みも、「すべてはお客様のためにある」という経営理念を掲げる同社ならではのものといえるでしょう。田丸氏はいいます。

「情報を管理して生産性を向上させることはもちろん重要ですが、それだけで終わってはならない。あくまで主役はお客様であり、お客様にとって便利になるか、満足度が上がるかという視点から、今後もSalesforceを活用していきたいと考えています。    

Experience Cloudにはもともとコミュニティの機能が備わっており、導入時から、この機能を使って拡張できる、と考えていました。Salesforceにはさまざまな拡張機能が備わっていることも決め手でした。お客様同士でのコミュニケーションだけではなく、SNSなどとは異なり、真のファンが集まり、お買い物を楽しんでいただければと思いました。実装についても、追加のシステム開発は必要なく、内製で行えることも特徴的です。SalesforceではAIなどの拡張機能も追加されていくと思いますので、ますます期待しています」(田丸氏)

 
 
 
 
※ 本事例は2024年1月時点の情報です
 

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