株式会社トゥモローランド(TOMORROWLAND)は「ものづくり」「買い付け」「販売」「店舗表現」までを一貫して自ら手掛けることにこだわり、オリジナルブランドやセレクトショップ、海外ブランドの展開を行っています。自由が丘に1号店を開いた当初から「お客様の幸せにつなげたい」という想いを持ち、現在では百貨店やファッションビル、路面店に加え、「食」「住まい」「遊び」「知的エッセンス」といったライフスタイル全般に広がる事業を展開しています。
同社は「セミラグジュアリー」と位置づけられ、シンプルで上質な商品を適正な価格で提供。「Elegance is Simplicity(エレガンスの本質はシンプルさにある)」という創業当初からの理念を軸に、時代を超えて愛されるブランドづくりを続けています。
システム刷新と意識改革で挑む新たな顧客体験
TOMORROWLAND がデジタル投資を本格的に検討するきっかけとなったのは、コロナ禍による店舗閉鎖でした。従来は「自分たちが作った商品を直接お客様に届ける」文化を大切にしてきましたが、店舗が機能しなくなると、せっかく作った商品をお客様に届けられないという深刻な課題に直面しました。そこで初めて、ECやデジタルの強化に本格的に舵を切ることになったのです。
しかし、当時のECサイトはレガシーな仕組みのままで、セール初日やクーポン配布時には必ずシステムが落ち、表示が遅れるといった問題が恒常的に発生していました。実際にカスタマーサポートには「サイトに入れない」という声が多く寄せられ、商品の良し悪し以前に顧客体験そのものが損なわれていたのです。調査した結果、既存のアーキテクチャ自体が事業規模に耐えられないことが明らかになり、抜本的な改革に踏み切る決断をしました。
この取り組みを進めるにあたり、上田氏自身も大きな挑戦を経験しました。2010年の入社以来、EC運営を中心にキャリアを重ねてきましたが、コロナ禍を経てCRMやMAを含むデジタル全般を統括する立場となり、幅広い知識と経験が求められるようになったのです。さらに、実店舗を重視する文化の中で、他部署や経営層の理解を得るために「なぜTOMORROWLANDに必要なのか」を自分の言葉で説明し続ける必要がありました。システム導入そのものだけでなく、社内の意識改革も含めた総合的な挑戦が、このプロジェクトの核心だったのです。
安定稼働がもたらす顧客体験の進化
導入後、最大の成果は「安定稼働」による顧客体験の改善でした。セールやキャンペーン時でもシステムが落ちることなく稼働し続けることで、お客様が安心して買い物を楽しめる環境を提供できるようになりました。これにより、以前はトラブル対応に追われていた社内リソースを、本来注力すべき新しい顧客体験の設計やサービス改善に振り向けられるようになっています。
また、B2C Commerce の強みである高いセキュリティとスケーラビリティにより、事業の信頼性が格段に向上しました。急激なアクセス集中時でもシステムは安定しており、さらに国際水準に準拠したセキュリティ基盤によって、お客様に安心して利用いただける環境を実現しています。
拡張性が支える未来のブランド体験
加えて、API やコネクタを通じて外部サービスと柔軟に統合できる拡張性も大きな価値となっています。例えば、決済や物流などのサードパーティーツールを容易に導入でき、ビジネスの成長や新しい施策に合わせてシステムをスピーディに強化することが可能です。
現在では「落ちない」ことが当たり前となり、その上で将来の拡張や新しい顧客体験を見据えた取り組みに集中できる環境が整いました。ECは単なる販売チャネルを超え、ブランド体験を進化させる基盤へと成長しています。
DXを推進する上で重要なことはシステムを複雑化させないことです。100%の性能を出せるが誰も理解できないアーキテクチャよりも、80%の性能でも多くのメンバーが理解でき、将来の変更に柔軟に対応できる方が価値が高い。そうした「可読性の高いアーキテクチャ」を心がけています。また、デジタルだけが独り歩きせず、店舗体験と一貫してお客様と向き合うこと。これがTOMORROWLANDらしいDXの進め方だと思っています。
上田 知弘 氏デジタルコミュニケーション部 部長, 株式会社トゥモローランド
TOMORROWLAND が Salesforce を選んだ最大の理由は、「スケーラビリティ」と「セキュリティ」です。大規模アクセスでも落ちない堅牢な基盤、そして国際水準で認められた高いセキュリティは、顧客体験を守るうえで欠かせない要素でした。
さらに、SalesforceのB2C Commerce は世界中の有力ブランドに採用され、その実績から培われたノウハウやベストプラクティスが常に製品に反映される点も大きな強みです。急速に変化する市場環境においても、継続的なアップデートにより最新の機能を利用できるため、導入後も長期的な安心感があります。
加えて、シンプルかつクラウドネイティブなアーキテクチャにより、将来の成長や事業拡大に伴う負荷増加にも柔軟に対応できることも高く評価されています。結果として、「導入前より確実に良くなる」という確信を持てたことが、変革を推進する大きな力となりました。