マルチチャネルとは?メリットや活用のポイントなどを解説

 
2023.6.22

消費者に対して複数の接点を用意する考え方をマルチチャネルと呼びます。企業と消費者との接点を増やし、販売機会を逃さないためには大いに役立つしくみですが、活用するにはメリットやデメリットを知ることも重要です。

ここでは、マルチチャネルのメリットやデメリット、クロスチャネル・オムニチャネルとの違い、活用のポイント、活用事例などについて解説します。

チャネルとはコミュニケーションのルートのこと

マーケティングの世界でチャネルといえば、多くは企業と消費者とをつなぐコミュニケーションのルートを指し、電話、メール、SNS、アプリなどの伝達手段を意味します。さらに、広義にはテレビやウェブサイト、雑誌に掲載される広告も、消費者との接点という意味でのチャネルのひとつです。マルチチャネルとは、これら複数のチャネルを活用し、用途や目的に応じて使い分けることを指します。

マーケティングやセールスの場合、企業と消費者とのチャネルが多いと、それだけ消費者の認知度が上がり、販売機会の増加が期待できます。そのため、かつてはテレビ・ラジオ・新聞・雑誌、さらに電車内の交通広告や街中の看板広告など、多くのチャネルを使って自社製品をアピールする手法が、広く行われてきました。実店舗や訪問販売、テレアポなども、セールスのためのチャネルのひとつです。

インターネットが普及した現代ではチャネルはさらに多様化し、消費者はウェブサイトやメール、SNS、チャット、アプリなど多様なチャネルにふれています。メッセージを送る企業側には、これら複数のチャネルに対応するマルチチャネル化を進め、消費者により効果的にアプローチすることが求められています。

クロスチャネルとの違い

クロスチャネルは、それまで別個に独立していた各チャネルを連携させ、相互にリンクしながら機能させる手法です。複数のチャネル間の情報共有や連携が進んでいる点が、マルチチャネルとの違いです。

先程、マルチチャネルのデメリットの例として、ネットショップと実店舗での在庫管理の難しさを挙げました。しかし、クロスチャネルでは、在庫管理システムやCRMといったツールを使い、実店舗とネットショップの在庫情報を一元管理できます。そのため、全体の在庫実数を常に正確に把握し、表示することができます。また、顧客情報も共有されますから、問い合わせ等に対しても、過去の履歴を踏まえた細やかな対応が可能です。クロスチャネルは、デメリットを排除した進化型のマルチチャネルといえるでしょう。

オムニチャネルとの違い

オムニチャネルは各チャネルの垣根をなくし、チャネルを意識させずに購買行動につなげることを目的としたしくみです。マルチチャネルとの違いは、オムニチャネルが消費者体験の向上を目指している点です。

消費者が製品やサービスを購入する際には、多くのプロセスが存在します。まずは、インターネットなどで欲しいものを探し、詳細を調査します。次は、競合製品と比較・検討や販売価格の調査です。これらのチャネルはおもにインターネットになるでしょう。このようなインターネットをチャネルとした行動に加え、消費者の中には実店舗で実物を見て、ようやく注文・購入に至る層もいます。

こうした一連のプロセスを、あらゆるチャネルで違和感なくシームレスに行えように整備するのがオムニチャネルです。消費者側としては、チャネルの違いを意識することなくサービスを受けられるため、満足度が高まるといえるでしょう。

マルチチャネルのメリット

マルチチャネルの活用は企業にとって重要課題ですが、メリットもデメリットもあります。まずはメリットについて見てみましょう。

販売機会を増やせる

マルチチャネルのメリットは、販売機会を増やせることです。「メールはほとんど使わず、SNSで済ませている」「テレビは見ない。情報収集はウェブだけ」などといった、特定のチャネルに接点が偏っている消費者層にも、マルチチャネルならアプローチできます。自社製品やサービスの情報を、多くの場所で消費者の目にふれさせることができれば、認知度が上がって販売機会も増えていくでしょう。

チャネルごとに購買行動を分析できる

消費者の購買行動を分析できる点もマルチチャネルのメリットです。マルチチャネルはそれぞれが独立した経路ですので、広告効果や消費者の購買行動を、チャネルごとに分析できます。そして、分析結果を基に、それぞれのチャネルに対して販促施策を講じることができます。これは、BtoBでもBtoCでも変わりません。

マルチチャネルのデメリット

マーケティングとセールスにとって、大きなメリットを持つマルチチャネルですが、デメリットもあります。マルチチャネルのデメリットを3つご紹介します。

手間とコストがかかる

マルチチャネルのデメリットは、手間とコストがかかるということです。広告チャネルを増やせば、それだけ広告費が増加します。消費者とのコミュニケーションチャネルを広げれば、コスト以上に労力が必要となるでしょう。マルチチャネル化する際には、コストと手間に対して、十分なリターンを望めるかどうかのバランスが問題となります。

情報共有が難しい

情報共有が難しい点も、マルチチャネルのデメリットです。各チャネルが独立していることで、それぞれに保存している顧客情報が共有されない状況になってしまうかもしれません。たとえば、顧客がおもにメールで問い合わせなどのやりとりをしている場合、別件で電話をしてきた営業担当者が自分の情報をきちんと把握していなかったら、顧客はその対応に失望してしまうでしょう。このような事態にならないよう、チャネル間での情報共有体制を整備する必要があります。

チャネルを横断した在庫管理が難しい

チャネルを横断した在庫管理が難しいことも、マルチチャネルのデメリットに挙げられます。たとえば、実店舗とネットショップの両方を運営している場合、それぞれの店舗での在庫情報を共有できていないと、実店舗には在庫があるのにネットショップでは売り切れになってしまっているということが起きてしまいます。これでは、ネットショップのみを利用している消費者は売り切れだと思ってあきらめてしまい、販売機会を逃すことにもつながりかねません。

在庫情報の共有が適切に実施されなければ、本来のマルチチャネルの目的とは、まったく逆の結果をもたらす可能性があるのです。マルチチャネルを導入・活用する際には、こうした特性を理解しておく必要があります。

マルチチャネルを活用する際のポイント

マルチチャネルをクロスチャネルやオムニチャネルへと発展させるためには、まず基本となるマルチチャネルについて十分に理解し、使いこなす必要があります。そのためのポイントについて、3つ解説します。

マルチチャネルの課題を理解する

マルチチャネルを活用する際のポイントは、マルチチャネルの課題を理解することです。マルチチャネルには、チャネルの独立性が高いという課題があります。そのため、すべてのチャネルに対応しようとすると、手間とコストが膨大になってしまいます。チャネルの独立性の高さという課題を理解した上で、どこまで対応するか、絞り込みを行わなければいけません。

ツールで複数のチャネルを連携させる

ツールを活用してチャネルを連携させることも、マルチチャネルの適切な活用のためのポイントです。状況や用途に応じたツールを活用することで、マルチチャネルの弱点を補いつつ、メリットを最大化することができます。たとえば、顧客情報の管理にはCRM、マーケティング施策の管理にはMA(マーケティングオートメーション)を利用すれば、すべてのチャネルで一貫した対応をとることができます。

また、これらの製品の中には、多機能・高機能なものもあり、ツール同士を連携させたり、必要に応じて機能を拡張できたりといったものも存在します。

自社の規模や状況に合わせて、こうしたツールを活用すれば、作業効率だけでなく、成果の向上も期待できるでしょう。

オムニチャネルを目指すべきか検討する

マルチチャネルからオムニチャネルへと発展させるか検討することも重要なポイントです。両者は目的が違うため、事業成長などに合わせて、オムニチャネル化を目指すか判断する必要があります。

マルチチャネルは「販売中心」の視点で販売機会を広げることが目的ですが、オムニチャネルは「顧客中心」で、消費者に一貫した消費者体験を提供することが目的です。オムニチャネルの構築には、各種のツールのほか、自社ブランドの確立やシナリオの策定といった作業も重要になります。自社の規模や目的、割けるリソースなどを勘案した上で、どのスタイルをとるべきか検討するといいでしょう。

マルチチャネルの活用事例

複数のチャネルで消費者や顧客にアプローチしながら、ツールを活用してチャネル間の情報共有を確保することが重要です。このようなしくみが構築できれば、顧客の側に立った施策で、高い顧客満足を得ることもできます。

最後に、マルチチャネルを活用し顧客体験を向上させている企業の事例を、2つご紹介します。

統合されたマルチチャネルで、新たな顧客体験を創出:株式会社新生銀行

 
会社名:株式会社新生銀行
業種:金融・保険
業種詳細:預金・貸出・為替などの銀行業務​

法人・個人に対して幅広い金融サービスを提供している株式会社新生銀行。しかし、店舗数では他の都市銀行には届かず、またネットバンキングでは100万人を超えるユーザーを持つものの、機能の点でネット専業銀行に追いつけないという状況を抱えて、ビジネス上の優位性を確立する必要に迫られていました。

そこで同行が選んだのが、「顧客に寄り添う」スタイルです。その実現のための施策の柱として、新たな顧客体験の創造による、満足度の向上を目指しました。

同行は、実店舗とネットバンキングのマルチチャネルを実現していたものの、情報の分断が起こっていました。ネットで手続きした顧客が店舗を訪れたとき、シームレスな対応ができないケースが見受けられたのです。顧客満足度を上げていくには、まずここを改善しなくてはなりませんでした。

そこで同行は、「Salesforce」をプラットフォームとして導入。規模を考慮してフェーズ分けをしたこと、「Success Cloud」のアドバイザリーサービスを活用し、マネージャークラスの理解を得たことが、スムーズな進行に寄与しました。

その結果、これまで各チャネルで分散管理していた顧客情報を一元管理し、チャネルを超えて一貫した対応を実現しました。また、顧客行動がリアルタイムで情報に反映されるため、コールセンターでも顧客の現状に合わせた提案や案内が可能に。さらに一歩進んで、コールセンターから担当営業へ、気づいた点を情報として伝えるなど、まさに顧客に寄り添うスタイルへと変貌を遂げました。

事業部間の情報共有とメール施策で、CVが大幅増:株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン

 
会社名:株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン
業種: IT・サービス、小売・流通
業種詳細: リテールビジネス、ゴルフ場 ビジネス、メディアビジネス

「ゴルフで世界をつなぐ」を企業ミッションとする、株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン。同社では3つの事業部によって、インターネットサービスのみならず、店舗販売やゴルフスクールの運営、イベントの開催などを行ってきました。

企業活動ではマルチチャネル化を果たしていた一方、情報共有の面では不十分でした。個々の事業部がそれぞれに顧客へのアプローチを行っていたため、1人の顧客に年間1,000通ものメールが届く事態に。この状況を改善するため、顧客体験の向上を目指し、事業部を横断する情報共有のしくみが摸索されることとなりました。

同社はまず、マーケティングプラットフォーム「Salesforce Marketing Cloud」を導入。メールマーケティングの再構築を開始しました。作り上げたシナリオは約65本、メールテンプレートは300を超える規模です。また、コンテンツによってはABテストも併用し、その結果をフィードバックしてブラッシュアップを重ねました。

その結果、「Salesforce Marketing Cloud」の導入前と比べて、メールにおけるコンバージョン(CV)は、グッズ販売で135%、ゴルフ場予約で145%もアップ。コストは30%から50%も削減できました。
また、カスタマーサポートも改革。こちらは、「Salesforce Service Cloud」をプラットフォームとして、カスタマージャーニーにもとづいたきめ細やかなコミュニケーションを実現し、顧客満足度の向上を果たしています。

自社の状況や課題に合わせたマルチチャネルの運用を考えよう

確実な情報共有や緻密な施策によって、マルチチャネルは優れた顧客体験を提供することが可能です。自社の状況や課題に合わせたやり方を見つけ、適切に運用していくことが何より大切といえます。その上で、クロスチャネルやオムニチャネルへの発展も見据えていきましょう。

Salesforceではマルチチャネルの活用に貢献するソリューションを提供しています。施策の自動化による工数削減や、AIの分析による費用対効果の向上などが可能なMarketing Cloudや、プロセスの自動化やAIによる顧客とのやりとりで業務効率化を実現するService Cloudを、ぜひご検討ください。

 

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