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ブライダル大手がDX部門立ち上げ&“人財”育成でシステム内製化! 生産性2割向上を視野に入れたSalesforce導入の秘訣とは?

システムに詳しいスタッフの少ない中でSalesforceの導入を決断し、内製によりわずか3か月で開発をほぼ完了した東証一部上場のウエディング企業アイ・ケイ・ケイ株式会社に、Salesforceの導入理由や活用方法、成果などを伺いました。

システムに詳しいスタッフの少ない中でSalesforceの導入を決断し、内製によりわずか3か月で開発をほぼ完了した東証一部上場のウエディング企業アイ・ケイ・ケイ株式会社に、Salesforceの導入理由や活用方法、成果などを伺いました。

アイ・ケイ・ケイ株式会社は、福岡県に本部を置き、挙式・披露宴に関する企画・運営などのサービスを提供するブライダル企業です。「日本を代表する感動創造カンパニーとなり世界に挑戦する」というビジョンを掲げる同社は、2013年に東証一部上場、2020年には国内19か所目となる東京支店をオープンするなど、着実に成長を続けてきました。

そんな同社が、システムに詳しいスタッフの少ない中、Salesforceの導入を決断し、内製によりわずか3か月で開発をほぼ完了できた背景には、事前の綿密な計画立案がありました。また、日頃から社員を”宝物”として考え、“人材”ではなく“人財”と呼んできた同社の社風も、成功の要因のひとつとなったようです。

Salesforceを導入した理由や活用方法、成果などについて、プロジェクトを主導した取締役CIO小田豊氏と、システム部 課長 町田芳樹氏、同部門 向山千尋氏・竹中慎悟氏にお話をうかがいました。

ー最初に、Salesforceを導入した背景や理由をお聞かせください。

取締役CIO 小田豊氏(以下、小田氏) 華やかなイメージのあるブライダル業界ですが、実は情報化に関しては全体として非常に遅れています。それは弊社も同様でした。紙を使うアナログの業務が多く、データ管理は煩雑で、ちょっとなにかを分析するだけでも、データ収集や資料作成にとても時間がかかりました。そのため、お客様向けのサービスやパートナー企業との取り組みに関してなにかチャレンジしたくても、なかなか実現できない状況でした。

取締役CIO 小田豊氏

システム部 向山千尋氏(以下、向山氏) 現場には紙の資料が溢れていて、それを見ないと必要な情報を得られないので、どうしても情報伝達のスピードや正確性が低下します。お客様からお電話をいただいたときに担当者が不在で、ほかのメンバーではすぐに対応できない、といったことがしばしばありました。また、お客様との連絡ツールや発注用ツールなど、システムもバラバラで、管理が非常に大変でした。それでもお客様にご迷惑をおかけするわけにはいかないので、裏でスタッフが必死に業務に取り組んでいました。

小田氏 システムを導入すれば、業務の生産性が上がり、私たちの本当にやりたいことに時間を費やせるようになります。また、できることの幅も格段に広がります。たとえば、お客様と式の段取りをお打ち合わせするとき、従来は必ずご来店いただかなければなりませんでしたが、システムがあればリモートなどの方法も選べるようになります。お客様やパートナー企業とのやり取りについても、これまでは電話やメールなどで進捗をそのつど確認する必要がありましたが、そこをお互いに“見える化”すれば、より円滑で実のあるコミュニケーションが可能になります。そういうお客様サービスの向上につながる新たな取り組みを行えるようになることが、システム導入の最大の目的でした。

システム部 向山千尋氏

ーさまざまな製品がある中で、Salesforceを選んだ理由は?

システム部 町田芳樹氏(以下、町田氏) ひとつはやはり機能面です。検討段階からシステムを内製で構築する方針は決まっていて、経験のあるスタッフが少ない中、開発プラットフォームとして基盤の整っているSalesforceなら、学習しながら少しずつ作っていけそうだと感じました。

ただ、最終的に決め手となったのは“人”の部分、セールスフォース・ドットコムなら弊社に寄り添って一緒にプロジェクトを進めてくれそうだと強く感じたことです。営業担当の方が、弊社の業務や課題をしっかりと理解した上で、やりたいことを実現するためのプランを提案してくれました。この会社はきっと最後まで弊社と伴走してくれる、という期待を持てたのが大きかったですね。

システム部 町田芳樹氏

システム部員3名からスタートした導入プロジェクト
自己学習できる意欲的な“人財”確保が成功のカギに

ーシステム構築経験のある方が少なかったということですが、人材の採用や育成、体制づくりをどのように進めましたか?

小田氏 まず、システム化の構想段階から決めていたのは、すべての部門を巻き込んでプロジェクトを立ち上げるということでした。いくらシステムを導入しても、利用が定着しなければ意味がないので、部門長をそれぞれの部門における旗振り役とするプロジェクト体制を作りました。

次に行ったのが“人財”の確保です。それまでシステムに対してほとんど投資してこなかった弊社には、当時システム部員が3名しかいませんでした。そこでまずは社内異動で希望者を募集し、参加を表明した15名のうちの6名を新たなシステム部員としました。それに加えて新卒で3名、中途で3名を採用して計12名。現在は2021年4月入社の新卒3名を加えて15名体制となっています。

選考にあたってITの素養以上に重視したのは、「自己学習できること」です。やはりITの世界では、自ら学び続ける姿勢がないとなかなか成長できません。今はできなくていいから、勉強を続けてできるようになろうとするような“人財”を採用しました。ここにいる向山と竹中も他部門から異動してきたのですが、当初は「Salesforceってなに?」という感じだったよね?

向山氏 完全に「はじめまして」だったので(笑)、最初はTrailheadで学習しながら要件定義を進めていきました。それから、Salesforceエキスパートによる支援を受けられるアクセラレータを活用することで、ほぼすべてのメンバーがSalesforce認定アドミニストレーターの資格を取得することができました。

システム部 竹中慎悟氏(以下、竹中氏) あとは正直、やりながら学んだところが多かったですね。私も向山と同じくなにもわからないところからのスタートだったので、半分は手を動かしながら、残り半分は勉強、という形で取り組みました。強く感じたのは、メンバー全員が「まずは自分で調べてなんとかしよう」という意気込みを持っていたことですね。

ー「セールスフォース・ドットコムは自分たちに寄り添って一緒にプロジェクトを進めてくれそうだ」というのが選定の決め手になったというお話でしたが、実際にはどうでしたか?

町田氏 そこも期待通りでしたね。最初は、私たちが開発しようとしているものに対して、どこから手をつければいいのかさえわからない状態でした。それを受けてセールスフォース・ドットコムの担当の方は、「まずはTrailheadをこういう順番で進めていくのがいい」「アクセラレータはこの順番で取り組めば、いい具合にスキルレベルが上がるのではないか」と的確にアドバイスしてくれる。こちらが疑問に思ったところを丁寧にフォローしてくれる、非常に質の高いサポートでした。

生産性2割向上の目標達成が視野に
働きがいにつながる、「本当にしたかったこと」を考える時間

ー本格的な開発スタートから約3か月でシステム構築をほぼ完了し、2020年9月の稼働に至りました。Salesforce各種製品をそれぞれどのように活用する計画ですか?

町田氏 Lightning Platformは、お客様管理など、社内的な業務のほぼすべてで利用します。また、Experience Cloudは、社外の方とのコミュニケーション基盤となります。お客様やパートナー企業の方が、専用のマイページにアクセスして、披露宴の席配置や引き出物を決めたり、打ち合わせのアポイントを取ったりすることができる仕組みです。

竹中氏 Social Studioについては、SNS上でのお客様のニーズや弊社に対する評価・意見、競合他社の状況などを把握したいと考えています。そのあたりは導入前、たとえば個々のプランナーがお客様のSNSのアカウントを見て、有益な情報をたまたまキャッチアップすることはありましたが、会社としての組織的な定点観測はできていませんでした。Social Studioは、私たちが思ってもみなかったようなお客様の声を吸い上げ、サービス改善に寄与するツールとして、大きな可能性を秘めていると感じています。

システム部 竹中慎悟氏

ーまさに冒頭でお話のあった、お客様サービスの向上につながる新たな取り組みということですね。

竹中氏 そうですね。それからDatoramaについては、弊社で蓄積しているお客様情報や、マーケットの情報など、さまざまな形で散在する情報を統合して“見える化”し、分析するためのツールとして利用します。また、Tableauは、SNSやWebコンテンツ等と連動させ、自動的にWebの施策効果などの最新のデータを取得し、インパクトのあるビジュアルで分析するツールとして利用する予定です。

ー具体的にどのような目標を掲げ、どのような成果を期待していますか?

向山氏 現場で働いているスタッフには、お客様のためにして差し上げたくても、どうしても時間がなくて諦めざるを得ないことがたくさんあります。そういう前向きな気持ちを最大限活かせるように、Salesforceによる効率化で減らせる時間を減らしていく。それが大きな目標です。

それから、弊社はブライダル企業なので女性が多く、結婚や出産を機に退職するケースが少なくありません。オンラインを含め、働き方がもっと多様になれば、ライフスタイルの変化に合わせて仕事を続けることができます。すぐに実現させるのは難しくても、Salesforceがその足がかりになれば、と思っています。

小田氏 システム化の構想段階から私は、生産性の2割向上を目標に掲げてきましたが、十分に達成可能だと思っています。そして、それによって生まれた時間を、お客様と向き合い、クリエイティブなことを考えるために使って欲しい。弊社のスタッフは本来、事務作業をしたくて入社したわけではなく、お客様にすてきなウェディングを提供したいと思ったからこそ入社したわけです。今回のSalesforce導入によって、その本当にしたいことを考える時間が生まれ、それが働きがいにつながればいいなと思っています。

お客様へのサービスには限界がないので、今後、生産性をさらに向上させ、お客様サービスの質をより高めていく。そういうことに自社でいつでも取り組めるのが内製化のメリットなので、常にブラッシュアップしながら発展的なサービスを提供していきたいですね。

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3か月という短期間でSalesforceによる仕組みを作り上げた同社。小田氏によるDX部門の立ち上げ・運営や人材の獲得・育成などのより詳しい内容については、ウェビナー「CIOが本音で語る-DX人材が育つ&働き続けたくなるIT部門作りの”処方箋”」で詳しくお話しいただきます。ご興味のある方はぜひご視聴ください。

※本記事は2021年8月時点の情報です。

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