全日本空輸株式会社

リアル・デジタル一体のコミュニケーションで、国境もチャネルも問わないシームレスな顧客対応を実現”

 

- 第 1 章 Marketing Cloud編

集約したデータをもとに、個客への
行き届いたサービスをデザインする

全社横断的な顧客情報基盤に
基づいたメッセージング管理

世界有数規模のエアラインを支えるITインフラの刷新と、デジタルを活用した新領域の開拓を意欲的に進めてきたANAグループ。2019 年の「DXグランプリ」にANAホールディングス株式会社が選定されるなど、その取り組みは、業種の枠を超えたリーディングケースとして注目されている。
このうち顧客情報管理の領域では、1 日980 便の運航状況と、同15 万人の乗客情報、さらに延べ3,700 万人が登録する「ANAマイレージクラブ」の情報を基幹システムから取得し一元化する「CX(Customer Experience)基盤」を構築。同時に、予約から目的地到着までに顧客がたどる行程の中から、持続的なサービス向上を図る28のシーンがピックアップされた。
全日本空輸株式会社 デジタル変革室 マネジャーの井岡 大氏によると、CX基盤は「28の各シーンに多くの部署とグループ企業が携わる中で、お客様1人ひとりのニーズに合ったサービスを切れ間なく提供するための部門横断的なプラットフォーム」に位置づけられる。その核としてデータを集約するデータベースに連動し、顧客へのメッセージ配信や、アプリへのプッシュ通知などをコントロールするため、SalesforceのMarketing Cloudを導入することが決まったのは2019 年6 月のことだった。

まずは単体で利用開始
他システムと連動し高度な応用へ

ANAマイレージクラブやクレジットカード、オンラインストアなどの顧客関連事業を受託するANA Xでは、顧客起点のデータベースマーケティングを推進している。データベースマーケティングで主にデータエンジニアリングや分析基盤を担当するANA X株式会社の谷山徳太郎氏は、MarketingCloudの導入検討に加わっていた中心人物の1 人。Salesforce製品を選んだ理由について、「データベースマーケティングで分析した顧客データを顧客コミュニケーションに活用し易い点」に加えて、「事前の懸念点が年3 回のアップデートによって解消していった進化の速さへの評価と、新たな配信チャネルを追加するごとに要するカスタマイズが容易な点が決め手となりました」と振り返る。
導入決定から3か月後には、空港の保安検査場を早めに通過した乗客にクーポンメールをリアルタイムで送信する基盤として採用。実証実験の段階で、早期の通過を15%増やす成果が得られた初めての試みを、短期間でサービス化できたのはMarketing Cloudの導入が大きい。
その後の本格展開では、キャンペーン実行に必要なデータを管理する顧客分析基盤などとの連携が進み、活用範囲はさらに広がった。
一般にMarketing Cloud はMA(マーケティングオートメーション)のツールとされるが、ANAグループにおける活用は、単なるキャンペーン情報の通知目的にとどまらないという。井岡氏は「お送りするメッセージから『混雑回避のための行動を促してスムーズな搭乗につなげる』など、顧客体験を全体的に向上させることを意識しています。保安検査のシーンで試用を始めたのも、定時性というサービス品質の向上につなげる狙いがありました」と解説する。
魅力的なキャンペーン通知も、たとえば出発ロビーでの特典情報が、保安検査前に急遽搭乗を取りやめた乗客にも届いては逆効果となってしまう。リアルタイムの行動データが得られる環境を活かし、Marketing Cloudの実装では、こうした事態を防ぐ設計にも注力していく方針。「心地よい顧客経験の追求が、ひいてはフライト以外のサービスも含めたLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)の向上につながる」(井岡氏)展開を目指している。
実証段階でも、出発ロビーの売店では、余裕ある行動の証であるクーポンの提示者に「早く来てくださってありがとうございます」と店員が声かけするなど、デジタルとリアルが融合したサービスの兆しがうかがえたという。
Marketing Cloudによるタイムリーなメッセージ送信はこのほか、対顧客だけでなく社内連絡にも貢献している。
「搭乗にあたって特別な配慮を要する方からの予約がないか毎日端末を操作して照会していたのが、該当する予約が入るとすぐに通知が届くようになり『本当に便利』と営業担当者から歓迎されています」(井岡氏)
部門横断的なCX基盤に連動するMarketing Cloudの活用で、メッセージ送信を含む施策が柔軟に展開可能となったのにともない、より効率的な運用を目指して体制も変えられた。ANAグループ各社・各部門が独自に進めてきたコミュニケーション施策は、ANA Xの「デジタルマーケティング部」に集約。優先順位づけや各所の調整、さらに実際のオペレーションやリソース管理も同部が一括して担うこととなった。

人が担うサービスと
デジタルな情報提供の融合を目指す

CX基盤への対応に合わせて旧来のMAツールを置き換えたMarketing Cloudの運用について、谷山氏は「新たなツールだけに習熟も要しましたが、それでも施策のスピードは総じて速まった実感があります」と明かす。
顧客体験の全体的な向上を図るANAグループの戦略とSalesforceのマッチングについて、井岡氏は「人によるサービスとデジタルをつなぐ意識が共通」と分析。さらに「コンタクトセンターで導入しているService Cloudで得たお客様の声を、Marketing Cloudで送るメッセージに反映できるなどポテンシャルも大きいだけに、受け手にとって快く、信頼感のあるメッセージをどう届けるかが今後のテーマになるでしょう」と話す。
新型コロナウイルスの流行で打撃を受けた航空業界は目下、感染拡大防止に配慮しつつ運航規模を回復させていく途上にある。「強化されたキャンペーンメール配信の本領発揮は、いよいよこれから。『新しい日常』への取り組みも含め、いまお伝えすべきメッセージがふさわしい形で届けられる環境を、最大限に活かしていくつもりです」(井岡氏)

 

- 第 2 章 Service Cloud編

将来の拡張性・連携性を重視
自社開発システムから標準機能ベースに移行

国内外の対応基盤を統一したCRMが
導入当初から思わぬ活躍

2020年、世界的に人の往来が停止する未曾有の事態をもたらしたコロナ禍。突然かつ想定外の事態により、各国の航空会社はフライトを予約済みの顧客に対して前例のない対応を迫られた。
「当社は状況の変化を踏まえ、予約の変更や取り消しに関するコロナ影響による特別対応を途中で拡大したため、結果としてお客様にとって状況が分かりづらい状況が生じました。発券日や搭乗日などの条件が多岐にわたることもあり、関係するご予約への対応を電話主体で行った場合、コンタクトセンターの対応が追い付かず、お客様にさらにご迷惑をおかけするおそれがありました。」
全日本空輸株式会社 CX推進室業務推進部 営業サポート企画チーム アシスタントマネージャーの山下 菜津子氏は、そう振り返る。
同社が導入した、Salesforceの顧客情報管理ツールであるService Cloudは当時、本格稼働を目前に控えたコンタクトセンターでのトレーニングが最終盤を迎えていた。
この局面でいち早く役立ったのが、同ツール標準のアンケート機能であるSalesforce Surveysだった。予約サイト「ANAウェブサイト」からチャットボットで特例の該当者を誘導後、必要事項を申告してもらうフォームを、同機能を利用して短期間で作成し、提供。「回答結果を一括ダウンロード後、後続の工程を分担することで、膨大な作業を迅速に処理できた」(山下氏)という。
3 月26 日から本格運用を開始したService Cloudは、東京・札幌・長崎・ロサンゼルスの拠点間で、顧客対応のプラットフォームを共通化。これにより、担当業務やタイムゾーンの異なる千人を超える規模のコミュニケーターが、サービスを一体提供できる環境が整った。

国・チャネルをまたぐ問い合わせにも
シームレスに対応

ピーク時にはコンタクトセンター業務の相当部分を占めたコロナ禍関連の対応を含め、本格稼働を始めて日が浅いながらも、週およそ6 万件の問い合わせに対して円滑な応対を実現できたという。
「日米の時差を利用し、私たちはコンタクトセンターの一方が営業時間外の場合、開いているほうに転送する運用をしています。応対履歴を拠点別に管理していた従来は、例えば深夜にお問い合わせを受けた後、翌朝再度ご連絡いただいた場合に最初からご説明いただくケースなどがありましたが、共通のCRMに統合したことで、こうしたお手間を取らせることがなくなりました」(山下氏)
顧客情報を一元化した効果は、それだけにとどまらない。ANAグループのコンタクトセンター部門であるANAテレマート株式会社の長島 雄輝氏(東京支店 AMCグループ グループコーディネーター)は「お問い合わせのメールに続いて電話も頂戴した場合、従来は別系統での対応だったため状況の把握に時間を要していましたが、Service Cloudではコミュニケーターの操作画面に双方の履歴が表示されるようになり、その場ですぐ的確な応対ができるようになりました」と話す。
情報共有にあたり、Salesforceが年3 回の頻度でアップデートしていく標準機能を極力そのまま利用し、将来的な拡張性を重視した今回のシステム構成は、サービス品質の継続的な向上も狙いとしている。ただ一方、自社業務に最適化していた旧システムとの比較では、使い勝手が変わった部分もあった。
「現場でのトレーニングに際し対応手順(方法)を極力標準化させることの狙いを丁寧に説明するとともに、Salesforceの仕様に即して業務手順も順次見直しています」と、同社CX推進部 CX企画チームの相澤 加奈子氏。導入プロジェクトに参画後、現在は自身がユーザとなって日々運用に携わる長島氏も「着信状況がリアルタイムで分かるService Cloudのレポート機能をもとに混雑緩和のアクションがただちに取れるなど、現場にとってもメリットが多いことが徐々に理解されてきました」と手応えを語る。

デジタルな情報提供と人ならではの
サービスで顧客満足度を向上

多様なソリューションと容易に連携できるService Cloudは、ANAグループが一体となって進める総合的な顧客体験向上の取り組みともリンクしている。
全日本空輸株式会社 デジタル変革室 サービスプラットフォーム部 デジタルチャネルチーム マネージャーの当真 利恵氏は「非対面でお客様と対話できるコンタクトセンターの存在感が高まる中、応対で得られた情報を集約して旅行体験の別のタッチポイントに反映できる仕組みが今回整った意義はさらに増していくでしょう」と予測する。
同ツールの優れた拡張性は、既に複数のかたちで具現化しつつあり、中でも音声認識技術による通話内容のテキスト化や、チャットボットによるLINEアプリ上での自動応答との連携には社内の期待が大きいという。
これらの技術を通じてアウトプットされるテキストベースのデータと、Service Cloudが蓄積したデータを照合し、的確な情報を瞬時に示せるようになれば「お電話いただく前に問題解決できるケースを増やせるだけでなく、コミュニケーターの集合知を活用することによって、国内線・国際線の予約受付担当を兼ねるといった柔軟な人員配置も可能になるでしょう」と、山下氏は展望を描く。
デジタルトランスフォーメーションの先進企業として知られるANAグループが採用する多彩なテクノロジーには「より正確で便利な情報提供」、そして「人にしか出来ない業務への集中を促す効果」が期待されているという。CRMを核とする今回の試みも、ニューノーマル時代にふさわしい顧客満足度向上の新たな標準を打ち立てることとなりそうだ。

※ 本事例は2021年11月時点の情報です
 
 

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