企業文化とテクノロジーの変革で実現するビジネスのソーシャル化
ソーシャル時代のテクノロジーと未来 Ⅱ
~ライフスタイルを変える「モバイルテクノロジー」~

公開期間:11月27日~12月10日

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前述ではソーシャルテクノロジーを「エンタープライズ・ソーシャル・ソフトウェア」という切り口で見てきました。ソーシャルテクノロジーを考える際に、もう一つ、絶対に見逃すことのできない大きな変化、それは「モバイルテクノロジー」でしょう。とりわけスマートフォンやタブレットのテクノロジーの変化はソーシャル時代のライフスタイルを大きく変えました。そして未だ変化を続けており、ビジネスの仕方自体も大きな変化を遂げてきています。

スマートフォンやタブレット端末の普及については疑問を挟む余地はないでしょう。

モバイルに関するいくつかの興味深いデータがモルガン・スタンレーの調査から提供されています。

  • 1.成人男性の91%は四六時中モバイルを手の届くところに置いています
  • 2.25%の米国人はインターネットに接続する目的の為だけにスマートフォンを購入しています
  • 3.先人の携帯保有率は82%に達します
  • 4.90%のメッセージは送信されてから3分以内に読まれています
  • 5.モバイルで検索した結果の90%はアクションにつながっています(半分以上は実際に購入しています)
  • 6.モバイル検索結果の70%は一時間以内にアクションを起こします(PCでは1か月かかっています)
  • 7.74%のスマートフォンユーザはショッピングに利用しています
  • 8.モバイルクーポンの利用率は印刷クーポンの10倍以上
  • 9.1670万人のモバイルユーザ(76%はスマートフォン)はロケーションベースチェックインを利用しています
  • 11.スマートフォンユーザの81%は製品検索をし、50%が購入経験があります
  • 11.スマートフォンとタブレットユーザの平均モバイルアプリの使用時間は94分/日に達しています
  • 12.QRコードの利用は50%、18%は購入しています
  • 13.ローカル情報へのアクセス経験は95%、そのうち61%は実際に電話をかけるという行動を起こしています
  • 14.タブレットユーザの42%はテレビを見ながらデバイスを使っています
  • 15.スマートフォンユーザの16%はモバイル上にマーケティングメッセージが来たために実際に購入しています

このようにモバイルは私たちの日常生活の一部となり、更に、その使用によって、購買活動も活発化している事実も見られるのです。企業にとってはこのモバイルのユーザをいかに取り込みエンゲージできるか、非常に重要になってきます。コンシューマ系のテクノロジーが日常生活に浸透している事実に加え、このテクノロジーはますます進化の様相を呈しています。

ガートナーはモバイルテクノロジーのうちすべての企業に影響を与えるであろう技術のトップ10リスト(英語)を作成しています。

これらの技術のうちいくつかはすでに実際のビジネスに応用され、新しいビジネススタイルを創生しているものもあります。企業はこれらのモバイルテクノロジーをどう活用していくかを検討していくべきでしょう。

HTML5

次世代のHTML規格で、モバイルWebアプリケーションの機能を高め、従来のモバイル用のネイティブアプリからの移行を促します。既に新規のスマートフォンやタブレット端末で利用が可能になっています。

NFC(Near Field Communication)(近距離無線通信)

「お財布ケータイ」や「Suica」などの電子マネーの用途でおなじみの仕組みです。10cm程度の近距離で使用する無線通信の技術です。
このテクノロジーは決済以外にも 「タッチして実行」の用途ではスマートポスターや、クーポンの発行まで幅広く使われています。
コカコーラがイスラエルで実際の世界で「いいね!」を発信できる施策を実施したのは有名です。 特設したテーマパーク内に若者を呼び込みNFC機能を搭載したICチップが埋め込まれたリストバンドを配布します。ここには来場者のフェイスブックアカウントが紐付けられており、パークのいたるところに設置された端末にバンドをかざすと「いいね!」がフェイスブックに送信されました。

コカ・コーラ「Real Life Like」

NFCは非常に注目されているテクノロジーでfoursquare,FacebookがNFCと位置情報と連携したサービス実験も多く始まってきています。

場所に紐ついた情報に基づくサービス

GPSを用い、利用者の特定の位置やコンテクスト(状況)に基づいて高度に最適化されたサービス提供を行います。今後あらゆる情報に「場所」の情報が入ってくるようになります。たとえばメールにしても「いつどこからそのメールを配信したか」「いつどこでその写真を撮ったか」という情報がメール、写真というコンテンツに付加されるようになるのです。
「この道はいつもゴミが散らかっている」「このカーブにカーブミラーがあるといいのに」といったコミュニティに関するちょっとした問題を、気づいたその場で携帯電話から簡単に改善要望を送ることのできるコミュニティのサービスがあります。
それが「Give a minute」です。
多くの人がモバイル端末を手にすることでより場所に紐づいた情報が充実してくるのです。

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市民エンゲージメントツール「Give a Minute」

AR(Augmented Reality:拡張現実)

現実環境にコンピュータを用いて情報を付加提示する技術、および情報を付加提示された環境そのもの。
たとえばビデオカメラで撮った現実の世界に情報をリアルタイムに重ね合わせて情報として価値を高めると考えるとわかりやすいでしょう。
最もわかりやすいのが「セカイカメラ」でしょう。

そもそもの起源はハーバード大学の研究でVR(仮想現実)研究の延長として研究されていました。しかし当時は(1960年代)大がかりなコンピュータを必要として医療や、軍事の利用を想定したものでした。

ARの歴史は「位置合わせ」というもっとも大変な部分を、現実のものと、仮想の像の位置に厳密に合致させる というレベルに引き上げる歴史でした。「セカイカメラ」はこれをGPSとコンパスを用いて実現したものです。

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セカイカメラ

またARは画像特徴と風景データベースとのマッチングなどにも使われています。
Google の提供する「Goggles」アプリはこの代表例と言えます。
以下にARテクノロジーを活用した先進的な事例をいくつかご紹介します。

9月にシンガポールで発売になった"AudiQ3"の外観や機能を3DCGで詳しく知ることができます。

日比谷花壇ではAR技術と装花などによる空間装飾を融合した新しい装飾サービスの提供をしていきます。

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Obamaと一緒に写真が撮れるアプリ
ARテクノロジーを用いたアプリでオバマの写真と重ね合わせた写真が取れます。個人献金と税金管理の機能も提供してみたりユニークな使われ方です。

プラットフォーム独立型アプリケーション開発ツール

複数プラットフォームに対応したアプリケーション開発ツールです。すでに幅広く入手可能なツールです。

Bluetooth 4

Bluetoothの最新規格。従来のものに比べ低電力で動作するのでモバイル端末の新たなビジネスモデルを生む可能性があります。多くの機種で既に対応しています。

802.11ac

同様にWi-Fiの最新規格で、通信速度を1ギガビット/秒まで高めることができるようになります。従来では不可能だった高精細映像の配信やモバイル端末の通信量軽減に使えることになります。企画そのものはまだ最終的に承認はされていませんが(2013年予定)、製品はそれ以前に提供されるとみられます。

M2M(Machine to Machine)

遠隔地にある電子機器・端末同士がネットワーク(主に無線)を通して接続され人間を介さずに自律的な制御・情報処理を行う仕組みで、非常に注目の集まるテクノロジーの一つになっています。
活用エリアは、ロジスティック、遠隔危機からのセンサー入力を活用した医療、スマートメーターからの検針データを活用したスマートグリッド等で検討を重ねてきていましたが新しくはこれ以外にもセキュリティ、スマートシティなどの各分野で利用されるようになってきています。

Google社では昨年秋独自の電子ウォレットを通して小売店舗における非接触型決済を可能にする一般消費者向けサービス「Google Wallet」を発表しました。同サービスは前述のNFC対応のAndroid OS搭載のスマートフォンとPOS端末をベースとする非接触モバイル決済サービスでCVS、Walgreen、ToysRusをはじめとする20社以上の小売事業者が店頭でGoogle Walletによる支払いに対応しています。勿論ネットワークにはサービス利用者の加入する通信会社のモバイルネットワークが利用されています。

これはほんの一例ですがVerizon社のホームモニタリングサービスや、Virginia州における仮出所中犯罪者モニタリングシステム等、セキュリティの領域でもM2Mは多く使われています。

写真共有サービスの「Color(英語)」は位置情報とセンサー技術を使って写真を共有する「ソーシャルグラフ」を定義しています。光の量、音などを識別し、「この人たちは近くにいる」という判断を行っているのです。

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アプリを通じて写真を撮れば自動的にネット上にアップされ、ここには「公開」「非公開」の設定はありません。取ればすべてネット上に公開されるのです。従来の「友達関係」は消え、150ft(45メートル)圏内のColorユーザは勝手にグループ化されそのグループ内で写真を共有することになっています。
たとえばパーティでそれぞれが撮った写真はその会場にいるcolorユーザ全員が一つのグループとしてそれぞれが撮った写真を全員で見れるのです。
ユーザとの人間関係の近さが物理的な近さで認識されるのです。これが新しいソーシャル時代のグループの概念とモバイルの進化と混じり合い実現可能になったのです。
そしてそのユーザと一定期間にわたり物理的に近づくことが少なかったり、そのユーザの写真を見ることが少ないと、そのユーザとの関係は消滅します
ユーザ自身が自分の「ソーシャル・ネットワーク」を定義しなくてもスマートフォンが「関係の近い人間」を決めてくれる時代になったのです。

Shopkick(英語)は店舗に設置した機械から出る「音」をマイクで拾い店舗にチェックインする仕組みを提供しています。ユーザはチェックインをすると割引などの特典をもらいます。

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Shopkick

このようにセンサー技術は音、光。温度、圧力、磁気、電力、温度、湿度、粘度、におい 等のセンサー技術がどんどんモバイルに使われるようになり、モバイル端末はますますテクノロジー的にも進化していきます。

マルチプラットフォームMDM(Mobile Device Management)

社員のモバイル端末をプラットフォームを問わずに管理できるツールです。足したようなモバイル端末を利用するニーズにこたえたもので多くのベンダーが製品を出してきています。

LTE

次世代の無線通信技術で数百メガビット/秒の通信が可能になります。この世界もご多分に漏れず日本が先行しています。最新のスマートフォンにはすでにLTEが採用されていますね。

このようなスマートフォンをはじめとするモバイルのテクノロジーをベースにしたアップリケーションは毎日のように生まれてきています。

以上、エンタープライズ・ソーシャル・ソフトウェアのテクノロジーとモバイルテクノロジーと違った角度でソーシャルテクノロジーを見てきました。
企業はこれをそのマーケティング目的に応じ各種手法を検討していく必要があります。しかし、テクノロジーだけではユーザは使ってくれません。そこにはテクノロジーを超えたモチベーションが必要になります。これをどう喚起し活性化するか、次回はこのテクノロジーとしての「ゲーミフィケーション」にフォーカスをあててみたいと思います。

株式会社セールスフォース・ドットコム 執行役員 プロダクトマーケティング 榎 隆司

筆者プロフィール
株式会社セールスフォース・ドットコム 執行役員 プロダクトマーケティング
榎 隆司

執行役員としてプロダクトマーケティングを担当、製品・技術の営業支援および市場への啓蒙活動に従事する。

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