「マーケティングオートメーション」を導入した先進企業2社の取り組みを追う

現在、BtoBビジネスを展開する企業で「マーケティングオートメーション(MA)」に対する関心が高まっています。従来、マーケティングがあまり重要視されていなかった「BtoB」の領域でMAが注目されている理由の1つは、多くの企業が「市場の変化」を敏感に感じ取っているからにほかなりません。では「BtoBマーケティング」の領域で、現在起こっている変化とは何か。そして、その変化に対応するため、企業はどのようにMAツールを活用できるのでしょうか。

株式会社ビジネス・フォーラム事務局主催、株式会社セールスフォース・ドットコム特別協賛による「BtoBマーケティングフォーラム2016 “自社のバリュー”を真の顧客へ ~BtoB企業に今求められる、新たな顧客との関係づくり~」が開催されました。

本稿では、当日のセッションから「営業とマーケティングの新しいカンケイ ~先行企業ではマーケティングオートメーションをどう使っているのか?」をダイジェストでご紹介。前編では、セールスフォース・ドットコムの担当者による市場状況の解説と、ソニー不動産株式会社によるMAツール導入事例をお伝えします。

購買プロセスが変化する中、より迅速で精度の高いリード抽出が急務に

BtoB領域でMAが急速に関心を集めている背景として、セールスフォース・ドットコム、マーケティング本部プロダクトマーケティングシニアマネージャーの田崎純一郎氏は「企業における購買行動の変化」を挙げます。この変化には、

・ソリューションの複雑化

・購買における意思決定のコンセンサス志向

・営業活動が可能な時間の減少(後ずれ)

といった要素があります。

買い手側の企業としては、営業担当者から「ヒアリング」と「確認」が繰り返される中で、複雑なソリューションの内容を吟味することに疲弊しています。そこで購買にあたってリスクを避けるために、社外のコンサルタントと契約したり、より多くの「意思決定者」によるコンセンサスに基づいた購買を行ったりするようになっています。

米CEB社の調査によれば、現在、企業の購買に関わる意思決定者数の平均は「5.4人」にのぼると言います。BtoBの営業活動は、旧来のような、営業担当と購買担当の「1対1」の関係ではなく、より組織的なアプローチで、この「5.4人」の意思決定者からコンセンサスを得るための活動へと変化しているというわけです。

また、買い手側の「情報収集」の方法も変わりました。ガートナー社は、ネットによる情報収集が一般的になったことで、顧客が営業担当者へ直接コンタクトを取る前の段階で、購買プロセスの「約60%」は終わっていると指摘しています。より早い段階から顧客の動向を正確に把握しておかなければ、売り手側企業は「買い手側が主導する価格競争に巻き込まれ、営業は顧客からの要望を聞くだけの単なる作業担当者になりかねない」状況にあると田崎氏は言います。

こうした状況で、「マーケティング」にできることはなんでしょうか。田崎氏は、従来の「広告・広報・宣伝」といった役割に加え、「営業との協力」を前提とした新たな役割を担うことが必要だと指摘します。

例えば「コンセンサス」志向の購買行動が進んでいるのであれば、単なる名刺情報に加えて、その人がどのようなテーマに興味や関心を持っているかの情報を付加して営業へと渡すことで、リードの精度を高めることが可能になります。さらに「デジタルマーケティング」を推進することで、顧客の購買プロセスのより早い段階で、動向を正確に把握することができます。自社サイトへの訪問状況、メールへのリアクションといった情報を営業と共有することで、時間的な制約が強まっている営業活動を、効果的にサポートできるのです。

マーケティングが「インサイドセールス」としての役割を担い、営業とスムーズに情報共有を行いながら案件を作っていく環境が整うことで、売上へのより直接的な貢献が可能になります。こうした環境を目指したいと考える企業が増える中、その効率化を支援する「MAツール」への関心も高まっているというわけです。

MAツールを業務プロセスに組み込み業務効率を高めたソニー不動産

ソニー不動産は最新のテクノロジーを活用して、不動産業界に新たなサービスを創出し、既存サービスの利便性を高める「Real Estate Tech」を積極的に推進しています。またヤフーとの協業で2015年11月にスタートした「おうちダイレクト」は、仲介業者を介さずに個人が中古マンションの販売活動を行うことができるサービスとして注目を集めています。

課題:反響数向上とマーケティングサイクルの確立

マーケティング・UX推進室室長の青木和大氏は、ソニー不動産が抱えているマーケティング上の課題として「事業拡大に伴う反響数の垂直立ち上げ」と「新規サービスである『おうちダイレクト』のPDCAサイクル確立」を挙げました。

2014年4月に設立されたソニー不動産は、まだ会社そのものが若く、効率的に反響数を高めていく取り組みが必須です。同社では、CPA(Cost per Action)を下げながらAction=反響数を現在の「2.5倍」まで高めることを目標にしています。同様に、昨年スタートしたばかりの「おうちダイレクト」についても、まずは売り主、買い主双方のユーザー情報を増やして、取引を活発化させながらサイクルを確立していくことが求められています。

このために導入したセールスフォース・ドットコムのMAツール「Pardot」の主な活用シーンは、「キャンペーン・セミナーの立ち上げ」、そして「メールマーケティングの効率化」です。

解決策:Pardotでキャンペーンページを負荷なく大量生産

「おうちダイレクト」の認知向上や利用者数の拡大に向け、同社では頻繁にキャンペーンやセミナーといった施策を実施しています。こうした施策のたびに、ウェブサイト上にフォームを用意するのは非常に手間が掛かっていましたが、Pardotにはこうしたフォームを簡単に作成できる機能が用意されています。

青木氏は「Pardotのフォーム機能のメリットは、とにかく簡単に使えることです。慣れてしまえば、1つのフォームを作るのに10分も掛かりません」と、その使い勝手を高く評価しています。フォームから申し込みを行った顧客に関する情報を、マーケティング部門と営業部門とでリアルタイムに共有できる点もポイントです。同社では、2015年8月の導入以降、20近いフォームの作成と運用をPardot上で行っています。

「メールマーケティング」機能についても「使いやすさ」がポイントだと言います。例えば、メールを受け取りたくないという意思表示をした顧客に対して、メールの送信を停止する「オプトアウト」を実現しようとすると、一般的には「手作業」での対応になってしまいます。Pardotであれば、オプトアウトに対する対応をシステム側で自動的に行うことができます。

効果:マーケティングの仕組み化に成功。さらなる効率化を目指す

青木氏は、「Pardotによって、ウェブサイトやメールを、マーケティングの道具として十分に活用できています。運用プロセスの一部として組み込まれていることもあり、当社にとってPardotは、既になくてはならないツールです」と話します。

今後、ソニー不動産では、Pardotと顧客管理システムをより密接に連携させていくことに加え、同社が掲げる「Real Estate Tech」とPardotとを組み合わせた、リードナーチャリングにも取り組んでいきたいと言います。不動産売買が「気になっている」段階の顧客に対し、自社サイトや提携先のサービスなど、複数のチャネルでのアプローチを重ね、より具体的な売買の意思が生まれるタイミングを確実にキャッチできる体制を作り上げることを目指すとのことです。その実現にあたって、既に活用がスタートしたPardotは、大きく貢献することになるでしょう。

後編では、もう1つの事例として、自社のマーケティングレベルの向上に合わせてMAツールの活用レベルを高めている「株式会社オークニー」の取り組みをご紹介します。

後編に続く。つづきはこちらをご覧ください)