コクレアは、世界中の埋め込み型聴覚機器の利用者と長期的な関係を作るために、コミュニケーションチャネルを提供することにしましたが、Salesforce はまさにうってつけでした。Salesforce のプラットフォームを基盤とする Cochlear One というコミュニティを開設し、顧客と直接つながり、コミュニケーションをしています。

Salesforce は、顧客が初めに聴覚機器をリサーチする段階から、大きな役割を果たします。誰もが常にインターネットに接続しているデジタル社会において、まず使われる情報収集の手段は Google です。

「今や医療機器の選定には、医師だけでなく患者自身の意思が尊重されています。患者は自ら調査し、同様の経験を持つ人々の意見を聞き、また友人に相談をします」とマーケティングテクノロジー部門のグローバル責任者、Vishy Narayanan 氏は述べています。

同社はメインの Web サイトである Cochlear.com に加え、聴覚に関する情報を提供する iwanttohear.com を開設しました。この Web サイトは、聴力に問題を感じながらも、専門的なサポートを求めるには至っていない患者を対象としています。Web サイトの訪問者による同意のもと、Cochlear One で具体的なアドバイスやサポートを提供し、誰もがニーズに応じて聴力を向上できるよう支援しています。

またコクレアは、およそ 3,000 名から成るボランティアコミュニティを Salesforce 上で形成しています。このコミュニティでは、埋め込み型聴覚機器の利用者が、現在検討中の患者と自身の経験を共有することができます。「難聴を抱える 3 歳児の保護者は、80 歳の患者ではなく、難聴のお子様を持つ他の保護者の意見を聞きたいはずです」と Narayanan 氏は言います。

現場ではコクレアの営業担当者が外科医、聴覚学者、臨床医の専門家グループと、一元化されたデータをやり取りしています。これにより、患者個々の状況を十分把握したうえで、適切なサービスを提案することができます。また、コミュニケーションを単なる情報伝達の手段ではなく、戦略的に活用することも可能になっています。

それでも、顧客の期待にテクノロジーだけで応えるのは容易ではありません。求められているのは、情報にもとづいた誠意のあるサービスです。コクレアでは、埋め込み型聴覚機器の利用者や聴覚学の知識を持つ人材にコンシェルジュサービスを担当させることで、患者の経験や思いをより深く理解することに成功しています。

また、患者はさまざまなチャネルから、使いやすいものを選んで同社と連絡を取ることができます。たとえば Live Chat は、口頭による会話ではなく筆談を希望する患者に最適です。「機器の利用者が新たな生活に適応するには、さまざまなステージがあります。音声認識を学び始めたばかりの新規利用者の場合、電話は最適な手段ではありません」と、機器の利用者でありコクレア従業員の Kate Obermeyer 氏は述べています。

Cochlear One では、コクレア、医療専門家、患者と既存ユーザーのコミュニティの 3 つを結び付け、卓越したカスタマーエクスペリエンスを実現しています。

「これからは、あらゆるものがつながる世界になっていくわけですが、当社はSalesforce や専門家の協力があって、つながりを活かした顧客体験をお届けできるのです」と Narayanan 氏は語ります。