株式会社セールスフォース・ドットコム

IT素人の私が、米国と調整してワクチン接種の仕組みを1週間でリリースできました。 Salesforceはユーザー目線だと実感しました。​ ​”

ベネフィットプログラム担当 宮崎 元晴
 

実質7日間で職域接種システムが完成

セールスフォース・ドットコムは、自社のクラウドソフトウェアであるSalesforceを社内でも使うことがビジネスの基本となっており、自らの業務プロセスを取り込んで先進的なソリューションへと進化させています。2021年、新型コロナワクチンの職域接種を実施。そのために、医療・保険・製薬・医療機器・公衆衛生向けに患者を中心とした患者ファーストな360度ビューを提供するHealth Cloudをベースに、日本の特殊なプロセスに対応するシステムを実質的に1週間で構築・実装しました。
職域接種を自社でも実施すると決めたのは、6月の上旬でした。政府から概要が発表されると「可能な限り迅速にスタートさせる」というトップの方針が示され、ベネフィットプログラムの担当を務める宮崎 元晴は降って湧いた新しい仕事に忙殺されることになりました。
「従業員に加え、関係会社の社員やその家族、パートナー企業の従業員も対象になります。検討を開始したのが6月7日で、職域接種のスタートは7月21日。予約期間を考えれば、7月上旬には接種希望者全員が利用できるシステムを用意しておく必要がありました」(宮崎)
当初検討したのは米国を中心に実績のあるHealth Cloudを中心とした包括的なワクチン管理ソリューションであるVaccine Cloudのカスタマイズでした。同時に、Salesforceのプラットフォームを使った自治体向け製品など、アライアンスパートナーの提供するソフトウェアも評価しました。重視したのは開発期間で、求めていた要件を完璧に充たすことは現実的に不可能だと考えて、検討は進みます。職域接種を実施する場所の検討や、健康管理システムCarelyを弊社に提供してくれているヘルステック企業の株式会社iCARE(以下、iCARE)との調整などと並行してソフトウェアの検討を進める中、米国本社に助言を求めたところ、「1週間で必ず日本の要件を充たすものを作るから、自社ソリューションでやろう」と協力を申し出てくれました。
その結果、6月15日にHealth Cloudをベースに、Marketing CloudやExperience Cloud、Salesforce Schedulerなどからも必要な機能を活用し、米国本社が開発するシステムを使用することを決定。開発がスタートしました。
宮崎は、「米国本社のエンジニアは残業しませんし、週末は完全に休みます(笑)。時差があるため、日本の午前中を使って要件をすり合わせるなど、少ないやりとりで何とか完成させることができました」と話します。開発は、クラウドで完成型を共有しながらアジャイルで進めたため、テストにかける時間は最少で済みました。「最終納品されたのが6月25日の金曜日。週が明けた28日に予約スタートの告知をすることができました」。
 

日本の要件を取り込む

欧米では、ワクチン接種のプロセスはすべてデジタル化されています。一方、日本では接種希望者が紙の予診票にペンで記入する必要があり、その保管が義務付けられるなど、紙による旧時代的なプロセスも含まれてしまいます。多くの場合、紙とデジタルは相容れないものですが、Health Cloudのベースを生かし、「管理はデジタルで一気通貫させるが、紙でも保管する」という補助的な扱いとすることでクリアしました。
ワクチンの在庫管理もシステム上で行わなければなりません。当初は、「登録が面倒なのでロット管理まではやらないでおこう」と考えていたといいますが、開発サイドから「絶対に必要になるからやっておいた方が良い」との助言を受け、実施することに。これが役に立ちました。ワクチンに異物混入が発生した際に、職域接種で使用したものに該当ロットが含まれていないことを瞬時に把握して、接種済みの人たちにすぐに「安心してください」とお知らせすることができたのです。
接種会場の指定を含む予約管理の仕組みも実装しています。平日はオフィス、休日はiCAREの会場で接種することになるため、予約者の情報をiCAREとセキュアかつスムーズに共有しておく必要があります。既往歴や接種リスクの評価などセンシティブな情報を含むデータで、医師・看護師と本人にしか見せられない情報へのアクセス方法などを含め、iCAREと密に連携して職域接種を順調に進められるように調整しました。
「iCAREはテクノロジーへのリテラシーが高く、電話でのやり取りは全くしませんでした。Slackで情報を共有して、開発中からデモ動画を見てもらうなど、システムの使い方を伝えておくだけで、完璧に業務を進めてくれました」(宮崎)
セールスフォース・ドットコムでワクチンの職域接種を予約(弊社の職域接種を利用)したのは約3,000人。正社員、契約社員、嘱託社員に加え、請負派遣や関係会社の社員とその家族がこのシステムを利用しました。

ワクチンの廃棄ゼロを達成

弊社が利用したワクチンは冷蔵庫で保管し、1つのバイアル(注射剤を入れるための容器)から10ショットを取れます。一旦常温に戻すと、再び冷蔵して使用することはできません。貴重なワクチンですから廃棄は極力避けなければならず、予約システムをチェックしながら当日キャンセルの動向を注視し、きれいに使い切る必要があります。
セールスフォース・ドットコムでは、オフィスとiCAREの会場の2か所に冷蔵庫とロガー(庫内温度のログを取る機械)を設置しました。会場が複数あって、どちらも廃棄ゼロになるように運用できたのは、Salesforce Schedulerの成果です。10分単位で時間を区切り、各スロットに6人の予約でプロセスを流しましたが、万一のキャンセルの際に、ワクチンとリソースをほかの人に割り当てられる仕組みにすることができたのです。
Experience Cloudをユーザーインタフェースとしたため、PCとモバイルのどちらからもアクセスでき、だれにとっても扱いやすい画面から予約できます。管理者側は、Marketing Cloudで対象者を抽出してメールを送ることもできます。たとえば、1度目の接種を終えてから、2度目の予約がまだの人に対して、予約を促すリマインドメールを送るなどに使えます。このようにHealth Cloudを中心に様々な製品を組み合わせ、ユーザーである社員や関係者が利便性が高い形で継続的に最適なヘルスケア(ワクチン接種)を受けられるようになりました。
職域接種は一旦終了しましたが、今後、ブースター接種が実施される可能性がある為、システムは継続的に活用していく方向です。自治体が自宅に郵送してくる接種券がまだ届いていない人も居ます。プロセスが完全に完了するまで、このシステムで利用者をフォローしていきます。
宮崎は、「セールスフォース・ドットコムに務めていながら、私はふだんの仕事でシステムをほとんど触らないITの素人です。そんな私が、米国のプロフェッショナルと調整してシステムを作ってもらうことができました。今回のプロジェクトを通して、Salesforceというはユーザー目線なのだと実感することができました」と話しています。
※ 本事例は2021年10月時点の情報です
 

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