

データはきわめて有益な戦略的資産ですが、その価値を引き出すのは必ずしも簡単ではありません。実際、ビジネスリーダーの94%は、自社のデータからもっと価値を引き出せるはずだと考えています。
では、企業はどうすればデータに隠れている価値を掘り起こし、ビジネスの結果につなげることができるのでしょうか?それには、データ戦略の策定が必要です。アナリティクス、ITリーダーの78%が、データを活用してビジネスの優先目標を達成することに苦心していると回答しています。やるべきことはたくさんあります。効果的なデータ戦略があれば、競合他社に差をつけられます。この記事では、その方法を詳しく解説します。

新登場 Data Cloud
Data Cloudは、Salesforceとネイティブに連携する唯一のデータプラットフォームです。あらゆるシステムからデータを収集し、調整・一体化するため、顧客を深く理解し、成長を促進できます。
データ戦略の定義
データ戦略とは、ビジネス目標を達成するために、データの活用方法を策定する総合的な計画のことです。単なるIT関連の取り組みではなく、誰もがデータを信頼し、効果的に活用できるようにするための、全社的なデータ管理のアプローチを意味します。
データ戦略の枠組みには、少なくとも以下の要素が含まれます。
- プロセス – 意思決定とビジネス目標の達成をサポートする良質なデータを確保するために、データを収集、格納、管理、共有、分析。
- テクノロジーインフラストラクチャー – BIツール、高度なアナリティクスソフトウェア、データベース、クラウドストレージ、データプラットフォームなど、事業の目標達成を支援。
- 人的リソース – データ戦略の実施とサポートに専念する人材と、そのスキルを高めるための継続的なトレーニングと能力開発。

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なぜデータ戦略が重要なのか
世界中の分析部門のリーダーやITリーダーのほぼ100%が、自社のデータからもっと価値を引き出したいと考えています。データの管理と活用のガイドラインを確立するには、一貫性のあるアプローチ、つまりデータ戦略が不可欠です。
データの量は増え続け、複雑化する一方で、その勢いが衰える気配はまったくありません(英語)。データすべての管理は、どの企業にとっても終わることのない課題です。膨大な量の多様なデータの処理は簡単ではなく、多くのデータは連携できないばらばらの状態で保存されています。平均的な企業では1,000種以上のアプリケーションが利用されており、従業員が実際に活用できる、統合されたデータエコシステムの構築は至難の業です。
データを統合し、効果的に管理してビジネスの成功を後押しする計画を作成すれば、データの可能性を余すことなく引き出すことができます。
CEOからカスタマーサービスの責任者まで、誰もがデータ戦略の内容、戦略を実行するうえで各自が担う役割、戦略とビジネス目標との関連性を理解する必要があります。では、データ戦略がすべての企業にとって最重要事項である4つの理由を詳しく見てみましょう。
データ戦略を策定することで、すべてのデータを統合する計画を作成し、データにもとづいたアクションを取ることができます。増え続けるデータの管理がいかに複雑であるかを考えると、データ戦略には、あらゆる場所にあるデータを一元化するだけではなく、ビジネス全体で活用するための計画が不可欠です。
すべてのデータを統合するうえでカギとなるのが、企業のデータを隈なく可視化するテクノロジーソリューションです。SalesforceのData Cloud のようなプラットフォームを中心にしたデータ戦略を立てれば、ERPをはじめとする社内のシステムやアプリと、データレイクやデータウェアハウスなどの社外のソースからデータを集約できます。Data CloudとSalesforce Platformを使えば、社内の誰もがデータを有効に活用して、顧客体験のパーソナライズやプロセスの自動化、高度なアナリティクス、AIによるイノベーションを実現できる戦略の構築が可能になります。
データ戦略は、情報にもとづく意思決定を促進します。企業が意思決定の基盤としてデータを活用すれば、直感頼りではなく、ビジネスと顧客のニーズに関する事実にもとづいて、確信に満ちた判断ができます。データから得られるインサイトは、製品の改善、業務効率の向上、収益に直結する顧客の理解にきわめて重要です。
データ戦略があれば、競争優位性を確立できます。データを統合して顧客の全体像を構築することで、企業は競争力を強化できます。たとえば、John Lewis Partnership社(英語)は、SalesforceとTableau を活用した包括的なデータ戦略により、傘下の食品店が在庫を管理し、顧客の期待に応えられるように、アクションに活かせるリアルタイムのインサイトを提供しています。店舗は顧客のニーズを予測して店舗ごとに最適な商品を用意し、完全注文達成率の向上に貢献しています。
データ戦略は、AIプロジェクトを後押しします。調査で判明しているように、AIを成功に導くために何より重要(英語)なのは、データを準備することです。AIモデルには質の高いデータが必要です。良質なデータがなければ、正確な結果を得ることはできません。営業を例に考えてみましょう。営業向けの生成AIソリューションが、不正確なデータや不完全なデータを使えば、関係のないリードを生成したり、的外れなアップセルを提案したりすることになります。一方、適切に管理された信頼性の高いデータを基盤とするAIなら、CRMデータと外部データを使って、正確な顧客プロファイルを簡単に構築できます。信頼性の高いAIを使えば、価値の高い顧客や見込み客を特定し、クロスセルの機会を発見して、正確な収益予測に役立つ信頼性の高い売上予測を作成できます。
アナリティクス、ITリーダーの86%が、AIの出力は入力するデータの質に左右されると考えています。包括的なデータ戦略により、企業がAIを使って成功するための強固なデータ基盤を築くことができます。
データ戦略は、データ重視の企業文化を醸成し、強化します。あらゆる意思決定の中心にデータを置き、すべての従業員にデータにもとづくインサイトを提供することが習慣化します。データ重視の文化が根付くと、どうなるでしょうか?成功している企業は、次のような結果(英語)
を出しています。
- 41% – 製品の市場投入にかかる時間を短縮
- 89% – 顧客の獲得と維持が向上
- 45% – 従業員維持率が向上
シアトル・シーホークス(英語)は、あらゆる活動にデータを組み込んでいます。その中心にあるのが、強固なデータカルチャーの構築です。シアトル・シーホークスは、データインサイトによってファンの体験とエンゲージメントが向上し、ロイヤルティの高い顧客基盤が築かれていることを理解しています。ビジネス戦略・分析担当ディレクターのPaimon Jaberi氏は、「すべてのスタッフがデータから最大限の価値を引き出せるようにしたいと考えています。たとえば、チケット販売の担当者にも、スポンサーシップやスタジアムの運営状況を知ってほしいのです。データの可視化と活用によって情報を共有できてこそ、それが叶います」と述べています。データの活用を後押しするデータ戦略があれば、従業員は意欲的に学習し、成長します。「ダッシュボードを作成し始めると、次はデータを深く掘り下げたくなるのです」とビジネス戦略・分析担当バイスプレジデントのJeff Dunn氏は語ります。

Data Cloudの機能と学習パス
Data CloudはSalesforceおよび他の外部データソース全体でデータを整理して統合します。Data Cloudの機能と、それを活用するための学習パスをご案内します。
データ戦略を策定するステップ
ビジネス目標と成功指標を設定し、データの目標と合致させる。
ごく簡単なことのように思えますが、Salesforceのデータとアナリティクスの最新事情レポートによると、ビジネス部門のリーダーの41%が、データ戦略がビジネス目標と一部しか合致していない、あるいは一致していないと答えています。この状態では、データドリブンな組織を築く取り組みを進めることはできません。
データ戦略の策定を効果的に始めるには、総合的なビジネス目標を理解する必要があります。営業、カスタマーサービス、マーケティング、コマースなど、顧客と直接関わり、企業の成功に大きく影響する部門から始めることがベストプラクティスと言えるでしょう。たとえば、前年比で売上を10%拡大することをビジネス目標とするのであれば、eコマースとSNSチャネルのお客様とのエンゲージメントにもとづいて、ターゲットを絞ったオファーを作成することをデータ目標とすればよいかもしれません。
現在のデータインフラストラクチャーを評価し、目標達成を支援するソリューションに投資する。
現在のデータインアーキテクチャーは、変化し続ける企業のニーズとビジネス目標をサポートできていますか?増加するデータアセットに対応し、データを保管、統合、分析する機能を備えていますか?データエコシステムの現状を評価し、問題点を認識することによって、長期的な事業目標を支えるために必要なデータプラットフォームに、どのような投資が必要かを特定できます。
データプラットフォームは、データ戦略の成功を左右する重要な役割を担っています。優れた顧客体験を提供するには、すべてのデータを集約して、顧客の全体像を構築できる機能が必要です。こうしたデータには、Webとモバイルのエンゲージメントデータ、機械学習データ、外部のデータレイクやデータウェアハウス内のデータ、CRMデータなどが含まれます。しかし、現状は業務用アプリケーションの約3分の2が連携しておらず、データはビジネスチームが顧客とのやり取りに使っている日常的なアプリケーションではなく、バックエンドシステムに「閉じ込められて」います。Data Cloudのようなプラットフォームはこうした問題を解決し、あらゆるデータソース、データウェアハウス、データレイクのデータを活用できるようにします。これにより、企業はデータの可能性を余すことなく引き出せます。
データ戦略の実施とフォローアップのためのロードマップを作成する。
データ戦略を実施するための目標、ステップ、タイムラインを定めた詳細なロードマップを作成します。このロードマップには、マイルストーン、KPI、主要な取り組み、必要なリソースを含めます。このプロセスには、重要なステークホルダーに参加してもらいます。そうすることで、企業内のさまざまな視点を最終的な計画に反映させることができます。さらに、戦略を定期的に見直し、事業目標に対する実績を測定して、必要に応じて調整します。
データ戦略は、組織体制や重視する目標によって異なります。しかし、上記のステップに従えば、データ戦略策定のプロセスを開始し、データ活用とビジネスが連動して生まれる相乗効果を実感できるでしょう。
データ戦略の重要な構成要素
ビルを建てるために鋼鉄、鉄筋コンクリート、ガラスが必要であるように、データ戦略にも、強靭さと柔軟性を両立させる構成要素が必要です。前述したように、まずはデータ戦略を事業目標と結び付け、ビジネスとの方向性を一致させます。さらに、成功を評価し、プロセスの改善点を特定するための情報を示す、明確なKPIも必要になります。
ビル建築にも似たデータ戦略の構築には、次のような「材料」が必要です。
データガバナンスとデータ管理 – データガバナンス(英語)とは、データをどのように取り扱い、誰がデータにアクセスできるかを定めたポリシーと手続きを指します。ガバナンスポリシーには、データの質(データの正確性、完全性、一貫性)とデータインテグリティ(データの信頼性と一貫性)を明確に定めた基準が含まれます。
データ連携 – データ連携とは、文字どおりさまざまなソースのデータを組み合わせて一元管理を可能にする、つまり信頼できる唯一の情報源を構築するプロセスです。データ連携によって、ビジネスや顧客の全体像の理解を妨げるデータの分断を解消できます。
データセキュリティ – データセキュリティには、セキュリティ侵害を防ぎ、顧客のプライバシーを保護するためのあらゆる対策(暗号化、多要素認証、イベントの監視、IDとアクセスの管理など)が含まれます。
データコンプライアンス – コンプライアンスポリシーでは、深刻なデータ漏えいと罰金のリスクを軽減するために、すべての従業員が守るべき法律、業界、社内の要件を定めます。データコンプライアンス関連の法規制の例として、一般データ保護規則(GDPR)(英語)
や医療保険の携行性と責任に関する法律(HIPAA)(英語)
が挙げられます。
データ戦略のアプローチ – 集中型と分散型
データ戦略には、集中型と分散型のアプローチがあります。それぞれに長所と短所があるので、両者の違いを理解して、どちらが適しているかを判断します。
集中型データ戦略
定義 – 集中型データ戦略では、データ管理のすべての責任とプロセスを1つの組織やチームに集中させます。このアプローチでは、企業内の全員が同じデータプラットフォームを使い、データへのアクセスは中央の管理者によって制御されます。
長所と短所
- すべてのデータを1か所に格納し、専任のチームが管理するため、データの一貫性と整合性を確保できます。
- データ保護対策を簡単に導入・適用可能で、データセキュリティを強化できます。
- リーダーが企業内の幅広いデータにアクセス可能で、的確な意思決定を促進できます。
一方、集中型アプローチには、次のような課題もあります。
- ボトルネックと遅延。データ関連の決定とプロセスはすべて中央の管理組織でなされるため、意思決定が遅れ、俊敏性に欠ける場合があります。
- インフラストラクチャーとリソースへの初期投資が多額になる。このアプローチでは、企業全体でデータシステムを統合し、安全なデータストレージを用意する必要があります。また、ポリシーと手続きを順守するために、全従業員を対象とした広範なトレーニングの実施も求められます。
分散型データ戦略
定義 – 分散型データ戦略では、データ管理の責任を異なる部門やビジネスユニットに分散させます。この方法では、各部門がそれぞれに最適な方法でデータを取り扱うことができます。
長所と短所
- 自律性と柔軟性を促進。各チームが迅速に意思決定できます。
- 各部門がそれぞれのデータニーズを重視して、戦略をカスタマイズできます。
- すばやい対応が可能。中央のプロセスに合わせたり、承認を待ったりする必要がなく、各部門が迅速に反応できます。
しかし、分散型のデータ戦略には、次のような欠点もあります。略には以下の傾向があります。
- データが分断され、情報が細切れになって、企業が総合的な情報にアクセスできなくなる可能性があります。信頼できる唯一の情報源がないと、不正確で一貫性のないデータをもとに意思決定が行われるリスクがあります。データが分断されると、データの重複が発生し、情報共有が困難になり、部門間でデータを連携できなくなる恐れがあります。
- データの質、プライバシー、コンプライアンスの確保が難しくなります。統一されたデータ戦略がないと、それぞれのチームやビジネスユニットが独自のルールで動くことになります。データに対するアプローチがばらばらになり、データの信頼性が失われる可能性があります。
この2つのアプローチの間で、最適なバランスを取ることが重要です。両方の長所を組み合わせた、ハイブリッドなアプローチを採用するのも一案です。重要なデータ管理機能を集中型で、チーム独自のデータニーズについては分散型で管理してもよいでしょう。
データ戦略を実施する5つのベストプラクティス
ビジネスが変化すれば、データ戦略も変化していきます。以下の5つのベストプラクティスに従えば、長期的な成功に向けた基盤を築くことができます。
ステークホルダーを巻き込み、賛同を得る
主要なステークホルダーには最初から参加してもらいます。目標や期待できるメリットを伝えることで、データ戦略で何を達成しようとしているかをリーダーが理解し、戦略の実施に必要なサポートとリソースを積極的に提供してくれるようになります。
データの所有者と説明責任を明確にする
データ戦略では、データの管理と保守に関して、役割と責任を明確に定める必要があります。データのライフサイクル全体を通じて、各チームはデータの質を監督し、データの問題に対処し、データガバナンスポリシーを順守することが求められます。
効果を継続的にモニタリングし、評価する
先に述べたように、データ戦略は一度策定すれば終わり、というものではありません。継続的なモニタリングと評価を重ね、調整していく必要があります。重要業績評価指標(KPI)をトラッキングし、定期的にデータの成果を分析することで、どこを改善すればよいか、結果を向上させるためにどのようにデータ戦略を最適化すればよいかを把握できます。
データリテラシーとデータカルチャーを醸成する
データ戦略を効果的に実施するには、データリテラシー(英語)、つまりデータを探索、理解し、伝える能力の向上に全社で取り組む必要があります。
あらゆる企業にとって、データリテラシーを高め、データカルチャー(英語)を確立することは重要です。最近の調査(英語)
では、回答者の87%が、データスキルは日常業務において非常に重要であると評価しています。
変更を管理する
データ戦略の実施を含め、大規模な変革を成功させるには、変更管理(英語)の原則を適用する必要があります。データ重視の方針を採用して強化し、トレーニングを提供して、常にコミュニケーションを取れば、従業員はデータリテラシーが企業にとって基本的な行動特性である理由を理解できるでしょう。
お客様事例 – 盤石のデータ戦略でビジネスを成功させているF5社の事例
マルチクラウド・アプリケーション・サービスをリードするF5社(英語)は、データ活用が事業の成長にいかに重要であるかを理解しています。そのため、強力なアナリティクスプラットフォームやTableau
を導入するといった全社規模の戦略を採用し、データ活用に必要なサポートを提供しています。
“データによって、当社の企業文化は日々変化しています。毎日、新鮮な気持ちでデータから新しいことを学んでいます。”— F5、エンタープライズデータ戦略・インサイト担当RVP、Amie Bright氏
F5では、カスタマーサクセス、製品、グローバルサービス、財務、IT、製造、人事の各チームが、データからさらなる価値を引き出しています。マーケティングチームは、データを効果的に活用して、キャンペーンのリード獲得効果を把握し、セールスと連携する方法を判断しています。カスタマーサクセスは、購入パターンと購入履歴を分析し、データから得たインサイトにもとづいて優れたサービスを提供する方法を理解できるようになりました。「いま、当社では誰もがデータを活用してすばらしい成果を上げています」とBright氏は述べています。
Data Cloudはデータ戦略にどう役立つか
Data Cloudを使えば、企業のデータエコシステムからすべてのデータにアクセスできます。顧客の販売記録などの構造化データから、コールセンターの文字起こしのような非構造化データまで、Data Cloudはあらゆるデータを統合し、アプリケーションとワークフローのなかでローコードやノーコードツールを使って活用できるようにします。Data Cloudをデータ戦略の中心に据えれば、データ戦略とビジネス目標を簡単に合致させ、優れた顧客体験を提供できます。