マーケティングの進化と
求められる一貫したカスタマーエクスペリエンス

 

マーケティングの世界は日進月歩です。かつてはラジオやテレビの中で宣伝が行われ、マスマーケティングが主流でした。しかし現在、スマートフォンを筆頭にしてインターネットの日常利用が当然となり、さらにスマート家電が多数登場していて、まさにデジタルの時代となっています。顧客はいつでも双方向のコミュニケーションを求め、必要なときに必要なものを手に入れようとします。あるサービスでそれが不可能なら、それが可能な別のサービスへと容易に移動していってしまいます。

Salesforceが一般の消費者向けに意識調査を行ったところ、84%もの消費者は、顧客体験が商品やサービスそのものと同じぐらい重要であると回答しています。また、半数以上の消費者がこれまでより良い顧客体験を求めて新しいサービスへ移動したことがあり、その2/3以上の消費者は、移動先のサービスでこれまで以上の消費をするだろうと回答しています。

それでは、この「顧客中心」の時代には、どのようなマーケティングが求められるのでしょうか?

その1つの回答が、「一貫した顧客体験」です。消費者の78%は、カスタマージャーニーの中で対応する部門が変わったとしても、一貫性のある対応を期待しています。(『第3版 コネクテッドカスタマーの最新事情​』より)しかしこれは容易なことではありません。

 

 

一般的に企業では、役割や機能を中心に組織が構成されています。そのため、消費者に対して一貫性のある対応を行うことはなかなか難しいのが現状です。たとえば、何らかのインシデントを抱えた顧客がカスタマーサポートと連絡を取り合っている中で、その顧客へのプロモーションをいったん停止することが重要だとわかっていても、対応できるケースは多くありません。

また、顧客中心のマーケティングでは顧客データが大きな意味を持ちます。しかしそのデータが企業内で分断されることによって、一貫した顧客体験は阻害されがちです。顧客を特定するためには、マーケティングや営業、カスタマーサービスといった異なるタッチポイントの個人データをひも付ける必要があり、だからこそマーケターには新しいデータソリューションが必要になります。

しかし、ただデータを1カ所に集約するだけでは不十分です。顧客についてのオンラインとオフラインのデータ両方が必要であり、そこから顧客がいま何を求めていて、どういう状況なのかを分析し、知る必要があります。顧客のインサイトを正確に把握することで最適なコミュニケーションをとることが可能となるのです。

 

Customer 360を活用してファンのカスタマーエクスペリエンスを構築
~WNBA インディアナ・フィーバー

 

そういった顧客の全方向的な把握を実現し、社内で一貫したデータ管理、分析を可能とするソリューションが「Customer 360」です。

Customer 360を使い、マーケターは1つの場所からあらゆる顧客データを参照して、カスタマーデータストラテジーを構築可能となります。マーケターはオンライン、オフラインを問わず顧客のプロファイルデータを参照したり、複雑なオーディエンスをセグメント化し、社内で共有したりできます。また、すべてのチャネルやシステムがリアルタイムにデータに接続されており、SalesforceのAI「Einstein」がこれまで気づかなかったようなインサイトをマーケターに提示してくれます。

インディアナ・フィーバーは、アメリカ・インディアナポリスに本拠地を置くWNBA(米女子バスケットリーグ)の1チームです。そして、ファンジャーニーの自動化やSNSでのカスタマーケアにCustomer 360を活用している先進企業でもあります。

同チームのマーケターは、Audience StudioInteraction Studioを連携し、ファンに対してパーソナライズされた一貫した顧客体験を構築しています。顧客とチームのタッチポイントを分析し、把握した顧客インサイトに応じて広告のパーソナライズを行い、WebサイトやSNSなど顧客の行動に最適なタッチポイントを通して、試合のチケットの販売はもちろん、会場周辺の食事の割引券の提供などまで、一歩踏み込んだオンサイトエンゲージメントを実現しています。

また、1日あたり41億通にも及ぶトランザクションメッセージをCustomer 360から一元送信することで、ファンのカスタマーエクスペリエンスを高め、つないでいく施策を行っています。

 

 

さらに、Salesforceのソリューションを活用して顧客エンゲージメントの再創造に取り組んでいる企業の事例を紹介しましょう。

 

パーソナライズされた顧客フォローでリピート率向上
~AOKIホールディングス

 

1958年に創業された株式会社AOKIホールディングスは、「ビジネスマンが日替わりでスーツを着られる世の中にする」をコンセプトに、ビジネススーツを中心としたファッション事業を展開し、現在では「人々のライフスタイルを輝かせる」をコンセプトに、ブライダル事業、エンターテインメント事業なども展開し、約3200万人の会員を抱えています。

同社のデジタル-CRM推進室はグループ全体のデジタルトランスフォーメーションを推進しています。その中で「Salesforce Marketing Cloud」を導入。その大きな目的は、グループ各社でバラバラに運用していた顧客データを統合して活用し、顧客1人1人にあった情報とサービスを、最適なタイミングとチャネルで提供するためです。この取り組みは2017年から開始されました。

ファッション事業(AOKIおよびORIHICA)では、ビジネススーツをメインに販売しているため、購入頻度が低く、顧客が初回購入したのちに2回目購入(F2)に転換する率が低く、次の来店および購入までいかにエンゲージメントを高めるかが課題でした。また、販売するのがスーツという特性上、購入し約1週間後にお直し(裾上げ)したスーツを受け取るために再来店すること、そして半年ごとのシーズンで商品が切り替わり、そのタイミングで再来店する可能性が高いことから、いかに1週間以内のF2転換率を高めるか、また半年以内のF3転換率を高めるかも課題でした。

そのため、顧客の商品購入直後のフォローのほか、引き取り来店時のフォロー、お礼とアンケートといったMAシナリオを展開していきました。

 

 

この結果、MAメール開封率は約30%と通常の3倍、CVRは約8%と通常の8倍の実績を積み上げられました。また、開封者はリピート率が4.0ポイント高く、開封回数が増えるごとにリピート率がアップすることを確認できました。さらに購入直後に送信しているアンケートの回答を分析すると、満足度の高い顧客は客単価が1.5倍高く、リピート率も12.0ポイント高いことが判明しました。そして、MAアンケートメールの結果、顧客満足度の高い店舗は売上高前年比が高く、逆に低い店舗は売上高前年比も低いことが把握できました。

同社は今後、顧客のデジタル接点の獲得強化を図りたいと考えています。約3200万人の顧客のうち、デジタル接点が獲得できているのは1割程度。そのため、アプリなどの刷新によって、より多くのデジタル接点を獲得することで、エンゲージメントを高めていきたいと考えています。また、Marketing CloudとService Cloudを連携して店舗スタッフのエンプロイーエンゲージメントの強化を図ることも考えています。顧客からもらう接客評価を店舗スタッフにフィードバックすることで、モチベーションアップやスキルアップを実現し、顧客満足度を高めていきたいと考えています。

さらに、3200万人の会員データをSalesforce DMPと連携し、顧客のライフステージに合わせてパーソナライズされた情報やサービスを提供していきたいと考えています。また、その際には他社の製品およびサービスについての情報を追加発信するような事業展開も計画しています。

 

コンテクストを把握して顧客構造を明らかにする
~JTB

 

株式会社JTBは1912年に創立され、およそ100年にわたって旅行事業をベースに、交流創造事業を手がけてきました。交流創造とはこの地球を舞台にして価値のある出会いを提供することです。そんな同社は、Web販売部の中で、データ・ドリブンを実現する戦略組織としてデータサイエンスセントラルを設立しました。同組織は顧客分析、マーケティングアクション、プライベートDMPによるインフラ整備を一気通貫して行う戦略組織で、Salesforce Marketing Cloudは主にマーケティングアクションに活用されています。

同社のデータ・ドリブンにおいては、コンテクストを切り口とした1to1コミュニケーション戦略と統計解析による各種アルゴリズム構築が主として実行されていて、Salesforce Marketing Cloudは特に前者「1to1コミュニケーション戦略」に活用されています。顧客を特定のコンテクスト(特徴)で分類して分析するのが目的で、同社はそのセグメントをどのように見極めて行くかが重要だと考えています。

たとえば「出張者」と思われる顧客について分析すると、平均よりも少し高単価の宿泊先を選ぶ集団の傾向が見られました。さらに内容について深堀りしてみると、高単価の宿泊者は出張先の宿泊施設選びに「禁煙」「女性専用」「アメニティ完備」といった女性ならではの視点があることがわかりました。

そこで「出張女子」というセグメントを作り、コンテクストに沿ったアプローチをすることで、CVRが145%アップしたという成果も出てきています。現在、こういったセグメントは50ほど発見されていて、同社はさらに分析を進めて2019年内には100項目ぐらいまで充実させていきたいと考えています。さらにこれらをSalesforceのMAのシナリオとして運用していく方針です。

 

 

同社は顧客をコンテクストで把握することによってコミュニケーション改善による売上寄与へ結びつけるとともに、この取り組みのゴールを「顧客構造を明らかにする」ことに置いています。そのために今後も、Salesforceのソリューションを活用し、オンラインはもとより、オフラインにおけるデータ分析をも進めて、顧客の特性に合ったコミュニケーションを行いたい考えです。

 

真のカスタマーエンゲージメントを実現するには

 

以前のマスマーケティングの時代では、どのように知ってもらうか、どのように手にしてもらうかという「きっかけづくり」に注力していました。

しかし今では、顧客の行動に合わせて情報提供することが不可欠になっています。さらに、データによる知見があれば、「行動する理由」にまで先回りができるようになります。これからのマーケティングでは、こうした「顧客の求めるサービスの理解と提供」が必要になってくるのです。