広がるハッカソン、イノベーションのトリガーになるか?

広がるハッカソン、イノベーションのトリガーになるか?

開発者たちが集い、腕を競う「ハッカソン」

開発者がリアルな場に集まり、数時間から数日間プログラミングを行う「ハッカソン」と呼ばれるイベントが広まっています。技術力を生かしてプログラムを改良することなどを指す「ハック」と「マラソン」を組み合わせた造語であるハッカソンは、新たなソフトウェアやサービスを開発したり、あるいは技術的な課題にチャレンジしたりすることを目的としたイベントであり、さまざまなハッカソンが世界各地で開催されています。

多くのハッカソンは、開催する目的、そして開発するソフトウェアの内容や解決する課題をテーマとして提示し、期間と場所を設定した上で開発者を募ります。そのテーマに興味を持った開発者は、指定された場所に赴き、ほかの開発者たちとチームを組んで開発に取り組みます。そして最後に開発したものを発表して終わるという流れが一般的です。

ハッカソンによってはコンテスト形式になっていて、優秀な開発者やチームには賞金が与えられることもあります。ただ、それだけがハッカソンに参加する開発者のモチベーションではありません。ほかの開発者と交流することでオープンなコミュニティとつながりが持てること、その中でプログラミングの腕を競い合い、自身のスキルアップにつながることも開発者にとっては大きな魅力となっているのです。

自治体やIT企業など、主催者はさまざま

主催者はさまざまで、ベンチャーキャピタリストが新たな投資先を見つけるために開催することもあれば、特定の技術の普及促進などを目的として開かれるハッカソンもあります。

特に昨今目立っているのは、オープンデータ(政府や地方自治体などによって一般に公開されている情報)の普及促進を目的として開催されるハッカソンです。具体的な例としては、積極的にオープンデータを公開する方針を定める、福井県鯖江市において開催された「シビックハッカソン in 鯖江」や、東海地域におけるオープンデータの活用を推進する「オープンデータ東海 in オープンソースカンファレンス2014 Nagoya」などが挙げられます。

IT企業がハッカソンを実施する例も少なくありません。たとえばFacebookでは、新興国における効率的なデータ転送の実現をテーマに掲げたハッカソンを開催しました。安定して高速にデータを送受信できるネットワークインフラを持つ先進国に対し、新興国の通信環境は不安定で通信速度も速くはありません。そのような環境でも、効率的にデータを転送できる技術の開発を目的としていました。

セールスフォース・ドットコムでは、2013年に引き続き、今年も「Salesforce $1 Million Hackathon」を10月10日~12日に開催しました。セールスフォース社のPaaS(Platform as a Service)である「Salesforce1」などを基盤として利用し、新たなモバイルアプリケーションを開発するというハッカソンです。25万ドルのグランプリ賞金をはじめ、合計で100万ドルの賞金が用意される大規模なものとなっています。今年の参加者は703名を数え、日本からもオークニー社、マッシュマトリックス社や個人での参加もありました。

今年の「Salesforce $1 Million Hackathon」でグランプリを獲得し、25万ドルの賞金を手にしたのは「OmniKeyboard」のチームでした。彼らが開発したのは最新のiPhone/iPad用OSであるiOS 8のカスタムキーボード機能を使ったアプリで、これを使うとあらゆるアプリからSalesforceのデータにアクセスできるようになるというもの。この「OmniKeyboard」開発には「Force.com」と「Heroku」が使われました。

Salesforce $1 Million Hackathonの結果はこちら(英語)。

NTTドコモやトヨタ自動車もハッカソンを開催

ハッカソンを開催する日本企業も増えています。たとえば株式会社NTTドコモと株式会社ドコモ・ベンチャーズでは、ウェアラブルデバイスをはじめとするモバイルデバイスを利用し、新たなアプリケーションやサービスを開発する「Device Hackathon」や、自分の生活、環境、街をより良くすることをテーマとする「Smart Life Hack」などを開催、多くの参加者を集めています。

IT業界以外の企業がハッカソンを開いたということで最近話題となったのが、トヨタ自動車株式会社と株式会社トヨタIT開発センターが開催した「TOYOTA HackCars Days 2014 in Tokyo」です。9月に開催されたこのハッカソンのテーマは「人とクルマの一歩進んだ関係・インターフェースの在り方を見つけ出す」。テスト走行している車両のGPSの位置情報、車速、エンジン回転数、ドアの開閉など約30種類のパラメータや急ブレーキ発生情報などを取得できる仕組みを利用し、参加者がそれぞれ独自のアイデアでアプリケーションやサービスを開発しました。参加者は約40名で、最優秀作品となったのは、お父さんと一緒に子どもが運転を楽しめる「シンクロナイズド・ドライビング」というサービスでした。ハンドルガジェットを子どもが持ってステアリング操作し、お父さんの運転との同期率を楽しむというものです。

社外の開発者と連携し、オープンなイノベーションを実現

このように企業がハッカソンを開催する目的の1つとして、自社の技術や基盤の活用アイデアを社外から募ることが挙げられます。よく見られる例としては、自社の技術を外部から利用するためのAPI(Application Programming Interface)を公開し、そのAPIを利用してアプリケーションやWebサービスを開発するといったハッカソンです。さらにコンテスト形式で開催し、優秀な作品やアイデアにはインセンティブを設けます。これに開発者が参加し、ユニークなアプリケーションやサービスが生み出されれば、ハッカソンを開催した企業にとっても大きなメリットがあるというわけです。

ハッカソンは、イノベーションにつながるアイデアを広げるための手法としてこれから大いに注目されるでしょう。

ハッカソンの成功は、開発者との信頼関係の構築がカギ

ただハッカソンを実際に開催する上では、いくつか注意すべきポイントがあります。まず大切なのがハッカソンのルールを事前に定め、それを文書化して公開することです。特にコンテスト形式で賞金を設ける場合、ルールが不十分であればトラブルに発展しかねません。

イベントの流れやスケジュールについても、十分に考慮すべきでしょう。通常ハッカソンは、まずテーマについて主催者がプレゼンテーションを行い、その内容に沿って実際に開発するもののアイデアを出し合うアイデアソン(アイデア+マラソン)を実施します。その後、気が合った参加者同士、あるいは同じものを開発したいという人同士がチームを組み、開発に進むという流れです。

前述したようにハッカソンの開催期間は数時間から数日間までさまざまですが、アイデアソンやチーム編成、最後の発表まで考えると、相応の時間が必要であると考えるべきでしょう。実際のスケジュールはいくつかのパターンがありますが、午前中にアイデアソンとチーム編成、午後に開発と発表を行って1日で完了する形か、週末の2日間を利用して開発に十分な時間を割くイベントが多いようです。

参加者やコミュニティとの永続的な信頼関係の構築も重要で、たとえばハッカソンで出たアイデアが実現した場合には、その出自について明確にした上で公表することなどが挙げられます。ハッカソン開催中は、自社技術やそれを利用するためのAPIについて意見をもらったり、あるいは参加者の開発がスムーズに進むように手助けをしたりするなど、参加者と積極的に交流することもポイントです。

いずれにしても、ハッカソンが成功すれば“社内では生まれなかったアイデア”という大きな果実を手にすることができます。自社の技術をより有効に活かせるアイデアがほしいと考えているのであれば、ハッカソンの開催はよいきっかけとなるでしょう。

参考:

  • IT力のものさし「ハッカソン」価値創造力競う(日本経済新聞/栄藤稔)
  • シビックハッカソン in 鯖江 レポート(CODE for JAPAN blog)
  • オープンデータ東海 in オープンソースカンファレンス2014Nagoya
  • docomo Developer support(NTTドコモ)
  • TOYOTA HackCars Days 2014 in Tokyo  ~Mashup Awards 10 ( #MA10 ) タイアップ企画~
  • 【ハッカソンレポート@天王洲】TOYOTA HackCars Days 2014 in Tokyo(全作品紹介)#MA10
  • Stitch Engineers Win Grand Prize for the Salesforce $1M Hackathon at Dreamforce 2014
 

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