かつてないほどに顧客体験が重視される時代。顧客に満足を提供するために、優れたカスタマーサービスは欠かせません。コストセンターと位置づけられ、コストを低く抑えることが求められていたカスタマーサービス部門はいまや、競争力を維持するために変革が必要な部門と認識され、各社は、AIなど最新のITを取り入れ、理想のカスタマーサービスを追求しようとしています。

その中で、自社のレベルはどの程度なのか、他社はどんな課題を抱えているのか、などについて知りたいと考えている方も多いのではないでしょうか。そこで、Salesforceの調査機関であるSalesforce Researchが公開した、全世界3,500人を超えるカスタマーサービス部門のリーダーと担当者を調査したレポートをもとに、最新事情の興味深い一部を解説します。

 

意思決定者が考えるサービスに関する優先事項はなにか?

 

回答を寄せてくださった方のうち、全体の82%の意思決定者が、競争力を維持するためにカスタマーサービスを変革する必要があると回答しました。そして、彼らがいまもっとも優先すべきと考えている5つの項目は以下のような結果となりました。

 

サービス部門の意思決定者は、最も価値あるリソースである従業員に、業務をこなすためだけのスキルではなく、顧客の期待へ応えることができるスキルの習得を最優先事項と捉えているようです。

意思決定者が変革を目指すに伴い、サービス担当者の仕事の質も変わってきたようです。71%のサービス担当者が、自分の役割が2年前より戦略的になったと回答しました。組織のIT化が加速している傾向も見えます。情報をリアルタイムに共有できるプラットフォームがその中心で、先進企業であればあるほど、モバイルワーカー向けのテクノロジー利用が進んでいることがわかりました。情報共有プラットフォームを持つ先進企業は、情報を他部署と連携することで成果を挙げていることも特徴です。

AIについてはどうでしょう。78%のサービス部門の意思決定者は、「AI が人間のやり取りに取って代わることはない」と回答した一方、27%のサービス担当者は、「AI が自分の仕事を奪うのではないか」と不安に感じているようです。ただし、71%のサービス担当者は「AI が仕事に役立つ」と考えています。現在、顕著な成果を挙げているのはAI チャットボットで、すでに23%の組織が使用し、今後1年半以内に導入予定の組織は31%です。今回の調査から、パフォーマンスの高いサービス組織のAI チャットボットの導入率は、パフォーマンスの低い組織の2.1倍であることがわかりました。そして、ハイパフォーマンス組織から担当者が居なくなったという話は聞こえてきません。AIを使って仕事をする中で、人間とAIのきれいな棲み分けが出来上がってくるかもしれません。

 

日本の取り組みの傾向は?

 

国別の結果から日本についても見て行きましょう。日本からは275名のカスタマーサービスプロフェッショナルが回答を寄せてくれました。

日本においては、「新たなテクノロジーによって自社のサービス組織に対する顧客の期待が大きく変わりつつある」と感じているかどうかを問う質問に対して、79%がYesと答えています。これは先進国の中では高めの数値です。

さらに、他の回答からは、日本におけるITの整備が遅れていることが明らかになっています。「仕事に必要なすべてのツールやテクノロジーが与えられている」と回答したのは45%にすぎず、「仕事に必要なすべての情報を1 つの画面で確認できる」ではわずか26%です。「デジタルチャネルを通じたケース数が増加している」にYesと回答したのは48%で、調査対象となった国で唯一5割を下回りました。その状況を裏付けるかのように、86%のカスタマーサービス部門の責任者が、「競争力を維持するために自社のカスタマーサービスを変革する必要がある」と答えました。全世界の回答者の82%が同様に答えていますから、日本の意思決定者の危機意識は世界平均を上回っていることがわかります。

これらの結果から、日本市場において「顧客からの期待は高まっている」という現状認識はあるものの、それに見合ったサービスを提供できておらず、変革の必要性を感じている意思決定者が多いという実情が浮かび上がってきました。

また、将来を見据えたとき、カスタマーサービスの変革には時間、人材、リソースへの投資が必要だという理解が経営幹部の間に広まっています。その証拠に、全体的な調査結果では、70%近くの意思決定者が「経営幹部はカスタマーサービス業務の近代化に必要な予算を割り当てている」と回答しています。さらに、大多数のサービスチームは次年度の予算増額を予想しています。しかしながら、日本では、これまで不可避のコストセンターと見なされてきた部署を戦略的な資産に変換するのは容易ではなく、世界に比べるとカスタマーサービスへの投資のスピードが少々劣っているのかもしれません。

調査では、全体の傾向、国別の傾向に加えて、業種別の傾向もまとめられています。じっくりと読み込んで、自社の今後のカスタマーサービス戦略について検討する際の一助にしていただければ幸いです。ダウンロードは、「こちら」からどうぞ。