ユビ電株式会社

Salesforce x Heroku が支える“進化し続ける” 電気自動車充電サービス「WeCharge」

Salesforce x Herokuをアプリケーションプラットフォームとしてフル活用することで少人数でも100%内製化、市場変化にタイムリーに対応する進化を続けるサービスを実現。“でっかいムジナ集団”がいつでもどこでも「じぶんの電気」を使える電⼒環境で日本社会の未来の進化も狙う。

ユビ電株式会社(以下、ユビ電)は、電気自動車充電サービス「WeCharge」を支えるシステムを、Platform as a Service (PaaS) + Software as a Service (SaaS)の組み合わせ (※) で運用コストも不要になるよう、Herokuを中心とし、併せてバックエンドのマスターデータ管理の仕組みとしてSalesforceを利用することでセキュアで開発効率の良いアプリケーションプラットフォームを実現しました。これにより、さらにタイムリーに市場ニーズに対応したシステムにアップデートし続けることができるサイクルの構築を目指し、少数集団ながら開発能力を引き上げるべく内製化率100%を目指しています。
 
 

1. ユビ電がフロントをHerokuで開発し、データ管理環境としてSalesforceを使う理由

ユビ電は、電気自動車充電サービス「WeCharge」で大きな注目を集めているベンチャー企業です。マンションを中心に、ホテル、商業施設、オフィスビルなど、さまざまな施設の駐車場に充電スポットを設置し、“電気を分けてあげる”施設管理者と“電気を使いたい”利用者の間を取り持つサービスを展開することで、「いつでもどこでも『じぶんの電気』を使える電力環境づくり」を目指しています。

このサービスの先進性を支えているのがスマート分電盤と、そのバックエンドのシステムです。

このサービスにおいて利用者はスマホアプリから充電スポットのQRコードを読み取って充電を開始します。その際に「誰が充電をしようとしているか」がWeCharge Hubと呼ばれるスマート分電盤からシステムへと送られ、充電が開始されます。これにより、充電した量に応じて、ユーザーが登録したクレジットカードから引き落とされます。一方、電力を提供する側となる施設には、電力使用量をユビ電から支払うことになります。

スマート分電盤のバックエンドのシステムでユーザーを区別できるため、登録者ではないユーザーに対しては送電はされないため、不正利用を抑止できます。また、この仕組みを応用することで、たとえば自社ビルの社用車の電力は会社側で持つが、お客様の利用はお客様から請求する、など柔軟な運用が可能になることで、利用者側が充電施設利用者のルールを考えるような手間から解放されます。こうした利点により、日本全国で地域問わずサービスが導入されはじめています。

代表取締役社長 山口 典男氏は、「私たちのお客様には、電力を売って儲けようと考えている人が居ません。そのため、電気料金は使用量と同額を支払います。われわれの利益はユーザー様の支払い金額との差額になりますが、手数料を考えればかなりの薄利。そのため、充電スポットの拡充を図っています」と話します。

2023年1月時点で、使用可能な充電スポットは全国に500程度。しかし、今後1年でコンセント数を一気に1万以上へと拡充します。「いまは、国から補助金が出るので工事費はかなり抑えられます。電気工事の専門家にとって、私たちの設備は簡単に扱えますから、お客様だけでなく、全国の電設工事会社様からも多数の問い合わせをいただいています」(山口氏)。

指数関数的な成長を見せているこのサービスを支える肝となるシステムは、SalesforceとHerokuで構築されています。Salesforceは、そのデータ構造を生かしてマスターデータ管理の仕組みとして機能。充電スポット、施設、エンドユーザーなどの情報を登録し、業務ロジックはHerokuで記述します。エンドユーザーが使用するアプリのロジックや、大規模施設において充電の優先順位をつけるような仕組みなどは、すべてHerokuで開発しています。

「電力のピークを作らない運用を可能にすることで、より環境に貢献できます。ピークコントロール機能の本格リリース時には、エンドユーザーが夜にマンションの駐車場に車を止め、“明日の朝8時までに100キロ走れる程度に充電してほしい”と指示すると、全体最適で各自が必要な量を充電できるようになります」(山口氏)

 
 

2. 「HerokuがあったからこそSalesforceを選んだ」

WeChargeのリリースにあたってSalesforceを採用したのは、以前ユビ電が環境省の認定プロジェクトとしてCO2削減価値を取引するC2C取引の実証実験を実施した際に Salesforce を採択、利用した経験があったためです。その時の選定のポイントは、情報の安全性が第一だったとのことですが、セキュアなデータ基盤を探して評価をすすめていたところ、Salesforceのサービスを利用すればよいと気づきました。

「さらに、(Salesforceには)Herokuがありました。Herokuは、アプリケーション開発環境として極めて魅力的だと考えていて、Herokuと統合されたデータモデルがシームレスに使えるのであれば、Salesforceをそのまま使おうという流れが生まれたのです」

そこで環境省に、Salesforceには顧客情報を管理できる信頼性があり、実績も豊富であると報告。セキュアなデータ基盤としてのSalesforceとアプリケーションプラットフォームとしてのHerokuをセットで採用することが承認されました。当時はエンジニアの数も少なかったこともあり、少数精鋭のチームで手間のかかる作業を極小化し、早期にプロトタイプを完成させる必要がありました。PaaSおよびSaaSであるためパッチインストールやハードウェア運用などを必要としないことも含め、SalesforceとHerokuは、同社にとってまさに理想的な組み合わせでした。

「むしろ、HerokuがあったからこそSalesforceを選んだと言ってもいいかもしれません。Herokuは、平たく言えば“アプリだけ書けば動く”ことを可能にしてくれるプラットフォームで、開発効率が極めて高いと評価しています」(山口氏)

環境省のプロジェクトでは、環境価値を作って売りたい人と買いたい人を顧客データベースとしてのSalesforceに登録し、価値を記録するブロックチェーンとつなげる仕組みをHerokuで作り上げました。成功したこの実証実験で得たノウハウは、WeChargeにも生かされています。

たとえば、WeChargeでは、充電にグリーン電力を使いたいというニーズがあります。そうした際に、ブロックチェーンによって管理されるグリーン電力の情報をHerokuで作ったアプリケーションを通じてきれいに取り込み、「『きれいな電気』で充電した」ことを保証することができます。

 
 
 
 

3. 100%内製へと舵を切る

ユビ電ではかつて、社内を少数のエンジニアで回し、工数の大きな開発にオフショアアウトソーシングを利用してきましたが、近く、完全な内製切り換えを進めています。

内製化には、コスト増というデメリットがあると言われています。しかし、サービス提供者は、日々サービスをブラッシュアップする必要があります。これは、開発案件を常に抱えている状態であることでもあります。しかし、日々刻々と変化していく社会情勢や顧客ニーズにタイムリーに対応していくためには、製品の市場投入のリードタイム短縮が重要な差別化ポイントです。そこで、外注は内製よりリスクが高いものの、先進的で技術的にも面白い仕組みを作り上げていくことで、優れたエンジニアたち興味を持ち、十分に機能しそうなこと、それによりシステムの改善スピードのサイクルがどんどん上がっていくであろうということを踏まえての決断になりました。

山口氏は、「まだ知名度もない会社なのですが、知り合いのエンジニアがうっかり入社してしまうのですよ」と笑う。「腕利きのおじさんたちが自分たちでやった方が早いと言ってくれますから。私もおじさんですし、なんとなくムジナが集まっているような会社です。ムジナが集まって、でっかいムジナになれるよう、日々がんばっています」。

たとえば最近の開発案件としては、先日発表された、WeCharge for BusinessとWeCharge for Govという企業/政府・自治体向けのサービスがあります。これは、多数の社用車/公用車を運用する組織が、自社の駐車場にWeChargeを導入し、電力の契約容量の中で充電ピークをコントロールして最適な充電を行えるようにするものです。前述のスマート配電盤 + システムの組み合わせの活用によって、来訪者に課金することで受益者負担の仕組みにできることも魅力のサービスです。

このように市場ニーズに併せ、タイムリーにサービスを立ち上げ、あるいはより良いものにしていく開発とともに、新たなビジネス展開に向けての開発も必要です。ユビ電自身、WeChargeは現在の主力事業ですが、設立時の理念は、コンセントにケーブルを挿すと、どのような出自を持つ電気が得られているのかわかる世界を作りたいというものでした。消費者や企業が「じぶんの電気」を自由に設計し、同時に何にどれだけの電力を使ったのかもフィードバックできます。WeChargeは、その第一歩となるビジネスであり、この先の未来にも、ニーズが途切れることはないため、開発案件がなくなることはありません。ユビ電がめざすのは「完成された」システムではなく、「改革し続けることで進化し続ける」システムだと言えるでしょう。進化のサイクルとスピードを支えるのが、Salesforce+Herokuなのです。

「Salesforceの方も、本来の使い方をできるかもしれません。全国から多くの問い合わせをいただいていて、営業担当者は出張続きです。彼らの業務負荷を下げられるように、顧客データベースを軸に問い合わせ管理や営業管理のような仕組みとして使うことができればと考えています」(山口氏)

 
 
※ 本事例は2023年1月時点の情報です
 

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