Skip to Content

先進国マーケティングは通じない? 新興国で勝つための「リバース・イノベーション」のススメ

先進国マーケティングは通じない? 新興国で勝つための「リバース・イノベーション」のススメ

発展途上国で生まれたイノベーションが、先進国、グローバルに普及する事例が出始めています。これは「リバース・イノベーション」と呼ばれ、先進国の人々の暮らしにも影響し得る現象として注目されています。

既存産業を破壊するようなイノベーティブなプロダクトは、これまでは主に先進国で生まれていました。先進国で誕生したイノベーションなプロダクトが、時が経つにつれてコストが下がり、それが発展途上国に普及していく、というように考えていませんか?

しかし、この逆の道を辿るイノベーションが、登場しはじめています。つまり発展途上国で生まれたイノベーションが、先進国、グローバルに普及する事例が出始めているのです。これは「リバース・イノベーション」と呼ばれ、先進国の人々の暮らしにも影響し得る現象として注目されています。

では、リバース・イノベーションとは一体どのようなイノベーションなのでしょうか。また新興国においてビジネスを牽引したい国内企業が留意すべきポイントはどこにあるのでしょうか。

新興国でイノベーションが必要なワケ

リバース・イノベーションは米ダートマス大学のビジャイ・ゴビンダラジャン教授が提唱したコンセプトです。

従来、新興国のマーケットを攻めるためには、先進国で生まれたプロダクトの「廉価版」を展開すれば良いと考えられていました。これをグローカリゼーション戦略と呼ぶのですが、この戦略は新興国のなかでも比較的裕福な人のみにしか有効でなく、大多数を占める中間層・貧困層には通用しないという特徴がありました。実際に新興国で遍く受け入れられるプロダクトを展開するためには、新興国特有のニーズを拾いあげたうえでゼロからプロダクト設計をする必要があります。これに加えて、新興国は世界中から注目を集めているために、今や超が付くほどの激戦区。ありきたりのプロダクトでは、あっという間に現地企業にマーケットを奪われてしまいます。

こうした背景から、新興国こそイノベーションが求められるという考え方が急速に広まっていったのです。そして新興国で生まれたユニークなイノベーションは、先進国マーケットにおいても十分に通用するものが多く、新興国から先進国へ、つまり従来とは逆の流れで輸出されるイノベーションということから「リバース・イノベーション」と呼ばれるようになりました。

出所:新興国イノベーション研究会報告書(平成25年度アジア産業基盤強化等事業 国内外企業の新興国市場獲得の実態に係る調査)(経済産業省・アクセンチュア)より引用。元データは、経済産業省「通商⽩書2013」・IMF「World Economic Outlook、April 2013」より。セールスフォース・ドットコムにてグラフを再構成したもの。中間層以上とは、世帯年間可処分所得が5,000ドル以上の人口を指す

事例1:中国で生まれた低価格電動バイクが欧州で走る

中国では1990年代から、大気汚染低減・交通事故現象を狙ったガソリンバイクへの規制が広まっていきました。ナンバープレートの競売化でバイク購入にかかる費用負担を吊り上げ購入を抑制したり、通行禁止区域の拡大や特別課税を導入したりしたのです。中国の公共インフラは都市によっては非常に脆弱で、この規制は人々の生活を直撃しました。

そのため、メーカー各社は比較的規則の緩かった電動バイクの製品開発・販売に注力していきました。ガソリンエンジンを搭載するバイクよりも、開発が容易で参入障壁が低いこともあり、たちまち多数のローカルメーカーがひしめき合う激戦マーケットに。そのなかで製品の競争力がどんどん磨かれ、2005年にはついにガソリンバイクの生産台数を追い越すまでに人々の生活に浸透していきました。

そうして生まれた製品は、最高時速20キロ超とデイリーユースには十分な性能を持ち、かつ価格は数万円とガソリンバイクを寄せ付けないコストパフォーマンスを誇ります。ちょっとした用事に使える足が欲しいがガソリンバイクでは価格が高すぎ、かつオーバースペックだと感じる人にとってはまさにぴったりの製品です。今では欧州を中心に、中国から年間50万台以上を輸出するまでになりました。

事例2:インドのスマホメーカーがロシアに進出

インドのハリヤーナー州グルガオンに本社を置くマイクロマックス社は、2008年から携帯電話市場に参入しました。このベンチャー企業は、参入からわずか6年で市場シェア17.8%を達成し、グローバル企業のシェアを脅かしています。

マイクロマックス社が注力したのが、農村部のユーザーです。インドは他の新興国と同様貧富の差が激しく、先進国以上の生活水準で暮らす人がいる一方、インフラが脆弱ゆえに電気すら安定的に供給されない農村部に住んでいる人もいます。このようなインド特有の事情を徹底的に汲み取り、例え停電が頻発しても問題なく使える30日間持続バッテリーを搭載したフィーチャーフォンなど、画期的な製品を次々とインド市場に送り出していきました。この製品が大ヒットし、市場シェアを一気に上げることになったのです。今やインド国内のみに限らず、他の南アジア各国やロシアでも製品を展開するまでにいたりました。

リバース・イノベーションのポイント:現地の「顧客ニーズ」を汲み取る体制づくり

では、リバース・イノベーションを起こすためにはどうすればいいのでしょうか。ビジャイ・ゴビンダラジャン教授によると、新興国市場に対する認識として「新興国の人たちが持つニーズはカスタマイズで対応できる」という考え方ではなく、「新興国の人たちが持つニーズは先進国の人たちのそれと全く異なるため、イノベーションが必要だ」と捉えることがその第一歩となります。

そのためには、日本からの赴任チームで構成するのではなく、ローカルの人々を多く雇用し、かつ権限も与える体制づくりが必須となります。また上記の体制を運営するにあたり、本社側ときちんと情報共有できる環境づくりが重要です。Salesforceであれば、例え国境を超えていても情報を一瞬で共有することができます。またクラウドサービスのため、海外現地法人への展開も、素早く、スモールスタートで実現可能。電力事情が不安定な地域でもご利用いただけます。多言語にも対応しているため、現地社員への展開も比較的容易に行えます。

新興国マーケットは想像以上にタフで、勝ち残っていくためには単なるカスタマイズではなく、新興国からイノベーションを起こしていくことが大変重要です。Salesforceは、海外現地法人と本社とをつなぐ架け橋として力強いパートナーとなることでしょう。

参考文献:

  • リバース・イノベーション(ビジャイ・ゴビンダラジャン (著), クリス・トリンブル (著), 小林 喜一郎(解説) (その他), 渡部 典子 (翻訳) ダイヤモンド社)
  • 新興国イノベーション研究会報告書(平成25年度アジア産業基盤強化等事業 国内外企業の新興国市場獲得の実態に係る調査)(経済産業省・アクセンチュア 2014年2月28日)
  • インド発スマホベンチャーが爆発的な成長(帝羽 ニルマラ 純子 東洋経済ONLINE 2014年10月9日)

ビジネスに役立つコンテンツを定期的にお届けします