

旧昭和電工と旧昭和電工マテリアルズの統合によって2023年1月に誕生したレゾナック。統合の狙いは、前身2社の強みを活かした共創型イノベーションの加速などを通じ、世界で戦える機能性化学メーカーとなることです。同社は変革の一環として、両社に導入済みだったSalesforceのインスタンスを統合し、共同運用を開始しました。しかし、業務の進め方の違いによる両社間の“壁”が要因で、利用範囲は限定的でした。また、他のシステムと連携されていないため入力の二重業務が発生するなどの問題もありました。そこで2022年1月、同社にCRM推進チームが発足。現場へのヒアリングで把握した課題の解決に向け、Salesforceの利用目的とKPI、活用フェーズを明確化するほか、ワークショップでの支援やダッシュボードの提供などの取り組みで、事業部ごとにSalesforceの活用を促しました。製造業に特化したCRMであるManufacturing Cloudや、Experience Cloudの活用で、業務改革領域も拡大しています。
2013年当時から業界No.1の営業支援ツールであり、導入していた前身2社でもインフラとして認知されていたSalesforce。そのため2社統合後、新ツールと入れ替えるという選択肢はなく、Salesforceの活用推進に再挑戦すべきと判断しました。結果として、Salesforceを使い続ける中で社員自身が「なんのためにツールを使うのか」「どう使うのが最適なのか」というDXの本質について考えるようになり、意識改革が進んだ、と推進チームは評価します。
現場の課題解消につながるKPI設定とダッシュボード提供でユーザーが2,000名弱まで増加
前身2社には、トップの意向を反映し、Salesforce導入に取り組んだものの、頓挫した苦い経験がありました。それを踏まえて推進チームはプロセスを変更します。事業課題に対する現場の課題をヒアリングし、それをSalesforceが解決できるという理解を得るためのワークショップを何度も実施。各事業部の目標達成のための定量的な指標を設定し、それを可視化するダッシュボードを作成・提供しました。それによってSalesforceのユーザーは着実に増加し、現在は営業を中心に2,000名弱に達しています。
Salesforce自走化を目指して人材を育成、スキルと活用意識が全社的に向上
推進チームは、可能な限りのSalesforce活用の自走化を目指し、当初セールスフォース・ジャパンの支援のもとで実施していたワークショップを4回目以降は自ら運営。ユーザー育成にも注力しました。結果、特に日常的なサポートの難しい海外拠点ではスキルを身につける人材が増え、またワークショップを自分たちで実施したいと要望する事業部が出てくるなど、Salesforce活用への意識は全社的に高まっています。
草の根的な推進活動により、約2年で約6割の事業部が5段階中3の活用レベルに到達
全社的な活用推進の開始から約2年の時点で、全22事業部のうち13事業部が、推進チームの設定した5段階の活用フェーズのフェーズ3以上に到達しました。ただ、社員の意識を変革し、慣れ親しんだ業務のやり方をSalesforceに置き換えるのには時間がかかります。トップダウンによる指示や情報発信だけでなく、ユーザーに寄り添う草の根的な推進活動が功を奏した、と推進チームは改めて実感しています。
DXとは1~2年で成果の出るものではなく、永遠に続く取り組みです。それでも長いスパンで見れば着実に進歩していくので、小さな成功を見逃さずに続けることが大切です
竹内 良一 氏営業企画部デジタル支援グループ グループリーダー, 株式会社レゾナック
Manufacturing CloudとSCMの連携による生産調達計画の自動化・リアルタイム化などを予定
同社は今後の展開として、Manufacturing Cloudに入力した数値がサプライチェーンマネージメント(SCM)のシステムに自動連携され、生産調達計画にリアルタイムに落とし込まれるようにしたいと考えています。また、Experience Cloudについても、利用する代理店の数を増やし、代理店における同社製品の販売計画や商談情報などをより多く集約することで、代理店戦略の改善につながるはずだと感じています。
膨大なデータを利用した自社の潜在能力の可視化・分析など、業績向上につながるAI活用を検討
AIに関しても、使うこと自体を目的とするのではなく、あくまで業績の向上につなげることを念頭に置き、さまざまな活用法を検討中です。たとえば、新規ビジネスを立ち上げたときに期待できる需要など、同社のポテンシャルを示すKPIを設定し、Manufacturing Cloudに蓄積された膨大なデータとAIをかけ合わせることで可視化・分析する、といったユースケースを想定しています。
※ 本事例は2024年10月時点の情報です