企業を取り巻く競争が激化する現代、新規事業を考えるとき「オープンイノベーション」は欠かせないキーワードです。それを裏付けるように近年、「オープンイノベーション」という言葉を冠したさまざまな研究会やイベントなど規模の大小を問わず開催され、活発な活動がおこなわれています。いまや自社リソースだけではなく世界中のリソースを活用しなければ、新しい顧客価値の創造はなし得ない、企業の成長にとってもはや必須の戦略とまでいわれている「オープンイノベーション」について、現状の課題や今後の可能性についてご紹介します。

 

ビジネスの成長に不可欠な「オープンイノベーション」

「オープンイノベーション」という概念の重要性を最初に唱えたのは、米国の研究者であるヘンリー・チェブスロウ氏です。2003年のチェブスロウ氏の著書『Open Innovation』には、「組織内部のイノベーションを促進するために、意図的かつ積極的に内部と外部の技術やアイデアなどの資源の流出入を活用し、その結果組織内で創出したイノベーションを組織外に展開する市場機会を増やすことである」と書かれています。

1980〜1990年代、世界は知的財産権の管理を優先して、自社技術を保護する「自前主義」が世界のイノベーションを牽引してきました。しかし1990年代以降、IT技術が急速に発展を遂げると、自前主義いわゆるクローズドイノベーションの限界がおとずれます。製品がより高度化・複雑化し、新興国企業の成長に伴う競争の激化や、プロダクト・ライフサイクルの短期化などが主な要因です。このような背景のもと、冒頭のチェスブロウ氏のオープンイノベーションという概念が生まれたのです。

そしていま世界的な潮流として、大企業とベンチャー企業の協業や連携が急速に増加し始めています。日本においても同様です。大手企業、中小企業、スタートアップ企業、自治体、大学や研究機関などが集い交流、つまりコラボレーションしながら新たな技術・産業を生み出すという取り組みが増えてきているのです。

経済産業省が2018年6月にまとめた「オープンイノベーション白書第二版」には、「自社内だけでなく外部の技術の探索や、組織との連携が効率的に行えるしくみが整いつつ」あり、「オープンイノベーションへの取り組みが成熟しつつある」とあります。これはオープンイノベーションが実際に有効な選択肢であると捉えられ、ビジネスを拡大するなかで重要な要素であると浸透したからでしょう。

 

コミュニティから「オープンイノベーション」へ

同じく「オープンイノベーション白書第二版」では、研究開発の手法としてオープンイノベーションをあげる企業が増加していることや、外部との連携を進めるための組織の設置が増えていることも紹介されています。しかし、欧米企業に比べると活動の実施率はまだまだ低く、起業家やスタートアップをパートナーにする比率にも大きな差があると付け加えます。

社内リソースだけでは発想が難しかったアイデアの実現など成果を出している企業がぞくぞくと登場する一方で、なかなか成果をあげられない企業もまだまだあるのです。同白書では、企業におけるオープンイノベーションの成功を阻む課題として「組織戦略」「組織のオペレーション」、「人材や文化・風土」という3つをあげています。

たとえば「組織のオペレーション」とは、オープンイノベーション専門部門が設置されていない、もしくは設置されているが機能していないという“組織”そのものの問題。またはビジネスコンテストやハッカソン・アイデアソンなど新たな仕組みを活用できていない、連携先を見つけられない、協業先とスピード感があわないなどの“外部ネットワーク”の問題。そして、社内の理解やネットワーク、コミュニティ作りがうまく動いていないという“内部”の問題などです。

これらの課題は裏を返せば、専門部門と社内外ネットワークのコミュニティの存在は、オープンイノベーションを成功させるためには欠かせず、外部をいかに巻き込み、機能的なコミュニティを形成するかが、成否を左右するポイントだといっているのです。

 

日本のビジネスを成長させる新・経済圏を

Salesforceにおいても、長年コミュニティづくりに積極的に取り組んできました。現在、全世界に1000を超えるコミュニティグループが存在し、毎月300を超えるグループがイベントを開催しており、とともにSalesforceについて学び、悩みを相談し合い、ネットワークを広げています。そのきっかけは約10年前、ユーザーの要望でSalesforceのカスタマイズを学ぶ座学形式の講座を始めたこと。その後、参加できないユーザーにも同様の内容を提供するために、オンライン講座もスタート。その後、たくさんのお客様やパートナー、開発者のみなさんの協力のもと、オンラインとオフラインを統合した「Salesforce Trailblazer Community」へと成長を遂げました。

このようなコミュニティ、パートナー、ユーザーとのコラボレーションを実現によって、Salesforceは世界市場でビジネスと雇用の拡大を可能にしています。IDCが行った最新の調査では、Salesforceとパートナーのエコシステムで形成される「Salesforceエコノミー」が、2019年から2024年の5年間に、日本で約20万人、世界では約420万人の新規雇用と、日本で1,090億ドル以上、世界では1兆2,000億ドル以上の新しいビジネス収益を創出するだろうと報告しています。さらに日本では、新規雇用の約20万人の経済活動によって、24.6万人以上の間接雇用の創出も促進するだろうと推定しています。

 ■ Salesforceエコノミーの業界経済的メリット(IDC調査より)

  • 金融サービス業界…2,240億ドルの新規収益、2024年までに730,900人の新規雇用を創出
  • 製造業界…2,117億ドルの新規収益、2024年までに765,800人の新規雇用を創出
  • 小売業界…1,348億ドルの新規収益、2024年までに539,700人の新規雇用を創出
  • 通信およびメディア業界…1,297億ドルの新規収益、2024年までに473,800人の新規雇用創出
  • ヘルスケアおよびライフサイエンス業界…685億ドルの新規収益、2024年までに222,600人の新規雇用創出
  • 行政・政府…647億ドルの新規収益、2024年までに254,400人の新規雇用創出

こうした巨大なSalesforceのグローバルエコシステムは、ビジネスパートナーやSalesforceの実装に関連する企業など、数多くのステークホルダーによって形成されています。まさに巨大なネットワーク、コミュニティが土台になっているのです。

 

まずはステークホルダーとのコミュニティづくりから

Salesforceでは、顧客やパートナーとの豊かなコラボレーションを可能にするために、オンラインプラットフォーム「Community Cloud」を提供しています。Community Cloudを活用すれば、ビジネスに関連する従業員と流通業者、再販業者、納入業者をつなぎ販売を促進したり、販売活動の内容や取り組みおよびワークフローを一元管理したりと、さまざまな目的で活用できます。自社が思い描くコミュニティの姿に合わせて柔軟にカスタマイズしたり、既存の業務システムとの連携なども自在に行うこともできます。

コミュニティで顧客やパートナーとより深くつながることによって貴重なインサイトを得られるだけでなく、透明性の高いプロセスで新たなコラボレーションを生み出すこともできるでしょう。

「オープンイノベーション」に取り組みたいけれど、まず何から始めればよいか…。そうお悩みの方は、まずはステークホルダーのコミュニティ構築からスタートしてはいかがでしょうか。

 

出典:

  • ヘンリー チェスブロウ  (2004年11月10日)「OPEN INNOVATION―ハーバード流イノベーション戦略のすべて (Harvard business school press)」(大前 恵一朗 翻訳)産能大出版部 
  • 経済産業省(2018年6月27日)「オープンイノベーション白書第二版 」
  • IDC White Paper sponsored by Salesforce, “The Salesforce Economy in the Next Five Years: 4.2 Million New Jobs, $1.2 Trillion of New Business Revenues,” October 2019. Ecosystem includes all companies that provide the products and services that surround a Salesforce implementation.