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セールスフォース・ジャパンの副社長が考える営業を成功させる営業組織像と実践的アプローチとは?〜「営業実践」編

セールスフォース・ジャパンの副社長が考える営業を成功させる営業組織像と実践的アプローチとは?〜「営業実践」編

セールスフォース・ジャパンの副社長を務め、営業組織の総責任者であり、また自身も「顧客志向」を重視した営業スタイルを貫く古森 茂幹に、強い営業組織づくりや人材育成ノウハウについて聞きました。

長年にわたり「カスタマーサクセス」を大切にしながらお客様の声や課題を聞き、寄り添ってきたセールスフォース・ジャパン(以下、Salesforce)取締役 副社長 古森 茂幹に、お客様に選ばれる営業パーソンの特徴や営業スキルの高め方とアプローチについて、セールスフォース・ジャパン Senior BDRの平島 郁巳が聞きました。営業部門の責任者が考える営業パーソンに必要なマインドセット、スキルセットなど実践で役立つ具体的なポイントをご紹介します。

「お客様に選ばれる営業」は、顧客の潜在ニーズを理解し、すぐに解決策を提案する

―前職では30年以上BtoBの営業をしていたとのことですが、Salesforceに入社したきっかけを教えてください

Salesforceに入社する前は、外資系のコンピューターメーカーで30年以上営業の仕事をしていました。いわゆるBtoBビジネスでエンタープライズ系のお客様と仕事をしていて、製造・流通・金融・公共・通信など、多くの産業向け営業を経験しています。

そこで大きな転機になったのが、自社にCRMとしてSalesforceを導入するプロジェクトのリーダーになったことです。「これはすごい!」と、レガシーなITから新しいITへの時代の大きなうねりを感じて、使う側から売る側にシフトチェンジしたのがSalesforceに入社したきっかけです。

本来、ITとはビジネスの目的を達成するために活用するものですが、ITを導入すること自体が目的になってしまい、ビジネスにうまく活用できていないケースも散見されます。ひと昔前はソフトウェアはテーラーメイドが基本で、各社固有のニーズを満たすために独自のシステムやツールをスクラッチで作るということがほとんどでした。そこにSalesforceのようなSaaSのビジネスが生まれ、クラウドサービスを通じていつでもどこでも、企業規模に関わらず最新のテクノロジーをサブスクリプションベースで利用できるようになったことで、導入側の意思決定も速くなり、目的を達成するスピードが非常に速くなりました。ITの大きな変革期の中で、このように新しいビジネスモデルやテクノロジーを提供するSalesforceに魅力を感じて今のポジションに至ります。

―Salesforceに入社して8年目を迎えたということですが、現在の営業組織の構成や、そのなかで見えてきた「お客様に選ばれる営業」について教えてください。

Salesforceの営業組織は、マーケティング、インサイドセールス(内勤営業)、外勤営業、カスタマーサクセスのそれぞれのチームが協調してお客様の成功を支援する「The Model」という営業プロセスモデルを採用しています。まず、市場に役立つ情報を届け、潜在ニーズや見込み顧客を発掘するマーケティングのチーム。マーケティングで獲得した見込み顧客に対して潜在ニーズを顕在化し顧客を育成していくインサイドセールスのチーム。顕在化されたお客様の問題を解決すべく商談から受注へつなぐ外勤営業。そして、導入いただいた製品をお客様側で最大限に活用していただき、価値を感じていただけるようお客様のニーズの変化に対してサポートしながら、継続的な契約に結びつけるカスタマーサクセスチームです。このほかに、営業組織全体を支えるビジネスオペレーションのチームもあります。

Salesforceが大切にしているのは「The Model」全体のチームワークです。 社内では“Don’t win alone. Don’t lose alone.(=「一人で勝つな、一人で負けるな」)”とも言っていますが、最終的な目標はお客様の成功ですから、そこに向かって皆で助け合いながら仕事をしています。

それぞれのチームがお客様と接点を持ち、コミュニケーションを行っていますが、一般的な「営業」という役割は3番目に申し上げた「外勤営業」が担っています。

お客様に喜ばれる、またはお客様を成功に導く営業スタイルはいろいろとありますので、やり方はひとつではありませんが、大きな視点でいうと、お客様に選ばれる営業は、お客様の潜在ニーズを理解して、すぐにその問題解決のための提案ができることではないでしょうか。お客様に適度に寄り添いながら、しつこく思われない関係を構築できるバランス感覚を持つ人はいいですね。コミュニケーション上手な営業担当には、心の内を明かしてくれるお客様もいます。このようなインタビューの中でも、お互いの意見に共感する反応を示していくと、深い話ができますよね。

もちろん、営業には話を聞くだけではなく、お客様に役立つアウトプットをすることも求められています。最近では、朝に話を聞いたらその日の昼、昼に話を聞いたら夕方には回答するというスピード感で対応していくのが重要だと思っています。「じっくり考えますので1週間ください」と時間をおくと、その間にお客様の状況が変わってしまうこともあるからです。それくらい時間の重要度が増していると実感しています。
 

共感の姿勢と職務経験、メンバーからのフィードバックで成長する

―営業としてのスキルはどのように培うことができるのでしょうか

まず、前提として「高い値段で売ろう!」ではなく「なぜお客様はこの商品を購入するのか?」と考えることが大事です。繰り返しになりますが、ベースとなるのは「お客様の成功の役に立てているかどうか」です。そういったマインドでスキルを身につけるには、職務経験がカギとなります。座学で学ぶのも大切ですが、一番学びがあるのは職務経験からだと考えます。Salesforceでは、営業担当者の日々の職務経験仕事に対して同僚や上司など、チームのメンバーが常にフィードバックすることを日常的にしています。営業の実体験を通してキャリアに必要なスキルを身につけていくのです。同僚や上司だけでなく、営業人材の育成やコーチングを行うセールスイネーブルメント(Enablement)チームもメンバーの成長をサポートします。

ほかにも、社内でフィードバックし合う土壌ができていると実感します。たとえば社内のSlackチャンネルで、お客様の難しい課題を共有し「どう提案すればよいか」と相談すると、その案件に関わりの無いひとでも回答してくれるシーンを多く見かけます。

すべてはSalesforceのすべての活動の中心にお客様を据えるという顧客中心の考え方から派生し、そのお客様に直接関係ないメンバーでも助けあうチームワークの文化が根付いているのです。

―古森さん自身、営業として常に意識されていることはありますか

お客様との会話では、すべてイエスから入ります。お客様に「いや、それは違います」「ちょっとわかりません」と言っても、次に話がつながりません。「そうですか、なるほど。それは例えば具体的にどういうことですか?」と会話をつなげていくことで、お客様の課題を顕在化していくのです。特に初めてのお客様では、私たちが知らない、もしくは踏み込めない、お客様固有の状況(社内ルールや習慣など)というものがあります。そしてその状況の裏には必ず何か理由や事情があるはずです。ですから、まずは肯定から入って、理解を深めていきます。人付き合いで大事な点もそういうことですよね。

また、問題解決方法もひとつではありませんので、お客様のことを本当に理解して、解決のための真実を探り出すことが重要です。さらに、営業担当者は、相手の言葉を聞き入れ、なにか間違えたらすぐに謝るなど、常に素直であることが求められると思います。

Salesforceではグローバルで「ビギナーズマインド(初心)」の考えを大切にしています。キャリアを重ねると、経験からプライドや偏見を持つ場合があります。そういったものをいったんリセットして初心に戻り、自分の役割を全うする心構えのことです。私は営業部門の責任者ではありますが、オフィスにじっと座ってリモートで指揮を執るといったスタイルは好きではありません。常に初心に立ち帰り、お客様とお会いし、お客様の視点で現場の声を聞くように心がけています。

また、営業もマネジメント層になると全体を俯瞰するだけでなく、お客様が潜在的に感じている課題や営業現場で起こっている真の課題を”特定”することも重要です。お客様はたくさんいらっしゃいますので、すべての現場に赴くことはできませんが、なるべく現場で直接お客様から問題を聞くようにしています。それが難しい場合でも、現場でお客様の声を聞いている担当者に話を聞くなどの工夫はしています。そのうえで、あるお客様の問題に対して「それならAさんのお客様も同じ問題を抱えていて解決しました。まずAさんに相談してみては?」といった担当者間の共有をうながすことも多々あります。こうしたチームや部門を超えた情報共有はまさにSalesforceの真骨頂ですので、うまくツールを併用すればみんながやりやすくなると思いますね。
 

現場の状況を共有して、次のアクションを共に形成していくことで、スキルを継承

―営業としてのマインドやスキルを若手に継承していくには、職務経験が重要だと言うことですが、具体的にはどのようにすればいいのでしょうか

お客様のところに営業担当者と同行するときには、事前にお客様に関する情報を共有をしてもらったうえで、お客様とはアイスブレイクも兼ねて対話を通じてお悩みを聞き出します。その訪問が終わったあと、移動中やカフェなどで担当者とコミュニケーションの振り返りをします。職務経験を通したフィードバックを日常業務にするというのはこういったことですね。

上司から「ああしたほうがいい、こうしないとだめだ」というトップダウンの指示ではなく、営業担当者と経験を共有しながら「自分はこう思ったんだけど、どうしたらいいと思う?」と次のアクションについて議論し、継承していくアプローチです。営業担当者はそこで、上司や他のチームと合意を形成して提案をしていくなかでいろいろと学ぶことができます。格闘技の選手が座学で格闘技を学ぶよりも実戦を積み重ねたほうが強くなるのと同じです。

合意形成のなかでは、若手の営業担当者は臆することなく積極的に自分の意見をぶつけることによって、議論が深まり、上司の経験値やスキルをも引き出すことが可能になります。それをすべて自分の武器にして自分なりの営業スタイルにアレンジしていくのがお客様に選ばれる営業パーソンのスキルアップのカタチですね。

状況の共有とフィードバックは常に対面でなくてもリモートでもできますので、どんな形であれ日常的に積み重ねていくことが大事です。前職を含めた私の営業としての経験は、このような伴走型の職務経験から得たフィードバックによって培われていますし、その経験がお客様に選ばれる営業組織をつくっていく上で、今役立っていると感じています。

Salesforceって何がすごいの?

営業、サービス、マーケティングやITにSalesforceはさまざまな効果を発揮します。あなたの業務にも。

ー聞き手平島の取材後記

営業のミッションは「売る」ことであることに間違いはないのですが、古森の話を通して「売る」ことの本質は「お客様の課題を解決する」「お客様の成長に貢献する」ことであるとあらためて立ち返りました。まさに「ビギナーズマインド(初心)」の考えですね。そして、それができる営業がお客様から選ばれるのだと思います。これからもこの本質を忘れずにお客様と向き合っていきたいと思います!皆様にも参考になりましたらうれしいです。古森のインタビュー第1弾「組織論編」もあわせてご覧ください。

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