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未経験者がアプリを3日で開発。ノーコードはどこまで使える?

未経験者がアプリを3日で開発。ノーコードはどこまで使える?

ここ1年間で耳にする機会が増えた「ノーコード/ローコード」という言葉。ほとんどの操作は基本的にマウスのみ。とはいえ、本当に初心者でも簡単に使えるのか、どれくらいの期間で開発できるのか。そんな疑問を払拭するような事例がある。

ここ1年間で耳にする機会が増えた「ノーコード/ローコード」という言葉。

これは、ソフトウェア開発の際に「コードを書かなくても良い」「コードを少しだけ書けば良い」という意味だ。

プログラミング言語がわからない非エンジニアでも簡単にソフトウェア開発ができると、徐々に浸透し始めている。

ほとんどの操作は基本的にマウスのみ。ドラッグ&ドロップで必要な機能やロジックを設定するだけ。複雑な処理や大量のデータ処理を行うようなソフトウェアはローコード開発だが、それ以外はノーコードで実装できる。

とはいえ、本当に初心者でも簡単に使えるのか、どれくらいの期間で開発できるのかという声もあるだろう。

そんな疑問を払拭するような事例がある。

コロナ禍でも、外勤が必要な営業のために

日本カルミック株式会社(以下、日本カルミック)では、システム開発経験のない営業推進部のメンバーが、Salesforce Lightning Platformを使ってわずか3日で社員の健康管理アプリケーションを開発した。

もちろん、コードは1行も書いていない。

そこで、アプリを開発した日本カルミック営業推進部の長澤知子氏と渡邉麻里子氏、坂本由美子氏の3人に、コロナ禍で発生した課題を解決するために、スピード重視で実装したアプリの開発ストーリーを聞いた。

──営業向けの自社アプリ「健康パスポート」を開発するに至った経緯を教えてください。

長澤 日本カルミックは、衛生的で快適な環境を創造する環境マネジメント企業です。法人向けに、ウォッシュルーム、厨房、オフィス空間の3つの分野でビジネスを展開。サニタイザーやシートクリーナーのレンタルサービスが主力で、顧客は全国約5万施設に及びます。

最近ではコロナ禍で衛生への関心が高まったことを受け、サニッコ(女性用タッチレスサニタリーボックス)など二次感染対策製品の引き合いが増えています。

アプリ開発のきっかけは、新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言が解除され、営業の外勤再開が6月1日と決まったことでした。

というのも、日本カルミックの営業にとって現場の多くが“トイレ”など衛生に関する場所です。

オンラインではわからない“利用者目線からのニーズ”や、“メンテナンスの必要性”などを確認し、改善提案する必要があるからです。

日本カルミックの衛生商品に社会的ミッションを感じる半面、緊急事態宣言が解除されたとはいえ、現場に営業担当を送り込まないといけないことに葛藤がありました。

営業もお客様も、少しでも安心できるようにするにはどうしたらいいのか……。

そう考えていたときに、息子の学童保育の「健康チェックシート」が、ふと目に留まったんです。簡単なチェックシートでも、ないよりあった方が安心できます。

同じように、体調が少しでも悪かったらきちんと休める仕組み、自分の体調をごまかさず簡単に記録できるツールを作るべきではないかと思いました。

企画を立案し、社内の声がけを始めた発起人の長澤さん。

期限は3日。ノーコードでアプリ開発

──外勤営業を必要とするからこそ、安心できるツールを必要とされたのですね。実際のアプリ開発はどのように進めたのでしょうか。

長澤 私たちは普段からSalesforceで入力項目の追加や変更をしています。

ですので、今回もITを使った営業支援業務を担当している渡邉さんに「Salesforceを使って健康状態をチェックできるアプリを作れないか」と相談しました。

渡邉 営業が毎日使っているSalesforceに組み込めたらスマートフォンですき間時間に入力できて効率的ですしね。

でも、相談を受けたのは5月25日。6月1日の外勤営業再開に間に合うかどうか確信はありませんでした。

Salesforceの営業担当に連絡を取り、非エンジニアでもコードを1行も書かずに、ドロップ&ドラッグでアプリを開発できると聞いたんです。

この段階で「ノーコード/ローコード」という言葉自体を知らなかったし、ドロップ&ドラッグでアプリを開発するイメージはまったくできませんでした。

でも、期限は迫っていたので、営業経験もあり「使う立場」の意見や提案をもらえそうな坂本さんも巻き込んで、プロジェクトをスタートさせました。

坂本 営業視点から貢献できそうだと感じましたが、ミーティングに呼ばれたのが火曜日で、同じ週の金曜日にはアプリを完成させるという計画を聞いて、本当に自分たちだけでできるのかとヒヤヒヤしましたね(笑)。

長澤 私も、ノーコード開発とはなんだろう?といった状態でしたが、Salesforce Lightning Platformを使うと、本当にドラッグ&ドロップだけで手軽にアプリを実装できたんです。

結果、「健康パスポート」アプリも、入力状況を一覧するダッシュボードも3日で完成。自分たちも驚きました。

Salesforce Lightning Platform の操作画面

スマホで簡単に使える手軽さで、利用率は95%に

長澤 具体的には、経団連のガイドラインを参考に、体温や自覚症状、行動管理についての9項目を設定。PCとスマートフォンのどちらにも対応し、毎日朝と夕方に社員自ら入力できる仕組みを想定しました。

工夫したのは、体温も直接打ち込むのではなく、選択式にしたことです。

加えて、基礎体温のような個人情報を会社に把握されたくない女性向けに、「37度未満」もしくは「37度以上」のみを選択できる項目も追加しました。

──そうした手軽さや社員への配慮が、平均95%の利用率につながった。

長澤 営業担当は、お客様に衛生の提案をしていることもあって、もともと衛生意識が高いんです。

ビジネス上、対面での営業が基本ですし、お客様のオフィスや施設に入る必要があることが、高い利用率にもつながったのだと思います。

しかも、健康パスポートは健康証明にもなります。「自分は体調も良く、行動管理もできていますよ」と、自信を持って営業活動ができるようになる。

今後、抗体検査やPCR検査が手軽に受けられるようになり、ワクチンも開発されるなど新しい動きがあれば、そうした項目も随時追加することで、社員とクライアントの安心材料にしたいと考えています。

渡邉 Salesforceの利点は、項目を簡単に追加・変更ができること。

現時点では、6月1日にリリースしたものを改修せず運用できていますが、最初から状況に合わせて変えていくことを前提に開発できたのは良かったです。

実際のアプリ操作画面

健康パスポートは、安心と信頼の証明に

──今回、ノーコードでアプリを開発してどんな感想を持ちましたか?

長澤 Salesforceは毎日営業が使うものとはいえ、人によってバラつきがあったのは事実です。

それが、毎日ログインする必要のあるアプリを追加したことで、Salesforce自体の活用も増えました。

これは、今後の営業活動にも効果があると思っています。

また、アプリを導入後、実際に使ってもらっている営業本部長から「健康パスポートで健康管理をしていることは必ずお客様に話している」と言われたんですね。

衛生商品を扱う会社で、しかも外勤営業をしているから、体温チェックなどの健康管理は全社の必須項目としてやっていると。しかもそれが、商談のネタになっているそうなんです。

たしかに、お客様のオフィスに入る前の検温や消毒だけでなく、毎日体調を記録していることがわかれば、信頼につながる可能性があります。

その話を聞いて、今後はお客様に簡単に見せられるような「健康証明書」を作るのもいいなと考えているところです。

緊急事態宣言の解除前、どうにか健康を担保できる安心材料を作れないかと思って始めたプロジェクトでしたが、ノーコードで開発できるツールがあったから、3日という短期間で完成させられました。

しかも、みんなにちゃんと使ってもらって役立てられているのはすごいこと。

私たちでもできる簡単さと手軽さは、いろんな人に知ってもらいたいですね。

(制作:NewsPicks Brand Design 取材:田村朋美、編集:川口あい、デザイン:板庇浩治、月森恭助)

あなたもアプリが作れる ノーコード新時代

①【入門】誰でもアプリを作れる時代が来た。噂の“ノーコード”を徹底解説
②【ライバル集結】ノーコード旋風は一過性のブームか本物か
③  未経験者がアプリを3日で開発。ノーコードはどこまで使える?
④【異色エンジニア鼎談】ノーコード/ローコードで、身近な課題を解決したい
⑤【徹底分析】“toBテック”のGAFA? Salesforce 、爆速成長の「7つの秘訣」

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