NTT西日本グループが提供するビジネスチャット「elgana」(「elgana」サービスについてはこちら)は、NTTグループの新たなサービスブランド「Remote World」の1つとして2020年4月にサービスリリースし、2021年3月には計60万ID(NTTグループ内利用含む)を達成しました。
新規事業として顧客中心主義の実現を目指した本SaaSサービスの立ち上げには、どのような挑戦があったのでしょうか。2021年6月に開催されたSalesforce Live: Japanでは「顧客中心主義への挑戦~ elgana を通したNTT西日本グループの体験」と題し、elganaのビジョンやその挑戦の道程について、プロジェクトをリードされた西日本電信電話株式会社(以下、NTT西日本)エバンジェリスト広瀬丈氏にお話いただきました。コンサルタントとしてご支援をさせていただいたSalesforceビジネスアーキテクトの久保博嗣とのセッションのポイントを抜粋して、本ブログにてご紹介します。

 

久保:まずは、会社紹介と今回のプロジェクトについて、お聞かせください。

広瀬氏:皆様はNTT西日本に対して、電気通信事業者というイメージを持たれているかもしれませんが、コールセンターのBPOやドローンによる点検ビジネス、電子コミックなど、非通信の新規事業にも積極的に挑戦しています。今回お話するのは、新規事業の分野に位置づけられている「elgana」プロジェクトでの体験です。
elganaは、NTT西日本グループにおいて、カスタマーエクスペリエンス(CX)のお客様起点であり、デジタルハブとしてお客様の経営改革・DXに資する「はじめのサービス・タッチポイント」を目指しています。
そのelganaのデータにより得られた企業や個人の特性、嗜好や課題に応じ、お客様のご了解のもとでWeb-CX等のデジタルと、営業などのリアル、双方のハイブリッドによりNTTグループ各社やアライアンス先の各種サービスを自由にご提案・ご提供することで、お客様の経営改革を支援したいと考えています。そのために顧客理解は非常に重要です。すべての答えはお客様の中にあるのですが、お客様のニーズや動向は予測できないスピードで変化をしています。そのためにelganaを通して「顧客中心主義」への取り組みが急務でした。

 

 

広瀬氏:ただ、それはNTT西日本にとっては大きな挑戦でもありました。
プロジェクトで顧客中心主義に取り組んだ挑戦の例を挙げると、実現すべきサービス企画・開発・提供には、顧客嗜好や動向をタイムリーに把握・分析し、それを柔軟に企画・開発にフィードバックして、いわゆるPoC & Agileに“まずは市場に提供”し、“学習・改善”を繰り返すことで顧客の求めるサービスを提供することが必要条件でした。また、他社・他サービスとの連携、API・iPaaSなどとの連携も必要条件です。これらのノウハウや実績もほとんどないことが挑戦でした。
また、弊社は伝統的なインフラ事業を生業にしており、24時間365日、日々お客様へ電気通信などのアセットを安定・安心にご提供するため、機能別の組織で計画重視なマネジメントを経て、ウォーターフォールなプロセスのもと最適な画一的なオペレーションを重視しています。その一方で、ビジネスチャットのようなSaaSビジネスで後発の我々が取り組むべきは、事業スタイルの再構築、その「人・文化・プロセス・責任」レベルの変革でした。既存のメインストリームと異なる「もう1つの手」に挑んだのが今回のプロジェクトです。

 

顧客理解のために〜The Model型協業プロセス実現のための業務・プロセス変革 

広瀬氏:プロジェクト発足から1年半、市場提供から1年というまだまだこれからのサービス・プロジェクトです。しかし、発足から3ヶ月でNTTグループ社内展開、そこから3ヶ月で一般市場への展開、そこから半年でフリープランの提供(フリーミアム戦略)とスピード感を持って多くのことに挑戦してきました。今回はその中でも、顧客理解のためのCRM領域の業務・プロセス変革についてお話します。Salesforceのコンサルティングのもと、お客様にelganaを通じた最高の体験・CXをご提供するために、The Model、 CRMを中心としたデジタルマーケティング、営業、カスタマーサービスの各領域での協業チームにKPI・業務を最適化、 チーム戦でelganaというSaaSの業務プロセスを担う「社内体制・仕組み」を作りました。

 

 

広瀬氏:ここからは「The Model型協業プロセスを実現する社内体制・仕組みの構築」の挑戦・体験を「守破離」の3つのテーマで紹介します。何事もまずは先人から型を学び、模倣することが物事の道理、早く進めるやり方だと思っています。今回も「The Model」という1つのデファクトスタンダードから身につけ、そして今、その「型を破る」ことに挑戦しています。今後それから「離れ、NTTらしい新しい道」を作りたいと考えています。

 

守:デファクトスタンダード、Fit to Standardの採用

久保:まずは「守」のデファクトスタンダードの採用について教えてください。

広瀬氏:プロジェクト発足の2019年10月から、CRMのα版をローンチした2020年8月までの10ヶ月間を「守」の期間と位置付けています。この期間では3つの“3か月”を達成しました。発足から3か月でNTTグループ社内への提供開始、次の3か月で一般市場への展開、そして2020年5月からは3ヶ月で各領域の業務とシステムをローンチしました。

久保:世の中のスタートアップ企業と比較しても、かなりスピード感のある展開ですね。成功要因はどこにあるとお考えですか。

広瀬氏:デファクトスタンダードを身につけることからスタートしたことです。ここで重要だと考えるのは、現在のプロセスとのギャップを“埋めた(Fit Gap)”のではなく、スタンダードに“合わせた(Fit to Standard)”ということです。さらに、営業プロセスやCRM・MAの領域に限らず、開発の手法などすべてをスタンダードに合わせました。

久保:プロジェクトでは各領域の業務とシステムを3か月でローンチしただけではなく、標準機能を起点に業務の効率化もできたと思いますが、これも「Fit to Standard」のアプローチの効果だとお考えでしょうか。

広瀬氏:結果として、短期間でローンチできたのはこのアプローチを採用したからだとは思いますが、重要なのは、どのようにスタンダードを選択するかだと考えています。Salesforceというシステムには世の中の先進企業で育てられたノウハウが詰まっています。さらに、それを最も使い倒し業績をあげているSalesforceの業務モデルがあります。この業務モデルを直接学びたかったというものになります。これがデファクトスタンダードとして考える王道であり、これを型として採用することが重要と考えています。

久保:「Fit to Standard」を目指しても、容易に取り組めるものではないかもしれません。

広瀬氏:おっしゃるとおりで、それを実行する「人・文化・プロセス(組織)」全員が新しい考え方・デファクトスタンダードにアップデートしないといけないと思います。
そのために例えば、「数十社へのヒアリングや市場調査」、「プロジェクトの検討テーマを毎日全員が参加しフラットかつオープンに議論」、そして「他社からの学び」として各領域の現場の“プロ”のセッションを実施しました(詳細はオンデマンド配信でご覧ください)。
そして、ただ学ぶだけではなくここにelganaの商材特性や市場の立ち位置などのエッセンスを加え、「elgana Model」を追求しました。このモデルの特徴は、elganaというビジネスチャットツールの体験を通じて、人と人が中心に繋がり、人の成長や成功にフォーカスしている点です。この人との繋がりは、お客様同士だけではなく、弊社のデジタルマーケティング、営業、カスタマーサービスといった社内メンバー、そしてパートナーなど社外ステークホルダーとも繋がっていくことにより、アップセル・クロスセルにつながるというものです。

 

 

破:独自のエッセンスの注入〜学習と改善で型を磨く

久保:次は「破」の段階になります。ここは今まさに取り組んでいるところですね。

広瀬氏:2020年8月から2021年6月までの10ヶ月間を位置付けています。この期間では、NTT西日本のビジネス向けとしては初のフリーミアム戦略を採用し、2021年3月末までにご利用60万ID(NTTグループ内利用含む)を突破しました。この成果を支えたのは顧客の声を反映し、学習・改善を繰り返すという点と、その改善は製品・アプリ、システム、業務全ての範囲だということです。この期間では、商材の特徴やターゲット顧客を考慮したelgana独自の変更(「守」からの型破り)を行っています。
製品は「シンプル」「セキュア・プライバシー」が特徴として受け入れられています。また、ターゲット層はなかなかリモートワークが進まない層です。8月までで小さく始めた業務プロセス・システムを、お客様の何をCRMに残したいのか、どう各領域で連携・活用したいのか、に合わせてCRMやプロセスを磨き込んでいます。

久保:ここからはその際の学習と改善の事例を見ていきたいと思います。
プロジェクトではデジタルマーケティング、営業、カスタマーサービスの各業務領域で定量的な事業目標を決め、その目標達成に向けて各チームが実施すべき施策を策定しています。さらに、その目標の施策と整合する形で個人レベルの目標と施策に落とし込んでいます。これらの目標に対する実績や施策の実施状況はダッシュボードで把握できるようになっており、CRMの情報に従って気づきを得ることで日々改善を進めています。

 

 

久保:具体的な改善の事例を2点、簡単に紹介したいと思います。
1つ目は顧客の解像度の「改善」です。2点目はサクセス支援施策の「改善」です。
CSMは、開通されたお客様がelganaをスムーズにご利用いただけるように様々な支援を行っています。それらの支援サービスを通じて収集できた実際のお客様の声を、サービスの改善に繋げるようにしています。例えば、システム管理者だけではなく実際のエンドユーザー向けのユーザー勉強会の開発や、オンボーディング支援の時間配分や利用コンテンツの見直しを行なっています。

広瀬氏:その通りです。ただ、オンボーディング方法を見直すといった業務を変えることは非常に大切なことではあるものの、最終的にはオンボーディング支援がなくともサービス利用が円滑に進められるといったことを目指す必要があるとも考えています。

 

離:新たなモデルの創出〜the elgana Modelの展開を目指して

久保:それを実現するのが、最後のテーマである「離」で目指す姿ですね。最後に、「離」について教えてください。

広瀬氏:次のフェーズは「CX中心+データ(タッチポイント)」 の仕組みを作ることだと思っています。すでにお客様を中心とした、多くのデジタルとリアルのタッチポイントはelganaで構築し、まだまだ改善が必要ですがそれらを取り巻く営業プロセス、領域の組織・チームも整えてきました。今後はこれらが自ら考え改善できる「自走」の仕組みが必要だと思っています。

久保:今のプロジェクトは、この「型」を作ることが目標なのですね。

広瀬氏:はい。ただelganaだけで終わらせないことが重要で、2つ目、3つ目の「elgana Model」の展開が目下の仕事だと思っています。そのためにも、まずはelganaがこのフェーズまで行くことを頑張りたいと思います。elganaの顧客中心主義に向かう“終わりなき旅”は、まだ始まったばかりです。Salesforceをはじめ、多くの仲間とともにお客様の成功に向けた取り組みを1歩ずつ進めていきたいと思います。今後にもご期待ください。

久保:私たちとしても、elganaの成功と、elganaを利用されるお客様の成功は喜びです。今後も全力でサポートさせていただきます。本日は、ありがとうございました。

 

登壇者紹介

西日本電信電話株式会社
elganaプロジェクト
エバンジェリスト
広瀬 丈 氏

 


株式会社セールスフォース・ドットコム
アドバイザリー本部
ビジネスアーキテクト
久保 博嗣

 

 

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