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2022年、公共機関のデジタルトランスフォーメーション(DX)

2022年、公共機関のデジタルトランスフォーメーション(DX)

2022年の公共機関を牽引する新たなトレンドは、リモートワーク、人工知能、従業員体験、そしてデータセキュリティです。

テクノロジーがいかに未来を形作るか、よく話題にあがります。実際、いたるところで活用されているテクノロジーが、多くの機関と人々のやりとりの中心にあることは確かです。世界中の公共機関と地域社会のつながり方においても、この傾向はより強くなっています。

公共機関は私たち社会に属するあらゆる人の私生活、そして社会生活にとって重要な存在です。公共機関が意思決定を行う際、世界経済や公衆衛生、環境の持続可能性、公正性の実践、データプライバシー基準など、幅広いインパクトエリアの軌道に影響を及ぼします。 

今回、Salesforceの業界エキスパート5名に、過去2年間急速な学びと成長を見せ、今もその勢いを増している市場の動きと、今後1年間の流れを決定する新たなトレンドについての見解を伺いました。また、グローバルな公共機関の見通しに与える影響についても伺いました。

継続的に拡大が続くリモートワーク、従業員体験の重視、信頼と責任ある企業、データセキュリティの強化、人工知能(AI)による作業の自動化などが共通するテーマとして挙げられます。以下、リーダーたちのコメントをご覧ください。

1.デジタル変革計画では従業員体験を中心に

— Mia Jordan(英語)、公共機関担当デジタルトランスフォーメーションエグゼクティブ

この新しい「どこからでも仕事で成果を上げられる」社会では、人々が場所を問わず最高の仕事をし、クリエイティブな方法でコラボレーションできるよう、プロセスとテクノロジーを最適化する必要があります。すべてがデジタル化され、どこからでも仕事ができる状況はパンデミック終息後も継続するでしょう。実際、世界の公務員の3分の1(英語)は永続的にハイブリッドワーカーとなり、多くの組織が現在、働き方を永久に変えようとしています。この新しいオンラインの世界で任務を遂行するために必要なデジタルツールを持ちあわせていない公務員は多く、これは新たな課題を生み出しています。 

顧客体験だけでなく、従業員体験(英語)にも重点を置く組織は、従業員エンゲージメントが飛躍的に向上し、生産性において大幅な向上を実現しています。公共機関は、デジタルサービスの実現とデジタルツールを最適に活用するためにバックオフィスの変革に重点を置くことで、利益につなげることができます。逆に、そこを断念してしまうとデジタル投資に対するリターンのペースが大幅に低下することになります。つまり、このままの状態で現状を維持すると、マイナスの影響を及ぼす可能性があるということです。

市民体験を向上させるには、新たなツールや機能、プロセスへの投資が必要です。このような分野への投資は、従業員の士気や定着率の向上など、長期的な利益をもたらします。

MIA JORDAN
デジタルトランスフォーメーションエグゼクティブ

結果として公共機関は、オンボーディングやプロビジョニングなど人事関連プロセスのデジタル化と自動化に引き続き注力することが予想されます。さらに行政機関は、包括的な文化を構築し、最適な人材を引き付け維持するため、そして従業員が継続的にスキルを向上させ、デジタル経済での競争力を磨く機会を提供するために、新しいテクノロジーを活用することに、もっと寛容でなければなりません。 

組織が時代の最先端を行くには、従業員のライフサイクルに対する近代的なアプローチに焦点を当て、それをチームに提供する必要があります。従業員のニーズを満たし、リモートでの仕事を容易にすることで、あらゆる人により良い効果をもたらします。

2.ESGへの取り組みは例外なく、すべての組織が重視すべき

— Sunya Norman(英語)、ESG戦略およびエンゲージメント担当バイスプレジデント

2029年には、ミレニアル世代とZ世代が世界の労働人口の72%(英語)を占めると言われています。これらの世代は、前の世代よりも環境や社会問題をより気にかけ、これらの問題に関して雇用主に行動をおこすよう、より期待しています。 

そしてステークホルダーは、サービスの提供や経済的成果を向上させるだけでなく、社会を改善するような政策が策定されるよう、企業や行政組織による環境、社会、ガバナンス(ESG)に対する説明責任と透明性の向上を引き続き求めていくでしょう。

公共機関は、地球と社会のためになる新しい行動、運営モデル、政策を実行する力を持っていいます。来年に向けて、このエリアはますます注力されていくと予想されます。

ネットゼロコミットメント(英語)や、より広範で標準化されたESG慣行を求める声は、かつてないほど高まっています。行政機関や民間の委託業者などの公共機関は、大きな役割を担っています。多くの組織が、ESG関連の影響、分野を幅広く対象とする国連の持続可能な開発目標(英語)に沿うよう選択しています。

ステークホルダーは、企業や行政機関がESGを重視することをますます求めるようになっています。そして、一人ひとりが一歩踏みだし、行動を起こすよう求めています。

SUNYA NORMAN
ESG戦略およびエンゲージメント担当バイスプレジデント

世界最大の雇用主であり、エネルギーの大量消費者である公共機関は、ポジティブな変化を加速させる先駆者としての役割を担っているのです。2022年以降、行政機関や行政関連企業には、テクノロジープロバイダーが提供するより持続可能なソリューションを活用する多くのチャンスがあります。 

新しい年に向けて、成長と関連性の維持を望む公共機関は、ESGイニシアチブを最適化、および推進できる領域を発見して、テクノロジーの取得や使用方法において、より持続可能な方法を採用する機会に注力していくようになります。また、ステークホルダー間の透明性を優先させていくことにもなるでしょう。

3.成功の貴重な要因でありながら、見落とされがちな「信頼」

— Eva Skidmore(英語)、国際公共機関およびマーケティング担当バイスプレジデント

36か国で2万4,500人を対象に、行政サービスのデジタルチャネル利用について調査したところ87%の人が、行政機関のデジタルでの顧客体験が優れていれば信頼度が増すと回答しました。デジタル変革の話題の中心になるテーマは「信頼」ではないかもしれませんが、公共機関のお客様は、「信頼」が業務の効率化につながることを十分理解しています。

現在、市民は民間企業と同じような効率性を行政機関にも求めています。デジタルへの期待とその実現との間のギャップは広がっていますが、幸いなことに、行政機関は変化を受け入れる姿勢を持ち合わせています。

ですが通常、公共機関が新しいツールやプロセス(英語)を採り入れる際は、より複雑で、より時間がかかるプロセスに対処しなければならないことは依然として事実です。民間企業が直面しないような新たな課題がしばしば発生します。変革は可能であるだけでなく、もはや必然であり、市民や顧客の信頼を念頭に置いた確固たる変革のロードマップがあれば、より早く実現できます。

4.将来を見据えたデータによって高まるROI

— Nasi Jazayeri、公共機関担当エグゼクティブバイスプレジデント兼ジェネラルマネージャー

世界的に職場の定義が柔軟になり、どこからでも働ける状況に適応し続ける中、セキュリティとアクセシビリティの重要度は、すべての組織でますます高まっています。従業員の能力向上、行政機関によるサービス提供の実現、リモートでの顧客対応など、認証とアクセシビリティは、ゼロトラストのセキュリティアーキテクチャの限界に挑戦しています。しかし、それは攻撃者にとっての新たな脅威ベクトルが常に生み出されることを意味します。 

特にランサムウェアは2021年に新記録を打ち立て、世界の多くの行政機関はデータを保護し、行政システムに対する市民の信頼を維持するために、ゼロトラストアーキテクチャの導入方法を模索し始めています。

公共機関は、強力なサイバーセキュリティ基準を維持し、テクノロジープラットフォームが国内および国際的なコンプライアンス基準にもとづき構築されていることを確認する必要があります。さらに、市場投入までの時間を短縮する必要性を損ねることなく、安全に拡張し、リスクと総所有コストを低く抑える必要があります。

デジタル化が加速する現在の環境では、スピードは依然として成功の重要な要素ですが、ユーザーのニーズとITチームのリソースとの間のITサービスの需給ギャップが拡大していることも事実です。そしてこのような需給ギャップの拡大は、現代の需要に対応できない旧式のプロセスやシステムに依存しているという、もう1つの根本的なリスクを浮き彫りにしています。

将来的に、公共機関は既存のシステムの基盤の上に構築することで、現在のデータを維持する絶好のチャンスを得ることができます。エンドツーエンドのセキュリティとコンプライアンス基準に完全に準拠し、統合された、新たな専用プラットフォームソリューションにそのデータを展開できます。公共機関はイノベーションのスピードに合わせて成長できる「将来を見据えた」「将来保証型」のソリューションに注目するようになるでしょう。

5.プロセスと人の間のギャップを埋め、新たな架け橋となるAI

— Nadia Hansen(英語)、公共機関、州および地方担当デジタルトランスフォーメーションエグゼクティブ

スムーズでシームレスなプロセスの構築には、莫大な時間と費用、そして労力が必要です。複雑なプロセスのロジックや異なるシステム内にあるデータでは、ビジネスニーズの変化に俊敏に対応することは困難です。また、複数の部署にまたがる業務をそれぞれ独自のプロセスを持つサイロ化したチームでオーケストレーションすると、事態はさらに複雑になります。こういったことから、人工知能や機械学習などの最先端技術を活用したアプリケーションが最も多く取り入れられています。

繰り返しが多く、ビジネスへの影響度の低い作業を自動化すれば、従業員は大きな成果をもたらす戦略的作業に集中でき、組織は成長する力を得られます。市民やビジネスの急速に変化するニーズに対応する公共機関では、特に効果が高いです。 

今後、公共機関は自動化ツールの利用を充実させていくことが得策です。広範かつ多様化する市民に、より良いサービスを提供するためにこのようなテクノロジーをどのように活用すべきかについて語る時、公平性は重要な要素になります。 

テクノロジーは情報源があってこそ、役に立つものであることは頭に置いておきましょう。公共機関は、その恩恵を受ける人々のニーズを高度に反映したデータを活用して、「人」を中心としたモデルを構築することができます。また、これらのシステムを継続的にテストして偏りをなくし、代表的なデータを多様化させることで、組織全体の変革を公平かつ公正な方法で加速させることが実現できます。 

AIのような最先端技術には、より賢明な政策立案からサービス提供の再構築まで、さまざまな形で公共機関に利益をもたらす可能性があります。これらの技術を賢く導入することにより、公共機関は、市民を中心に据えながら業務のバランスを保つことができます。

待ったなし!自治体業務のデジタル化

パンデミックは現状の業務体制がいかにレジリエントではないかを露呈。同時にデジタル技術の効果を広く知らしめました。新型コロナの感染拡大に伴い、自治体での支援策整備について、京都府が「休業要請対象事業者支援給付金」のシステムをわずか1週間で構築したその裏側を取り上げました。

Paul Tatum
グローバルパブリックセクターソリューションエンジニアリング担当 EVP

Paul Tatum は、グローバルパブリックセクターソリューションエンジニアリングチームを率い、Salesforce の先進的な PaaS および SaaS オファリングを使用して、世界中の政府機関のビジネスとミッションの近代化を支援しています。

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