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いま求められる顧客中心のリブランディング:市場で選ばれるブランドづくりの要点を探る

いま求められる顧客中心のリブランディング:市場で選ばれるブランドづくりの要点を探る

既存ブランディングからの思考転換やブランドポートフォリオ設計のあり方、さらに事例をもとにブランド構築、リブランディングの考え方やポートフォリオの整備に役立つ具体的なプロセスと、そのプロセスを効率化するITツールについても紹介。

新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)の流行というパンデミックを境に、企業のブランディング力を強化することの必要性が以前にも増して高まっています。人の消費・購買行動のデジタルシフトが加速し、人によるブランド想起率の高低が、商品売上げの高低に直結し始めているからです。では、どうすれば、これからの市場で選ばれるリブランディングができるのでしょうか。その要点について考察します。

※ワークマン専務取締役に聞く、サブブランド展開・リブランディングへの発想転換と実践「ブランド再構築ガイドブック」もあわせてご覧ください(本稿下段

ブランドを支える力

日本における商売の世界では、古くから「店ののれんを守る」「看板(かんばん)を守る」という言葉があります。この「のれん」「看板」には「扱う製品・サービス(商品)の性能・品質」「顧客からの信頼・支持」「ファン(その企業を強く信頼・支持する顧客)の数」「社会からの信頼」など、さまざまな要素が含まれています。それは、いまでいう「ブランド」と同義の言葉ととらえることができるでしょう。そして、のれんも、看板も、そしてブランドも、その企業(ないしは、企業の生業)が持つ「顧客にとっての価値」、ないしは「社会的価値」の総体と見なすことができます。

ゆえに、ブランディングは、単に商品力(商品の性能や品質)を向上させるだけでは高められません。商品力のアップが、支持層・ファン層の拡大につながってはじめてブランディングが向上し、売上の維持・向上が成しえることになります。逆に言えば、支持層・ファン層の拡大に向けて何が必要かの精査がないままに商品力だけをアップさせても、ブランディングの向上(=売上拡大)は望めないということです。そして、ブランディングのない商品は、最終的に終わりのないコスト競争、あるいは低価格化競争の渦に巻き込まれていくことになります。

これは当たり前の原理といえますが、戦後の高度経済成長期や1980年代のバブル期において、多くの日本企業が「良い商品を作れば必ず売れる」という状況を経験しました。これにより、「ブランディングは商品力によって支えられる」との考え方が支配的になり、市場(消費者・顧客)ニーズ不在のものづくりが進められるケースが散見されてきたといえます。

例えば、かつての日本の家電メーカーは、消費者ニーズの調査・分析よりも、量販店での売りやすさを優先させ、消費者がほとんど欲していない高スペック商品の開発競争に力を注いでいました。結果として、性能・品質の高さではなく、消費者が求めるコストパフォーマンスや低価格性で日本のメーカーに勝負を挑んできた海外の新興勢力に市場(特に海外市場)を奪われ、ブランディングを大きく低下させてしまいました。

また、商品力がブランディングを支えるという考え方は「自社が売りたい商品を売るために新たなブランドをつくる」といった間違った戦略も生みがちです。言うまでもなく、このようなプロダクトアウトの戦略は、多くの場合、自社が売りたい商品と顧客が望む商品とのギャップによって苦しめられることになります。

コロナ禍で重要性を増す顧客中心のリブランディングとは

上述したような失敗を回避するためには、消費者・顧客のニーズを中心に据えた商品づくりを推し進めて、支持層・ファン層の拡大を図る必要があります。また、そうすることの重要性は、パンデミックをきっかけに人々の消費行動/購買行動のデジタルシフトが急速に進行したことで、かつてないほどに高まっているといえます。

ここでいう消費行動/購買行動のデジタルシフトとは、オンライン上で自分の欲する商品を探し、選び、比較検討して購入までを行おうとすることを意味しています。こうした消費者主導・顧客主導の市場では、消費者・顧客によるブランド想起率を高めることが必須となります。それが指名検索数の多さにつながり、売上の拡大につながっていくためです。

また、ブランド力が高く、指名買いのファンを多く持つ企業は、コロナ下でのリアルな店舗においても集客、業績の回復が早く、ブランドによっては、コロナ以前よりも売上を増やしているケースも見られています。その好例としてよく挙げられる一社に、アパレル企業のワークマンがあります。同社では、アパレル商品(織物・衣服・身の回り品)の小売市場全体がパンデミックにより縮小を余儀なくされるなか、高いブランド力を背景に2ケタペースでの売上成長を持続させています。

図:コロナ下におけるワークマンの業績推移とアパレル小売市場の推移
出所:ワークマンの公開業績データと経済産業省「商業動態統計」のデータをもとに編集部で作成 経済産業省「商業動態統計」
URL https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/syoudou/result-2.html

変化の時代に市場で選ばれる力を得るために

ワークマンのブランディングを支えている一つは商品力であり、もう一つは、顧客ニーズ・消費者ニーズに対する同社の深い理解と洞察があります。加えてさらにもう一つ、ワークマンのブランド力を生んでいる重要な要素があります。それは「ワークマン女子」のブランド開発に見られるように、顧客・消費者ニーズの変化をとらえたうえで、自社のコアコンピタンスをピボットして新しいブランドを創出する「サブブランド戦略」です。

消費者・顧客は、それぞれが価値観を持ち、自分は「こうありたい」「こう暮らしたい」という願望があります。そうした価値観・願望(=ニーズ)に適合した商品を提供することで、顧客・消費者からの共感・支持を獲得し、ファン層を育むことができます。ただし、人のニーズは絶えず変化しています。その変化に柔軟に、かつ的確に対応していくためには、消費者・顧客の動きを常に観察しながら理解を深め、それにもとづいて「ブランドポートフォリオ」を見直さなければなりません。それがサブブランド戦略、そしてリブランディングであり、その施行がこれからの市場で選び続けられる企業になるためのカギといえます。

では、サブブランド戦略、リブランディングを遂行し、成功へと導くだめには、具体的に何をどうするのが適切なのでしょうか──。その要点をまとめたホワイトペーパーが『これからの市場で選ばれる企業になるためのブランド再構築ガイドブック』です。

「ブランド再構築ガイドブック」

ワークマン専務取締役に聞く、サブブランド展開への発想転換と実践
全12ページで理解するサブブランド開発と事例

本ガイドでは、ブランドコンサルティングの第一人者であり、インサイトフォース株式会社取締役として上場企業100社以上のコンサルティングを手がけ、実績を積み上げている山口義宏氏とともに、既存ブランディングからの思考転換やブランドポートフォリオ設計のあり方について解き明かしていきます。また、ワークマンのキーパーソンにもご登場いただき、実際に展開しているサブブランド戦略とリブランディングのノウハウを明かしていただいています。さらに、ブランド構築やポートフォリオの整備に役立つ具体的なプロセスと、そのプロセスを効率化するITツールについても紹介しています。

アフターコロナの変化の時代を勝ち抜くためのリブランディングの術(すべ)にご興味のある方は、ぜひご一読ください。

あわせて見る【動画】ブランド再構築のための思考転換の必要性(4分40秒)

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