
「デジタルトランスフォーメーション(DX)で営業がどう変わるのか理解したい」「営業分野でDXを進めていくための課題を、あらためて整理したい」このようにお考えの方はきっと多いのではないでしょうか?
DXの進展は今、ビジネスにあらゆる影響をおよぼしています。かつては「足で稼ぐ」といわれた営業も例外ではありません。他社に負けない営業であり続けるためには、DXによる変化をしっかりと理解し、適切なデジタルツールの活用を検討していく必要があります。ここでは、DXが営業におよぼす影響と、導入にあたり直面するであろう課題を紹介します。
デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)が推進されるなか、長く常識とされてきた営業プロセスに変化が見られるようになってきました。「リード獲得」「ナーチャリング」「クロージング」と営業を3段階に区切った分業化が進み、訪問以外の接触頻度を増やして信頼関係を構築するスタイルが主流となりつつあります。まずは、そのそれぞれの営業段階について見ていきましょう。
顧客になり得るユーザーをリード・見込み客と呼びます。リード獲得はマーケティング部門に任せるケースが多いようです。DXが進み、オンライン広告やSNSなどの非対面の手法によるリードの獲得が増加しています。
SalesforceのMAツール「Interaction Studio」は、サイト訪問者などリードになる前段階のユーザーをリアルタイムに管理し、資料請求などリード化への行動を引き出すことが可能です。このようなツールの活用はリード獲得に最も有効です。
ナーチャリングは、「育成」という意味です。確度の低いリードや見込み客を育成する工程を意味します。主にインサイドセールス(内勤営業)が対応します。
電話やメールなど非対面のコミュニケーションをこまめに取ることでユーザーの疑問や不安を解消し、成約に結び付きやすいリード、すなわち「ホットリード」に育てていくことを目指す段階です。
ホットリードに対して営業をおこない、いよいよ最終的な成果(成約)にまでもっていく段階がクロージングです。主にフィールドセールス(新規獲得営業)が対応します。ナーチャリングの質がクロージングの難易度を左右します。
SalesforceのMAツール「Pardot」では、指定条件に基づきメールを自動送信するなどして、ホットリードへの育成の半自動化を実現できます。
>>B2Bマーケティングオートメーションとリード育成のツール「Pardot」
DXにより営業がどのように変わったのか、「フィールドセールス」「インサイドセールス」「ルートセールス」の3手法に分けて見ていきましょう。
フィールドセールスとは、訪問し直接の対話を通じて製品やサービスを提案し、商談を進めて受注へとつなげる営業手法」です。セールスパーソンが顧客先で営業トークをおこなうような、一般的にイメージされやすい「営業」です。DXにより、その業務にはどのような変化があるのでしょうか。
フィードセールスについて詳しくはこちらで解説しています。
フィールドセールスとは?効率化させるインサイドセールスとの連携
リード情報の全社共有
デジタルツールの導入により、効率的な営業に欠かせない「リード情報の全社共有」が叶いつつあります。部門によって別々の情報を持っていたり、営業進捗がうまく共有されていないなどの非効率な状況を避けられるため、従来よりもフィールドセールスが力を発揮しやすくなりました。
オンライン商談が一般的に
コロナが後押しとなり、一気にオンライン商談が一般的しました。時間や場所の融通が利きやすく、対面では難しかったエリアへの営業もできるなど、メリットが豊富です。営業内容を映像で保存できるため、分析や新人の教育にも活用できます。
オンライン化したSalesforceのフィールドセールス
Salesforceでもオンライン商談の導入が進んでいます。訪問先までの移動時間や交通費などオンラインならではのメリットを活用できるように取り組んでいます。Salesforceのフィードセールスについて詳しくはこちらで解説しています。
オンライン化した営業現場のリアル Salesforceの営業はいま フィールドセールス編
成功事例
DXによる業務効率化の成功例としてご紹介したい三菱地所リアルエステートサービス株式会社様の事例です。同社は、紙文化が根強く残っている不動産業界の体制に危機感を覚え、生産性を向上させるためにSalesforceのデジタルツールを導入しました。その結果、取り扱い物件数が1.5倍になるなどの成果を上げています。
三菱地所リアルエステートサービス株式会社“市場・顧客志向の営業を実現し、“お客様の戦略的パートナー”へと飛躍する情報プラットフォームを完成”
インサイドセールスとは、「電話やメール、チャットなど、遠距離でも瞬時につながるコミュニケーション手段を使った営業手法を指します。顧客先を訪問しない内勤専門の存在です。
デジタルツールで顧客にアプローチが可能
非対面に特化したインサイドセールスは、DXの恩恵を最も受けたであろう存在です。顧客情報のデジタル管理が進み、効果の見込める営業手法や情報の選別、メルマガ送信・解除時期の設定といった戦略判断を、客観的な数字から最適化できるようになりました。
リード獲得数10倍以上、受注率4倍になったNTT東日本
インサイドセールスの重要性の高さがわかる事例をご紹介します。2017年11月に専門チームを立ち上げたNTT東日本では、回線販売業務の月間リード獲得数が250件程度から3,500件程度へ増加。受注率も3~4倍へ改善しています。Web問い合わせへの速やかな架電による返答などを実現できた結果です。
Sansan株式会社がインサイドセールスで乗り越えた壁
一方、インサイドセールスを導入するためには「壁」も存在します。特に問題となるのが以下の7つの壁です。
KPIの壁:どのようなKPIを設定し運用していくか
データベースの壁:各部署でバラバラに運用するDBをどうするか
環境の壁:インサイドセールスに適した環境の確保
教育の壁:どのように教育していくか
パワーバランスの壁:外勤営業やマーケティングとの役割分担
採用の壁:インサイドセールスにおける人材採用
今後の壁:導入・運用の定着後、どのように展開するか
上記の課題解決方法について詳しくはこちらで解説しています。
事例で分かるインサイドセールス Vol.1 Sansan株式会社編
顧客の変化を感じ取り調整するSalesforceのインサイドセールス
Salesforceでは営業の分業化にあたり、「The Model」という仕組みを活用しています。「マーケティング」「インサイドセールス」「外勤営業」「カスタマーサクセス」と4段階に業務を分け、可視化する仕組みです。
インサイドセールスはこのThe Modelの中心として位置付けられており、顧客の些細な変化を感じ取り、他部門との連携も含めた「営業のあり方」を調節する役割を担っています。
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オンライン化した営業現場のリアル Salesforceの営業はいま インサイドセールス編
ルートセールスは、決まったお客様を定期的に訪問する営業手法を指します。すでに契約している顧客に対して、不満点はないか尋ねたり、追加で商品を提案したりする役割です。
顧客管理ツールの導入
ルートセールスにおいても顧客管理ツールの導入が進み、新たな着想を得る企業が増加しています。例えば、20年の実績をもつSalesforceの「Sales Cloud」は、顧客データの一元管理により隠れたインサイトの発見が可能です。
デジタルツール(アナリティクス系)の活用
ルートセールス全体の傾向として、単純な対話回数を増やすのではなく、GAなどの分析ツールによる客観的な数値をもとに、継続率やアップセル・クロスセルを狙う手法が主流となりつつあります。今後もSFAなど情報管理・分析用ツールの導入が進んでいくでしょう。
最後に、DXの導入にあたって営業分野に残されている課題をご紹介します。
最大の課題は、DXを営業に活用できる人材の確保です。営業分野のDX人材は以下の2種類に分類できます。
DXを進めるためにまず必要なのは「企画型」の人材です。DX人材の需要は今後ますます高まると予想されており、速やかな確保が必要となります。
営業の分業化が進むことで部門間の摩擦が生じやすいことは否定できません。マーケティングは「純粋にリードの獲得数を増やしたい」、営業は「クロージングに結び付きやすいリードが欲しい」と、目標がずれてしまうケースが見られます。マーケティングが、クロージングに結び付くリードを提供することを強く評価するなど、リード獲得からクロージングまでを意識した統一的な評価指標が求められます。
営業とマーケティングの連携にはツールの導入がおすすめです。下記の記事で詳しくはこちらで解説しています。
オンライン商談やリモートワークなどデジタルでの業務が増えるにつれて、情報流失などのリスクも高まります。データへのアクセス権限を制限できるツールの導入や、セキュリティ事故を防ぐための社内体制づくりが必要です。
2030年には、日本は644万人もの人材不足(労働力不足)に直面するといわれています。営業部門として競争力を維持していくためには、SFAやRPAなどデジタルツールの導入による、業務の可視化・効率化が求められます。今からDXを推進し、必要な人材の洗い出しや確保を進めておくことを強く推奨します。