人の集まる場所を避けてソーシャルディスタンスを保つ、新たな習慣が定着した2020年、私たちの生活は大きく変化しました。ビジネスにおいても、従来と異なる環境下で様々な業界・業種が逆風を受けた一方、働き方改革を目的に「場所を選ばないワークスタイル」への転換を始めていた企業では「従業員と事業を守る手段」として、テレワークの導入が一気に加速した例もみられます。

「新しい生活様式」が日常化する中、“密”にならない執務環境を確保し、時代のニーズに合わせたアップデートを進めつつ、安定的な事業継続を実現するには、クラウドの活用が欠かせません。そこで今回は、SalesforceのService Cloudを活用し、顧客対応部門での在宅勤務を実現した3社の事例をピックアップします。

2回目となる本記事では、24時間対応のテクニカルサポートチームを擁する株式会社セゾン情報システムズのケースをご紹介します。(1回目の未来工業株式会社はこちら)

 

都心のオフィスから一斉に在宅へ移行

「当社のテクニカルサポートはこれまで、東京都心を中心とした拠点に担当者を集めて顧客対応を行ってきました。ですから『オフィスで感染を広げて“全滅”する事態だけは、何としても避けたい』という思いが、まずありました」

セゾン情報システムズのカスタマーサービスセンター センター長である吉原 淳氏は、新型コロナウイルスの国内感染が広がった今年初めの心境を、そう振り返ります。

2020年9 月で設立50 周年を迎えた同社は、流通・フィナンシャル分野に強みを持つITサービスのほか、Managed File Transfer(MFT)の分野で国内首位、世界でも有数のシェアを持つファイル連携ソリューション「HULFT」などの製品で知られます。

サポート契約を結んだ製品ユーザーからの問い合わせに応じるテクニカルサポートエンジニアは、総勢およそ40人。交代で24 時間、日・英・中3カ国語での電話・メールなど、幅広いチャネルへの応対を担っています。

緊急事態宣言が発出された今年4月7日以降、テクニカルサポートエンジニアは対人接触を最小限に抑えるため、全員がただちに在宅勤務へ移行。メールやWebフォーム経由で寄せられるテキストでの問い合わせに対し、各自の自宅からService Cloudにアクセスして応対するようになりました。

クラウドベースのCall Management System (CMS)ソリューションであるAmazon Connectの導入作業を終えた同年6月以降は、それまでオフィスで使っていたヘッドセットが各自宅に届けられ、電話応対も再開。「一時はお客様にご不便をかけたものの、いまでは従来と変わらない水準の応対が在宅でできるようになった」(吉原氏)といいます。

 

現場が歓迎した「在宅勤務の価値」とは

感染防止の緊急対策として実施を大幅に前倒ししたものの、同社はもともと電話応対関連のITインフラをクラウド化する準備を、コロナ禍に先立つ2019年10月から進めてきました。これは、交通混雑緩和に向けてテレワークを呼びかける行政への協力に加え、BCP(事業継続計画)の一環、さらに自社の海外事業が伸長する中で世界共通の業務基盤を構築していく狙いだったといいます。

2014年から同社が運用しているService Cloudとあわせて、完全クラウドベースのテクニカルサポート業務基盤への移行にいち早く着手していたことが、結果として想定外のコロナ禍においても役立つ形となりました。

事業効率の向上や継続性の確保、そして従業員の健康を守るためのクラウド化で同社が得たメリットは、実際にはそれだけにとどまりません。特に「夜間・休日対応がしやすくなった」点は、現場のテクニカルサポートエンジニアから大きな歓迎を受けたようです。この点について、カスタマーサービスセンター サービス運用開発部 サービス運用開発第二チームの山本 兼吾氏は、次のように語ります。

「体調不良などで夜間・休日のシフトに急な欠員が出た場合、従来は代わりに出社可能なメンバーをその時点から探さなくてはならず、毎回調整に手間取っていました。一方、出社不要となった現在では『現に在宅しているメンバーが2時間交替で入る』といったフレキシブルな対応が可能となり、負担が誰かに集中しない分、調整も格段に容易になりました」

「私たちのような勤務体系において在宅勤務は、単に『家にいながら仕事できる』以上の価値があると実感しています」

 

コロナ禍がもたらしたのは「変化」か「加速」か

一見コロナ禍を引き金として起きたかに見える、私たちの身の回りのさまざまな変化について、「以前からあった動きが加速したに過ぎず、大きな流れは変わっていない」とみる識者もいます。より円滑な顧客対応を実現する業務基盤を、7年の歳月をかけてクラウド上に営々と築いてきたセゾン情報システムズの歩みは、まさにこうした見解の傍証といえるでしょう。

同社テクニカルサポートにおけるService Cloudの活用ではまず、「受け付けた内容を登録」「該当する事象の確認」「回答案作成」「レビュー」「返信」といった一連の工程で用いていた6つのシステムを統合、あるいは自動連携させ、手作業による転記をなくしました。ヒューマンエラーの要因が取り除かれたことで、返答までに152項目あった作業チェック項目を削減することに成功しました。

さらに過去の対応事例を、Service Cloudのナレッジ機能を用いて共有・検索できるようにしたほか、2019年6月からは予測モデルに基づいて適切な入力値をケース項目に推奨表示する「Einstein ケース分類」を採用。蓄積された知見を活用しやすくしたことで、テクニカルサポートエンジニアが開発部門に照会しなくとも即答できる機会を増やしていきました。

 

 

たゆまぬ改善が実を結び、テクニカルサポートが回答するまでの平均所要時間は、Service Cloud導入前の3分の1未満となる90分まで短縮。同時に、問い合わせのうち最初の応対者(L1)で完結するケースが9割以上、また当日中の解決率も7割を超えるなど、総合的なサポート品質の底上げを実現しました。

ソーシャルディスタンスを保つための在宅勤務におけるサポート体制の維持は、とっさの対応というよりも、むしろこうした着実な取り組みの延長上で達成されていたのです。

全社的な海外サポート体制の強化を視野に、HULFT事業部のテクニカルサポート部門は2020年4月から「カスタマーサービスセンター」として、独立したユニットを構成するようになりました。その中心的な担い手であるテクニカルサポートエンジニアを最大限支える、同社のクラウド活用のノウハウは今後、製品・サービスとともに世界各地の拠点へ展開されていく計画です。

常に顧客に寄り添い、迅速に解決策を提示してくれる高品質なサポートが顧客からの支持に直結することは、いつの時代も変わりません。同時に、絶えず足下で起こる環境の変化には「対応し続ける」という不変の姿勢が求められます。これらの両立が可能であるクラウドの活用が、腰を据えて取り組むべき「大きな流れ」だと改めて示したのがコロナ禍だった。そう捉えることもできるかもしれません。

セゾン情報システムズの事例記事はこちらから御覧ください。