この記事は、6月に米国で公開された「Say Goodbye To Browsing: Retail Shopping in 2020 Gets a Total Makeover」の翻訳です。現代の買い物客の信頼を勝ち取るために必要なことは何か?については、こちらの記事(英語)もご覧ください。

 

Leading Through Change  - いま、私たちができること。-   

全米50州で外出制限が緩和され、大小の小売店が店舗の営業再開を準備しています。しかし、実際に再開したときには様子がすっかり変わっているはずです。新型コロナウイルスの影響により、各店舗は新しい衛生基準や顧客の期待を満たすために、サービス全体の再設計、再検討、再構想を余儀なくされています。

ウィズコロナ時代の買い物体験のスタンダードは、マスク着用を求める掲示、樹脂ガラス製の飛沫ガード、手指用除菌ジェルとウェットティッシュ、入念な清掃、ソーシャルディスタンスを保った立ち位置を示す床の粘着テープです。

しかし、ブランドエクスペリエンスのコンサルティングを手がけるBig Red Rooster(BRR)社は、小売企業はこうした一時的な安全衛生対策を長期的なソリューションに置き換える必要があると指摘しています。「小売各社は今、応急処置を卒業して、恒久的な変更をどう導入するかを検討しているところです」と同社の戦略インサイト担当バイスプレジデントEmily Miller氏は言います。これはたとえば、試着室の使用制限や、店舗の商品数の制限、買い物客のスマートフォンを使った決済ソリューションなどを意味します。ある調査(英語)によると、消費者の54%は、店舗が再開したときには店内に大きな変更が施されていることを期待しています。

American Eagle社のCCO(最高商務責任者)Andrew McLean氏は、こちらのインタビュー(英語、有料コンテンツ)で次のように述べています。「お客様が店舗に入るときから、今までなかったものを目にすることになるでしょう。新たな安全対策があちこちに施され、以前とは違うと感じていただけるはずです」。こうした抜本的対策は顧客の安心感につながるため、目に見える形ではっきり提示する必要があります。

 

店舗配送(シップフロムストア)

新型コロナウイルス以前から、PetSmart社、Vineyard Vines社、Bath & Body Works社、Adidas社などの小売企業は、オンラインストアの注文商品を実店舗から顧客に配送する「シップフロムストア」の取り組みを進めていました。この配送モデルでは、中央配送センターから各地の顧客に商品を届ける時間とコストを削減できます。オンライン注文を受け入れる店舗は増加しており、このモデルは今後も広がりそうです。ただし、これはまだ始まりにすぎません。

買い物客が店舗で商品を選ぶことに不安を感じている場合(実際にそうした声が存在しています(英語))、彼らは明確な目的を持って来店し、目指す商品を手早く購入して、短時間で店を後にします。この新たな買い物行動に対応するために、小売企業は注文管理システムと在庫管理システムを用意して、店舗ごとの在庫をリアルタイムに把握する必要があります。たとえば、ある家具店のオンラインサイトを見ている利用者が、ガラス製エンドテーブルを2点購入してカーブサイドピックアップをしたいと思ったとします。その家具店に適切なシステムが導入されていれば、顧客がわざわざ店に足を運ばなくても、目当てのテーブルの在庫があるかをオンラインで確認できます。

小売企業のなかには、店舗数を減らして、特定地域の1、2店舗を在庫置き場やオンライン購入された商品の引き渡し場所にし、残った店舗を実際の買い物やブランドとの接点に使うところも出てくるでしょう。

多くの店舗が配送センターに衣替え [Shutterstock]

 

店舗はマーケティングチャネルの一つに?

小売業界のコンサルティングを手がけるRetail Prophet社の創立者Doug Stephens氏は、コロナ後の店舗の主な役割は、販売よりもマーケティングとサービス寄りになると考えています。つまり、店舗は主にショールームやイベントスペース、VIPや優良顧客のための場所として使われるようになります。また、顧客の獲得という意味では、従来使われてきた広告、デジタルマーケティング、有料検索ターゲティング、新規顧客割引といった方法よりも、店舗のレンタルのほうが経済的で効果があると同氏は指摘しています。

それと並行して、実店舗には各商品が1点だけ展示され、残りの在庫は店舗のバックヤードに、おそらくプラスチック袋に入った状態で保管され、スタッフだけが触れるようになると予想されます(洋服の繊維はウイルスを運ぶリスクが低いとする報告(英語)もありますが、感染対策のためには仕方ありません)。

「ブランドを消費者に知ってもらう上で、実店舗は依然として非常に重要な役割を果たします」とNew Balance社のグローバルD2C戦略ディレクターAshley Renzi氏は言います。「実店舗に来てもらう理由を人々に明確に伝えることがとても重要です。実店舗ならではの特別なエクスペリエンスとは何かを考えなければなりません」。  

その答えは今後明らかになっていくことでしょう。

 

スマートドアとスマートミラー (多くの「スマート」が登場!)

買い物客は入店前から店舗の大きな変化に気づくはずです。まず目に入るのは、密を減らして感染リスクを下げるための、一方通行の入り口と出口です。ドア自体も、手を触れずに済む自動ドアになっていることでしょう。出入口を分けられない場合は、店舗スタッフが案内係となって、一度に一人ずつが入退店するよう交通整理をしつつ、店内の人数が一定数を超えないようにします。  

いざ入店すると、人と人が向かい合うことを避けるための、これまでにはなかった一方通行の案内があります。Miller氏が担当する小売クライアントのなかには、店舗内で特定の方向に買い物客を誘導するスマート照明を検討しているところもあるそうです。店舗の中央と壁際にぐるりと商品を陳列し、買い物客が一方通行で移動するような競馬場型レイアウトにするのも1つの手です。

店舗内の商品数は減っていき、がらんとした雰囲気さえ漂うようになるかもしれません。たとえば、コンサルティング会社のKearney社は、買い物客の滞在時間を延ばすために長椅子などを置いた休憩スペースや、衝動買いを狙った商品展示は撤去する必要があるとアドバイス(英語)しています。また、商品に触れずに買い物をする新しい方法として、洋服や帽子を身につけた様子をバーチャルに映し出すスマートミラーの導入(英語)が進むと考えられます。こうした対策によって、ソーシャルディスタンスを実践しながら商品への接触を減らし、店舗から商品をなくすことができます。

Renzi氏はこう付け加えます。「お客様にお探しの商品をすばやく提供し、短時間で店舗を後にしていただけば、また次のお客様を迎え入れることができます」。

 

清掃作業は堂々と

これまで、小売店の本格的な清掃作業は真夜中過ぎに行うのが普通で、買い物客の目に触れることはありませんでした。しかし今では、こちらの調査(英語)が示すように、店舗の衛生管理について買い物客が強い関心を持っているため、清掃の仕方をできる限り見せることが大切になります。CDC(アメリカ疾病予防管理センター)が策定した新たな手順(英語)に従って、全エリアの清掃と消毒を繰り返し行い、場合によっては紫外線殺菌なども実施します。以前は問題とされなかった陳列棚の乱れも、今では小売店が衛生対策に最善を尽くしていない証拠と受け取られる可能性があります。

試着室など、不特定多数の人間が利用する場所はどうなるのでしょうか。衛生上の懸念があるため、試着室は閉鎖したままにすると発言している大手小売企業もあります(詳しくはこちら(英語))。試着室を開けている店舗では、顧客が利用するたびに従業員が中を清掃する必要があります。清潔な試着室を事前にオンラインで予約する方式も考えられるとMiller氏は指摘します。また、多くの小売企業が予約制のショッピングモデルを検討しています。(詳しくはこちら(英語)。)

新型コロナウイルス対策として店舗に導入されたさまざまな変化のうち、非接触型決済などは、今後も定着すると考えられます。一方で、商品に触れない買い物の仕方などは、定着するかどうか不透明です。今回の危機は、これまで考えたこともないような形で消費者の行動に影響を与えており、小売企業はその流れに適応しなければなりません。今は顧客にも小売企業にも柔軟性とすばやい対応が求められています。Miller氏の言葉を借りるなら、「私たちはもう以前のような生活には戻れない」のです。

The New Retail Playbook(英語)」では、現代の買い物客の信頼を獲得する方法を詳しく説明しています。また「Leading Through Change - いま、私たちができること。-」シリーズでは、他にもさまざまなヒントやソートリーダーシップ、リソースを紹介していますので、ぜひご確認ください。