MA、SFA、CRMの違いと使い分けのポイントとは?

 
2023.5.8

MAやSFA、CRMなどの業務支援ツール。これらは、機能が重複するところもあり、ユーザーは明確な区別ができていないケースも多いようです。しかし、それぞれ別々の用途のために開発されたもので、機能や得意分野は違いますから、目的に合ったツールを選ぶことが大切です。

ここでは、MA、SFA、CRMの違いと、使い分けのポイントを解説します。

何のためのツールかを知っておこう

近年、実に多くのビジネスツールがクラウドアプリの形で登場し、利用されるようになりました。こうしたアプリは、さまざまな場面で業務効率の向上や効果の増大を実現してくれます。しかし、あまりに機能が豊富であるために、何のためのツールなのか曖昧になってしまうケースもあるようです。

営業業務の支援に使われる3つのツール、MA、SFA、CRMについても、同じことがいえます。
これらは元々、別々の概念を基に設計され、開発されたものですが、営業プロセスという大きなくくりの中で使われることから、それぞれの機能に重複も見られます。「本来はSFAだけれども、CRM的な機能も備えている」という具合です。

AとB、2つの領域にまたがる業務を処理する場合、領域Aの業務のために作られたアプリで領域Bまでカバーできれば、手軽ですし簡単でしょう。しかし、元々領域Bの業務のために作られたアプリがあるなら、それを使ったほうが、より確実な処理ができるはずです。

ビジネスアプリを使う際には、まず「それが何のためのツールなのか」を認識し、その上で「どのように活用するか」を考えることが大切です。

MA、SFA、CRM、それぞれの特徴とおもな機能

では改めて、MAとSFA、CRMについて、その概略から見ていくことにしましょう。

この3つのツールのうちMAは、ほかの2つと比べて機能が大きく異なり、使われる部門も違うことから、混同されることはまずありません。

しかし、SFAとCRMは、元々別の領域を処理するためのツールでありながら、両方とも営業部門で使われたり、似たような機能が実装されたりするため、ユーザー側でも混同されることが多いようです。そのため、1つのツールで、それぞれの領域をカバーするという使われ方をしていることもあるようです。

マーケティングを効率化するMA

MAは「マーケティングオートメーション(Marketing Automation)」の略です。この略称から、「マーケティング活動を自動化してくれるツール」と認識されることが多いのですが、それは半分正解で半分が間違いです。

MAは、見込み顧客を「顧客」にまで育てる、つまりリードナーチャリングを受け持ちます。そのために、相手のアクションやタイミングに合わせて、適切なコンテンツをおもにメールで発信し、相手の興味や関心をかき立てる役割を担います。ただし、どんなアクションに対して、あるいはどのタイミングでアプローチするかは、MAの助けを借りつつもマーケターが設計しなくてはなりませんし、発信するコンテンツの内容も、人の手で作らなくてはなりません。

つまり、「オートメーション」といいつつも、すべてツール任せというわけではなく、マーケティングプラン全体の設計やカスタマージャーニーマップの作成などは、人の手で十分に練り上げておく必要があるわけです。

しかし、ひとたび設計できてしまえば、当初の予定どおりのアプローチを実行してくれますし、その結果を踏まえて微調整していくことで、マーケティング活動全体の効率をさらに高めることができます。

営業活動を組織化するSFA

SFAは「セールス・フォース・オートメーション(Sales Force Automation)」の略で、日本語では「営業支援システム」と呼ばれます。

SFAは日本語の訳語のとおり、営業業務の中でも商談の管理が得意です。それぞれの商談の進捗状況や契約額の目安、成約確度など、商談に関するあらゆるデータを商談ごとに管理できます。
そのため、営業担当者はどの商談にどのようなアクションをとるべきかが明確になり、マネージャーは停滞ぎみの商談に対して、的確なフォローやアドバイスを送ることができます。部門全体での売上予測も立てやすくなりますから、マネージャーだけでなく経営陣にとっても有用といえるでしょう。

入力された情報はチーム全体で共有できますから、営業担当者間での引き継ぎ、担当者不在時のトラブル対応も円滑にできます。そして、パフォーマンスの高いメンバーのノウハウやマネージャーからのアドバイスをチーム全体のナレッジとして共有できますから、属人的になりがちだった営業という業務を組織化・効率化し、成果の向上につなげることができます。

個々の営業案件を可視化・共有化するとともに、個人プレーに頼りがちだった営業業務をチームプレーへと移行する。それが、SFAの役割といえます。

顧客情報を一元管理するCRM

CRMは、「カスタマー・リレーションシップ・マネジメント(Customer Relationship Management)」の略で、自社と顧客との関係性を主軸とした顧客情報管理が得意分野です。

SFAは商談・案件を軸に情報を管理しますが、CRMは顧客ごとに情報を管理します。その顧客がどのような接点で自社を知り、どんな商談を経て顧客となったのか。これまでの購入履歴はどうか。営業のアプローチの履歴や自社製品の購入履歴のほか、要望やクレーム、問い合わせなど、自社とのコミュニケーション情報をベースに顧客を管理します。

こうすることで、個々の顧客に最適なサービスを最適なアプローチで提供することができ、先方の状況を分析することで、顧客自身も気づいていないニーズをくみ上げることができます。それによって、顧客満足度を高め、顧客をしっかりと囲い込み、クロスセルやアップセルによってLTVの向上を図ることができます。

それぞれのツールをどこでどう使うか

冒頭で少しふれたように、SFAとCRMは混同されやすく、本来は担当外である領域で使われることが多いようです。しかし、これらのツールにはいずれも、その本領を発揮する領域があります。

それを理解するには、「ザ・モデル」の概念が役に立ちます。

「ザ・モデル」は、セールスフォース・ドットコムが提唱している組織営業のベストプラクティスのひとつです。セールス全体を、「マーケティング」「インサイドセールス」「外勤営業」「カスタマーサクセス」の4つのプロセスに切り分け、その中でどのような分業・協業体制をとって、効率化と成果の増大を図るかを検討するためのモデルです。

「ザ・モデル」は時系列で区切られていますが、ここに3つのツールの活用領域をあてはめてみましょう。

MAは、最初期のマーケティングからインサイドセールスを経て、案件化するまでが受け持ち範囲。SFAはMAの最終盤から情報をバトンタッチし、外勤営業が受け持つ商談進行・受注成約までをカバーします。その後のカスタマーサクセスの領域はCRMが管理しますが、CRMには商談中の情報も含む必要がありますから、SFAとCRMがスムーズに連携できることがポイントになります。

具体例で見る、各ツールの活用方法

ここでは、ある通信機器メーカーを例として、MA、SFA、CRMの各ツールの使い所を見ていくことにします。

このメーカーは売上のすべてがBtoBであり、ニーズに合わせて多様な製品をラインナップしています。ターゲットとなる市場規模も限られているため、常に需要に合わせた生産管理が必要ですが、需要情報がうまく生産現場に下りてこず、在庫の過不足がしばしば起こっていました。

また、事業部ごとに、営業とマーケティングが独立しているため、クロスセルがかけにくいことも解決したい課題です。これらに加え、成約率を高めることで利益の向上を図りたいと考えています。

こうした状況に対して、どのようにツールを活用していったのかを見ていきましょう。

1. MAの導入で各プロダクトに横串を通す

縦割りの組織を改編するのは、大掛かりな作業です。しかし、MAを導入して、各事業部に横串を通すことで、横方向への風通しが一気に良くなります。

顧客の行動に合わせたシナリオづくりが簡単にできますから、クロスセルも考慮した複雑なシナリオを用意するのも難しくありません。個々の顧客の状況に合わせたコンテンツを数多く、しかもタイミング良く発信でき、PDCAを高速で回すことができます。

導入の結果、顧客は複数のコンテンツに触れることで、より興味が高まった状態になり、1人の営業スタッフに行き渡る案件から商談化にいたる案件の実数も増え、機会損失を大きく減らせました。

また、MAからSFAへの情報の受け渡しがスムーズに行えたことで、情報の途絶や抜け落ちがなく商談へと移行することもできました。

2. SFAで営業と生産管理をリンクさせる

営業部門が持っている案件情報を、販売予定数量や成約確度も含めて生産管理部門と共有することで、精度の高い需要予測を立てることができ、生産ラインを適切にコントロールできるようになりました。結果として、生産部門の効率化が実現できただけでなく、余剰在庫に伴うコストを削減、在庫切れによるクレームや機会損失のリスクを抑えることができ、顧客満足度の向上にも貢献しています。

また、営業部門にとっても、商談ごとに原価や見積額などの数値を入力するようにしたことで、売上・利益予測の精度を大きく高めることができました。

3. CRMで売上の底上げを図る

販売した製品の多くは、定期的なメンテナンスのため、契約済みの顧客に対するアフターフォローを必要とします。アフターフォローをする中で、顧客の希望する機能を備えた別部門の機器を提案し、追加で受注するに至りました。SFAに蓄積された顧客情報をそのまま取り込むことができたため顧客の発注の経緯についても部門を超えて容易に知ることができ、サポートするだけでなく提案も可能にし、結果的に売上の底上げにつなげることができました。

ツールは適材適所で使い分け、連携させよう!

ここで紹介したMA、SFA、CRMの3つに限らず、ツールにはそれぞれ想定された用途があります。各種ツールは機能が充実してきており、部門ごとに決まったツールを使うというわけではなくなってきています。営業部門もMAを利用しますし、マーケティング部門もSFAを使います。異なるツールをうまく連携させることで、営業フロー全体をカバーし、業務効率をさらに高めることができるのです。自社にとって必要なツールを必要な場所に導入し、存分に活用してください。
 
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