Amy Dacey氏は、世界をリードする独立系のフルサービスPRエージェンシー、MWWPR社のIssues Management and Public Affairs部門EVP兼Managing Directorです。企業のPR活動を先導する同氏は、経営チームにおいても中心的な人物です。

MWWに入社する前は、民主党全国委員会でCEO(2014~2016年)を務めたほか、妊娠中絶合法化支持の女性民主党員の当選支援を行っている米国最大級の政治活動団体、Emily’s ListのExecutive Directorも務めていました。

今回、世界経済フォーラムの協力のもとで、第4次産業革命センターで開催された、Dreamforce主催のCEO Working Sessionsに参加する直前の彼女に話を聞くことができました。

―― 第4次産業革命という概念が定着するにつれ、企業はこれまでにも増して顧客の生活に影響を与えるようになっています。 AIのようなテクノロジーは、政府、NGO、企業などの組織と、その組織がサービスを提供する人々との関係に劇的な変化をもたらすことは間違いありません。

これによってビジネスリーダーの役割が拡大し、プライバシー、データ制御、偏見、不平等などのトピックに関する新しい疑問も生じてきます。 このチャレンジングな新しい世界を生き抜くために、CEOはどのように企業の舵取りをすべきなのでしょうか?

Dacey氏:第4次産業革命に入って、企業の役割だけでなく、企業に対する私たちの期待も大きく変わっています。この新たな局面において、CEOは政府や市民社会と連携し、協力して仕事を進めなければなりません。 協調なくして、生き残ることはもうできないのです。

顧客の期待が高まるにつれて、従業員が各自に期待される新しい仕事を理解し、その仕事を適切にこなすためのトレーニングやサポートを受けられるよう、CEOは取り計らう必要があるでしょう。

 

―― 企業と政府の協力とはどのようなものでしょうか。

Dacey氏:パートナーシップは間違いなく重要です。過去に業界で急速な変化が起きたとき、その変化のスピードは、業界の発展に影響を与えられる期間内に、政策体制と規制を敷くことができる程度のものでした。

しかし今、イノベーションのスピードがあまりに速いため、政府にとっては遅れることなく新しい産業と新しいイノベーション分野を規制することが課題となっています。これは社会が抱える真の課題です。

一方で、専門知識のほとんどは企業内にあります。政策立案者との協力体制が不可欠なのは、このためです。

AI、無人走行車、3Dプリントなどのイノベーションに対する規制を適切な方法で検討するために、企業と政府は対話する必要があります。 選出されたリーダーや国会議員と話をすると、彼らが企業側の専門知識を求めていることがわかります。

 

―― あなたは最近、「Corpsumer」に関する研究を公開しています。Corpsumerとは、価値観を共有する企業と足並みをそろえたいと考える人たちのことですが、社会における企業の役割について顧客が期待するものが変わりつつあることを示していると感じます。このことに関する見解をもう少し詳しく説明してもらえますか?

Dacey氏:Corpsumerは、企業の価値、活動、評判が、その企業が作る製品と同じくらい重要であると考えています。 Corpsumerは、人口の約3分の1を占め、さまざまな年齢と性別にわたっています。

その多くは、ミレニアル世代、X世代、フルタイム労働者であり、文化的に認められ、常に世界情勢を追っている、十分な教育を受けた高収入の人たちです。彼らは、企業がどのように反応しているのかを、価値観にもとづいて観察しています。そして、自分と似た価値観を反映するブランドにお金を使い、忠誠を示しています。

こうしたCorpsumerの67%は、自分の価値観を反映した製品を正規の値段で購入しています。

ビジネスの観点から言うと、顧客の価値観を理解し、企業が顧客と整合を取れるかどうか把握することが非常に重要です。 明らかになったのは、職場環境への投資であれ、環境に対する責任であれ、企業の価値観が購入の意思決定を左右するということです。

さらに、人々は、大手企業を単に良き企業市民としてではなく、変革推進者と見なすようになってきています。つまり、第4次産業革命を発展させ、それに対応するだけでなく、この革命を通じて社会の他の人々を導き、あらゆる人に進化の恩恵を授ける立役者として見ているのです。

 

―― AIは未来の労働力に大きな影響を与える可能性があります。人材の能力開発とトレーニングは、企業が第4次産業革命に一役買えそうな取り組みの1つです。従業員をこの新しい世界に備えさせるための投資を考えている企業に、何かアドバイスをいただけますか?

Dacey氏:私たちは第4次産業革命を未来の出来事のように話していますが、これは今日の人材教育に関わる課題でもあります。 人材は、進化するテクノロジーよりも重大な課題となるでしょう。

企業は、人材開発を進めながらともに労働力を保持するという、2つの役割を担わなければなりません。

繰り返しになりますが、これは、企業と社会のその他の人々とのパートナーシップに関する課題です。小規模な技能実習プログラムを作れば、別の業界からやってくる人々が、次のイノベーションの波に備えてスキルを磨くための助けになるかもしれません。

こうした技能実習は、労働力となる人々をすぐに獲得できる、洗練された短期間のプログラムになる可能性があります。例を挙げると、ドイツの技能研修プログラムは、従来の高等教育プログラムの枠にはまらない有益なトレーニングであり、非常に効果的です。

技能実習以外にも、企業と米国の高等教育機関との間に、より密接な協力関係を築くことが必要です。私たちが利用する学習課程には、未来の労働力養成に重要な役割を果たすSTEM教育が組み入れられているでしょうか?

既に、模範となるような社内プログラムを活用し、クリエイティブで新しい冒険的試みを行っている企業も存在します。例えば、Udacityは、AI、機械学習、その他の新技術に関連した教育プログラムを作る企業であり、他の企業と提携して、就職のためのスキルを身につけられるよう支援しています。 私たちは、トレーニングの拡大とトレーニングへの投資を、さまざまな方法で確実に行う必要があるのです。

 

―― 企業が新たな人材を採用して獲得すべき、または、既存の人材の中で開発すべき特別なスキルについて、あなたの意見を聞かせてください。  

Dacey氏:現在小学生の子供たちが将来行うであろう仕事の65%は、まだ存在さえしていないことを示唆する有名な統計資料(英語)があります。

この資料が示すように、人々が将来携わる特定の仕事を定義するのは簡単なことではありません。私たちにできることは、トレーニングと能力開発に明らかな変化をもたらす方法と、将来求められる可能性の高いスキルについて考えることです。

技能実習は、人々が今の仕事をするためだけでなく、カリキュラムをすばやく試して作成し、将来起こり得ることを前向きに考えるための機会を与える方法でもあると思います。環境は刻々と変化しているため、すばやい対応が必要です。私たちは米国の高等教育機関と協力して、未来の大学像を思い描く必要があります。  

ただし、問題解決、革新的思考、創造性に関するスキルも重要です。人々の考え方、仕事に対するアプローチの仕方、問題解決方法は、テクノロジーをさらに効率化する未来の仕事に役立つ特性なのです。

 

本ブログは、本社で発表された「Why it Makes Good Business Sense for Companies to Become Change Agents in Society」の抄訳であり、この記事は、第4次産業革命に関するTrailblazerスポットライトシリーズに掲載されています。第4次産業革命とは、世界経済フォーラムでKlaus Schwab氏が提唱した概念。同氏は、さまざまなテクノロジーが融合し、物理、デジタル、生物学の各領域の境が曖昧になってきた結果、経済体系と社会構造に根本的な変化が起きているとしています。 このシリーズでは、第4次産業革命がビジネス界に与える影響について、さまざまな最高責任者やソートリーダーに話を聞いています。 このシリーズの他の記事もぜひお読みください。