AIエージェントの構築方法

このステップ形式のガイドで、AIエージェントの構築とトレーニング方法を学びましょう。データ収集から導入まで、基本的な手順を網羅しています。

Caylin White、エディトリアルリーダー

アスリートが金メダリストになるには何が必要でしょうか?トレーニングです。ミュージシャンが巨匠と呼ばれる域に達するには何が必要でしょうか?もちろんトレーニングです。しかし、トレーニングの効果は人間だけにとどまりません。現在、企業はさらなる発展を遂げるために、人工知能(AI)のトレーニングに価値を見出しています。AIエージェントの構築とトレーニングは成長に不可欠になりつつあります。人間の言語を理解するようにAIエージェントをトレーニングすることで、AIエージェントの応答能力がさらに向上し、これまで以上に有用なタスクを任せられるようになります。

AIテクノロジーの進歩とともに、AIエージェントの洗練度と能力がさらに高まり、人間の期待とAIパフォーマンス間のギャップを埋めることができます。ここでは、AIエージェントとは何か、AIの構築とトレーニングの基本、そして自分でAIをトレーニングするためのステップを解説します。

このガイドの内容

「Agentforce」と書かれたデジタルインターフェースの横に立つ2台のロボット(AstroとEinstein)。Service Agent、Sales Coach、Sales Development Representativeというオプションが表示されています。

無限の労働力を想像してみてください

自律型のAIエージェントにより、あらゆる役割、ワークフロー、業界における仕事の進め方を変革します。

AIエージェントとは?

AIエージェントは、タスクを実行し、質問に答えることで人々を支援するように設計されたコンピュータープログラムです。ここで重要なのは、人を助けるということです。

人工知能(AI)エージェントは、さまざまな言語入力から学習することで、メールの管理や予約のスケジュール調整など、日常業務を支援します。こうしたタスクは、リマインダーの設定やスケジュールの管理から、天気予報やニュースなどの情報の提供まで、多岐にわたります。AIエージェントは人間の言語を理解して応答するようにプログラムされているため、AIエージェントとのやり取りは、より自然でユーザーフレンドリーになります。

AIエージェントには、支援型エージェントや自律型エージェントなど、さまざまな種類があります。たとえば、支援型エージェントには、従業員ツールに埋め込んで、そのAIエージェントの役割に固有のパーソナライズされたタスクを支援するものがあります。一方、自律型エージェントは、人間の介入なしに顧客の問い合わせを理解し、対応することができます。このAIエージェントは、あらかじめ定義されたルールに従って動作するものではありません。AgentforceなどのAgent Builderで動的に動作するAIエージェントを構築し、データや自動化の変化に応じてトリガーされるように設定します。

AIエージェントのトレーニングには、効果的かつ効率的に動作させるためにいくつかの重要なステップがあります。つまり、データの収集と準備、モデルのトレーニング、評価、微調整、導入などです。また、AIエージェントが目標に沿って動作していることを確認するための監視と更新も含まれます。こうした作業を自分で進められるように、ステップごとに詳しく見ていきましょう。

AIエージェントの構築とトレーニングの基本を理解する

AIエージェントの構築とトレーニングには、AIエージェントが人間の言語を理解し、有用で関連性のある方法で応答できるように学習させる作業が含まれます。生成AIから会話型AIまで、データがすべての中心になります。トレーニングでは人工知能特に機械学習と自然言語処理(NLP)の分野から、いくつかの重要な概念を応用します。それぞれの概念を確認しましょう。

機械学習

機械学習(ML)はAIの一種です。プログラムなしで、経験から自動的に学習して改善する能力をシステムにもたらします。AIエージェントをトレーニングする際に、機械学習アルゴリズムは、履歴データ(人間とのやり取りのサンプル)からパターンを見極めて判断を下します。AIが処理するデータが多いほど、ユーザーのリクエストを予測し、それに対応する能力が向上します。

自然言語処理

自然言語処理(NLP)は、自然言語を通じてコンピューターと人間のやり取りを処理するAIの一分野です。コンピューターで大量の自然言語データを処理・理解させることが目的です。AIエージェントの学習でNLPを利用すると、システムは自然かつ有意義な方法で人間の言語を理解、解釈、生成できるようになります。

データのラベル付け

データのラベル付けは、人間がデータに注釈を付けるAIトレーニングの重要なステップです。AIがデータを理解できるように未加工データに意味のあるタグやラベルを追加します。AIエージェントのトレーニングでのデータのラベル付けでは、文中の品詞のタグ付け、テキストに含まれる感情の識別、クエリのトピックへの分類などが考えられます。データにラベルを付けることで、AIが学習する際のガイドとなり、このラベルを使用してユーザー入力の背後にあるコンテキストと意図を理解できるようになります。

「Agentforce 」と表示されたデジタル画面およびオプション(Sales Development Representative Agent、Service Agent、Sales Coach Agent)と一緒に立つ5人のロボットキャラクター。

独自のAIエージェントを構築する準備はできましたか?

AIエージェントの構築方法と、構築の際に役立つヒントを紹介します。

AIエージェントの構築とトレーニングのための6つのステップ

 

ステップ1:AIエージェントの目的と範囲を定義する

AIエージェントを構築する際の最初のステップは、AIエージェントに何をさせたいのかを明確に定義することです。つまり、AIエージェントが実行する具体的なタスクと機能を決めます。そのアプローチ方法を見ていきましょう。

まず、AIエージェントのタスクと機能を決定します。AIエージェントに解決してもらいたい問題や、AIエージェントに処理してもらいたいタスクをリストアップします。自律型エージェンが必要なのか?顧客の問い合わせに回答したり、ユーザーがオンラインで買い物をしたり、ビジネスに関する情報を提供したりするためにAIエージェントが必要なのか?AIエージェントの機能をAIエージェントが満たすニーズと一致させる必要があります。

たとえば、仮想ショッピングのAIエージェントが必要な場合、このAIエージェントは、ユーザーによるオンラインストアの操作を支援し、ユーザーの好みや過去の購買行動にもとづいてパーソナライズされたショッピングアドバイスを提供します。ギフトのアイデアを提案したり、お得な情報を見つけたり、ファッションの選択をサポートできます。

次に、対象となるオーディエンスを明確にします。ユーザーに応じて、テクノロジーに対する期待や操作方法も異なります。たとえば、医療の専門家向けに設計されたAIエージェントは、医学用語を正確に理解して使用する必要があるでしょう。

また、AIエージェントが使用されるユースケースや具体的な状況も考慮してくださいこうした要素を定義しておくと、必要な機能を明確にするのに役立ちます。たとえば、カスタマーサービスのチャットボットは、問い合わせや苦情、場合によっては取引を処理する必要がありますが、仮想ショッピングのAIエージェントは製品を提案し、価格を比較し、ユーザーの好みを理解することが求められます。

ステップ2:トレーニングデータを収集して準備する

学生が教科書から学ぶように、AIエージェントはデータから学習します。データが正しくないか、データの質が低い場合、AIは間違った情報を学習し、ミスを犯すことになります。質の高いデータから学ぶことで、AIはユーザーの入力を正確に理解して処理できるようになります。

AIエージェントをトレーニングするには、ユーザーとのやり取りの種類を反映したデータを収集する必要があります。たとえば、次のようなデータです。

  • 文字起こし:チャットログ、サポートチケット、メールから、AIとの想定されるやり取りに類似した会話の文字起こしを収集します。
  • 音声録音:AIが音声コマンドや問い合わせに応答する際に、さまざまなアクセント、イントネーション、音声パターンを理解するには、音声録音が不可欠です。
  • やり取りの記録:同様のシステムとの以前のやり取りから得られるデータは、ユーザーの行動や一般的なクエリやコマンドに関するインサイトをもたらします。

データを取得したら、クリーニングしてトレーニング用に準備する必要があります。無関係なデータや不正確なデータの削除、エラーの修正、データセット全体の一貫性の確保などを行います。たとえば、文字起こしのタイプミスを修正したり、音声録音の背後で聞こえる音をフィルタリングします。

最後に、ラベルを付けます。つまり、各データが何を表しているか説明するためのラベル(タグまたはメタデータ)を追加します。たとえば、「フライトを予約する」や「営業時間を尋ねる」など、ユーザーの意図をテキストで説明したラベルを付けます。このタグによって、AIはユーザー入力のコンテキストと目的を理解できます。

ステップ3:適切な機械学習モデルを選択する

このステップでは、AIがデータから効果的に学習してタスクを実行するのにふさわしい機械学習モデルを選択します。

機械学習モデルには、次の2種類があります。

  1. ニューラルネットワーク:人間の脳の働きを模倣する強力なモデルです。特に大量のデータ処理やパターンの識別に優れているため、人間の言語を理解して生成するのに最適です。
  2. 強化学習:試行錯誤を通じて学習し、アクションに対するフィードバックを踏まえて、時間の経過とともに改善していくモデルです。ユーザーの操作にもとづいて意思決定を行い、行動を最適化することが求められるAIエージェントに効果的です。

では、適切なモデルをどのように選択すればいいのでしょうか?

AIエージェントの機能と実行させるタスクを考慮します。たとえば、AIエージェントが人間のような応答を理解して生成する必要がある場合は、ニューラルネットワークが最適な選択になるでしょう。

さらに、収集したデータについて考えてみましょう。たとえば、ニューラルネットワークは効果的なトレーニングのために大量のデータを必要としますが、強化学習は、AIがユーザーと継続的にやり取りすることで学習できるシナリオに適していると考えられます。

また、事前トレーニング済みのモデルを使用するという選択肢もあります。つまり、大規模なデータセットを用いて研究者によって開発・トレーニングされたモデルです。こうしたモデルは、すでに言語や人間のやり取りに関する多くの一般的な情報を学んでいるため、スタート地点として最適です。

事前トレーニング済みのモデルには、次のようなものがあります。

事前学習済みのモデルは幅広い知識を蓄えていますが、AIエージェントが実行しなければならない具体的なタスクに特化していない可能性があります。その点を微調整する必要があります。微調整では、特定のデータセットで事前学習済みモデルのトレーニングを継続し、具体的な用途のニュアンスに適合させます。

ステップ4:AIエージェントをトレーニングする

準備したデータを用いて、実際に機械学習モデルをトレーニングしましょう。このステップでは、提供されたサンプルからAIが学習を開始し、最終的に自らタスクを実行できるようになります。

AIエージェントをトレーニングする手順を見ていきましょう。

  1. 環境を設定する:トレーニングを開始する前に、機械学習の環境を設定します。機械学習に必要なソフトウェアライブラリとフレームワークのインストールなどが考えられます。
  2. データを読み込む:クリーニングし、ラベルを付けたデータを環境にインポートし、トレーニングに使用できるようにします。
  3. データを分割する:データを少なくとも2つのセット(トレーニングとテスト)に分割します。トレーニングセットはモデルの学習に使用し、テストセットはモデルの学習度を評価するために使用します。
  4. モデルを選択する:この決定にもとづいて、トレーニングする機械学習モデルを初期化します。
  5. トレーニングパラメーターを構成する:トレーニングプロセスのガイドとなるパラメーターを設定します。学習率、バッチサイズ、エポック数などがあります。学習率は、データ処理中に観測されたエラーに応じてモデルがパラメーターをどの程度調整するかを決定します。バッチサイズは、モデルが内部パラメーターを更新する前にモデルに提示するデータサンプルの数です。さらに、エポック数(学習データセット全体を繰り返し学習する回数)は、学習の深さに影響します。エポック数を増やすと、モデルがデータから学習する機会が増加します。
  6. モデルをトレーニングする:トレーニングプロセスを開始します。モデルはトレーニングデータを使用して学習し、内部パラメーターを調整することでエラーを最小限に抑えます。
  7. トレーニングプロセスを監視する:トレーニング中の精度や損失などのパフォーマンス指標を追跡します。これらの指標により、モデルがどの程度学習しているのか判断できます。モデルが期待どおりに動作しない場合は、トレーニングパラメーターを調整しなければならない可能性があります。たとえば、トレーニング損失が減らない場合は、学習率を下げることを検討します。

ステップ5:AIエージェントをテストして検証する

AIエージェントの開発には、システムが期待どおりに動作し、設定した目標を達成することを確認するためのテストと検証が含まれます。このステップは、AIエージェントを完全に導入する前に問題を特定して修正するのに役立ちます。

まず、AIエージェントに対してあらかじめ定義された一連のタスクまたはクエリを実行し、AIエージェントがどのように応答するか確認します。つまり、AIエージェントが何をすべきか学習したかどうかを確認するためのミニ試験のようなものです。

AIエージェントがタスクをどれだけ正確かつ効率的に実行するか測定します。応答が正しいかどうか、応答にかかる時間、やり取りがスムーズかどうかを検証します。

次に、さまざまなテスト方法から選択します。

  • 単体テスト:AIエージェントの個々のコンポーネントまたは一部をテストし、それぞれが単独で正しく動作することを確認します。
  • ユーザーテスト:実際にユーザーを招いて、管理された設定でAIエージェントをテストします。こうすることで、AIエージェントが実際のシナリオでどのように動作し、ユーザーがAIエージェントとどのようにやり取りするか確認できます。
  • A/Bテスト:2つのバージョンのAIエージェントを互いに比較し、どちらのパフォーマンスが優れているか見極めます。たとえば、2つの異なる応答スタイルや対話フローをテストし、どちらがより効果的なのか確認します。

過学習とアンダーパフォーマンスに注意してください。過学習は、AIエージェントがトレーニングデータに対して高いパフォーマンスを示す一方で、新しい未知のデータに対してはパフォーマンスが低下する現象のことです。過学習に対処するには、トレーニングとテストに使用するデータをローテーションし、モデルが適度に汎化されるようにする交差検証などの手法を使用します。

また、AIエージェントが期待通りのパフォーマンスを発揮していない場合は、トレーニングフェーズを再検討し、パラメーターの調整、データの追加、さらにはモデルの再トレーニングを検討してください。

アンケート、フィードバックフォーム、直接インタビューなど、ユーザーからフィードバックを収集する仕組みを設定します。ユーザーの好き嫌いや、ユーザーを混乱させる要素に注意してください。フィードバックを利用して、AIエージェントを継続的に改善します。たとえば、会話フローの調整、より多くのデータを使用したモデルのトレーニング、ユーザーインターフェースの調整などがあります。

ステップ6:AIエージェントを導入して監視する

最後に、AIエージェントを本番環境に導入し、AIが実際のユーザーとどのようにやり取りするか確認しましょう。

AIエージェントを導入する場所(Webサイト、モバイルアプリ内、音声起動プラットフォームなど)を決定します。次に、選択したプラットフォームにAIエージェントを統合します。たとえば、Webサイトへのコードの埋め込み、モバイルアプリでのAIエージェントの設定、音声プラットフォームのAPIを使用したAIエージェントの設定などが必要になります。

統合が完了したら、AIエージェントを起動してユーザーとのやり取りを開始します。スムーズに立ち上げるために、すべてのサポートシステムが稼働していることを確認してください。

AIエージェントのパフォーマンスを定期的に確認します。ユーザーの問い合わせを正しく理解しているか?複雑な会話をどのように処理しているか?など、AIエージェントのパフォーマンスに関するリアルタイムのインサイトを提示するツールを使用しましょう。こうしたツールでは、応答時間、成功率、ユーザーの満足度を確認できます。

そのために、プラットフォームを通じてユーザーのフィードバックを直接収集します。フィードバックは、評価やコメントを求めたり、AIエージェントの対応後に直接アンケートのリンクを表示するなどの方法で収集できます。また、エラーログを設定し、問題が発生したときに取得することもできます。エラーが急増したり、パフォーマンスが低下すると、通知が届くため、迅速に対応できます。

AIエージェントを慎重に導入し、監視システムを設定することで、AIエージェントを確実に立ち上げられるだけでなく、時間の経過とともに適応と改善が進み、ユーザーのニーズと期待に継続的に応えることができます。

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すぐに使えるこれらのカスタムAIのユースケースからヒントを得ましょう。

独自のAIエージェントを構築してトレーニングする

これでトレーニングは完了です。独自のAIエージェントを構築してトレーニングするのは大変な作業に見えるかもしれませんが、Salesforceを使用すれば、ビジネスを前進させるイノベーションの最前線に立つことができます。トレーニングプロセスをシンプルにする最先端のツールとフレームワークにアクセスできるため、インテリジェントで効率的なAIエージェントを確立できます。AIの力を活用することで、生産性とインサイトのレベルアップを図り、データを成長のための実践的な戦略に変換できます。

Salesforceでエージェントジャーニーを図式化して未来に今すぐ備えましょう。よりスマートでつながりの深いビジネス環境のステージを整えることができます。

Caylin Whiteは、Salesforceのスモールビジネス担当エディトリアルリーダー兼グロースマネージャーです。彼女は15年以上にわたり、WordPressやBuzzSumoなど、多くのSaaS業界でコンテンツを執筆してきました。SEOを専門としていますが、すべてのコンテンツに人間中心の角度を必ず加えています。