セグメンテーションとは?やり方と活用事例、ターゲティングとの違いを解説

 
最終更新日:2024.2.9
セグメンテーションとは、市場の顧客を、ニーズや消費者・顧客の属性に応じて細分化し、グループ分けするマーケティングの基本の手法です。セグメンテーションの意味からやり方、ターゲティングとの違い、具体例や活用方法まで解説します。

セグメンテーションとは?簡単に解説

マーケティングにおけるセグメンテーションは、日本語に訳すと「市場細分化」という意味となり、市場を顧客のニーズや属性に基づいて細分化しグループ分けする手法を指します。セグメンテーションにより、特定の消費者の特性やニーズの明確化が可能になり、商品やサービスの考案や販路の検討、マーケティング戦略の策定などに用いられます。

適切なセグメンテーションは、マーケティング戦略の土台作りや、顧客エンゲージメントを高めるために必要不可欠です。自社の商品やサービスを売り込むために、どの消費者層に向けてどのようなアプローチをすればよいか。その対象を明確化するプロセスが、セグメンテーションなのです。

なぜセグメンテーションはマーケティングにおいて重要なのか?

現在のマーケティングにおいて、セグメンテーションが重要視されるおもな理由は以下の2点です。

  • ニーズの多様化
  • ITの進化

世界が急速に変化する中で、消費者のニーズは日々多様化し、これまでの一律的なマスマーケティング手法は効果が薄れつつあります。さらに消費者も、ITの進化により、企業を通さず直接データを集められるようになり、消費行動はより賢く、より具体的になっています。

この動きに対応するために、企業側もITを駆使し、消費者の属性や行動パターンを把握することが求められています。ITという消費者の顔が見えない土俵で策を練るからこそ、消費者像を浮き彫りにするセグメンテーションが重要なのです。

 
 

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セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニングの違い

セグメンテーションとターゲティング、ポジショニングの違いは、目的や役割にあります。そもそも、セグメンテーションとターゲティング、ポジショニングは一連で用いられることが一般的で、相対するものではありません。これら3つを用いる分析を「STP分析」と呼びます。

セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニングの役割は以下の通りです。

S(Segmentation):市場を細分化する
T(Targeting):狙う市場を決める
P(Positioning):自社の立ち位置を決める

STP分析の目的は、市場全体をより理解し、自社の製品やサービスをもっとも効果的に売り込む戦略を策定することです。セグメンテーションを活用して市場を細分化し、ターゲティングで狙うべき顧客層を明確化、そしてポジショニングによって競合他社との差別化が可能となります。

セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニングは、いずれもマーケティング分析の基盤となります。施策の成果を大きく左右する部分なので、以下の記事で基本を学んでおきましょう。

セグメンテーション変数|分類例を紹介

セグメンテーションは、「変数」と呼ばれる細分化の基準を決めて行います。変数を定義することで、セグメンテーションの根拠を明確化し、建設的なマーケティング戦略を策定できます。セグメンテーションで用いる代表的な変数は以下のとおりです。

ここではそれぞれの変数の概要について解説します。

地理的変数(ジオグラフィック変数)

地理的変数とは、地理的な違いを基準とした分類です。市場の地域ごとの特性や消費傾向を把握し、地域特有のニーズに対応したマーケティング戦略の立案に役立ちます。地理的変数の例は、以下が挙げられます。

  • 国や地域:アメリカやアジアなど、国や地域
  • 日本の地域:東京や関東など、日本の都市や地域
  • 都市・郊外・地方:都市部からの距離や人口密度、モノ・サービスの充実度など
  • 気候や地形:地域の気温や天気、平地や山間地などの自然環境

地理的変数は、おもに衣服や住宅、家電、食料品など、気候や生活習慣が購買に影響を与えやすい製品に採用されます。商品の販路を考えるときはもちろん、新規出店時や既存店舗の販路拡大にも活用できます。

人口動態変数(デモグラフィック変数)

人口動態変数とは、個人の置かれている状況を表す変数です。消費者の属性に基づいたマーケティング戦略策定に有効で、代表的な分類には以下があります。

  • 年齢
  • 性別
  • 家族構成
  • 収入
  • 職業

人口動態変数には、その人が自然的に保有している属性と、その人の社会活動によって得た属性があります。たとえば、年齢や性別は前者、家族構成や職業は後者です。年齢と性別によって分類した上で、さらに既婚・未婚で振り分けるなど、求められるレベルに応じて組み合わせることで、詳細なセグメンテーションが可能となります。

心理的変数(サイコグラフィック変数)

心理的変数とは、価値観や趣味嗜好など、感性に基づく要素による分類です。消費者の内面的な要素を理解し、心理に訴えかけるマーケティング戦略の策定に役立ちます。代表的な例には以下があります。

  • 性格
  • 価値観
  • ライフスタイル
  • 趣味や興味
  • 消費動機

心理的変数は、個々の差が大きい要素なので、他の変数と併用することで、多角的な切り口の発見が期待できます。地域や年齢、性別など、母集団が大きいほど、多くの切り口を見つけられるでしょう。また、すでに成熟した顧客層に、新鮮味のある提案をしたいときにも活用できます。

行動変数(ビヘイビアル)

行動変数とは、購買行動に関連する要素による分類です。消費者の購買パターンや習慣などの理解に役立ちます。代表的な分類には以下があります。

  • 購買頻度
  • 購買量
  • ブランドロイヤリティ
  • 利用シーンや場面
  • 価格感度

これらの要素は、消費者に対するプロモーションを考えるときの根拠として有用です。たとえば、購買頻度が高い消費者には、リピート購入をうながすプロモーションやリワードプログラムが有効です。ブランドロイヤリティが高い消費者には、新製品の紹介やブランドイベントへの招待などが効果的となるでしょう。

行動変数は、消費者と自社の関係を測る変数とも言えます。自社に対する興味の度合いによって、最適なプロモーションを考えましょう。

セグメンテーションの4Rの原則とは

セグメンテーションの4Rの原則とは、効果的に市場細分化を実施するための基準項目です。この原則を確認することで、セグメントの有効性を見通せます。

セグメンテーションの4Rの原則は、4つすべてを評価し総合的に判断することが求められます。セグメンテーションの効果を最大限に発揮するためにも、4つのRを満たしているか、必ず確認しましょう。では、それぞれ詳しく解説します。

優先順位(Rank)

優先順位とは、経営戦略をもとに、各セグメントの重要度を設定することです。市場規模や競合状況、企業の強み・弱みなどを考慮し、優先的に取り組むべきセグメントを決定します。具体的な指標としては、市場シェアや自社の成長率、競合他社との差別化の程度、企業の技術力やブランド力などが用いられます。

有効性(Realistic)

有効性とは、各セグメントにおける期待できる利益の規模のことです。市場の需要や競合状況、企業のコスト構造を考慮し、選定したセグメントが収益性を維持できるかを確認します。有効性を検討する具体的な指標としては、市場規模や顧客単価、競合企業との価格競争力や利益率などが挙げられます。

到達可能性(Reach)

到達可能性とは、各セグメントにリーチできる可能性のことです。自社の製品やサービスが、自社のリソースや能力を考慮し、選定したセグメントに対して十分なサービス提供や効果的なマーケティング活動が可能かを評価します。具体的な判断指標としては、自社製品やサービスの種類や品質、販売チャネルの充実度や販促活動、広告戦略の効果などが挙げられます。

測定可能性(Response)

測定可能性とは、各セグメントにおける購買力や反応を、測定・分析できる可能性のことです。データ収集や分析の方法を検討し、選定したセグメントにおけるマーケティング活動の効果を測定・評価できるかを確認します。まずは過去のデータや参考文献などをもとに検討しますが、必要に応じて実験的なデータ収集や分析が求められます。具体的な手法としては、各セグメントに対する売上データや顧客満足度調査、WebサイトやSNSのアクセスデータなどの収集・分析が挙げられます。

デジタルマーケティングにおけるセグメンテーションの役割

セグメンテーションによって絞り込んだターゲットにはデジタルマーケティングでのアプローチが有効です。デジタルマーケティングは、消費者の属性分けやそれに基づく施策の実施を得意としていて、条件に応じて自動で実施できるメリットもあります。デジタルマーケティングのおもな手法は以下のとおりです。

  • リスティング広告:検索キーワードに基づいて検索エンジンに広告を表示する手法
  • リターゲティング広告:サイトを訪れたユーザーに対して、バナーなどの広告を表示する手法
  • コンテンツマーケティング:ターゲットに有益な情報を提供することで、関心を喚起し、信頼関係を築く手法
  • メールマーケティング:パーソナライズされたコンテンツやプロモーション情報などをメールで送ることでターゲットにアプローチする手法

これらの手法はMA(マーケティングオートメーション)と組み合わせることで、顧客とのコミュニケーションコストを抑え、より個別具体的なアプローチが可能となります。リード発掘やナーチャリング、営業チームとの連携など、一連のプロセスの自動化もできるので、リソースの課題を解決する一助になるはずです。

MAには効率性や拡張性、操作性などさまざまな要素が求められます。それだけに、システム選びは重要です。まずは、世界No.1 CRMに組み込まれたMAに触れて、効果的なデジタルマーケティングを実感しましょう。

 
 

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セグメンテーションを活用した企業の成功事例

ここからは、セグメンテーションを活用して課題解決に取り組んだ事例を2件紹介します。セグメンテーションによって、施策や組織の土台がどう作られるのかに注目して読んでみてください。

会員属性と⾏動データに基づくメルマガ⽣成・配信で、開封率5〜7%・CTR1.5〜2%増加

 
会社名:株式会社プレジデント社
業種​:総合出版社

プレジデント社は、雑誌「プレジデント」や「dancyu」を始め、さまざまな書籍を刊行する歴史ある出版社です。同社では、オンラインマガジン「PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)」の記事を、会員向けにメールでレコメンドしていましたが、手作業が多い課題がありました。そこで解決策としてMAツール・Marketing Cloudによるセグメンテーションを実施しました。

まずは、全会員の閲覧・行動履歴を分析し、「PRESIDENT Online」における6つのカテゴリに振り分けました。そして、このセグメンテーションに基づき、個々の嗜好に近い記事を毎朝配信します。さらに、Marketing Cloudを組み込むことで、分析・振り分け・配信の自動化に成功。結果、メール開封率の5〜7%増加とCTRの1.5〜2%増加を達成しました。

顧客セグメント別に組織変更し、コンサルティング営業を強化

 

三菱地所グループのB2B専業不動産サービス事業を担う三菱地所リアルエステートサービスでは、2011年から、営業体制を担当者ベースから組織営業体制へ切り替えると同時に、セグメントテーションを活用した組織再編を実施しました。

同社が営業体制の変革に取り組んだのは、先進的なデジタル環境の導入と、サービスの質やスピード向上を図る目的もありました。そこで、まずは組織を顧客セグメント別に再編。それをきっかけに、SFAとCRMを導入し、顧客情報の共有に取り組みました。これらの取り組みは、クロスセルやアップセルにつながり、顧客満足度の向上にも寄与しました。

さらに、2019年にはデジタル戦略部を立ち上げ、SFAとCRMをSales Cloudへ変更。集客から物件の管理まで一貫した管理を可能とし、取り扱い物件数は1.5倍に、さらにWeb経由での商談獲得数も倍増し、効率化に成功しました。

セグメンテーションは基礎であり、効果を左右する大きな要素

セグメンテーションはマーケティングの基礎的な検討要素で、その精度によって施策の確度は大きく左右されます。緻密なマーケティング施策を練るには盤石な土台が必要であり、それを担うのが明確な根拠に基づくセグメンテーションです。

施策の確度を見通すことは、成長の促進やリスクの減少だけでなく、再現性の担保やノウハウの蓄積などにもつながります。組織をより強くしていくためにも、適切なセグメンテーションを導き出せる体制作りが大切です。

 
 

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このデモ動画では、Marketing Cloud Intelligenceを使って、データを1つのシステムに集約し、レポート作成、効果測定、最適化するフローをご覧いただけます。セグメンテーションを行ったあとはMAツールのMarketing Cloud Intelligenceを活用すると、顧客により適切なアプローチができます。
 

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『マーケティング最新事情』レポート(第8版)
 
 

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