金融機関のIT予算は増加しており、その増加分はデジタルトランスフォーメーション (DX)の実現のために使われています。EY(アーンスト・アンド・ヤング)が発表した『2018 Global Banking Outlook(2018年グローバルバンキングの展望:英語)』によれば、59%の銀行が今後12か月以内にIT予算を10%以上増額する予定であり、85%の銀行がデジタルトランスフォーメーションプログラムの導入をビジネスの最優先課題として挙げています。

デジタルトランスフォーメーションとは、従来からの問題を最新のテクノロジーによって解決することを意味し、うまくいけば、従業員、経営者、顧客、株主などすべてのステークホルダーがその恩恵を受けます。

デジタルトランスフォーメーションの効果を分析する方法の1つに「3Cモデル」があります。日本の組織理論家である大前研一氏が考案したこの3Cモデルは、Company(自社ブランド)、Customer(顧客)、Competitor(競合相手)という3つの成功要因に着目するビジネス戦略のフレームワークです。  

 

自社ブランド 

 

それではデジタルトランスフォーメーションは自社ブランドにどのような影響を及ぼすでしょうか?この影響には、自動化への流れや生産性向上のような明らかなものだけでなく、企業文化の変化も含まれます(「Culture(文化)」や「Change(変化)」など、さらに"C"が増えるわけです)。 

テクノロジーにより企業は効率的な事業運営が可能となります。DocuSign社 – 電子署名技術のプロバイダーでありSalesforce AppExchangeのパートナー – は、従業員の作業効率をアップするとともに、書類の印刷・ファックス・スキャン、さらに翌日配送にかかる費用を削減します。その顧客であるUBS Wealth Management社は、最もよく使われる5つの書類形式の平均処理時間を11日から13分に短縮し、アドバイザーの作業時間を年におよそ5万1,000時間節約しました。

さらに、デジタルファーストが進んだ企業の多くで、人材採用の簡素化、新人研修の迅速化、定着率の向上などの利点が見られます。「当組合の従業員は、加盟者とのやり取りのためにより優れたツールを導入するよう常に求めています。簡素で柔軟なユーザー体験の提供が競争優位の確保につながっています」と語るのは、カナダ最大の加盟者数を誇る信用組合Coast Capital Savings Credit Unionのリテール担当シニアバイスプレジデントLisa Colangelo氏です。

生産性ツールの導入によりコラボレーションが促進され、従業員の意欲や士気も高まります。熱意ある人材を抱えた企業の1株当たり利益が同業他社を147%上回っているのは当然と言えるでしょう。

 

顧客

 

デジタル化の推進は顧客にはどのような影響を与えるでしょうか?ITへの投資が、CSATや客単価、顧客減少率の低下など、具体的で計測可能な指標の改善に直接結びつくのが理想的です。外部の調査会社、社内の予想、ベンダーの顧客調査などを通じて、期待される増分利益額と必要な投資額を見積もりましょう。

フィンテック企業やAmazonなどの新興勢力に市場シェアを奪われつつある金融機関は、最近、顧客中心のビジネスモデルを優先事項としています。優れた顧客体験(カスタマーエクスペリエンス )を提供している銀行は、口コミによって顧客が集まり、世帯あたりの平均商品数が増加し、顧客を維持しています。Forrester Researchでは、顧客体験指標と売上高増加の直接的な関係性を数値化しています。(詳しくはこちら(英語))

以下の表に示されているように、銀行業界では、顧客体験指数が1ポイント上がっただけで、顧客あたりの年間収益が8~10ドル増加する可能性もあります。

 

 

競合相手

 

最後に、競合相手のデジタルトランスフォーメーションはどの程度進んでおり、この分野への投資で後手に回るリスクはどこにあるでしょうか?デジタルトランスフォーメーションを進めることで競合相手から市場シェアを奪うことができるだけでなく、売上の減少も防ぐことができます。現在では、AI(人工知能)製品により顧客の減少リスクを分析できるため、サービス担当者が事前に働きかけを行うことで損失を回避できます。 

技術プロジェクトで優れたソフトウェア会社と提携することにより、業界トレンドや経営幹部の最大の懸念事項、業界固有の画期的製品のロードマップなどについて独自の洞察が得られます。

デジタルトランスフォーメーションの影響はさまざまな視点から評価することができます。そのほかに参考になるフレームワークとしては、 People(人材)、Process(組織の一連の動き)、Product(製品)の3つのP や経営コンサルタント会社 Bain & Companyによる「B2Bにおける価値要素(英語)」の分析などが挙げられます。 

 

デジタルトランスフォーメーションに必要なのは、ソフトウェアやサービスへの投資だけではありません。文化を変えるための準備や、成長型マインドセットを持って実行する能力、経営者の承認なども必要になります。このフレームワークを用いた考察は、 年間予算の編成や戦略の立案の際など、年間を通じていつでも必要なときに行うとよいでしょう。