朝食のお供に、仕事前や仕事の合間の一息に、今やコーヒーは人々にとって欠かせない飲料と言っても過言ではありません。そんな飲料の代表格をめぐるビジネスは熾烈を極めていますが、今もっともコーヒーを提供しているお店はどこかご存知でしょうか?それはコーヒーショップチェーンではなく、実はコンビニチェーンなのです。

昨今コンビニでのコーヒー提供は順調にシェアを伸ばし続け、2015 年の販売予想は前年度比 3 割増の 19 億杯とも言われています。これまでは比較的シンプルだった商品ラインナップも、アイスカフェオレ、抹茶ラテなど、さらに多くの顧客を取り込むべく意欲的な新商品が投入されていきます。

コンビニコーヒーの猛攻は既存の飲食店への影響はもちろんのこと、コンビニにて同じく商品棚に並ぶペットボトル飲料や缶飲料にとっても非常に大きな脅威になっています。そのため各飲料メーカーは特定のコンビニ向けのオリジナル商品を企画するなど、戦略を転換して生き残りを図っています。

徹底的にユーザーを観察する、デザイン思考

「イノベーション」などと言葉にするのは簡単なことですが、それを成し遂げることは並大抵のことではありません。近年注目を集めている「デザイン思考」という思考プロセスは、イノベーションをマネジメントするための強力なサポーターとして広く認知されています。

デザイン思考はデザインコンサルティングファームの IDEO 社のノウハウから発展したプロセスで、Apple や P&G、GE、ノキアなどそうそうたる大企業が事業戦略に導入しています。デザイン思考の特徴は、まず「共感」というプロセスによって、どこに問題があり、なぜ問題なのかを特定する点にあります。思い込みや拙速な判断をせず、徹底的にユーザーを観察し、ユーザーすら気づいていない本当の目的や本当の課題をあぶり出していきます。本当の課題が判明してはじめて問題を設定し、プロトタイピングを繰り返してアイデアを具現化していきます。

コンビニコーヒーの例にとると、コーヒーショップの持っていた強みは、コーヒーの味といった商品力もさることながら、「おしゃれで居心地の良い空間」にもありました。しかし休日や仕事後であればいざ知らず、忙しい平日の朝にコーヒーショップに立ち寄りソファ席でくつろぐことは、全ての人に当てはまるわけではありません。もちろんテイクアウトもできますが、本格的なコーヒーを手に入れるためにはそれなりの待ち時間ができてしまいます。つまり、ユーザーは美味しいコーヒーを飲むためには、ある程度の時間を犠牲にするという「問題」を抱えていたとも言えます。

コンビニ各社はここに目をつけ、徹底的なプロトタイピングを通じて美味しくかつ速やかにコーヒーをいれるコーヒーマシンを開発しました。コンビニのレジはもともと徹底的な効率化が図られており、コンビニは通常オフィスの近くなど立地条件の良いところに建っているため、いれたてのコーヒーをオフィスに持っていって飲むことが可能になります。ユーザーの「コンビニエンスストアに求める体験」を徹底的に観察してきたからこそ完成したサービスと言えるでしょう。

IT システムを使いたいとき、使いたいだけ
業界のルールを変えた Salesforce のクラウドサービス

以前は、新しい IT システムの導入となればオンプレミスが一般的で、構築にかかる費用が数千万から数億円もかかり、システムの設計から構築、導入まで数年かかるといったこともありました。その点、Salesforce は SaaS 型で IT システムを、「使いたいときに使いたいだけ」というサブスクリプションモデルで提供してきました。

IT システムを提供する企業は、新しい技術や仕組みを追求しがちです。しかし、セールスフォース・ドットコムではこうした技術発想ではなく、顧客の成果を達成することを目標とするビジネス発想こそがイノベーションを生むと考え、レピュテーションをマネジメントし、顧客志向を徹底しています。

クラウドという新しい技術モデルや、サブスクリプションという新しいビジネスモデルも、こうした顧客志向からきたものであり、セールスフォース・ドットコムの成功の鍵はここにあるとも言えます。

また、総務省平成 26 年度情報通信白書によると、国内におけるクラウドサービスの利用動向として、一部でもクラウドサービスを利用している企業は 33.1% にのぼり、資本金 50 億円以上では 5 割を超えているとの結果が出ています。企業におけるクラウドサービスの重要性は日本においても、加速度的に増していくに違いありません。

このようにセールスフォース・ドットコム自身も、「クラウド」や「サブスクリプションモデル」という新しいルールをIT業界に持ち込んだゲームチェンジャーであると言え、設立 16 年目で Fortune 500 にランクインするソフトウェア企業へと成長することができました。

技術発想から、ビジネス発想へ転換すること

このようにイノベーションを起こすには、「イノベーション=技術志向」という考え方から脱却して、顧客志向で考える必要があります。今話題となっている IoT(Internet of Things)も概念自体は昔からあるものでした。現在 IoT が再び注目されるのは、センサーなどの技術的な参入障壁が少なくなったことも否めませんが、様々な情報を入手できるようになることで、それを利用する顧客の動向を可視化できることが大きな理由でもあります。ところが、こういった技術を「技術先行で」サービスを提供しても、必ずしも顧客に価値あるサービスを提供できるとは限りません。そこでセールスフォース・ドットコムでは、IoT ソリューションを、IoC ソリューション(Internet of Customers)と呼び、提供しています。モノと人(ユーザー)をつなげて顧客志向のサービスとして転換できるように支援しています。技術発想ではなく、ビジネス発想こそ、新しい価値を生むイノベーションの源泉となるからです。

デザイン思考のような洗練された思考プロセスと、Salesforce の IoC ソリューションを組み合わせて顧客と真摯に向き合えば、あなたの企業がゲームチェンジャーとして歴史に名を残す日も遠くないかも知れません。

参考:

  • コンビニコーヒー19億杯に 大手5社、15年度3割増:日本経済新聞(2015年5月8日)
  • 0から1を創り出すデザイン思考 ― 新たなイノベーション創出手法:Build Insider
    (2014年8月1日 株式会社CCL 須藤 順)
  • 総務省 平成26年度情報通信白書 国内におけるクラウドサービスの利用状況