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NRFとは
NRF（National Retail Federation：全米小売業協会）が主催する「NRF 2025: Retail’s Big Show」は、世界最大級の小売業界向けイベントであり、2025年1月12日から14日までニューヨークのジャヴィッツ・センターで開催されました（現地時間）。今年は世界中から3万9500人の来場者が集まり、1000社以上のブース展示、175以上のセッションが行われました。
NRF2025で語られた主要テーマ
今回のNRFでは、昨年にも増してAIがさまざまなセッションがラインアップされ、展示ブースでも、AIと名のつくソリューションやスタートアップが数多く見受けられました。
生成AIに加えて、Agentic AI（独自の目標を持ち、それに向かって能動的に行動する能力を持つAI）について言及しているセッションとブースが登場してきたのが昨年との違いとして印象深かった変化でした。
AI以外では、「顧客体験」や「顧客データ収集のためのロイヤルティ活用」などが話題に。その他に「リテールメディア」「サプライチェーン」「従業員の業務効率化」も例年同様に語られましたが、あくまで主役はAIでした。
小売業と消費財メーカーにおける生成AI活用の現状、課題、そして期待
本調査レポートでは、以下の内容について解説しています。
– 生成AI活用の現在地
– 生成AI活用の課題
– 生成AI活用への期待
基調講演：NVIDIA
今年の基調講演の登壇社は、NVIDIA。例年、NRFの基調講演は小売業のCxOが登壇してたのですが、今回NVIDIAが登壇したこと自体がAIの注目度の高まりを表しています。講演の中では、小売消費財企業との様々な取り組みが紹介されました。
講演の中では、小売・消費財企業との様々な取り組みが紹介されました。
たとえばWalmart。「デジタルツイン」技術を活用した、店舗や流通センターの仮想モデルを作成することで、レイアウトの最適化やオペレーションの効率した事例が紹介されました。Walmartは1700以上の店舗でAIを活用した最適化を行ったといいます。
さらに、Walmartとのもう1つの取組みとして需要予測も紹介されました。Walmartの持つ大量データをNVIDIAのAIプラットフォームで学習させ、複数の店舗やSKUの組み合わせでの需要予測を改善しました。
生成AIで実現する小売業の未来：生成AI活用の最新動向と実践に向けたシナリオとは
セッション：Ulta Beautyにおける顧客データの収集・活用
Ulta Beautyは、全米で約1300店舗を展開する化粧品の小売企業です。実店舗だけでなく、オンラインでのパーソナライゼーションを強化して売上が伸長。効果的に顧客データを収集・活用しています。
顧客データの収集のために、Ulta Beautyはロイヤルティプログラムを提供しており、店舗とオンラインで顧客の興味関心や購買履歴など、顧客データを効率的に収集しています。
店舗とECを利用する全顧客のうち95%はロイヤルティプログラムの会員であるため、ほぼ全ての顧客のデータを収集できていると言えます。こうして得られた顧客データを活用し、店舗とオンライン双方で、より良い購買体験の提供に繋げています。
5分で解説！顧客をファンにする秘訣
変化の激しい市場状況を踏まえつつ、より顧客と強く繋がりロイヤルティを強化していくためには、どのような手段をとれば良いのかご紹介します。
セッション：Walmartにおける電子棚札の高度化
Walmartのセッションでは、電子棚札を活用した業務効率化が紹介されました。写真のように、電子棚札が点滅することで、店舗スタッフはピッキング対象商品の位置がひと目で分かります。
また、電子棚札のレールにはAIカメラが内蔵されており、向かいの通路の棚の在庫数量を認識しています。そこで、向かいの棚が欠品している際には店舗スタッフに品出しを指示し、品出し対象の棚位置を点滅して教えています。
Walmartは、店舗が広く季節労働者も多いためパート・アルバイトのスキルもバラバラ。そのため、不慣れなスタッフでも簡単にピッキングや品出しの位置が分かることが生産性の向上のカギを握ります。現在、400以上の店舗で導入していますが、今後さらに拡大していくようです。
展示ブース
展示ブースでは、例年同様にスタートアップから大手ベンダーまで1000社以上が出展。会場を見て回り最も印象的だったのは、昨年以上にAIを謳う展示が増えたことです。
今年のCESでもAIは注目されていましたが、NRFでも同様にAIが旬のテーマでした。
まとめ
NRF2025では、昨年以上にAIが注目のキーワードであることをまざまざと感じる現地取材でした。
AIは魔法の杖ではありません。AIを有効活用するには、商品や店舗、顧客といったさまざまなデータ基盤が整備されていることが必要不可欠です。これからどうやってAI活用を進めていくか迷っている日本の小売業にとっては、「何のためにAIを活用するか」というゴールから逆算し、必要なデータを収集・整理することがはじめの一歩となるのではないでしょうか。
その際、商品と店舗、顧客で最も収集が難しいデータが顧客データです。その顧客データを収集するためには、Ulta Beautyのようにロイヤルティプログラムを活用することが有効な一手と言えます。
ロイヤルティプログラムで顧客データを収集し、その顧客データに基づいてAIを活用し、より良い顧客体験や従業員の生産性向上に活かしていくーー。NRF2025からは、そんなヒントを得ました。
