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NPO・非営利団体を支えるクラウド

NPO・非営利団体を支えるクラウド

社会が抱える課題を解決するNPO法人やその他非営利団体の活動においても、ITの活用は欠かせない時代となっています。ただ資金に余裕がない非営利団体においては、IT導入の敷居は決して低くありません。そこで広まっているのがクラウドの利用です。NPO法人つくばアグリチャレンジやカタリバの事例を通して、活動の持続や発展の条件を探ります。

NPO・非営利団体を支えるクラウド

営利企業や政府では解決することが難しい社会的な問題を解決するため、世界で は数多くのNPOや非営利団体が活動しています。一般の企業と同様、このNPOなどにおいても浸透しつつあるのがクラウドです。その背景には、彼らが行う 社会貢献活動とクラウドの相性のよさがあります。

「資金調達」という課題

さまざまな社会貢献活動を行い、団体の構成員に対し収益を分配することを目的としない団体の総称を「NPO(non-profit organization)」と呼びます。さらに日本では、特定非営利活動促進法に基づき法人格を取得した法人が「特定非営利活動法人」で、その通称が 「NPO法人」です。社会の問題の解決に向けて多くの団体が取り組んでいます(なお本記事ではNPO法人のみでなく、広義の非営利団体について解説してい きます)。

NPO・非営利団体も事業を推進していく上ではさまざまな費用が発生するため、何らかの形で資金を調達しなければなりません。多くのNPO・非営利 団体は会費や寄附金、基金や財団からの助成金、国および地方自治体からの補助金などによって活動費をまかなっています。目的を達成するために必要十分な資 金を集められるように、NPO・非営利団体は資金調達の手法を学び、支援者ときめ細やかなコミュニケーションを行い、様々な工夫を積み重ねながら事業を継 続しています。

このような資金面の課題を解決するために、多くのNPO・非営利団体において活用され始めているのがクラウドです。これら団体においても、事業を効 率的かつ円滑に進められるITの活用は有効ですが、決して潤沢とは言えない資金の中で、サーバーや各種ソフトウェアを購入するのは負担が大きいと言えま す。しかしクラウドを活用すれば、コスト負担を抑えながらITの有効活用が可能となります。米国のNTEN (Nonprofit Technology Network)が米国内のNPOを対象に行ったクラウド利用に関する調査「2012 State of the Nonprofit Cloud Report」(回答者780人)でも、クラウドを選択した理由として「コスト」が決定要因だったと回答したNPOが56.56%に上りました。

NPO事業をクラウドで効率化した、つくばアグリチャレンジ

その一例として、NPO法人つくばアグリチャレンジをご紹介しましょう。

働く場所が少ない障害者と、担い手が不足している農業。つくばアグリチャレンジは、この二つの課題をつなぐために運営されています。同NPOには、 もともとITに強いスタッフは一人もいませんでした。そこで「ITに詳しい専任者がいなくても簡単に利用できる」ことからSalesforceの導入を決 め、商品の登録や管理、販売管理を一元的に行っています。

代表の五十嵐立青氏は、詰め合わせの野菜は毎回内容が違うのでリピートされるためには工夫が必要で、注文履歴をもとにお客様ごとにきめ細かく情報を 管理することにより、満足度を非常に高めることができる、と導入の効果を語っています。また、畑の写真を公開シェアすることで、遠隔からの栽培指導などに 一役買っています。
セールスフォース・ドットコムファンデーション 非営利団体への製品寄贈・割引

カタリバの発展の起爆剤とは?

教育NPOとして全国的な注目を集めるカタリバでも、クラウドを積極的に活用して大きな発展を遂げています。カタリバは「生き抜く力を、子ども・若 者へ」を理念に活動する教育NPOで、高校生へのキャリア学習プログラム「カタリ場」と、被災地の放課後学校「コラボ・スクール」を通じて、「生き抜く 力」をそなえた子ども・若者を数多く輩出していくことを目指しています。「カタリ場」プログラムは2001年から2014年の14年間で全国1000校、 約18万人の高校生に提供されています。

カタリバは学校の先生とのコミュニケーション履歴、企画書や報告書、アンケート結果などを以前は表計算ソフトで管理していましたが、現在ではそれを Salesforceに一元化しています。総括ディレクターの低引(そこびき)稔氏は「企画書や報告書、寄付者や学校の先生方とのやりとりの履歴を Salesforceに一元化することで、ノウハウを蓄積し、法人として一気通貫のコミュニケーションが取れるようになりました」と語ります。

そのほか、「コラボ・スクール」では子どもたちにバーコード付きの名札を配布しています。これをバーコードリーダーで読み込むと、その情報を Salesforceで取り込み、保護者が子どもたちの登下校を把握できるメール配信システムを整えたのです。さらにカード決済情報を簡単に Salesforceに自動入力するサービスを利用し、クレジットカードを使った寄付金の受付において大幅な省力化を果たしています。このサービスはセー ルスフォース・ドットコムの非営利団体割引提供パートナーの一社である株式会社テラスカイと、株式会社ファンドレックスが提供しています。

事例「カタリバ」 – 心に”火を灯す”学習プログラム「カタリ場」のノウハウをSalesforceに蓄積

幅広い領域で社会を支えるインフラとなるクラウド

NPOをITの側面から支援する動きは社会的にも広まりつつあります。セールスフォース・ドットコムでは「1/1/1モデル」というコミュニティ支 援の方針を、アメリカでの創業当初から打ち出しています。これは「社員の就業時間の1%のボランティア活動(People)」、「自社製品の1%を、非営 利団体に寄贈、割引提供(Technology)」、「非営利団体への助成金提供(Resources)」を行うというものです。この1/1/1モデルは 多くの企業に採用されており、Googleも非営利団体向けのサポートプログラムである「Google for Nonprofits」を日本国内で提供しています。

多くのNPO・非営利団体に共通する課題は、スタッフ不足、資金不足、時間不足です。これらのうち、スタッフ不足と時間不足については、クラウドを 有効に活用し、コミュニケーションや情報共有を密にすることが課題解決につながります。そして資金面に関しても、クラウド導入がコスト削減に有効です。こ のように、クラウドは営利企業や政府・自治体だけでなく、NPO・非営利団体の活動の持続および発展においても不可欠なツールです。さまざまな団体の知恵 と工夫によって、クラウドの使われ方がより豊かなものになり、社会の課題解決に寄与していくことは間違いありません。

参考:

  • 内閣NPOホームページ(内閣府)
  • 2012 State of the Nonprofit Cloud Report (NTEN)
  • 非営利団体向けサービス(グーグル)
  • 導入事例インタビュー/Vol.01 認定NPO法人カタリバ様

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