目指しているのはより一層の成長を
継続すること。Salesforceを核とした
The Modelの仕組みは、そのために
欠かせない重要な基盤です”

Sansan株式会社 プリンシパルデータソリューションアーキテクト 久永 航 氏
 

効果的なマーケティングと営業活動を展開する上で、欠かすことができない「正確な顧客情報」の把握。それぞれの顧客がパイプラインの中でどこに位置づけられ、次に何を行うべきかを判断するためには、複数のKPIで顧客を可視化し、すべてのプロセスをつなげていく必要がある。近年ではサブスクリプション型のビジネスも増えてきたことから、このような顧客理解の重要性はさらに高まっているといえるだろう。この種のビジネスでは、パイプラインは「販売して終わり」ではなく、「販売してからが始まり」になるため、さらに継続的な顧客状況の把握が必要になってくるからだ。

これを実現するために、Salesforceが実践している「The Model」の仕組みを導入しているのが、Sansan株式会社である。同社は2007年6月に設立された、クラウド名刺管理サービスを提供する企業。「出会いからイノベーションを生み出す」というミッションを掲げ、法人向け名刺管理サービス「Sansan」や、個人向け名刺アプリ「Eight」を展開している。

「Sansan事業部でSalesforceを導入したのは2011年にまで遡ります」と語るのは、Sansan事業部でプリンシパルデータソリューションアーキテクトを務める久永航 氏。名刺情報にもとづく人脈の共有はすでに自社のSansanで行われていたが、そこから獲得したリードの受け皿となる仕組みが必要だったと、その導入理由を振り返る。「このときはまだリード数やスタッフ数も少なかったのですが、当初から世界のベストプラクティスを導入しようと考えSales Cloudを選択しました」。

その後ビジネスが急拡大すると共に、マーケティングやインサイドセールス、営業の人員も急増。これに伴い新たな問題が浮上してきた。それまでは属人的な手法でマーケティングや営業が行われていたが、社歴の浅い社員が増えていったことで、それでは回らなくなっていったのだ。

「以前の商談管理は、営業担当者の感覚でA/B/Cにランク分けするといった主観的な方法で行っていました」というのは、Sansan 事業部 事業企画部 マネジャー 人事部 中途採用グループの畑井丈虎 氏。クロージング率の予測がCだった案件が、期末になると理由もなくBに変更されることも少なくなかったという。「私たちは『気合のABC管理』と呼んでいたのですが、このような主観的な管理から脱却し、客観的かつ再現性のある手法を導入すべきだと考えていました」。

 

そのためのツールとしてSansan事業部は、すでに導入されていたSales Cloudの活用を決定。以前はマーケティングとインサイドセールスで利用されていたが、2017年には全営業担当者が活用を開始している。その後、Salesforceのパイプライン管理手法を徹底的に学び、2018年5月に案件ステータスの管理を開始。複数のKPIを活用した「ファクトベースのパイプライン管理」を実現していくのである。

現在のSansan事業部における業務フローの全体像と、各フェーズに対応するシステムの構成は図に示すとおり。展示会などで入手した名刺をSansanで全社管理する一方で、デジタルチャネルで獲得した情報はMAツールに格納。これらをSansanの「顧客データHub」で統合・整理し、Sales Cloudへと引き渡している。その後の顧客管理や商談管理はすべてSales Cloud上で行われ、フェーズごとの滞留期間や競合情報も含め、すべての情報がSales Cloudで参照できるようになっている。

「Salesforceによる情報管理を徹底していくため、フォーキャストミーティングのやり方も変更しました」と久永氏。データの二重管理を禁止し、営業担当者がSalesforceに入力したデータだけで、ミーティングを行うようにしたのだという。「フォーキャストはパイプラインの各フェーズと結び付けられており、それがどのように変化したのかを常にチェックしています」。

現在使用している主なKPIは大きく3種類。インサイドセールスはパイプライン金額とアポイント件数、営業担当者は売上金額(件数)を主に見ているという。

「KPIにもとづくパイプライン管理によって、メンバー同士が共通の言葉で議論できるようになり、意識レベルの共通化も実現されています」と畑井氏。PDCAをより細かく回していくことが可能になったという。またパイプラインにつながりやすい顧客に着目することで、インサイドセールスの生産性も向上。「以前はインサイドセールス1名に対して営業担当者2名でしたが、現在ではインサイドセールス1名で営業担当者3名をサポートしています」。

顧客情報の統合・整理に使われている顧客データHubの存在も、注目すべきポイントだといえるだろう。これは、異なるシステム間の顧客データを半自動的に統合し続けると共に、Sansan独自の正規化ノウハウによって表記の揺れをなくし、より正確な顧客データ管理を実現できるというもの。また登記簿情報や法人番号、帝国データバンク、役職ランクなどの情報も付与される。これによって「取引先に自動的に紐付けられたリード数」が以前の約3倍に増加し、リード化された後のアプローチをより効率的に行えるようになっているという。

「このような体系化されたパイプライン管理は、セールスイネーブルメント(営業担当者の育成)にも役立っています」と畑井氏。各フェーズの状況を正確に把握し、それに対する行動とその結果を分析することで、誰にでも学習できるベストプラクティスを抽出できるようになったからだという。「これによって新規採用した営業担当者の立ち上がりまでの期間が短縮されており、組織としてのレバレッジも効かせやすくなりました。提案書などのナレッジ共有も積極的に推進しています」。

その一方で、マーケティング施策の改善にも大きな貢献を果たしている。

「以前はマーケティング施策全体がどれだけ受注につながったのかを見てきましたが、リードの獲得件数と受注金額との乖離が大きく、これが悩みの種でした」と語るのは、Sansan事業部 マーケティング部 事業企画部の柳生 大智 氏。The Modelにもとづくパイプライン管理を導入した後はフェーズ毎の集計データをダッシュボードですぐに把握できるようになったため、これらの情報を活用し「商談につながりやすいのはどのようなリードで、それを獲得するにはどのようなマーケティング活動が効果的なのか」を意識しながら、施策を立案するようになっているという。「ホットリードの定義はインサイドセールスと話し合いながら調整していますが、現在は商談化率が15%を超えるものをホットリードと定義し、この定義でフィルタリングしたものをインサイドセールスに渡しています。これらの実際の商談化率は、Sales Cloud経由でフィードバックされるため、マーケティング施策の調整を細かいサイクルで行えるようになりました。ホットリード数の増加の背景には、施策の調整スピードアップもあるのですが、精緻なターゲティングを可能にする属性情報の付加の影響も大きかったためです。ホットリードの数は、以前に比べて増加しています」。

このようなきめ細かい調整は、今後さらに重要になっていくはずだと久永氏はいう。以前のSansan事業部では中小企業をメインターゲットにしていたが、最近では大企業を狙った営業活動も積極化しているからだ。

「中小企業のお客様は8~9割がインバウンドで、顧客情報の獲得から商談成立までの期間が短かったのですが、大企業のお客様はこれとは売り方が大きく異なります。ファーストコンタクトから商談成立までの期間が長期化するため、各フェーズのKPIを活用しながら細かく管理していくことが不可欠なのです」。

Sansanユーザーの利用状況などは、カスタマーサクセス部門が別の仕組みで可視化しているが、これも今後はSalesforceでチェックできるようにしていく方針だ。そのためのデータベース統合は、近日中に完了する予定。またCustomer Communityも導入されており、顧客自身がコミュニティで情報発信や情報収集を行える仕組みも確立されている。

「これまで既存顧客に対しては、いかにして離脱を防ぐかといった『守りの体勢』でアプローチしていましたが、これからはアップセルなどの『攻めの体勢』で臨んでいきたいと考えています」と久永氏。Sansan事業部ですでに活用している顧客データHubもアップセル商材の1つであり、大手顧客を中心にLTVの最大化を狙っていくという。「目指しているのはより一層の成長を継続すること。Salesforceを核としたThe Modelの仕組みは、そのために欠かせない重要な基盤だといえます」。

 
 
Salesforce 製品、価格、実装方法、その他何でも、ご不明な点があればお尋ねください。高度な訓練を受けた弊社の担当者がいつでもお待ちしております。