スポーツ大会や音楽フェスティバルでのプレサービスが話題となり、注目度が増している「5G」。2020年3月には、いよいよ日本でも商用サービスが本格的にスタートします。「5G」とは第5世代の移動通信システムのことで、「超高速」「超低遅延」「多数同時接続」を特徴としています。現行の4G/LTEと比較すると約100倍高速な通信を実現し、例えば2時間の動画のダウンロードなら3秒で完了。さらに1ミリ秒の超低遅延のため、遠隔でもリアルタイムに建機やロボットを操作できるだけでなく、スマホやパソコン以外にも、家電やセンサーなど身の回りのあらゆる機器がネットに接続できるようになります。これらを利用したリアルタイム高精細映像やVR/ARの映像データの使用、オフィスや店舗環境の高度化などにより、スポーツやエンターテインメント、医療など、さまざまな産業でこれまでのカスタマーエクスペリエンス(顧客体験)を大きく変革する可能性を秘めています。
政府は2016年に発表した「第5期科学技術基本計画」で「Society5.0」を打ち出し、IoTの普及などによるシステム化やネットワーク化の取り組みを、ものづくりだけでなく様々な分野に広げることで、個人が生き生きと暮らせる豊かな社会を実現することを目指すとしました。
「Society5.0」とは、第4次産業革命が生み出す「超スマート社会」のことです。第4次産業革命では、IoTやビッグデータ、AIなどの技術革新によって大量生産で画一的なサービスの提供から、個々にカスタマイズされた生産・サービスの提供、既に存在している資源・資産の効率的な活用、AIやロボットによる、従来人間によって行われていた労働の補助・代替などが可能となりました。さらに、ビッグデータの活用、シェアリング・エコノミーなどの新しいビジネスモデルの創出、AIやロボットの活用、フィンテックの発展といった新しい取り組みも第4次産業革命によるものです。
このように、超スマート社会では企業は様々な情報をデータ化して管理することで、生産効率の改善、需要予測の精緻化、取引相手を含むサプライ・チェーンの効率的運用を図ることができます。さらにデータの解析を利用した新たなサービスの提供、AIを活用した事務の効率化や新たなサービス提供なども実現できます。そして、そのためにはIoTで全ての人とモノがつながる必要があり、ビッグデータやAIの活用に必要な大量の情報共有が不可欠。それを支えるのが、5Gなのです。この点で「5Gは超スマート社会を支えるインフラ基盤」だといえるでしょう。携帯電話など個人のデータ通信における進化にとどまらず、社会全体に大きな変革をもたらす可能性を秘めています。
Society5.0の実現を目指しすでに計画が始まっている取り組みに、地方が抱える課題を解決するという「5G総合実証試験」があります。医療分野では5Gの特長である「超高速」「超低遅延」「同時多数接続」を活かし、大都市の総合病院と地方の診療所を繋ぎ、リアルタイムコミュニケーションに基づく遠隔診療をおこなったり、往診の際も患者の自宅と病院のネットワークを繋ぎ、医療機器の高精細映像共有などで専門医のサポートを受けられる環境を整備したりすることができます。
さらに、5Gの新しい用途として、地域の企業や自治体など通信事業者以外の主体が自ら5Gシステムを構築する「ローカル5G」にも注目が集まっています。例えばスタジアムに導入すれば、ARやVR、自由視点でのリアルタイム再生技術を用いた観戦体験の価値向上を図ることができます。また自治体や企業で独自の5Gネットワークを構築すれば、今よりも充実したテレワーク環境を整えることができ、従業員の労働環境改善や個人のワークスタイルの支援に役立ちます。
このように5Gの活用領域は生産、販売、消費といったこれまでのビジネスの範囲を超え、健康、医療、公共サービスなどの幅広い分野でこれまでにないソリューションやサービスを生み出すことが期待されており、カスタマーエクスペリエンスにも多大なる影響を及ぼすことが予測されています。

Salesforceは、昨年サンフランシスコで開催した自社イベントDreamforceにおいて、5Gに関するパネルディスカッションを行いました。移動体通信業界団体であるGSMAのMats Granryd事務局長、韓民最大の通信事業者、KTの会長兼CEOであるHwang Chang-Gyu氏、デンマーク外務省のキャスパー・クルヌウ技術大使、そしてモデレーターにFortune誌のEllen McGirt編集長を迎え、5Gの連鎖的な影響や5Gのもたらす社会変革に対して企業や政府はどのような対応を取るべきか議論していただきました。
ディスカッションのテーマとなったのは、「5Gは良い魔法か、悪い魔法か?」です。パネラーの3人は、5Gは人々の生活をさらに便利にする革新的なテクノロジーであると同時に、データの悪用やデジタル格差の助長など、「悪い魔法」となってしまう可能性も存在すると警鐘を鳴らしました。これを防ぐために必要なのが、データセキュリティ、インクルーシビティ(排他的ではなく、誰もが参加できること)、平等性、サステナビリティ(持続可能性)の確保です。
ビッグデータの悪用からの個人の保護や環境への配慮は言うまでもありませんが、インクルーシビティを確保するためには、デジタル格差が生じやすい地域や人々への配慮が欠かせません。誰ひとりとして最新のテクノロジーに取り残されないよう、農村地域や貧困層の人たちのためのネットワークアクセス環境の整備、デジタルリテラシーが低い人に向けた教育推進、またテクノロジーを利用することによって得られる利益を公平に配分するといった取り組みを、政府や産業が垣根を越え、一体となって推進していく必要があるのです。
これまでの社会のあり方やカスタマーエクスペリエンスを大きく変える可能性を持つ5Gは、まさに魔法と言えるかもしれません。使い方によっては、現存する社会課題を悪化させてしまう側面があることを意識し、客観的な視点を忘れないことが大切です。
顧客が企業に対して、どのような期待をしているのかについては、Salesforceが8,000人以上の消費者やビジネスバイヤーを対象に実施したカスタマーエクスペリエンスに関する最新の調査レポートをご覧ください。
参考