Salesforce Platformのことなら誰よりも知る人物―それがSalesforceの共同創業者兼最高技術責任者(CTO)を務めるパーカー・ハリスです。彼は22年にわたり、Salesforce Platformに専念してきました。 

創業からこれほど年月が経った今でも、Salesforce Platformの話になると彼は目を輝かせます。  インタビューの合間にも、このプラットフォームについて学んでいる従業員に向かって「Lightningは最高だよ」と満面の笑みで熱弁をふるっていました。彼の言う「Lightning」とは、もちろん2014年にリリースされたSalesforce Lightning Platformのことです。その登場によって、開発者や管理者は新たな方法でSalesforce上でアプリを操作・構築できるようになりました。

この日の午後、ハリスはサンフランシスコの自宅オフィスからインタビューに参加しました。肩越しに見えるテーブルには、勤続年数を示す「5」、「10」、「15」、「20」と描かれたサーフボードのフィギュアが誇らしげに飾ってあります。

 

サンフランシスコの自宅オフィスでインタビューに答える
パーカー・ハリス(Salesforce共同創業者兼CTO)

 

2日後には、TrailheaDX(英語)のセンターステージで、そのプラットフォームに関する最新ニュースを発表する予定です。 

Salesforceのプラットフォームでは、常にフルスピードでイノベーションが進んでいます。特に力を入れているのがローコード分野です。先日発表されたDynamic Interactions(英語)やHyperforceなどでは、Salesforceのプラットフォームと主要パブリッククラウドとの新たな関係性が示されました。

今回のインタビューでは、この20年間でSalesforce Platformが遂げた進化についての省察、将来の展望、さらにはお客様がSalesforceの実装の際にコード開発を省くようになっていることを喜ぶ理由についてハリスが語ります。

 

Q:あなたは22年もの間、Salesforceの共同創業者兼CTOを務めてきました。その間、ソフトウェア業界でもっとも大きく変化したことは何ですか?

ありとあらゆるものが変わりました。Salesforce創業時、iPhoneはなかったし、FacebookもTwitterも、そもそもソーシャルメディアプラットフォームがありませんでした。Amazon Web Services、Google Cloud Platform、Azureといったサービスを提供するハイパースケーラー(大規模事業者)も存在しませんでした。 

これらはすべて、Salesforceを創業した1999年から今までの22年の間に生まれたものです。

創業当時はインターネット上でクレジットカード番号を入力することすらためらう風潮があり、顧客リストをネット上に置くなんてもってのほかでした。多くの潜在顧客から、「Salesforceを使うつもりはないよ。顧客リストをインターネットに置くなんてありえない。リスクが高すぎるし、危険すぎる」と言われたものです。当時は、自社のデータセンターで業務を運用・管理するほうが安全と考えられていたのです。 

 

 Salesforce初オフィスでの創業初日の様子をパーカー・ハリスが紹介する短いホームビデオ

 

しかしその後、顧客情報の保護を常に中核業務の一環としてとして取り組んでいるクラウドプロバイダーに任せたほうが実は安全なのではないかというふうに、人々の考えが変わってきました。それは、劇的な変化でした。 

直近の1年間について考えると、みんなが家に閉じこもり、あらゆるものがデジタル化した1年でした。このインタビューもオンラインでやっていますし、デジタルですよね。私たちは物理的に同じ場所にいるわけではありません。販売やカスタマーサービスといった企業活動もバーチャル空間で行われています。 

デル・テクノロジーズ社は、1週間でオペレーター全員を在宅勤務にしました。Salesforceを導入している同社は、パンデミックの間も顧客にカスタマーサービスを滞りなく提供することができました。Eコマースは爆発的な伸びを見せています。何もかもがスピードアップし、デジタル化も一層進みました。

 

Q:創業当初、アプリケーションだけでなくプラットフォームまで構築するという壮大な賭けをしましたね。その決断に至った理由は何だったのでしょう?

決断というか、会社を始めるときに、そうしなきゃいけない、と思ったんです。私たちには国を問わず、できるだけ多くのお客様にサービスを提供したいという確固たる想いがありましたから。

当時は現在のような姿は想像できませんでしたが、さまざまな分野に、大小さまざまな規模のお客様がいるというイメージはありました。

そこで、一体どうやって進めていこうか。すべてのお客様にどうやってサービスを提供しようか、と考えました。 
 

パーカー・ハリスの写真
1999年、サンフランシスコのテレグラフヒル地区に構えた最初のオフィスにて

 

そのためにサンフランシスコのベイエリアにある小さなハイテク企業でも、英国やオーストラリア、世界中の非ハイテク企業でも使えるような、ソフトウェア一式を実装できるメタデータ駆動型のプラットフォームの発明に至ったんです。 

しばらくして、医療業界の方が私たちのオフィスを訪ねてきて、こう言ったんです。「私たちは患者ケアの仕事をしています。私たちにとって『取引先』は病院であり『プロスペクト』は患者なのでタブの名前を変えたいのですが」

 

"お客様の声に応えて、望みをかなえる。それを22年間積み重ねてきた結果、サービスとともに、信頼、カスタマーサクセス、イノベーション、平等を届けることができたのです。"

-パーカー・ハリス、Salesforce共同創業者兼CTO

 

最初は、「取引先」を「病院」と読み替えて使ってくれたらいいのに、と思いました。しかし、マーク(Salesforce共同創業者兼CEOのマーク・ベニオフ)は「いや、対応しよう」と言ったのです。 

そこで、ユーザー側でタブ名を変更したり、独自のテーブルやカスタムオブジェクトを作成したりできるように改良しました。ワークフロー機能も追加しました。 

つまり、お客様の声に応えて、望みをかなえる。そして、それを22年間積み重ねてきた結果、我々はサービスとともに、信頼、カスタマーサクセス、イノベーション、平等を届けることができたのです。

 

Q:  Salesforce Platformがもたらすスピードと柔軟性が今、これほど重要性を帯びているのはなぜでしょうか?

Work.comを例にとって説明しましょう。パンデミック発生当初は、Work.comという発想すらありませんでした。しかし社会の状況を見て、「ちょっと待てよ、みんな家に閉じこもっているじゃないか」と思ったのです。

そこで、さまざまなことを考えてみました。「コンタクト・トレーシングに関して、私たちができることは何か」から始まって、「在宅勤務になった人をどうやってサポートしていくのか」「パンデミックが落ち着いて、オフィスが再開するときに手伝えることはあるか」「そのとき、Salesforce Platformにできることは何か」という風にです。

 

従業員が重要なツールやリソースにアクセスするための
中心的なデジタルハブとして機能する「従業員ワークスペース」

 

そのような過程を経て誕生したのがWork.comです。パンデミックの真っただ中、数チームを集めて「まったく新しい製品が、今すぐに必要だ」と指示を出しました。  このプロジェクトは、私たちのプラットフォームがなければ実現しなかったでしょう。彼らはコードをゼロから書く必要がなかったのですから。

チームはSalesforce Platformを使ってすばやく対応し、さまざまな機能を持つ新サービス「Work.com」を立ち上げました。着想からリリースまで、わずか6週間でWork.comは完成したんです。

 

Q:Work.comチームがコードをゼロから書く手間を省けた理由の1つは、Salesforce Platformの中核がローコードツールだったからということですね。デジタル変革がこれほど急速に進む世界では、ローコードの存在感が際立ちます。しかし、デジタル変革が叫ばれるずっと昔からSalesforce Platformの中心思想にローコードがあったのはなぜでしょうか?

Salesforceのリリース当初は、ローコード機能しかありませんでした。できることは、タブの名前を変えるとか、オブジェクトやテーブルにフィールドを追加して情報を追跡するとか、それくらいでした。しかし、徐々にコードへのサポートを増やしていきました。Apexが加わり、Workflowや、コードを書いてユーザーエクスペリエンス(UX)を提供するVisualforceも加わりました。それが進化して、現在の最先端テクノロジーであるLightningとLightning Webコンポーネントに至ります。 

私たちはいつも、「シンプルなものはシンプルなままに、難しいものは実現可能なレベルまでシンプルに」と言っていますが、もう1つ、もっと重要なことが欠けていると思うんです。それは、「できるからというだけでコード開発をする必要はない」ということです。

 

"パンデミックの真っただ中、数チームを集めて「まったく新しい製品が、今すぐに必要だ」と指示を出しました。  このプロジェクトは、私たちのプラットフォームがなければ実現しなかったでしょう。彼らはコードをゼロから書く必要がなかったのですから。"

-パーカー・ハリス、Salesforce共同創業者兼CTO

 

私たちは、すべてのお客様と共に将来に向かって歩んでいます。ローコードこそが将来あるべき姿だと確信しています。私はいつだって、チームがコードベースからコードを削除したり、お客様が実装時にコードを削減したとき、祝福の言葉を贈ります。 

どんなプラットフォームやテクノロジーを使う場合でも、コード開発には変更の難しさ、敷居の高さ、そしてコストがつきまといます。ですから、製品や実装時のコードは少ないほうが望ましいのです。

 

マーク・ベニオフ(写真右、Salesforce共同創業者兼CEO)と共に登壇するパーカー・ハリス(写真左)
2019年Dreamforceにて

 

ローコードはWork.comとVaccine Cloudを立ち上げる原動力になりました。今日、ITリーダーの83%がローコード開発ツールの使用を増やす予定(英語)という調査結果もあります。 

 

"どんなプラットフォームやテクノロジーを使う場合でも、コード開発には変更の難しさ、敷居の高さ、そしてコストがつきまといます。ですから、製品や実装時のコードは少ないほうが望ましいのです。"

-パーカー・ハリス、Salesforce共同創業者兼CTO

 

それに、ローコード開発のトッププラットフォームといえばSalesforceです。そういうこともあって、私はTrailheaDX(英語)で新しい機能を紹介するのを心待ちにしています。[編集者注:TrailheaDXは6月23日午前9時(太平洋標準時)、パーカー・ハリスの基調講演で幕を開けます。基調講演はこちらでご覧いただけます(英語)]

 

Q:2~5年後のSalesforce Platformについて、どのような展望を描いていますか?

まず、プラットフォームのセキュリティ、コンプライアンス、信頼性をさらに強化し、揺るぎないものにします。その多くは、パブリッククラウドへの移行をサポートするHyperforceを通じて実現します。 

Hyperforceなら、データレジデンシーの問題、たとえば、お客様に「データはフランスに置きたい」と言われた場合でも、すばやく簡単に対応できます。

Hyperforceなら、世界のほぼあらゆる場所で、私たちのシステムを稼働できます。しかも大規模にです。この新たなデジタル世界では、あらゆる会社がB2C企業として、B2Cのスケールの問題に直面していますが、私たちのプラットフォームはそれに柔軟に対応できるようになります。

次に、私たちは膨大なお客様のデータをホストしていますので、それを上回る価値を還元したいと考えています。Salesforce CDP(顧客データプラットフォーム)を使えば、Salesforceでホストしているデータだけでなく、お客様の組織にある他のデータアセットとも連携できます。

 

 

Salesforce CDP captures, unifies, and activates audience data to deliver more personalized customer experiences.

オーディエンスデータの収集、統合、有効活用によって、
顧客体験のさらなるパーソナライズを実現するSalesforce CDP

 

お客様のデータを、拡張性、安全性、信頼性に優れるSalesforceのプラットフォームに集約し、活用できるようにします。メールやSMSを送信するときは、顧客のあらゆる情報を把握できる360度ビューを利用できます。 

この360度ビューは即時性があり、常に最新情報を表示します。1か月前ではなく5秒前の、顧客がウェブサイトにアクセスしたりモバイルアプリを開いたり、実店舗に入店したりした瞬間の情報です。 

そのような、ちょっとしたデジタルシグナルがあれば、「お客様が商品を購入しようとしているとき」、「カスタマーサービスを必要としているとき」、「興味があることについてマーケティングメールを受け取ったとき」など、その瞬間を捉えて、よりよい顧客体験を提供しやすくなります。もちろん、そのような情報を利用する許可を得ていればという前提であり、プラットフォームでプライバシーの管理も強化されています。

 

"この新たなデジタル世界では、あらゆる会社がB2C企業として、B2Cのスケールの問題に直面していますが、私たちのプラットフォームはそれに対応できます。"

-パーカー・ハリス、Salesforce共同創業者兼CTO

 

データをひとまとめにして分析する方法を、どの企業も模索しています。しかし真の問題は、それをただひとまとめにして分析することではなく、それを何に活用するかです。 

そのような方向に進めば素晴らしいと思いますし、Customer 360をあらゆるタッチポイント、ハイパースケール、リアルタイムで活用する意義は、まさにその点にあるのです。

ポッドキャスト「Blazing Trails」でパーカー・ハリスのインタビュー全編を聞くことができます。