Leading Through Change  - いま、私たちができること。- 

オンライン診療やデータ分析、デジタルエンゲージメントといった言葉は、医療の世界では決して新しいものではありません。事実、2020年はじめには多くの医療機関がこれらを重要なデジタル戦略に挙げ、「できれば実現したいもの」としていました。

しかし、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)によって、こうしたデジタル戦略の導入が急速に進み、「欠かせないもの」となりました。その背景には次のような事情があります。

  • 感染者数が多いエリアの病院と医療機関には新型コロナウイルス感染症の患者が殺到し、スペースや必需品、スタッフが大幅に不足しました。公園に野外病院が設営される様子や、前線で働く医療従事者が使う個人用防護具の不足、緊急性の低い手術の延期を伝えるニュース(英語)が連日報道されました。

  • 医療機関や保険会社のコールセンターへの問い合わせ件数が急増しました。各組織のWebサイトにも、サービスの変更内容や、利用できる検査リソース、健康保険の補償範囲、最寄りの契約医療機関の情報を求める人のアクセスが殺到しました。

今回の記事では、Salesforceのお客様やパートナー様がどのようにデジタル戦略を取り入れ、リソース不足に対応しながら患者をトリアージし、支援できるようにしたのか、事例をご紹介します。

 

オンライン診療を活用して患者の診断と治療をする

パンデミックの発生以降、オンライン診療は人々の命を救い、医療機関のシステムや設備の過負荷を防ぎ、リソース不足を回避するために欠かせないテクノロジーになっています。当社のお客様は短期間のうちにオンライン診療ソリューションの導入と拡張を行い、リモートでの診察、振り分け、治療を実現し、重症化リスクが高い患者や対面治療が必要な患者のみ来院してもらうようにしました。ここからは、特に注目すべき事例をいくつかご紹介します。

 

インタラクティブな新型コロナウイルス診断

トロントのウイメンズカレッジ病院は、陽性かどうかを自己診断できるオンラインシステムをわずか4日で立ち上げました。(詳しくはこちら(英語))。このシステムは、ただ不安だからという理由で外来診療に来る人の数を減らすことにつながり、オンタリオ州全体の医療施設にとってかけがえのない存在になっています。重症化リスクが高いとシステムで診断されれば、来院が指示され、その受診者のデータが患者登録システムに入力されます。

 

医療にデジタルを活用

MIMIT Healthは、遠隔医療システムを72時間足らずで導入しました。これにより、複数の診療科にまたがる医師グループが、今の状況であらゆる患者に期待される医療サービスを、必要な場所で必要なときに継続的に提供できるようになりました。また、チャットボットを利用して、患者の問い合わせの振り分けとトリアージを行っています。さらに、Health Cloudのケアプランで、ケアコーディネーターを交えながら患者とオンラインで対話できるようにしています。

 

データにもとづくアプリケーションでリソースの割り当てを強化

公衆衛生の危機に直面するなかで、迅速な対応を行うには、リアルタイムなデータ分析とインサイトが非常に重要です。新型コロナウイルス感染症の患者が数多く出ている地域では、医療機関はデータにもとづくアプリケーションを使ってリソースと必需品の確認、追跡、割り当てを行う必要があります。

当社のテクノロジーパートナーであるTraction on Demand社(英語)は、Thrive Health社と協力して、Salesforceを基盤とする救命救急診療リソース管理アプリを立ち上げました。このアプリによって、救命救急のスタッフや、人工呼吸器や個人用防護具などの物資を正確に管理して配布し、新型コロナウイルス対応チームが今まさに必要としているニーズに応えることができます。

優れたリソース管理の事例としてもう1つ紹介したいのが、ポーランドの取り組みです。ウイルスが拡大するなか、国民は役に立つことをしたいと強く思っていましたが、何が必要とされ、それをどう提供すればいいのかわかりませんでした。そこで、複数のNGOと公立大学がSalesforceパートナーのClorce社(英語)と協力し、病院が国民に物資をリクエストできるWebサイト(ポーランド語)を立ち上げました。このWebサイトは、病院に物資を届けるために、寄付する人とコーディネーターの橋渡しをします。ポーランドでは現在、全国の3分の1以上の病院がこのポータルを利用しています。

 

デジタルエンゲージメントでプロセスを自動化する

大量の問い合わせを受けているコールセンターの負担を軽減するために、医療機関と保険会社がデジタルエンゲージメントを強化し、各種プロセスを自動化して1つのプラットフォーム上で連携させています。

 

コールセンター

Salesforceは、緊急時対応チームと医療管理チームに寄せられる大量の問い合わせをさばくための緊急時対応コールセンター用ソリューション(英語)を作成しました。Piedmont Healthcare(英語)などの医療機関は、さらに踏み込んで、陽性者の追跡とトリアージに役立つコールセンター用の台本とダッシュボードを用意しています。Piedmont Healthcareはこのシステムの運用を開始してから5時間足らずで、150以上の問い合わせの登録とトリアージを行いました。

 

セルフサービスチャネル

オンラインリソースセンターは、新型コロナウイルス関連情報を一般向けに提供するために欠かせないものになっています。保険会社と医療機関は、利用者がいくつかの質問に答えるとその回答にもとづいてスクリーニングを行い、適切な治療を決定する自己診断ツールを立ち上げています。チャットボットも活用が進んでおり、よくある質問に回答する、適切な窓口(検査センター、オンライン診療、緊急通報)に患者を転送するなどの場面で重要な役割を果たしています。

 

トレーニングとオンボーディング

感染が拡大するなかで、実は以前からあったスタッフ不足の問題にスポットが当たるようになり、医療従事者の雇用とオンボーディングにおける競争が激しさを増しています。オンデマンドの学習プラットフォームを使えば、短期間かつ大規模に新規スタッフのスキル向上を実現できます。また、最新の安全手順と検査手順を効率的に配布し、確実に認定を得ることができます。

 

変化のきっかけ

新型コロナウイルスの感染拡大は、遠隔医療やオンライン診療、デジタルエンゲージメントといったトレンドの導入を加速させるきっかけになっています。

感染拡大の始まりから3か月で起きた変化を振り返り、これから1年、1年半、さらにその先に向けて、次のフェーズを切り抜けるために活かせる学びはあるでしょうか。

確かに言えるのは、世界中の医療機関は将来の危機に備えてサプライチェーンを再構築する必要があることです。さらに、治療の提供に関する長期戦略を見直し、より多くの患者にオンライン診療を提供できるようにする必要があります。

新たなストレス要因の継続的な再評価と迅速なリソース割り当てを行うにはリアルタイム分析が必要で、そのためには相互運用できるシームレスなデータ共有が欠かせません。

そして、組織がデータを活用する際には、システム全体を見る視点が重要になります。治療の提供にかかわる基本的な要素(医療スタッフ、必需品、スペース)を俯瞰して分析することで、適切な患者に適切なタイミングと環境で治療を提供できるようになります。

Salesforceでは、新型コロナウイルスの影響を受けている医療組織やライフサイエンス業界向けに治療対応のためのソリューションを提供しています。このソリューションは短期間で展開できるため、必要な人にすばやく支援をお届けできます。