エスカレーションとは?ビジネス上の意味や対応フロー、使い方を解説

 
2023.5.8
業務の中でしばしば発生するトラブルの元。そのまま放置しておくと大きなトラブルに発展しかねない事案をいち早く見つけ、適切に処理するためには、「エスカレーション」のしくみが不可欠です。 ここでは、企業の信頼を保ち、安定的な業務を続ける上で欠かせないエスカレーションについて解説します。

エスカレーションとはビジネスの場面では「段階的な上位へのアプローチ」という意味

エスカレーション(escalation)とは、「拡大」「上昇」などの意味を持つ言葉です。ビジネスの場面では「段階的な上位へのアプローチ」という意味で、「上司に相談して判断を仰ぐ」「上位レベルに報告し、対応をゆだねる」というアクションをエスカレーション、あるいはエスカと略していいます。ビジネスの基本として教えられる「報連相」も、エスカレーションの一種といえるでしょう。

なお、エスカレーションは、現場から課長へ、そこで解決がつかなければさらに上の部長クラスへ…という具合に、段階的に上昇していくこともあります。

業界や部門によって、微妙に意味が異なる

エスカレーションという言葉は、場面によって少しずつ違った意味で使われます。

たとえば、コールセンターでは、サービスデスクやオペレーターでは解決できない専門的な問題を、より詳しい専門家に質問する、あるいは解決をゆだねることをエスカレーションといいます。

また、SEやサーバー管理者が「エスカレーションする」と言えば、それは「トラブルの発生をクライアントに報告する」という意味になります。

いずれにしても、一次対応で処理できない問題を、より上位にある専門家あるいは意思決定者に伝え、作業や判断をゆだねるという意味合いで用いられます。

エスカレーションが必要な2つのケース

エスカレーションが必要な場面はいくつか想定できますが、その多くは次のようなケースです。

  • インシデント(トラブルのおそれがある事案)が発生した場合
  • 自分のスキルや権限では解決を図れない場合

こうした事態をそのまま放置しておいたり、自分だけの対応で解決を図ろうとしたりすると、問題がより拡大することが予測されます。それは時として、重大なアクシデントや不祥事として、社会的な問題にまで発展することもあります。そうなれば企業の信頼は傷つき、場合によっては企業存続の危機を招くことにもなりかねません。

そうした事態を避けるためには、事態が拡大する前、つまりインシデントの状態のうちに、権限者によって適切に処理することが大切です。そのために、エスカレーションが必要になるのです。

 
 

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エスカレーションをスムーズに行うための3つのポイント

後々、問題になりそうな事案は、種やつぼみのうちに摘み取っておく。それを可能にするのがエスカレーションですが、これがうまくいかないケースも、残念ながらよくあります。

インシデントの原因が現場の担当者にある場合には、上司からの叱責や責任追及を恐れてエスカレーションをしないというケースが多いようですが、それ以外にもルールや基準の設定が曖昧なために起こることもあります。

しかし、エスカレーションはアクシデントを未然に防ぎ、業務を安定的に継続していくために行われるものです。きちんと効果を発揮するために、エスカレーションをスムーズに行える環境を整えておくことが重要です。

ルールとして規定し、周知徹底する

特にルールがない場合、エスカレーションは担当者個人の主観的な判断で行われることになります。

しかしこれでは、「エスカレーションすべきかどうか判断できない」「誰に報告すればいいのかわからない」ということが起こります。また、エスカレーション先でも、「いつ、どのように処理するか」の判断にばらつきが生まれますから、「エスカレーションしたものの、その先での対応がストップしている」といったことも起こります。

これでは、何のためのエスカレーションなのかわかりません。ですから、明確なルールとして定めておき、それに沿って行動することを社内に周知徹底することが必要です。

報告に対して責任を問わない

現場の人間にとって、上司へのインシデントの報告は少々気が引けるものです。「こんなことを報告して叱られないか」「自分で処理したほうがいいのでは」など、つい考え込んでしまうかもしれません。だからこそルール設定が必要なのですが、そのルールの中に「報告者の責任を問わない」という項目は、必ず入れておきましょう。

先に述べたように、上司からの叱責を恐れて報告をためらうというケースは少なくありません。そうしたケースの中のいくつかが、のちに重大な問題に発展することもあります。このような事態を避けるためには、報告に対して責任を問わないというルールは不可欠なものとなります。

報告のフローを用意しておく

ルールとして規定しておくべき要素のひとつに、「エスカレーションフロー」があります。これは、エスカレーションを行うべき基準やその後の処理の手順などを、一連のフローにまとめたものです。

何らかのインシデントが起こった場合には、このフローに照らし合わせてエスカレーションすべきか否かを判断し、すべきとなれば、手順に従って報告・相談・処理を進めていきます。

インシデントは、いつどこで、どのような形で起こるか予期できません。発生してから慌ててフローを作るのでは遅すぎます。平時からトラブルにどう対応すべきかを検討し、できるだけ早くフローを策定しておきましょう。

また、一度作ったフローは活用する度に不具合を検証し、ブラッシュアップしていくことも大切です。

エスカレーションフローの作り方

最後に、エスカレーションフローの作り方をご紹介します。

細かな規定の内容は、企業によって異なります。自社の業種や組織構造に合わせたフローが求められますが、まずは妥当と思われる形を作っておき、エスカレーションを行う度に問題点がないか検証し、改善していくといいでしょう。

報告すべき事項と重要度を規定する

まずは、エスカレーションを必要とする事案の規定です。「何をインシデントとするか」と言い換えてもいいでしょう。さらに、そのインシデントがどのレベルに達したらエスカレーションのフローにのせるべきかという、「レベル分け」の規定も必要です。

インシデントはその種類と重要度によって、組織内のどの部門の誰が対応するかが異なります。また、インシデントとはみなさない事案について、規定しておくことも大切です。そうしないと、現場で処理できる事案までフローにのることになってしまい、上位レベルでの処理が追いつかなくなってしまいます。

「ここまでは現場対応で処理する」「これ以上はエスカレーションフローにのせる」ということを、しっかり明記しておきましょう。

報告手段やルートを規定する

インシデント情報を、どこにどのように伝達するかを定める必要があります。一般的には、報告先は担当部署のマネージャーになりますが、事案の重要度によってはさらにその上にも報告することもあるでしょう。

緊急性を考えれば電話、あるいはメッセージツールが適切ですが、これは組織によって異なってきます。また、一連の行動をインシデント認知から何分以内に行うか、規定された報告先が不在の場合にはどうするかということも、漏れなく決めておきます。たとえば、「認知から5分以内にAに報告し、30分以内に対応できない場合はBが権限をもって処理する」といった具合です。

これらの報告手段やそのタイミング、ルートをあらかじめ決めておくことで、インシデントが発生したときにも落ち着いて、迅速なエスカレーションを行うことができます。そして、エスカレーションを受けた側がどう処理するか、これも段階ごとに規定しておく必要があります。

データベース化のルールを規定する

エスカレーションによって適切に問題が処理されたら、一連の対応を共有のナレッジとしてデータベース化しておきます。その際、どの項目をどのように記録すべきかをルール化しておきましょう。

データベース化しておけば、過去事案の検索が容易になります。将来、同じような問題が起こった場合には迅速かつ的確な対応をとることができますし、過去の事例を検証して、対応に不備はなかったか、より優れた対策はないかを検討することもできます。

必要に応じてルールやフローを見直していけば、エスカレーションをより確実なものにすることができるでしょう。

トラブルを回避して安定した業務運営を実現しよう

トラブルやアクシデントは、企業の対外的な信頼を損なう要因となります。それを防ぐためには、エスカレーションのルールを明確にし、社内に徹底しておくことが最も重要な策となります。

自社に合ったルールを策定し、トラブルを未然に回避するしくみを機能させて、業務運営の安定性を高めてください。

 
 

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