SalesforceではP&Gジャパンやジョンソン・エンド・ジョンソンでトレードマーケターとして、多くのブランドの商品開発や流通戦略の策定に携わってきたキャプロ株式会社 井本悠樹代表取締役をお招きし「トレードマーケティングセミナー」を開催しました。
消費財業界における流通開発の新概念「トレードマーケティング」の第一人者である井本氏による講演と実習形式の実践的なセミナーは、参加いただいた多くの消費財メーカーより大変ご好評いただきました。
本レポートでは、セミナー内容のハイライトをお伝えし、「トレードマーケティング」の実践による営業改革手法をお伝えします。
イベントの録画映像はこちらからご覧になられます。合わせてご確認いただければ幸いです。
キャプロ株式会社
代表取締役 井本 悠樹 氏
P&GやJ&Jで、トレードマーケターとして多数の新製品開発と流通戦略を手掛け、複数ブランドでNo.1シェア獲得。2019年4月、コンサルティング会社の株式会社キャプロを創業し、大手メーカーやD2Cブランドの流通施策や組織構築を支援。『宣伝会議』などを通じトレードマーケティングに関するノウハウも展開している。2019年4月、「株式会社フェズ」にも参画し、執行役員として主要事業の商品企画や販売を牽引し、現在はリテールメディアを活用した統合ソリューションの責任者。2024年2月に、初の著書「トレードマーケティング 売場で勝つための4つの実践」(宣伝会議)を上梓した。
トレードマーケティングとは何か
当セミナーは、井本氏による講義と各社ごとの演習を反復する形で進行しました。はじめに、井本氏より流通開発の新概念「トレードマーケティング」の定義と必要性、効果を解説いただきました。
昨今の消費財業界では経営環境の変化により、商品の販売難易度が急上昇しています。コロナ禍を経てショッパーの購買行動や価値観は大きく変化し、原材料高騰や円安も大きな影響をもたらしています。
小売の合従連衡によるバイイングパワー上昇も顕著です。このような環境下で、トレードマーケティングはこれまで属人的・経験則的であった小売バイヤーへのアプローチを見直し、ショッパーやバイヤーが求める本質的課題に寄り添うことで営業力を向上する本質的かつ科学的アプローチとなっています。
トレードプロモーション管理で収益の向上と有益な成長を促進
● アカウントプランニングの合理化により営業担当者の時間を節約
● 販促活動の最適化で収益を拡大
● 貴社のすべてのプロモーションを追跡・分析
● リアルタイムデータでチームのスマートな意思決定をサポート
店頭課題とバイヤーインサイトに基づく根本原因の探求
次に、店頭売上に影響を与える要因を「店頭売上可変レバー」として2つ詳説いただきました。
「店頭売上可変レバー」の1つ目は、「ショッパーコミュニケーション」です。従来は「STOP」「HOLD」「CLOSE」などのインストアコミュニケーションが注目されていましたが、ショッパーの多様化やデジタル化が進んだことでインストア前後のコミュニケーションの重要性が増したことを、アプリやデジタル広告、リテールメディアなどの隆盛と紐づけて紐解いていただきました。
2つ目の要因である「店内タッチポイント」は、配荷やアウト展開など、経験則的に実施されてきた店頭KPIを網羅的・体系的に整理されており示唆に富んでいました。
トレードマーケティングは、これらの「店頭売上可変レバー」の状況を好転させるため、メーカー視点での「売り込み」ではなく、バイヤー視点での「課題解決」が重要となります。
小売バイヤーは、「カテゴリーの売上・利益の向上」はもちろん、「来店促進」や「若年層のカテゴリーエントリー」「店舗オペレーション負荷への配慮」など、様々な動機のもとで意思決定を行っています。
当然ながら、取り扱いを決めた商品がショッパーに支持され、来店や売上向上につながると確信できることは大前提です。これらのバイヤーの潜在的欲求(バイヤーインサイト)を正しく理解し、自社商品の配荷を通じた売り場の課題解決を適切に提案することで、Win-Winの関係で流通開発を行うことが可能になります。
これまで、このようなバイヤーの信頼を勝ち取り、商品採用を決めるための手法は一部のトップセールスの経験則に頼っていましたが、トレードマーケティングではこの方法をロジカルに紐解いています。そのポイントを4つご紹介します。
バイヤーインサイトや売り場課題を紐解くビジネスレビューフレームワーク
多くの営業部門で行われているビジネスレビューは、チェーン&ブランド軸の売上数値をもちいた「結果管理」が中心です。これはレビューの一部であるものの、あくまで「ファクトの提示」(通知表)にすぎず原因や対策は分からないため、どのように販売強化・改善すべきかの意思決定はできません。
そのため、得意先ごとの状況を「カテゴリ視点」「自社視点」「店頭視点」で分解し、それぞれ「売れるのか(ショッパーに支持され購買につながるか)」「売りたいか(バイヤー課題の払拭につながっているか)」という視点でレビューすることで、本質的な打ち手を発見できるのです。
バイヤーインサイトにもとづく、流通攻略のための戦略構築手法
戦略構築のパートでは、バイヤーインサイトにもとづいた流通攻略を「Where to Play」「How to Win」に分解して解説いただきました。「Where to Play」では、期待収益の高い領域を難易度やリソース効率を加味しながら優先づけします。「How to Win」ではフォーカスした領域に存在する「課題」と「その解決方法」を決定しリソース配分を行います。
バイヤーとの正しいコミュニケーション手法
このような緻密な現状理解と戦略立案も、正しくバイヤーに意図が伝わってはじめて効果を発揮します。メーカーの営業担当者が陥りがちな「伝える≠伝わる」の原因を具体的シチュエーションを例示しながら示した上で、「自分ごと化の促進」と「バイヤー視点での言葉選び」を実践的にレクチャーいただきました。
予実ギャップを適切に埋める振り返りの手法
最後に、結果管理や根性論に陥りがちな予実管理レビューについて、予算未達の原因を正しく論理分解し対策する方法を解説いただきました。これまで学んできた店頭課題とバイヤーインサイトの把握は、売上未達成の原因をロジカルに考察し正しい対策を実施できるため組織的な営業力の着実な底上げにつながります。
2度の演習パートでは、井本氏の解説を自社商品を題材に実際に体験いただく構成となっており、各テーブルでは自社の課題や手法の効果について活発な議論が交わされました。
営業改革のためSalesforceをご利用中またはご検討中の企業様をご招待させていただいたこともあり、自社の営業活動に学びを活かすため非常に主体的に参加いただけました。
Q&Aセッションでは、トレードマーケティングの効果を実感したとフィードバックいただく一方、自社内でしっかりとマインドチェンジとプロセス変革を行い、バイヤーインサイト中心の営業手法へステップアップする難しさについてご相談をいただいたことが印象的でした。
消費財業界向け専用製品 Consumer Goods Cloud
消費財業界の営業業務を支援するConsumer Goods Cloudについて、適用可能な業務領域や機能、メリットなどをナレーション付きでご紹介します。
Consumer Goods Cloudによるトレードマーケティングの実践
セールスフォース・ジャパンの消費財インダストリーアドバイザーを務める石橋史啓より消費財業界専用製品であるConsumer Goods Cloudとテクノロジーを活用したトレードマーケティングの実践についてご紹介しました。
Consumer Goods Cloudは通常の営業支援システムではカバーが難しい、消費財業界における営業プロセス全体をカバーする製品です。業界標準のプロセスやデータベース構造を備える一方、各社毎の業務運用にフィッティングする高い柔軟性を備えており、トレードマーケティングにもとづく営業プロセスもシステム上に再現可能なことをご紹介しました。Q&Aでお客様より声の上がった新しい営業プロセスの浸透・実践にも力を発揮します。
Consumer Goods Cloud
プランニングから実施まで成長を加速
Consumer Goods Cloudがあれば、取引先チームは顧客をあらゆる角度から把握し、統一感のあるB2Bプロセスを実現することができます。
19社41名にご参加いただき、アンケートでも非常に好評をいただいたセミナーとなりました。セミナー後のネットワーキングにおいて「ぜひ社内で紹介したい。」「これを実践する方法を検討したい」と大変ポジティブな声を多数いただきました。
当セミナーを通じて、消費財業界において組織的な営業力強化を科学的に行うことができると確信を強めたと同時に、どう実践すべきかという声に対するテクノロジー面の支援の重要性が浮き彫りになったと感じております。
セールスフォースは、テクノロジーの提供にとどまらずお客様が変革の成果を享受いただけるよう、当セミナーをはじめとする業界向けの活用支援およびコミュニティを継続して提供してまいります。
バイヤーインサイト理解に基づく、売上最大化のためのトレードマーケティング実践セミナー
本セミナーでは、小売業や卸売業で仕入れを担当する「バイヤー」や、買い物客を指す「ショッパー」を対象にしたマーケティング活動について解説いたします。