川口市

稼働後には新型コロナ感染の第3波に見舞われましたが、 Salesforceシステムの存在なしに事態は乗り切れなかっただろう というのが率直な思いです”

川口市保健所 地域保健センター 母子保健係 係長(保健師) 田辺 香苗 氏
 

「人」を起点にSalesforceに患者情報を集約
健康観察を電話からWebシステムへ
市民ケアの強化に努める

新型コロナ対策の専任チームを発足するも
必要な情報が散在するなど課題に直面

埼玉県南部に位置する川口市は荒川を隔てて東京都と接しており、古くから鋳物産業で栄えてきた街として知られます。2018年には中核市に指定された同市の現在の人口は約60万人。市街地にはショッピングモール等の商業施設、中高層マンションが立ち並び、近年主に東京のベッドタウンとしてさらに大きな発展を遂げています。
2019年末から全国に広がった新型コロナウイルスの感染拡大を受け、川口市では当初、PCR検査の受診調整や陽性者の積極的疫学調査・健康観察、ホテル療養・入院の調整といった業務を保健所の疾病対策課感染症係の保健師が一手に引き受けるという体制を敷いていました。ところが、その後の感染者急増に伴い、そうした体制では業務が立ち行かないという問題に直面。そこで、業務の事務領域を支援する応援職員を庁内他部署から派遣し、それら職員と保健所の保健師で構成される保健所コロナ対応チームを2020年4月に発足させました。
保健所コロナ対応チーム内には、陽性者対応、健康観察、PCR受診調整をそれぞれ主管する3つのチームを設置し、それらチームが連携して業務をこなしていく体制を整えました。「ところが、そこで大きな課題が顕在化してきました。1つには、例えば陽性者の一覧や症状経過、PCR検査の結果情報、あるいは市民から寄せられた相談への対応履歴など、業務遂行に必要な情報がExcelやWordのファイルでバラバラに管理されているという問題です」と川口市役所の会田裕貴氏は語ります。
このため、必要な情報を入手するためにあちこちのファイルやフォルダを探し回らなければならず、また他の担当者が開いているファイルの編集が行えない、あるいは集計作業などを行う際にもいくつかのファイルの内容を参照しなければならないなど、多大な労力と時間を要してしまう状況でした。
また、別の課題も浮上していました。自宅療養中の陽性者や濃厚接触者への健康観察のための電話対応業務の負荷です。「2020年7月の段階で、1日に行う電話による健康観察は200件以上にのぼっており、多大な負荷となっていました。情報入手にまつわる課題とあわせて、このままでは、当時押し寄せつつあった感染の第2波をとても乗り切ることができないのではないかという危機感を募らせていました」と川口市保健所の田辺香苗氏は振り返ります。
 

川口市役所 情報政策課 情報システム係 会田裕貴氏(右) と川口市保健所 地域保健センター 母子保健係 係長(保健師)田辺香苗氏(左)

情報を一箇所に集約しただけでは不十分
「人」が起点の情報アクセスを目指す

そうした折、メディアを通じて報じられたのが、Salesforceをベースとする「新型コロナ保健所業務支援クラウドパッケージ」を採用した千葉市保健所の事例でした。このニュースに大きな関心を寄せた川口市の保健所コロナ対応チームでは、早速、千葉市保健所にヒアリングを申し入れ、実際に話を聞いてみると川口市の課題解決にもつながるという大きな手ごたえが得られました。
当時、保健所コロナ対応チームにおいて目指すべきシステムの姿として描かれていたのは、単に必要な情報を一箇所に集約するだけでなく、陽性患者など「人」に紐づけるかたちで、例えば症状経過や検査、濃厚接触者、相談履歴などの情報に対しスムーズにアクセスできる仕組みでした。「加えて、我々が不可欠な要件としていたのが、早期導入が可能であること。その点でも、クラウド型でハードウェアの調達を行うことなく、サービスの実装にかかわる時間も劇的に圧縮され、最短時間で利用を開始できるという点でもSalesforceのパッケージには大きな魅力を感じました」と会田氏は語ります。
さっそく、同チームではセールスフォース・ドットコムに対しシステムの説明を依頼。2020年8月に説明会が実施され、川口市では直ちに導入を決定しました。10日後 にはセールスフォース・ドットコムのパートナーであるデロイト トーマツ コンサルティングの支援のもと導入プロジェクトがスタート。そしてわずか2週間後には同パッケージの導入が完了したのです。

現場職員自らが簡単なマウス操作で
状況変化に応じシステム改修を実践

新型コロナ保健所業務支援クラウドパッケージの活用により、保健所コロナ対応チームが思い描いていた「人」を起点とする統合的な情報管理が実現されました。たとえばSalesforceの画面上で、ある陽性者の名前で検索を行えば、その人にまつわる相談履歴や症状経過、検査など業務遂行に必要な情報が即座に表示されるようになっています。そのほか、生年月日や電話番号、施設名など任意のキーワードで関連情報を検索することも可能です。
さらに業務の現場でとりわけ高い評価をもって迎えられているのが、システムへのログイン後の画面に表示されるダッシュボードです。「そこには、各日の検査数や陽性者数、入院患者、自宅療養者の数などがグラフを使ってわかりやすく可視化されます。従来、多忙な現場で膨大な時間をかけて統計情報を作成しなければなりませんでした。それが、まったく手間や時間を必要とせず、しかもリアルタイムなデータに基づくレポートとして得られるようになったことは大きな成果です」と田辺氏は強調します。
一方、健康観察にかかわる電話確認業務の課題もシステム化による対策が立てられました。毎朝、対象者にはメールが配信され、それをPCやスマートフォンで受け取った対象者がメールに記されたURLをクリックすると、体温や症状など健康状態を尋ねるフォームが表示されて、そこで必要な情報を入力してSalesforceに登録するという仕組みを独自に構築したのです。「コロナ対応チームでは、Salesforceの画面を見るだけで陽性者等の健康観察が行え、架電による確認は健康状態が思わしくない人や、入力がない人に対してだけで済むことになり、当該業務にかかわる負荷が劇的に低減されています」と会田氏はその効果のほどを紹介します。これについては、2021年7月末現在で1日約600件の健康観察のうち、約400件がSalesforce上で確認できるようになりました。
「システム稼働後の2020年12月には新型コロナ感染の第3波に見舞われましたが、こうしたシステムの存在なしに事態を乗り切ることはできなかっただろうというのが、率直な思いです」と田辺氏は明かします。
さらに、コロナをめぐる環境は継続的に変化しており、そうした中で現場では、例えば擬似症やワクチン接種に関する情報など新たな管理項目の追加や、レポーティングのレイアウト変更などのシステム改修の要望も随時寄せられているといいます。「これに対しSalesforceでは、項目追加やレイアウト変更といったレベルのシステム改修なら、マウスのドラッグ&ドロップ操作のみで、現場職員自らが内製により速やかに対応していくことが可能です」と会田氏。「対応に必要なSalesforceの基本的スキルの獲得には、セールスフォース・ドットコムとデロイト トーマツ コンサルティング共催による人材育成プログラム『Pathfinder』がおおいに役立ちましたと」続けます。
今後も川口市保健所では、陽性患者をはじめとする市民のケアを、今回のシステムを最大限に活用しながら実践していくことになります。さらに今後は、短期間で稼働が開始でき、状況の変化に対しても、ノーコード・ローコードで自治体職員による対応が可能なSalesforceのクラウドサービスを川口市の市民サービスの向上や職員の働き方改革領域にも活用し、DX推進を行なっていく予定です。
※ 本事例は2021年10月時点の情報です
 

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