マーケティング組織にとって、デジタル変革は単なる流行語ではなく、またたく間に現実の社会に定着しました。

Salesforceの最新版 マーケティング最新事情レポートによれば、84%のマーケターが、顧客の期待に応じてデジタル戦略が変化していると答えており、この変革が進む中で、マーケティングの役割の重要性がさらに増していると回答しています。77%のマーケターは、マーケティングによる付加価値が去年よりも増加していると答えました。

今年で第7版となった『マーケティング最新事情』レポートでは、世界37か国の8,200人を対象とする、これまでで最大規模の調査を実施し、マーケティングトレンドを探りました。イベントマーケターやCMOなど、さまざまなマーケティング担当者を対象に、過去1年間の動向や課題を調査するとともに、今後の見通しを聞きました。 

その結果、たとえば 在宅勤務が定着している(英語)現状が明らかになりました。82%のマーケターは、自社がリモートワークについて新しい方針を取り入れたと回答しています。昨年は厳しい状況となりましたが、マーケターは顧客や同僚とつながるために革新的な手法を見出しました。それでも69%のマーケターは、パンデミック前よりもコラボレーションが困難になったと感じています。 変革の1年を乗り越えて翌年へ進むにあたり、マーケターは、いかにして新しい現実に取り組んでいるのでしょう。

レポートから導き出された5つの重要ポイントをご覧ください。

 

1.現在の優先事項、重要課題は「コラボレーション」

マーケターが抱える優先事項と重要課題ランキングには、必ず新しいものが登場します。今回の例では、イノベーションやリアルタイムの顧客エンゲージメントがそれに該当します。今回新たにランクインしたこれらの項目は、マーケターが何に大きな関心を寄せ、かつ対応に苦慮しているかを鮮明に示しています。
 


まずは、マーケターにとっての新たな優先事項であり重要課題でもあるコラボレーションについて取り上げます。リモートワークへの移行が進む中、マーケターの間で同僚とのつながりが薄れています。柔軟なリモートワークを継続することで 従業員も企業も恩恵を得られます(英語)。したがって、今後もビデオ会議やメッセージプラットフォームなどの新進テクノロジーの使用が続く可能性が高いでしょう。

今年の上位5つの優先事項の中には、他にも「チャネルやデバイス全体を通して一貫性のあるカスタマージャーニーの創出」と、「マーケティングROI/アトリビューションの改善」という2つの新しい要素が加わっています。これらの達成にコラボレーションは不可欠です。マーケティングチーム内や、営業やサービス部門とのコラボレーションを進めることが、あらゆるタッチポイントで一貫性のある顧客体験を提供するための唯一の方法です。

パンデミック下で、78%のマーケティング組織が新たな業務コラボレーションテクノロジーを導入したのも不思議ではありません。(デジタル技術に精通していることもさることながら)マーケティングのキャンペーンや活動を連携させることは、マーケティングROIを測定する新たな革新的手法を見つけるのに役立ちます。マーケティングのROIやパフォーマンスの測定能力に十分に満足していると答えたマーケターは31%にとどまります。したがって、リーダーが連携して測定機能の改善に取り組む必要があります。

今年のマーケティング課題の上位5つには、コラボレーションのほかに新たな内容が加わりました。すなわち組織構造やプロセスの不備です。過去1年間に生じた急速なビジネス変革についていけないとマーケターが感じるのは自然なことです。しかし、今こそいったん立ち止まって、顧客への対応と社内の業務効率を改善し成長の加速を図るために、どのようにプロセスを改善すべきか検討する時です。

 

2.イノベーションとレジリエンスでデジタルな顧客需要に対応

パンデミック以降、 企業と消費者のやり取りの60%はデジタルで行われています。パンデミック前は42%でした。 

さまざまな新しいチャネルやテクノロジーであふれる市場でデジタルイノベーションを推進するのは容易なことではありませんが、マーケターは挑戦しています。「新興」と位置付けられるデジタルチャネルにおいてすら、ポッドキャストやストリーミング(OTT)広告などが普及しています。


さまざまな業種、業界、地域でデジタルファーストな手法への大規模な移行が進む中、Petco社CMOのTariq Hassan氏のようなリーダーたちは、急激な変化に正面から向き合っています。

「この1年間にものすごいスピードで変化が押し寄せ、マーケティングの世界もこれまでにないレベルでイノベーションが進みました。私たちは、新しいことを試し、厳しい教訓を学び、再び立ち上がり、前に進み続けています」とHassan氏は語ります。「当社がここまで高い水準のデジタル体験を実現できるようになったのはすばらしいことです。私はPetcoの顧客とパートナーのレジリエンス(しなやかな強さ)とペットへの深い愛情から絶えず刺激を受けており、それがペットの生活をより良いものにしたいと願う当社にとってあらゆる活動の原動力になっています」。

結局のところ、長期的なデジタル変革に必要な力を備え、競争から抜け出すデジタルマーケターになれるかどうかはイノベーションとレジリエンスにかかっています。パフォーマンスの低いマーケター、すなわちパフォーマンスや投資成果全体にあまり満足していないマーケターの48%は、マーケティング戦略や方針、テクノロジーのイノベーションに苦戦していると答えました。一方で、パフォーマンスの高いマーケター、すなわち成果に満足しているマーケターで同様の回答をした人は31%にとどまっています。

 

3.大量のデータが、質の高いデータやスマートな意思決定に直結するわけではない

マーケターは2020年にくらべて2022年に使用するデータ量を平均で75%増加させる予定です。しかし、データを十分に活用して関連性の高い顧客体験を実現できていると考えるマーケターは、わずか33%にとどまります。

この結果をパフォーマンスの高いマーケティング組織とパフォーマンスの低いマーケティング組織で分類すると、別の統計結果が現れます。パフォーマンスの高いマーケターの47%が、データを十分に活用して関連性の高い顧客体験を実現できていると考える一方、同様の回答を選んだパフォーマンスの低いマーケターは8%にとどまります。

顧客データの世界には明らかな問題がありますが、どうやって解決すべきでしょうか。

マーケターは、データソースを増やしたからといって顧客についての豊かなインサイトを得られるわけではないことを、心得ておかなければなりません。事実、データの質はまだ物足りない点が多いというのがマーケターの実感です。


マーケティングリーダーが組織内で率先してデータに関する啓発活動を行い、チームのテータリタラシーを高めれば、データ管理を改善する機会が得られるでしょう。たとえば、 Bank of GeorgiaのCMO、Levan Gomshiashvili氏のチームは、顧客の金融ニーズと金融以外のニーズに関するデータを収集しました。それらを一元管理して、データドリブンな顧客理解を深めています。データの質を上げるには、データリタラシーを高めることも有効です。明確な意図でデータソースを選択し、ITチームとのスムーズなコミュニケーションを通して緊密に連携し、データの統合を進めることができます。 

今後のマーケティング戦略はデータドリブンです。したがって、長期的な成功を収めるにはデータプラクティスに投資しておくことが重要です。

 

4.アカウントベースドマーケティングは有望だが注意が必要

昨年のマーケティング最新事情レポートでは、アカウントベースドマーケティング(ABM)が急速に浸透していることが明らかになりました。今年は79%のB2BマーケターがABMプラットフォームを使っていると回答しており、B2BとB2B2Cのマーケティング予算に占めるアカウントベースドマーケティングの割合は平均で16%です。B2Bバイヤーは、一般消費者がパンデミックの移行期に享受するようになったのと同レベルの共感とパーソナライズをデジタルファーストのB2B販売サイトに期待しており、この傾向に対応するのがABMプログラムです。 


しかしABMに多くのリソースが割かれているにもかかわらず、自社のアカウントベースドマーケティングプログラムにおける任意の機能(テクノロジー、測定能力、パーソナライズ機能、ターゲットアカウントの特定など)に十分に満足しているマーケターは全体の半分以下にすぎません。このズレは何が原因でしょうか。

ABMプログラムはB2Bマーケターにとっては比較的新しいツールですが、導入したという事実で満足してしまってはいけません。ABMを使いこなすには、営業チームとの連携に努め、市場と同じスピードで変化するテクノロジースキルの習得に努めることが必要です。 

Land O’Lakes社のCOMであるHeather Malenshek氏は、ABMプログラムには時間とリソースの大きな投資が必要ではあるが、投資利益率も高いという見方に賛成しています。 

「アカウントベースドマーケティングは、非常に大きな投資利益率を生み出し続けています」とMalenshek氏は言います。「誤解しないでいただきたいのですが、大きな投資は必要です。またマーケティング、営業、サービスのチームが必要なレベルで連携するのは容易ではありません。しかし、その見返りとして実現できる顧客体験や顧客関係には今までにない価値があります」

ABMを導入するB2Bマーケターは今後も増加していくでしょう。しかし、 アカウントベースドマーケティングで優れた成果を上げるには(英語)、必要なデジタルスキルを習得し、営業やサービス部門と連携するためのプランを今すぐ立ち上げなければなりません。 

 

5.マーケターが将来に備えるにはトレーニングが必要

マーケティングチームのスキルを向上させる方法は、大きく分けて2つあります。新規採用によって知識不足を解消する方法と、既存スタッフの再教育や新しいスキルの習得を通じて変化のスピードに対応する方法です。チームが将来にわたって優秀な成績を収めるには、どちらの選択肢を採るべきでしょうか。

答えは、社内で利用可能なトレーニングリソースの質に応じて異なります。残念ながら、多くのチームにとってこの点が懸念材料になっているようです。事実、自社のトレーニングを「非常に良い」と評価したマーケターはわずか44%しかいないという結果が出ています。 

マーケターからの要望がもっとも多いスキルのトレーニングですら十分ではありません。マーケターがもっとも改善したいスキルは創造力ですが、この分野でトレーニングを提供している企業は44%にすぎません。需要の高い重要データ分析スキルですら十分ではなく、分析トレーニングを提供している企業は39%にとどまります。 

したがって、マーケティングリーダーには決断が求められます。既存スタッフの再教育に頼るべきでしょうか。それとも他を当たるべきでしょうか。 

この選択の第一歩は、先を見据えて意識的な決断を下すことです。マーケティングリーダーは、既存のトレーニングリソースを詳細に確認し、それが将来のマーケティング戦略に向けたチームのスキルアップに十分なものかどうかを見極めなければなりません。流動的な市場に対応して、顧客の要望やニーズを満たす新しいトレンドに適応するには、チームに適切なスキルが必要です。

JoinMyTrip社のCMO、Guillermo Plasencia氏は次のように述べています。「変化の早い市場に適応可能な能力を備えておくことが重要です。この1年は、移行の年であり、チャンスの年でもあります。マーケターは、重要な投資対象分野と開拓の見込みがある分野を強化し、プランAを実行する必要がありますが、同時にプランBとプランCの準備もしておかなくてはなりません。デジタルファーストの時代に備えてテクノロジーやコンテンツ、スキルの高い人材などを優先することで、将来どんなことが起きても常に他社に先んじることができます」。

あらゆる業界で急速に変革が進む現在、将来にわたって成功を収めることは困難であると世界中のマーケターが考えています。しかし、既存の枠にとらわれない姿勢で チームの再教育のためのリソースを整えることこそが、必要な解決策なのです。

 

マーケターの最優先事項は何か?

さらに詳しいインサイトを得るには、マーケティング最新事情レポート第7版をご覧ください。世界8,200人のマーケターからのインサイトを掲載しています。