「Becoming Retail」シリーズの最新号となるこの記事は、ドミノ・ピザのマーケティング部門最高責任者(CMO)に、ピザの配達における顧客体験、イノベーション、そしてテクノロジーの役割について語っていただきます。

ドミノ・ピザは、創業からおよそ30年後の1989年、初の新製品 (英語) である、フライパンピザを発表しました。それ以来、新しい商品を発売し続け、世界のピザフードチェーンの頂点へと登り詰めます。しかし、ドミノ・ピザのイノベーションの真実のストーリーには、食品よりも、注文と配達の革新のための、テクノロジーの飽くなき追求がより深くかかわっているのです。 

今回の「Becoming Retail (英語) 」シリーズでは、ドミノ・ピザのエグゼクティブ・バイス・プレジデント兼マーケティング部門最高責任者、Art D’Elia氏を招き、テクノロジー、イノベーション、そしてデジタルトランスフォーメーションについての考え方についてお話を伺いました。D’Elia氏は、CPG大手のPepsiCo社とDanone社で長年マーケティング、ブランディング、およびイノベーションに従事した後、ドミノ・ピザに入社しました。 

「私は、デジタルトランスフォーメーションとイノベーションの促進にフォーカスしてきました」と同氏は言います。「私たちのカテゴリーは急速に進化しており、Uber Eats、Grubhub、DoorDashなど、アグリゲーターと呼ばれる新しい競合が現れました。そのため、ビジネスモデルの進化が必要なのです。ここで問題となるのは、テクノロジーとデジタル化の最先端であり続けると同時に、アプローチの中で真の意味で顧客中心であり続けるために、どのようにしてより急速な変革を実現するかということです」

私たちは、消費者を獲得するためには、優れた商品ではなく(これは常に重要ではありますが)、購入を簡単で、革新的で、楽しくするための優れた体験が必要であるということを、長年耳が痛くなるほど言われ続けてきました。ドミノ・ピザは、1996年にWebサイトを開設して以来、まさにその「優れた体験」を提供するためにテクノロジーを使用し、フードチェーンだけでなく全業界でその水準を引き上げてきました。 

 

 

米国のドミノ・ピザでは売上のおよそ70%がデジタルチャネル経由

 

同社の業界初のサービスやイノベーションは、多すぎて紹介しきれないほどです。その一例として、顧客は、同社のモバイルアプリはもちろん、スマートウォッチ、Twitter、Slack、スマートテレビ、Ford Sync、Amazon Alexa、Facebook Messengerなどからも注文することができます。また、「Zero-Click Ordering」では、「Pizza Profile」を設定している顧客がアプリを開くと、10秒間のカウントダウンの後、好みのピザが自動的に注文されます。米国のドミノ・ピザでは売上のおよそ70%がデジタルチャネル経由です。

配達でも、度肝を抜くような、それでいて実用的なイノベーションを実現しています。その一例としては、GPSホットスポットにより、公園やビーチ、その他の住所のない場所へのピザの配達や、電動自転車での配達が可能になりました。最近では、自動運転車やドローンによる配達の実験も行っています。新型コロナウイルス感染症で多くのレストランが大きな打撃を受ける中、ドミノ・ピザはこの状況を乗り切る準備ができていました。同社ではすでに、顧客が入店することなく注文品を受け取る方法を実験していました。そのため、春には、ドミノ・ピザの従業員が顧客の車まで注文品を運ぶ、新しい「Carside Delivery」プログラム (英語) を米国内ですぐに実行できました。ウォール・ストリート・ジャーナルの記事 (英語) では、パンデミックで他社が苦境に立つ中、同社が成功した数々の理由の1つとして、このプログラムを挙げています。

 

ドミノ・ピザが、ロイヤリティプログラムから蓄積した顧客プロファイルは8,500万人分

 

 

D’Elia氏がドミノ・ピザの顧客中心主義への注力を促進する手法の1つは、顧客の選定、分析、およびセグメンテーションです。ドミノ・ピザは、ロイヤリティプログラム(2,500万人を超えるアクティブユーザーがいる)と多様なデジタルチャネルを通じて、8,500万人分の顧客プロファイルのデータベースを蓄積してきました。

「こうしたデータを得られることは、非常に大きなメリットです。というのも、これによりデジタルツールを使用して顧客のセグメンテーションを行う機会が大幅に増えます。そして、ある意味、消費財などのサプライヤー側で行うのは非常に難しいプレシジョンマーケティング(精密マーケティング)を、われわれは行うことができるのです」 

D’Elia氏がマーケティングの指揮を執り、1万7,000を超える世界中の店舗の取り組みを推進する一方で、ドミノ・ピザのイノベーションは、マーケティングの枠を超え、組織全体で幅広く取り組まれています。 

「当社では、マーケティングの一環としてイノベーションに取り組んでいるわけではありません」と述べ、次のように続けます。「私たちは企業としてイノベーションに取り組んでいます。そのイノベーションを市場へとつなげて行くのは、全部門を挙げての共通の作業なのです」 

最も新しい例は、米国内での「Carside Delivery」の開始だったと、同氏は言います。「新型コロナウイルス感染症による危機のため、開始を早めました。このサービスは、顧客に新しい受け取り方法を提供するものです。そのため、外部の人の多くは、これをマーケティングのイノベーションと捉えたでしょう。しかしこれは、全部門を挙げて取り組んだ、真の意味での共通のイノベーションであり、少なくとも当社のモデルの中では、これこそが、より速いペースでイノベーションを実現してきた手法なのです。なぜこのようにやってこれのたか。その理由は、この取り組みへの説明責任を企業全体で担っているからです」

 

イノベーションの効果を測定

もちろん、成果が上がらないイノベーションは企業にとって価値がありません。ドミノ・ピザの成功の鍵の1つは、イノベーションの導入効果を測定できる能力です。ちなみに、同社のビジネスモデルで、導入効果測定を行うのは難しいことを、D’Elia氏は認めています。なぜなら同社のモデルでは、米国の店舗の98%がフランチャイズであり、フランチャイズ加盟者がトラフィックとビジネスを促進するための取り組みへの投資を中央組織に委ねているためです。 

D’Elia氏は、定義可能な目標を持つことが、イノベーションが組織全体とフランチャイズパートナーにとって有益なものになるための重要な要素であると確信していると言います。  

「私たちは、パートナーの代わりにそれを測定し、ビジネスケースとしてパートナーに提供できる必要があります」と同氏は言います。「(顧客)データを持っていることは大きなメリットとなります。データがあれば、こうしたイノベーションの影響を非常に正確に測定できるからです。注文の増加の促進、ビジネスのコストの低減、既存の顧客の注文頻度の増加など、目標を定義したら、特定の行動を取り上げ、それに対する影響を測定します。私たちはその分析に熟練しています。これは、過去10年にわたって行った数多くのイノベーションにおける、高い成功率に欠かせないものとなっています」。 

ドミノ・ピザの重要な進行中の目標の1つは、注文です。D’Elia氏は、これは持続可能な既存店売上高の増加を促進するのに不可欠だと言います。同氏と他の経営陣は、注文数を増やすためのイノベーションをどうやって起こすかということに、常に集中して取り組んでいます。 

「このビジネスで、単に客単価を引き上げることで成長を促進するのは非常に難しいことです。そのため、私たちは常に、注文数の増加、すなわち売上増を促進する方法を模索し、イノベーションが注文の増加の促進にどの程度貢献しているかを測定しています。要するに、特定の機能が顧客に受け入れられなければ、ピザは注文されないということです」。

 

成長とイノベーションの機会を拡大

拠点の拡大の面では、国際市場における成長の「非常に大きなチャンス」があるとD’Elia氏は言います。世界で1万1,000以上の店舗を展開しているものの、国際市場ではまだ米国ほどは成長していません。 

「当社は、ビジネスのデジタルトランスフォーメーションのための多くの専門知識と経験を蓄積してきました」と同氏は述べ、さらに続けます。「私たちだけでなく、マーケターの多くが抱える課題は、メディアと消費者の断片化が続いていることです。消費者にとって、今までにないほど多くの選択肢があります。そのため、消費者へのリーチは難しくなっていくでしょう」。 

D’Elia氏は、商品の表示だけでなく、注文と配達のやりとりをスムーズにする音声テクノロジーに積極的です。 

「当社はピザトラッカーでよく知られています。音声機能を追加することで、トラッカーの体験が強化され、私たちはお客様により近い存在となりました。この分野では、次々とすばらしいイノベーションが生まれています」。 

ドミノ・ピザは、テクノロジーを重視することで、世界での販売の半分以上、および米国での販売のおよそ70%を、デジタルチャネルを通じて達成しました。D’Elia氏は、マーケティング責任者として、顧客の体験をさらに容易にするために、テクノロジーの使用にあくまでも注力しています。このことから、どの消費者ブランドも学ぶことができます。 

「小売を一言で表すとすれば、顧客中心主義です」とD’Elia氏は言います。「多くの評論家が、小売業界は変革が遅いと言いますが、私はそれが変わりつつあると考えています。パンデミック以降、小売業者は顧客中心の取り組みに再び注力するようになり、マーケティングはその中心となっています」。 

「マーケティングが、顧客を理解し、顧客にアピールし、より良い体験を創出するための行動であることに変わりはありません」とD’Elia氏は述べます。「これはドミノ・ピザに限ったことではなく、あらゆる業界で言えることです」。 

 

 

 


 

 

Rob Garfはインダストリー戦略およびインサイトを担当するVice Presidentであり、Salesforceの小売業向けクライアントアドバイザリーボードの議長を務めています。プラクショナー(Lids、Marshalls、Hit or Miss)、業界アナリスト(AMR Research)、戦略コンサルタント(IBM)、ソフトウェアリーダー(Salesforce)としてグローバルな小売業における25年の経験を持ち、業界および小売業が直面する課題を熟知しています。Robのチームは現在、インダストリーリサーチを開発し、世界中のシニアエグゼクティブに統合エンゲージメント戦略に関するアドバイスを提供しています。業界イベントの講演も頻繁に行い、NRF(全米小売業協会)のDigital Councilのメンバーでもあります。

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