炎上させない、しても慌てない、ソーシャルメディア防災マニュアル

フタをしようとするから、炎上する。

事業者がソーシャルメディアに参加するとき、皆が一様に恐れる言葉に「炎上」がある。
だが、消費者が自由に発言するソーシャル時代にあっては、ソーシャルに参加していようがいまいが関係なく炎上は発生する。むしろ炎上を予防するためにも「ソーシャルメディア」に自社が参加しておくことは重要なのだ。
一般的なビジネスマンでも「犯したミスをとぼけてごまかす」「自分のミスは報告しない」といった「美しい虚像を守りたい」という風潮が組織に存在すると、 ある日突然、予期せぬ大事故が発生するだろう。まさにネット上の「炎上」も、そのような「隠蔽体質」から発生するケースが多い。
だからこそ、「オープン性」「透明性」をもって事業者が日常的にソーシャルで活動すれば、そうした体質は改善されるし、大きなしっぺ返しを食らうこともなくなる。
なにも事業者でなくても、本連載の第3回でも触れたように、担当者ですら「怖くて書けない」と、なりかねない。それほど「炎上」は正体不明で対応に困るシロモノなのだ。
だが、ネット上にソーシャルが存在する以上、「炎上」が起こらない保証はゼロにはならない。日々の生活で「火事は絶対に発生しない」という保証がないのと 同じだ。どんなに素晴らしい組織であっても、ミスは発生する。だからこそ、「防災の意識」を持つことで、万が一の際にも火災を未然に防いだり、最小限の被 害に止める事ができる。
筆者の経験上、「対応の遅れ」は炎上要因のひとつだ。炎上の火種を発見したら、30分以内に対応することで、被害は最低限にくいとどめられ、また、逆にク レームをファンに変えることも可能だ。おうおうにして大炎上に発展しているケースでは、「放っておけばそのうち何とかなるだろう」とか「別にうちが迷惑か けたわけではないし」と、無関心・無責任な姿勢で、対応が遅れてしまっている状態をみかける。では、「炎上」の火種はどうやって発見し、どのように対応す ればよいかをみてゆこう。

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まず、火種の第一報をいち早くキャッチする

炎上のきっかけとしては

  • 投稿やコメントに、不適切・不正確な内容があった
  • ネット上で社員やスタッフが不適切な行為をとった
  • 事業者へのクレームが投稿された

などがある。フェイスブックページ以外にも、ネット上には、日々、様々な「書き込み」や「噂」「ニュース」が飛び交っている。好意的な内容もあれ ば、心なき誹謗中傷もあるだろう。中には、自社がまだ把握していないような、情報漏えいや、食中毒・異物混入など、当事者がまだ気づいていない過失を指摘 してくれているケースですらある。だが、時々刻々と生まれ続けるこうした情報を、毎日検索し続けることは困難だ。
そこで、こうした火種のイチ早い発見を簡単に誰でも始められる方法をご紹介しておきたい。
まず、自社に関するキーワードをできるだけ幅広く用意する。例えば、社名、店舗名、屋号、自社ブランド名、商品名、代表的なキャッチコピー、代表者名、主 要役員名、オンラインショップ店長名、カスタマーサポート担当者名、オンラインショップURL、フェイスブックページURL、Twitterアカウント、 フェイスブックアカウント、運用ドメイン名などである。また、これらの誤字、伏せ字を使ったパターンなど、考え得る範囲で列挙し、これらを次の方法で登録 し、メールで情報を取得する。
最も簡単なのはグーグルの検索結果をチェックする方法だ。http://www.google.co.jp/alertsに、上記のキーワードを入力して、「タイプ:すべて」「頻度:その都度」「検索結果のボリューム:すべての結果」などを選択し、「アラートの作成」で完了である。あとは設定したスケジュールに従って、メールでお知らせが届く。

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また、風評の伝播速度を考えるとTwitterの影響はかなり大きいので、Twitter上の会話でキーワードに関するツイートが投稿されたら、即 時にメールが届くように設定しておくといいだろう。まず、topsy というtwitter上をリアルタイムに検索してくれるサービスで、希望するキーワードを入力して、検索ボタンを押す。

http://www.topsy.com

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すると、検索結果画面が現れるので、alert のボタンを押して、画面の指示に従って進めば、あらかじめ登録しているメールアドレスに、登録したキーワードがtwitterでつぶやかれるとメールが届く事になる。

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ただ、この方法ではやや即時性に欠けるため、筆者は次のような設定をお薦めする。
http://search.twitter.com/search.atom?q=[キーワード]
の[キーワード]の部分に、監視したいキーワードを記述する。
例:http://search.twitter.com/search.atom?q=issun.com
そのURLをhttp://beta.blogtrottr.com/に登録する。受信したいメールアドレスを入力すると、確認メールが届くので、メール本文の確認URLをクリックしたら登録完了である。
もし、キーワードに日本語を使いたい場合は、http://www.tagindex.com/tool/url.htmlで「エンコード」という所に、希望する日本語を入力して、「UTF-8」を選択して、エンコードボタンを押す。そうしてエンコードされた文字をキーワードの部分に記述してやれば良い。

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情報をキャッチしたら、対応の方向性を決める。

情報をいち早く取得できれば、あとはその対応方法を判断すればよい。当然これは早ければ早いほどよい。称賛の声は、企業にとっても心地よいものだが、否定的な意見にこそ、耳を傾けるべきだ。慣れないうちは、ネガティブな情報や意見への対応で失敗することが多い。
ネガティブな「書き込み」を見つけた場合、まず、謙虚に受け止め「私たちは、何を改善すべきか?」という視点に立つことだ。「売り言葉に買い言葉」のよう に感情的になったり、自社のフェイスブックページなら、あわてて削除するなど、冷静さを欠いた言動は慎まなければいけない。冷静沈着に

  1. 1)その投稿に、反応、あるいは、返信すべきか?
  2. 2)謝罪の必要性はあるか?
  3. 3)被害者になっていないか?

の3点を、正しく見極めるべきである。
1)の「その投稿に、反応、あるいは、返信すべきか?」をまず判断する必要がある。多くの第一報は、先ほど紹介したような方法で、こちらが勝手に見つけた 投稿となるので、書きこんだ相手は返信などは期待もしていない。特に、その投稿が「嘲笑を伴った批判」であった場合であれば、触れずにおくほうが得策だろ う。感情的になって関わらないほうがよい手合いが多い。怒りや嘲りを伴った感情的な批判は、一時的にたかぶった感情であるケースが高く、数時間経つと投稿 者によって削除されているケースもある。あるいはそのような投稿しかしない、というユーザもいるので、過去の投稿も参照しながら判断が必要となるだろう。
ただし、こちらに非があり、何らかのコメントが必要だと判断された場合は、素直に反省しながら相手の立場やプライドを傷つけないように気配りをして、 Twitterならリツイート(RT)ではなく「メンション(@)」を使い、フェイスブックなら、個人宛のメッセージも選択肢に加えるなど、できるだけ公 開範囲を狭くして本人にダイレクトに届くような方法で対応しよう。伝えるポイントは「ご意見へのお礼」と「今後の参考にさせていただきたい」という2点で ある。

2)の「謝罪の必要性はあるか?」については、ユーザーに不利益を与えた事実が確認されたなら、「お詫び」「改善の意思表明」「投稿のお礼」に徹す る。どんな事業でも、100%炎上が起きない保証はない。自社のミスだけでなく、取引先、外注先など、不可抗力なミスが原因になって炎上することもある。 もし、炎上してしまったら、火に油を注がないことが鉄則だ。例えば、「放置」や「無関心」は油となり、炎上は大炎上へと発展してゆく。これは、ありがちな パターンだが、ひとたび、お詫びをする、という姿勢を決めたなら、お詫びの最後に「ただ・・・」などと、一切の言い訳、主張をしてはならない。その途端、 またたくまに再炎上してしまう。速やかに改善をおこない、「その場のプライド」よりも「名誉挽回の次のチャンス」を与えてもらうことが重要だ。
少し前になるが、ソーシャルメディア上のある著名人がイベントを開催した際に、同様のミスを犯しているのを目にした。御本人の名誉のためにも記事へのリン クは割愛させていただくことを読者にはご了承いただきたいが、プライドが邪魔をしたのか、形式的なお詫びをしては、自分の名誉を維持しようと「た だ・・・」と言い訳を繰り返し、自らの正当性を主張することばかりに腐心していることは、誰の目にも明白であったろう。迷惑をかけた相手を思いやる気持ち が少しでも伝われば、こうした状況にもならなかったのではないだろうか。

3)「被害者になっていないか?」は、根拠のない「やじ」「非難」なら静観で問題ないが、第三者がその投稿を見た時に、実際の事実と誤認するような 内容による個人攻撃、組織攻撃は、先に述べた通り「名誉棄損」「業務妨害」へと発展しかねないので、悪質性のレベルによっては専門家(弁護士、警察)への 相談慎重に対処すべきである。

日本弁護士連合会
都道府県警察本部のサイバー犯罪相談窓口

今でこそ、ネット上もリアルの社会も法が整備されたが、つい7~8年ほど前までは、そうした法律や知識を持った担当者が未整備であったため、自分の 身は自分で守るしかなかった。かくいう筆者も、年に1、2回はプチ炎上を体験してきた。当時の炎上の舞台といえば、大手のショッピングモールの「店長の部 屋」、価格サイトの「レビュー板」などだ。法規制もほとんどなく、一度炎上すると、果てしなく誹謗中傷がエスカレートし、掲示板を閉鎖したり、ひどい場合 は閉店に追い込まれるショップも少なくなかった。自分自身も、実際に反社会的と呼ばれる組織から脅迫を受け、警察と協力しながら解決したケースも数回経験 した。そんな状況を見て、ホームページを持つことすら敬遠していた会社もあったが、現在では、多くのツールや法が整っており、理不尽な不利益を被ることは ほとんど無くなったといえる。
ほとんどのケースはここで鎮火するが、群集心理の果てには、事実無根の悪い風評で、ブランドやWeb担当者が貶められることもある。このような場合は、業 務妨害、名誉棄損の可能性もあるので、素人判断をせずに、実害のないうちに弁護士や警察に相談するなどの対応をすることだ。

社員を守り、顧客を守るルールづくり

一方で、自社へ不利益や攻撃をもたらすものが、内部の投稿によるものであるケースが増えているという現実もある。社員、職員、アルバイト従業員な ど、自社に関わる個人アカウントでのTwitterやフェイスブック、ブログ利用が急増し、自身のプライベートな生活をネット上で公開することが当たり前 になった。
人気タレントが利用したある施設の従業員が、利用後の部屋の状態を撮影してTwitterに写真を公開したことが話題になったことがある。施設の従業員に してみれば、タレントに悪意があった訳でもなく、自分の仕事の日常をつぶやいた程度の軽い気持ちだったのだろう。人気タレントが来るような施設で働いてい ることを自慢したい気持ちも少なからずあったかもしれない。
だが、ソーシャルという名を冠している通り、そこが「社会」であることに変わりはない。世間話での「ここだけの話」が成り立たないように、投稿した瞬間に不特定多数の人が閲覧できるインターネットという社会の中に伝播していくのだ。
このように企業や店だけでなく、学校、自治体などには、所属する社員、職員がソーシャルネットワークを利用することでのリスクも存在する。ひいては顧客へ のリスクも生み出しかねない。個人で気軽に社会への情報発信が可能となった現代における組織の危機管理として、ソーシャルネット利用のマナーや基本ルール の周知徹底は今後まずます重要になるだろう。
そこで社内向けの「ガイドライン」をもうけて、日々社員を教育してゆくことに取り組んでもらいたい。千葉市では、職員のSNS利用における、マナーや倫 理、ルールについてのガイドラインを公開しているが、非常に完成度が高く、参考になる。ぜひダウンロードいただき社内向けのガイドライン策定に役立てて欲 しい。

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「千葉市職員のソーシャルメディアの利用に関するガイドライン」について

顧客との関係を維持するルールづくり

「社内」向けのガイドラインを設定し、教育を繰り返して行くと共に、「社外」向けのガイドラインも必要だ。これは、事業規模や取得している規格など にもよって異なると思うので、「コミュニティガイドライン」でネットを検索してほしい。様々な規模の企業が掲げるお手本となりそうなコミュニティガイドラ インがずらりと並ぶだろう。
ちなみに当社のガイドラインは、facebookページ上にタブを追加し、設置しているので、文面はともかく、実際にフェイスブックページ上に、どのように追加すれば良いのかなどのイメージを掴んでもらいたい。

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https://www.facebook.com/MIYAMATSU.NET/app_109770245765922

ファン同士のもめ事には、毅然としたリーダーシップで誘導を

ネットに限らず、一定の人数が集まれば、全員がまったく同じ意見であるなどということはあり得ない。時としてそれは、派閥というグループに分かれる 場合もある。ある社長さんの持論に「社員旅行にマイクロバスが2台必要になったら社内に派閥が生まれる」という話を聞いたこともある。
フェイスブックページ上でも、ファン同士の意見が対立し、両者の感情がヒートアップしている場合は、ページオーナーがリーダーシップを発揮して方向性を指 し示さなければ、建設的な議論にはならない。コメント欄にもかかわらず、チャットのようにリアルタイムでの応酬がされているような時は、上手に両者の熱を 冷ますように、ページオーナーが割って入る必要がある。そういう時は、公平な聞き役に徹して、双方の着地点となりそうな共通のビジョンを見出して提示すべ きだ。
意見の対立はファン同士とは限らない。時には、自社のブランドコンセプトや管理人の投稿に、その矛先が向く場合もある。このような場合は、ファンからの批 判的な意見を敵対視したり、必要以上に落ち込んだりせずに、まず冷静に受け止めよう。ただし、事業者としての対応が求められるため、担当者ひとりで判断せ ず、こうした場合に誰と誰に相談・確認をするか、あらかじめ社内で専用のチームを作っておく必要があるだろう。
どのような内容であっても、ポジティブに解釈し、貴重なアドバイスとして受け入れるだけの余裕と謙虚さを持つことは、ソーシャルメディアの前線担当として 正しい態度である。自分(自社)に、非がある場合は甘んじて受け入れ、すぐに「改善」する柔軟な姿勢はソーシャルメディアならではのスピード感が要求され る。また、こちらに改善点があった場合は「事実確認、改善の報告、今後の体制、継続したお付き合いのお願い」をコンパクトにまとめ、堅苦しすぎない文体で コメントを入れよう。重大な事項であれば、後日、公式サイトでも掲載が必要となるだろう。

指摘・批判を受けた時の返信コメントの一例

『ご意見ありがとうございます。さっそくページの内容を修正し、いただいた貴重なアドバイスは社内でも共有させていただきました。これからの運営の参考とさせていただきたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。』

明らかに悪意のある投稿・ガイドラインに反する投稿があった場合

自社が管理するフェイスブックページへの投稿やコメントは、コメントの「×」印をクリックすることで「非表示」とすることができる。

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こうすることで投稿した個人以外からはこの投稿は見えなくなる。その上で、「元に戻す」「削除」「スパム報告」「ブロック」などの対応が可能だが、

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個人的な見解としては、こうした行為は、最後の手段であり、極力、良い意見も悪い意見も残しておくべきではないかと考える。特に、ページオーナーへの過失やミスであれば、まずはしっかりと事実に向き合い、削除せずに「追加コメント」で対応すべきだろう。
また、対応なしに削除をして、過失責任を放棄しても、今度は自社では制御やコミュニケーションできないTwitterやmixiなどのソーシャルメディアで、そのユーザが一人歩きしはじめることもある。
ただし、特定のファンに対する誹謗中傷や攻撃だったり、ファン全体に不利益が及ぶと思われるような場合は、いきなり削除せず、まずは「非表示」にして様子を見よう。このためにも先ほどの「コミュニティガイドライン」は重要だ。なお、このとき、非表示にするコメントに、「いいね!」やコメントがついている場合は、後々炎上の火種となることがあるので、注意が必要だ。そ れでもなお不適切な投稿やコメントが続くようであれば削除して、本人には「投稿は大変ありがたいのですが、今回の内容は運用ルールと異なるため削除させて いただきました。」と、管理人から毅然とした、かつ、削除へのケアの気持ちも込めて個別メッセージを送る必要もあるだろう。

ネット社会と共存する意識が最大の防災となる

消費者が自由に発言するソーシャルの場においては、それらをコントロールなどできない。どんなに「清らかなイメージ」を維持しようとしても、 100%同じ考えの人ばかりということの方がよほど不自然だ。「ソーシャルメディアは炎上するから危険」と、ソーシャルメディアへの参加を恐れる事業者も あるが、これは約10年ほど前に「ホームページを持つとハッキング(正しくはクラッキング)されるから危険」と、メールの利用やウェブサイトの運営に慎重 になる事業者がいたことを思い出す。結局、時流に逆らえず、今まで無関心だったホームページやメールを知識の無いまま、あわてて取り組んだとたんに、ホー ムページが乗っ取られたり、ウィルス感染していた事業者は多かったのではないだろうか。
炎上だって、ホームページのせいでも、ソーシャルネットのせいでもない。謙虚さに欠けたり、顧客対応の不慣れから、いざという時の対応を誤ってしまったた めに、とりかえしのつかないほどの大炎上に至ってしまうケースが多い。炎上は、システムが生むのではない。ヒューマンエラー、つまり、事業者自身の人的要 因で発生するのだ。
だからこそ、積極的にファンとのコミュニティを持ち、ユーザー目線の交流環境に慣れ、どんな時も不用意な発言をしたり、誤った対応をしない経験を積んでいくことも必要だろう。
ソーシャルで自分たちだけが儲けよう、というスタンスでは無く、ファンのため、社会のために、日々地道に事業に取り組んでいるという小さな積み重ねが、大 きな炎上を引き起こさない強い体質をつくりあげてくれる。万一、理不尽に炎上した場合も、良き関係づくりをしてきたファンがいれば、運営サイドの味方とな り、協力してくれるケースは、筆者自身も、何度となく感謝しきれないほどの経験をしてきた。日頃から、ファンの声に謙虚に耳を傾け、他のコミュニティの誹 謗中傷をしないなど、「ソーシャルメディアとの共存」といった基本的なマナーこそが、炎上を回避する一番の対策なのではないだろうか。

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