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変化するゲーム業界のマーケティングはCRMによって顧客体験を改善する

変化するゲーム業界のマーケティングはCRMによって顧客体験を改善する

PlayStation®を中心としたプラットフォームビジネスを展開しているソニー・インタラクティブエンタテインメント。ゲームを取り巻く環境、ゲームを楽しむユーザーの環境が変化する中、CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)活動を重視する同社が行っているマーケティング手法について紹介します。

ゲームを取り巻く環境の変化とアクティブユーザーを増やすためのCRM

ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)はPlayStation®を中心としたプラットフォームビジネスを展開している企業です。「PlayStation®4」(PS4®)を中心に、周辺機器、ゲームソフトやネットワークサービスなどの企画、開発、販売を行っています。ゲームを取り巻く環境、ゲームを楽しむユーザーの環境が変化する中、ユーザーのリテンションを上げるCRM活動が重要になっていると同社マーケティング部 井上 正之氏は話します。

かつて、家庭用ゲーム機はゲームソフトをパッケージで購入して遊ぶオフラインのハードウェアでした。しかし、PS4®をはじめとしたゲームのハードウェアは今やオンライン化し、これまで取得できなかったユーザーのデータが得られたり、ゲームプラットフォーム自体でユーザーとのコミュニケーションが可能になったことで、ユーザーに対するマーケティング手法やデータの活用などが大きく変化しています。

SIEのマーケティングの目的は大きく分けて二つあります。ひとつ目は、まだPS4®を持っていない人を獲得する活動。新しいゲームや、その人の嗜好にあったゲームを提案することでPS4®への興味を喚起し、商品を購入してもらうことです。

そしてもうひとつ欠かせないのが、既存ユーザーとのリレーションシップです。ゲームソフトを遊び終わったユーザーは、興味のあるソフトに出会えなくなると、いずれ非アクティブになってしまいます。そのため、顧客の嗜好に合ったゲームを提案してエンゲージメントの総量を増やすことで、リテンションを上げるといった、月間アクティブユーザーを増やすためのマーケティングが特に重要になっているのです。

PS4®ユーザーのカスタマージャーニー

コミュニケーションは体験そのもの ユーザーの”気持ちが動く瞬間”をとらえるマーケティングを目指す

このCRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)の課題に対して、SIEがSalesforce Marketing Cloudを導入したのが2015年でした、当初は主にパーソナライズ化されたeDMなどの配信に利用されていました。しかし、実際にはFacebookやTwitterにYoutubeやLINEといった各SNSやPlayStation.comという自社サイト、またPS4®そのもののインターフェースなど、多くの顧客接点が存在しています。今では、それらマルチチャネルでのコミュニケーションをどのように組み合わせてリテンションするかといった分析にも活用されています。

また直近では、自社の持っているタッチポイントだけでなく、Marketing CloudのAdvertising Studioを活用して広告でもリーチを増やしながらエンゲージメントも高めるという取り組みを行っています。Emailではセグメントされたユーザーに最適なコンテンツ、Twitterでは速報性の高いコンテンツ、BlogやWEBサイトでは興味をさらに深めるコンテンツ、とチャネルの特性に合わせた情報を展開し、本体を通じてそれらの情報がリマインドで届く、という仕組みを構築。デジタル上における受動的な媒体と能動的な媒体を統括してコミュニケーションをしています。「まだまだ試行錯誤をしているところではありますが、お客様とのエンゲージメントを高めて楽しんでいただくことにおいては、様々なタッチポイントでのコミュニケーションそのものが体験であると考え、最適化したうえでリーチを増やすというトライを始めています」と井上氏は話します。

ソニー・インタラクティブエンタテインメント マーケティング部 井上 正之氏

PlayStation®のフィロソフィは「PlayStation®がお客様にとって最高の遊び場であること」だと井上氏は言います。「そのためにはPlayStation®のためにお金を使っていただくというよりも、いかにしてお客様の貴重な時間を割いていただけるかが非常に重要になってきます」

様々なデバイスやメディアが存在する現在、消費者の可処分時間を獲得するというマーケティング目的においては、ゲームだけが競合ではありません。そんな環境の中、井上氏が目指すのは「ユーザーの気持ちを動かすマーケティング」です。「お客様の嗜好に合わせたOne to Oneマーケティングをトレンドの変化に対応しながら提供し、ゲームに対してユーザーの”気持ち”が動いたシグナルを、データではなくモーメントとしてとらえて、その瞬間に求められている情報・体験を提供することが、消費者にとっても企業にとっても意義のあるコミュニケーションになると考えています」そう井上氏は語りました。

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