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【第2回 AI実態調査】AIの検討・活用が進む地域。トップ3は東京、愛知、意外な◯◯

セールスフォース・ジャパンが独自に行ったAI実態調査の第2回結果を第1回の比較も交えて分析しました。その内容を紹介します。

セールスフォース・ジャパンのブランドマーケティングでは、「生成AIのビジネス活用が日本でどこまで進んでいるのか?」を明らかにすべく、2024年に全国調査を実施しました。2025年5月、同様の調査を日本全国2000人程度を対象に実施。1年間で生成AIのビジネス適用にどのような変化があったのかを調べました。

調査対象

調査は、2025年4月に20-69歳の有職者および企業でデジタルサービス/ツールの導入に関与する人を含む2000人を対象に以下の条件で実施しました。

職種構成 (重複回答あり)

職種カテゴリ比率
技術職(IT含む)39.2%
事務職25.7%
営業職18.3%
管理職13.5%
研究・開発職8.6%

AIおよびITツール導入への関与度 (重複回答あり)

関与内容傾向
ITツール導入の選定者/推進者約30〜35%
利用者レベル約50%
関与なし/無関心約15〜20%

【Point1 成熟度】「検討・活用」が微増

AI利用の成熟度を「知っているだけ」「理解はしている」「具体的に検討している」「すでに活用している」の4段階で聞きました。

図1は、その「認知」「理解」「検討」「活用」の4段階における2024年と2025年の比較を示しました。2024年時点で認知率はすでに95%を超えており、この1年は「理解」「検討」そして「活用」に移るかが焦点でした。

2025年の数値から注目すべきは、「検討」フェーズが昨年から5.0ポイント増の41.3%、「活用」フェーズが4.3ポイント増の22.2%と、導入意欲および実装率が前進していることです。これは、AIのビジネス適用に関する情報・事例の蓄積されたことや、ツールの利用ハードルが下がってきた証左でしょう。

【Point 2 関心領域】「事務・総務」「営業」が伸長

次に着目したのは、「AIをどの業務に活用する意向があるか」です。調査では、業種・業界を問わず、一般的に存在する業務を聞きました。

下の図は、AIを活用したい領域の2024年と2025年の比較です。これを見ると「データ分析」における需要が依然として高いほか、「事務・総務」と「営業」で伸長率が高いことがわかります。また、「マーケティング」や「コールセンター」といったフロントオフィス業務における関心も高まっていることがうかがえます。

細かくみていくと、最も大きく伸びたのが「事務・総務」領域で前回比3.7ポイント増の22.4%。書類処理やマニュアル作成、社内文書の要約など、単純作業をAIに任せたい意欲が高まっていることが推察されます。

「営業」は、前回比3.1ポイント増の16.6%。顧客情報の要約・整理や提案書作成、問い合わせ対応支援など、フロント業務で実用可能なことが理解され始めていることが要因とみられます。

カスタマーサポートでも、チャットボットやFAQの自動応答、会話要約などでの活用が浸透しつつあり、顧客対応業務への関心も持続的に拡大しています

2024年から2025年にかけて、AIの活用意向はバックオフィスだけでなく「顧客接点業務(営業・カスタマーサポート)」へも拡大してきており、適用範囲が多様化しています。

特に営業や事務業務など、日々の繰り返し業務や情報処理の多い領域での利用意向の高まりが明確です。

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【Point3 地域別の活用状況】東京、愛知、福岡の「検討/活用」率が高水準

下図は、地域別でみた「認知」「理解」「検討」「活用」の2024年と2025年の差分を示しました。これを見ると、東京都・愛知県・福岡県の3地域が突出して「検討」および「活用」が伸びていることがわかります。

  • 東京都では「検討」が12.1ポイント増、「活用」が7.3ポイント増とで、首都圏では実装段階に入っている企業の割合が増加していることがうかがえます。
  • 愛知県は「検討」が12.2ポイント増、「活用」が7.1ポイント増と東京とほぼ同様の伸びを示しています。製造業中心の産業構造が影響していることが推測されます。
  • 福岡県は「活用」が9.3ポイント増と全国で最大の伸長率。スタートアップが多くテクノロジー活用に積極的な地域特性が影響していることが推測されます。
  • 大阪府は「理解」が3.4ポイント減で、調査や理解のフェーズで何らかの障壁がある可能性を感じます。全国平均と比較して横ばいの傾向が続いており、地域ごとの支援体制や情報に差があるのかもしれません。

【Point4 福岡県の活用度が高い理由】行政の活発な動き

前述のように、東京を除外した地域別でみると「愛知」と「福岡」の活用が進んでいることがわかりました。

愛知県は、日本を代表するメーカーを筆頭に、精密機器や輸送用機械、自動車部品などの大企業が多数集積。製造業はすでにRPAやデータ解析などの業務自動化ツールの導入が他業界よりも早く、現場起点での課題解決型AI導入が広がりつつあるのではないかと推測できます。

では、福岡県の伸長にはどのような背景があるでしょうか。信頼できる経済情報ソースで検証するべく、このほど日本経済新聞社からリリースされた生成AIサービス「NIKKEI KAI」を用いて理由を推測してみました。

※NIKKEI KAI は RAG(検索拡張生成) のデータソースとして信頼性の高い日経メディアのデータだけでなく、関連する業界メディアのデータを用いてた生成AIサービス。データは2020年から現在までが含まれ、リアルタイムに1日4回データが更新される。2025年4月に提供開始。

——-以下、「 NIKKEI KAI」 の回答——-

質問 : 福岡県における生成AI活用の特徴を、東京や大阪などの他地域と比較して具体的に教えてください。

NIKKEI KAI の生成結果(引用): 福岡県における生成AIの活用は、行政、金融、IT企業を中心に活発化しており、業務効率化や市民サービス向上に重点が置かれています。東京や大阪と比較すると、福岡県は行政主導の実証実験やAI人材の育成に力を入れている点が特徴です。

福岡県における生成AI活用の特徴

行政主導の導入と実証実験

福岡市は生成AIの導入に積極的で、市職員を対象とした実証実験を行い、業務時間の大幅な削減に成功しています [1][2]。また、県レベルでも生成AI検討プロジェクトチームを設置し、庁内利用のためのルール策定や環境整備を進めています[3]。大分銀行でも実証実験が行われています[4]。

業務効率化・市民サービス向上

生成AIは資料作成時間の短縮 [1]、政策立案の効率化[5]、大気汚染予報の発信[6]など、行政サービスの向上に役立てられています。また、企業においても業務効率化や経費削減[7]が期待されています。

AI人材育成

福岡市は、生成AI研修を通じて職員のAIリテラシー向上を図っています[2][8][4]。また、福岡県全体でITエンジニアの育成や誘致に力を入れており[9][10]、AI活用を促進する土壌があります。

金融機関での積極的な活用

ふくおかフィナンシャルグループは、全国の地銀で初めて米オープンAIと連携し、金融業務への生成AI活用を進めています[11]。

スタートアップ企業の誘致と育成

福岡市はスタートアップ企業の支援に力を入れており、東京から移転してきたAI関連企業もあります[12]。

——-引用、ここまで——-

福岡県は首都圏以外で唯一、人口の社会増減(転入者数-転出者数)で上位5位にランクインしており、九州地方の経済・文化の中心地として、他地域からの転入者が多いことが特徴です。

福岡県の「令和6年福岡県の人口と世帯年報(令和5年10月~令和6年9月)」によれば、自然増減(出生数-死亡数)は2万9743人減(14年連続の減少)の一方で、社会増減(転入者数-転出者数)は2万541人増(16年連続の増加)となっています。

少子高齢化と人口減少による労働力の低下は、日本だけでなく先進国共通の課題ですが、福岡では積極的な企業誘致による人口および労働力の増加と、AIを「デジタル労働力」として進める2つの傾向が他地域よりも強いと言えるでしょう。

【Point5 AIで解決したい課題】上位3つの共通点は「労働力不足」

今回の調査でも「AIでどのようなビジネス課題を解決したいのか」を昨年同様に聞いたところ、30%を超えた項目は「業務の効率化(42.7%)」「人手不足の解消(33.3%)」「生産性の向上(31.7%)」。労働力の不足に伴う効率化や、そもそもの労働力補完の必要性がさらに伸長していました。いまだフロントオフィスでのAI活用というよりは、社内の労働力確保に向けた期待が最優先であることがわかります。

「大規模言語モデルに基づいた生成AIがあれば何か出来そう」と思うかもしれません。しかし「AIをビジネス上でのデジタル労働力とする」には、複数のテクノロジーが必要です。

大規模言語モデルとは、ソフトウェアの小さな一部です。人間とともに働くレベルの労働力を獲得するならば、大規模言語モデルだけでは不十分であることは、容易に想像ができると思います。

CPUは、世界を変えました。コンピュータ言語、バイナリ0と1を読み取り、理解することができました。しかし、CPUが人間をサポートするには、それだけでは不十分。マザーボードやストレージ、メモリ、オペレーティングシステム、その上に構築されたアプリケーション、そしてキーボードやマウス、モニターなど人間が「それ」とやりとりするための周辺機器も必要です。

大規模言語モデルもまったく同じです。では、大規模言語モデルにはどのようなシステムが必要でしょうか。

まず「データ」です。

ビジネスで利用する大規模言語モデルにビジネスのデータを入力する必要があります。みなさんが使おうとしている大規模言語モデルは、インターネット上で訓練されています。それらは自社のビジネスについて何も知らないので、データを接続する方法が必要です。

構造化データだけでなく、非構造化データ、ナレッジ・アーティクル、メタデータ、そのデータがそもそも何であるかを説明するセマンティック・データなど、AIが理解できるようにする必要があります。

2つ目は「アプリケーション」です。

営業やマーケティング、サービス、分析で利用するアプリケーションなど、「労働を実行する」アプリケーションが必要です。また、すべてのAPIも必要です。AIが実際にアクションを起こせるように、それらすべてを接続できる必要があります。

そして次に必要なのは、もちろん「AIそのもの」です。

AIエージェントがそれらのAPIに接続する方法が必要です。検索拡張生成(RAG)のような技術的手法、ベクトルデータベースのようなものも不可欠でしょう。正確な答えを導き出したいのであれば、AIにループ機能と推論能力も重要です。

これらを自力で企業が構築することも統合することも容易ではありません。だからこそ、 Salesforce はそれらを全てを1つのプラットフォームに統合したデジタル労働力プラットフォーム「Agentforce(エージェントフォース)」を2024年に生み出しました。すでに日本でもAgentforceがデジタル労働力革命を目指すことに賛同し、プロジェクトを進めているお客様は数多く存在しています。

人間と協働する新たなデジタル労働力「AIエージェント」を企業経営にどう組み込むのか。このミッションが全ての企業に問われてくるでしょう。

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