本ブログは米国で発表したThe Salesforce 7: Retail Predictions for 2020の翻訳版です。著者のRob Garfは、インダストリー戦略およびインサイトを担当するVice Presidentであり、Salesforceの小売業向けクライアントアドバイザリーボードの議長を務めています。

 
今年で5回目となるSalesforceの予測シリーズへようこそ。このシリーズでは、グローバルな対象分野の専門家が2020年の小売業界におけるコマースの方向性を予測しています。
早速、予測を始めさせてください。私のことを知っている方なら「ショッピングの最前線」の概念について話すのが好きだということもご存知かもしれません。それは消費者はもはや小売業者が所有する物理的・デジタル的資産の4つの壁の中で買い物をするだけではないという考えのことです。
消費者はエンゲージメントの方法を選択し、アプリ、ソーシャルメディア、メッセージングプラットフォーム、音声、ゲーム機などの利用が増えています。彼らはただ見ているだけでなく、デジタル仲介業者からの購入も行っています。実際、当社の調査によれば、2020年には、すべてのデジタル・トランザクションの9%がこれらの新たな接点で行われることがわかっています。詳しくはこちら(英語)。成功している企業は、価格、プロモーション、在庫などの自社ブランドを、消費者が集まるあらゆる場所に売り込みます。例としてアシックス社を取り上げてみましょう。フィットネスアプリRunkeeperの買収で、ランナーがマラソンや5Kに登録するブランドを押し進めることで、履物メーカーから理想のライフスタイルを実現するための目的地へと進化しています。
私の予想では、成功するブランドは、ショッピングの先端までその動作を同期させ、シンジケート組織にし続けるでしょう。
この記事では、さらに6つの優れた予測についてご紹介します。2020年になった後で見れば、全て正解となっているでしょうか。時間が経てばわかることですが、私はイエスに賭けています。
 

1. コミュニティや体験をつくることがさらに重要になる

James Johnson, デイレクター, リテール インダストリー ストラテジー

ショッピングは実用的なニーズを満たすだけではありません。顧客は、ワクワク感や認知、社会的つながり、信頼性を求めています。先進的な小売業者は、こうしたニーズを満たすためのコミュニティと体験を発展させ続ける必要があります。

私たちは差別化された製品や体験が買い物客を引きつけると知っています。最近公開したConnected Shoppers Report(英語)によると、消費者、特にZ世代の人たちは、棚やレジに並んでいる商品だけでなく、ユニークな体験を提供する店を求めていることがわかっています。Z世代の買い物客の51%はポップアップストア(空き店舗などに突如出店し、一定期間で消えてしまう店舗)に参加したことがあり、42%は店舗内での体験型のソーシャルイベントやデモに参加したことがあると回答しています。

真のコミュニティ感覚を作り出せる小売業者は、差別化を図り、最終的にはより深い関係を築き、販売とロイヤリティを促進することができるのです。

約15,000人の美容ファンが参加する3日間のイベントであり、メイクアップのディズニーランド、MECCALANDをチェックしてみましょう。

化粧品小売業のMECCAは、倉庫スペースを完璧なインスタグラムの背景、ヘアスタイリング、メイクアップを教えてくれるチュートリアル、専門家によるパネル、マスタークラスなどの驚くべき体験グループに変えました。そしてこれらはすべて、典型的なきらびやかなショッピングモールの外で提供されたのです。そして、現実世界で顧客はメイクについて学んだり、彼らのお気に入りの製品を購入しながら、仲間のファンと交流することができます。

顧客は依然として、価値と利便性にある程度の衛生管理を期待しているものの、体験の提供は差別化要因としての役割を果たし続けるでしょう。

 

2. 小売におけるストーリーテリングは独自のものになる

Vinod Kumar, プロダクトマネージメントディレクター, コマースインテリジェンス

小売業が消費者に対し、すばらしい製品に加えてすばらしい体験を提供するようになるにつれて、ストーリーテリングの技術は、すべての体験を構築するための基盤になるでしょう。結局のところ、まとまりのない物語や物語のない体験は、利益よりも害をもたらす可能性がある、切り離された断片の寄せ集めのようにしか見えないのです。

しかしながら課題もあります。その体験がが新鮮で、関連性があり、まとまりのあるストーリーでブランドと結びついている必要があるのです。2019年、私たちは失敗したストーリーテリングの例をいくつか目にしました。私が個人的に最も心を痛めているのは 「ターミネーター」 シリーズです。ジェームズ・キャメロン監督の復帰を描いたこの映画の製作費は1億8500万ドルでしたが、公開週の興行収入はわずか2900万ドルでした。これは、古い公式がどんなに象徴的であっても、もはや機能しないという警鐘です。過去にうまくいったことに後戻りして安易な道をたどるブランドは、現在の消費者との関連性を失うことになるでしょう。

2020年、ブランドは消費者のマインドシェアを獲得するために最も新鮮で、関連性があり、共感を呼ぶストーリーを競い合い、それを維持することになるでしょう。クリエイティブ、コンテンツ、コマースをうまく融合させたブランドが勝者となるでしょう。

 

3. インクルーシビティが優勢

Kristyn Levine, VP, カスタマーサクセス , デジタルカスタマーエクスペリエンス 

2020年は、より多くの小売業者がオンラインだけでなく店舗でも、より幅広いサイズの商品を提供するようになるでしょう。それはなぜか。statista(統計に関するドイツのオンラインポータル)によれば、プラスサイズのファッションの市場価値は、アメリカだけで220億ドル以上であり、アメリカ女性の約70%が14かそれ以上のサイズを着用しています。そしてこの割合は上がり続けているのです。

近年、多くのブランドや小売業者が、より多くのサイズを取り込む動きを見せています。TorridやAshley Stewart、Lands’End、adidasのような既存メーカーに加え、Vineyard VinesやJ.Crew、LOFT、Veronica Beard、そしてAnthropologieが新たに加わりました。
今後もより多くのブランドや小売業者がオンラインでの選択肢を拡大して規模を拡大し、店舗の規模も拡大していくだろうと私は予測してます。今日、12サイズを超える買い物客が「レギュラーサイズ」の衣料品店に足を踏み入れようとするためには、存在感と在庫が著しく不足しています。選択の幅を広げることで、こうした顧客とその売上を店舗に引き入れることができるのです。それは、ブランドロイヤリティとエバンジェリズムを促し、拡大を望むブランドの市場シェアにプラスの影響を与えてくれるでしょう。
 

4. 在庫数の削減=より大きく、より良い結果に

Premal Mehta, シニアプロダクトマネージャー, コマースエクスペリエンス・オーダーマネジメント, CSG

私は、お客様に試着してもらい、自宅やオフィスに便利に届けるブティック型のお店が増えるだろうと予測しています。
小売業者は在庫を減らし、代わりにカスタマーエクスペリエンス (顧客体験)とクライアンテリング(顧客の趣向に基づいたセールス技術)に焦点を当てることで(アパレルブランドのBonobosや在庫を持たない百貨店、Nordstrom Localを思い出してください)、例えば、パーソナルスタイリスト、洋服の仕立て、コーヒーバーなどの顧客との個人的な関わりといった追加サービスを提供することで、店内での体験に革命を起こすことができるのです。顧客はモバイル機器を介して店舗で商品を注文し、自宅に配達してもらうか、店舗で受け取る日を選ぶかを選択することができ、利便性と優れたショッピング体験、それぞれの利点をを組み合わせることができるのです。
 

5. 生き残るにはより多くの革新、想像力、効率性が必要

Jamie Merrick, ディレクター, インダストリーストラテジー・インサイト

みなさんご存知のように小売業界のすべてがバラ色というわけではないため、業界ではいつものことですが生き残るためには適応することが重要です。小売業者間の革新的なパートナーシップがますます増え、業界外の企業やブランドとのパートナーシップがさらに重要になるでしょう。

また、これは新しい現象ではありませんが、中核事業からの成長が停滞する中で、行動の緊急性が高まっています。英国最大のペット用品小売業者 Pets at Homeは、犬のリードやボウルなどの物理的な製品を販売するだけでなく、グルーミングや獣医などのペット向けサービスを提供することで、売り上げを伸ばし、収益源を多様化を実現しています。

そして小売業者はさらに大きな賭けに出そうです。年末の素晴らしい例がMarks&Spencerによる「都市農業」の展開です。現代の買い物客のサステナビリティと利便性の要件を満たしています。また、洋服レンタルサービスのRent The Runwayのサービスは、疲れた旅行者にホテル(この場合は高級ブランドのWホテル)にバックを持たずに出かけ、チェックイン時にオーダーしておいた服を受け取ると言う選択肢を提供しています。
真に有用で便利なサービスから、認知度を高め、足がかりを得て、追加の収益を生み出すことができることはすばらしいことですが、それができるのは、想像力に富み、運用面で敏捷な人だけです。これに該当する人たちでさえ、常に正しいとは限りませんが、早めに挑戦して失敗することも、プロセスにおける重要な部分です。
 

6. 買い物客たちは「サステナビリティ」に注目

Neeracha Taychakhoonavudh, シニアバイスプレジデント, インダストリーズ

今年のホリデーシーズンは、消費者の信頼と小売における業績は好調でしたが、私たちはまだグリーン経済を生み出す新たな波についても話していません。消費者の関心度が高まっているのがサステナビリティ(持続可能性)です。これまで以上に多くの人たちが、環境保全に対する役割を評価するようになっています。1万人の買い物客を対象にしたグローバル調査によると、65%の買い物客が、昨年よりもサステナビリティに関心があると答えています。

これは小売業にとって何を意味するのでしょう?今年は、サステナブルな小売業の新たな時代の幕開けとなるでしょう。アメリカのアパレル企業Madewell(メイドウェル)のデニムリサイクルプログラムのような革新的で賢いリサイクルの方法を考えてみてください。これは消費者が使用済みジーンズを一本(どんなブランドでも)20ドルのクレジットで寄付するというものです。あるいは、厳選した古着をオンラインで販売するthredUP(スレッドアップ)は、ファッション再販売市場を提供することで、毎年埋め立て地に送られる260億ポンドの衣類を削減しています。また、包装廃棄物の削減や二酸化炭素排出量の削減にも力を入れている企業もあります。L’Oreal社を例にあげてみましょう。この印象的な健康と美容のブランドは、環境の持続可能性に対するブランドの中心的な使命を担っています。

Trailblazer(トレイルブレイザー:先駆者)はすでに、よりサステナブルな未来を先導しています。2020年、消費者は環境に真剣に取り組むブランドや小売業者に注目するようになるでしょう。

以上が私たちの2020年の小売業に関する予測です。
専門家による詳細な情報については、当社ブログをご覧ください。今年もみなさんのビジネスに役立つ最新情報をお届けして参ります。