マーケティング戦略の立て方・フレームワーク

マーケティング戦略とは
「マーケティング戦略」とは、市場や顧客を分析しニーズを理解して、自社の商品やサービスのアプローチを考えることを言います。つまり、どのような顧客をターゲットとし、どのような価値を、どのように提供するかを考えていくことがマーケティング戦略になります。マーケティング戦略は顧客が一度自社の商品を購入したあとも、継続的に利用してもらえることを目標としています。
「マーケティング」というと商品やサービスの営業・販売のことと思われがちですが、それだけではありません。日本マーケティング協会によると「企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動」と定義されています。つまり、顧客のニーズに応えるために企業が行うあらゆる活動の総称のことで、具体的には市場調査や分析、商品の企画や開発、広報活動やプロモーションまですべての活動が含まれます。
それぞれの領域には特徴に合わせた施策が必要となり、適切なタイミングで適切な施策を実行することが重要です。

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マーケティングに戦略が必要な理由
マーケティング戦略を策定することの重要な理由の一つは、消費者の情報収集の方法が多様化しているためです。これまでの販売戦略は、テレビやラジオのCM、新聞や雑誌の広告などマスメディアを利用した宣伝方法が主流でした。しかし、インターネットが急速に普及した現在では情報があふれ、消費者自らが必要な情報を選ぶ時代です。それにより消費者の興味や関心、ニーズも細分化され複雑になっています。大勢に向けてアピールしてもニーズに合致していなければ購入までに至りません。消費者の目に留まり選んでもらうためには、消費者の動向を分析し根拠のある戦略が必要になっているのです。
また、マーケティング戦略が必要なもう一つの理由は、経営資源を効率的に活用するためです。戦略を立てることで、自社に合ったより効果的な方法に、人材やコストを集中させることが可能になります。リソースを無駄にすることなく活用するためにもマーケティング戦略は必須です。
マーケティング戦略の立て方

1)環境分析
マーケティング戦略において最初に行うのは「環境分析」になります。環境分析とは消費者のニーズや市場の動向、自社の強み・弱みを分析することです。顧客の動向だけでなく、競合他社を調査し自社を理解することが大切になります。
市場や消費者の動向を外部環境と呼び、外部環境を分析することで、どんな層に自社の商品やサービスのニーズがあるのか、どんな層が顧客になりうるかを知ることができ、ターゲットを絞ることが可能です。
一方、自社の状況を内部環境と呼び、競合他社の状況を調査するなど自社と比べることで、自社の印象や立ち位置を知ることができ、強みや弱みが見えてきます。
ここで活用されるフレームワークは以下の3つが代表的です。
3C分析は、市場、自社、競合他社を抜け漏れなく把握、PEST分析は世の中全体の「マクロ環境」から把握、SWOT分析は自社をとりまく環境を多角的に分析するために使われるフレームワークです。
2)基本戦略の策定
次に、基本戦略である「ターゲティング」と「ポジショニング」を決定します。ターゲティングとは、環境分析で絞り込んだ顧客層の内、どの領域をターゲットとするか定めることです。つまり、どの市場に参入するかを決定することとも言えるでしょう。例えば50代の男性と20代の女性ではニーズや消費行動は全く違います。環境分析の結果から、より自社商品のニーズがあると判断される顧客層の市場に参入し、そのターゲットに合わせた戦略を考えていきます。
ポジショニングとは、ターゲットである顧客層に向けた自社商品の方向性や立ち位置を決定することです。顧客に自社商品を認知してもらうためには、競合他社と差別化し、より魅力的であることを明確に示さなくてはなりません。その差別化や方向性を決定するのがポジショニングです。
ここで活用されるフレームワークに「STP分析」があります。他社との差別化ポイントを把握し、自社の強みを生かす戦略作りのフレームワークです。
3)具体的施策の決定
ここまでの分析を踏まえて、具体的な施策の決定に入ります。具体的には、商品の価格や価値が釣り合っているか、どう顧客に届けるかを考えることです。どんなに良い商品やサービスを作っても最終的に顧客に届かなくては意味がありません。ターゲット層に届きやすい販路や、提供方法を探り差別化していくことが大切です。
ここで活用されるフレームワークは「4P分析・4C分析」です。価格・商品の質・販売方法・利便性を分析し、自社の強みを探すフレームワークです。
マーケティング戦略立案に役立つフレームワーク
マーケティング戦略を立案する際に活用できる「フレームワーク」についてそれぞれ詳しく解説していきます。フレームワークとはビジネスにおいて、分析や意思決定など解決したい問題を、特定の順に沿って整理していく思考の枠組みのことです。
1)3C分析
3C分析とは、自社の強みと弱みを分析する際に利用されるフレームワークです。
「3C」とは以下の3つの頭文字を取った言葉です。
- Customer(顧客・市場)
- Competitor(競合)
- Company(自社)
3C分析は自社にとっての成功要因を発見することが目的です。メリットとして、3C分析をすることで顧客・市場と競合他社という外部環境と自社の状況を客観的に把握し、差別化できるポイントや進むべき方向性を明らかにできることが挙げられます。
3つの要素を「顧客・市場」→「競合」→「自社」の順で分析することが重要です。手順としては、まず市場や顧客のニーズはどのようなものなのか動向をおさえます。顧客の購買行動をリサーチして市場の変化を読み取るのです。その上で競合他社がどのように市場にアプローチしているか、顧客のニーズにどのように対応しているかを探ります。競合他社のシェアや顧客の評価などを分析し、強みや弱みを洗い出し、最後に自社の強みや弱みは何かを客観的に分析します。その強みを生かして、自社が成功するための要因を導き出していくのです。
3C分析については以下の記事もぜひ参考にしてください。
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2)PEST分析
PEST分析とは、事業やその業界をとりまく外部環境の4つの要素を分析するフレームワークです。
市場分析を行う際に用いられることが多く、市場という大きな要素を分解してより詳しく調べることが可能です。
「PEST」とは下記の4つの頭文字を取った言葉です。
P:Politics(政治)
E:Economy(経済)
S:Society(社会・ライフスタイル)
T:Technology(技術)
これらの要素は、どれも自社ではコントロールできないことですが、自社は影響を受けることになります。PEST分析をするのは、外部環境を把握することが目的です。また、細かく外部環境を分析することで今後の動向を予測し、変化に対応した事業を行うことを目指します。
まずは情報を収集し、集めた情報を4つの要素に分類しそれぞれを細かく分析していきます。「政治」は事業に関係する法律や税制、規制や国の政策や動向を調査。「経済」では景気や失業率、為替の動向など経済圏に関する状況です。「社会」は主に消費者のライフスタイルの変化を調べます。「技術」は進歩する技術が事業に与える影響を分析です。これらの分析結果が自社にどのような影響があるのかを総合的に考察し、マーケティング戦略の立案に役立てていきます。
3)SWOT分析
SWOT分析とは、内部環境と外部環境の要素を洗い出し、自社を取り巻く環境を多角的に捉えて分析するフレームワークです。
SWOT分析をすることで、自社にとっての強みや弱みを客観的に把握し、課題や成功要因を発見することを目的としています。

「SWOT」とは下記の4つの頭文字を取った言葉です。
S:Strength(強み)
W:Weakness(弱み)
O:Opportunity(機会)
T:Threat(脅威)
まず自社の「強み」「弱み」と、外部の環境変化などの「機会」、競合他社の動きなどの「脅威」を洗い出します。そして内部の2つの要素と外部の2つの要素を組み合わせて分析するのが特徴です。例えば「強み」と「機会」を組み合わせ、自社の強みを生かしてどの機会を狙って市場に参入するかを考えます。同時に「弱み」と「機会」を組み合わせて自社の弱みはどのような機会に克服できるかを分析するという方法です。
SWOT分析については以下の記事もぜひ参考にしてください。
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4)STP分析
STP分析とは、市場の全体像を把握し、ターゲットとなる市場を定め立ち位置を決める際に使うフレームワークです。
STP分析をすることで、顧客のニーズを整理し、競合他社との差別化ポイントを把握できプロモーション戦略を練る土台を作れることがメリットです。
「STP」とは下記の3つの頭文字を取った言葉です。
S:Segmentation(市場を細分化する)
T:Targeting(狙う市場を決める)
P:Positioning(自社の立ち位置を決める)
手順としてはSTPの順番に行います。まず市場を顧客の属性、地域、行動など細かく分けて分析。次に細分化した市場から、自社の商品の強みが活かされる市場をターゲットに定め、最後に選択した市場をさらに細かく調査し、競合他社とのシェアなどを考慮し自社の立ち位置を決めます。特に商品を新規展開などする際にSTP分析を行うと効果的です。
5)4P分析・4C分析

4P分析のPとは以下の4つの頭文字を取った言葉です。
- Product(製品)
- Price(価格)
- Place(流通)
- Promotion(販売促進)
4C分析のCとは以下の4つの頭文字を取った言葉です。
- Customer Value(顧客にとっての価値)
- Cost(コスト)
- Convenience(顧客にとっての利便性)
- Communication(コミュニケーション)
4P分析ではどのような製品をいくらで、どの流通経路でどのように販売促進するかを売る側から考えることが基本になります。4C分析はその商品が顧客にとってどのような価値があり、購入までのコストはどのくらいか、購入しやすい環境か、顧客に必要な情報が届いているかという買う側の立場での考え方です。
以前は4P分析が主流でしたが、4C分析へ移行してきました。現在では顧客のニーズや入手経路も多種多様になり、いままで受け身であった顧客も積極的に情報を入手できます。そのため顧客主体の視点が重視されてきているのです。
4P分析については以下の記事もぜひ参考にしてください。
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マーケティング戦略の事例
注目のスタートアップが営業・マーケティング改革を推進
契約マネジメントシステム「ホームズクラウド」を提供する株式会社Holmesでは、会社の立ち上げの際に、営業やマーケティングのノウハウがなくサービスを売り込むのに苦労していました。顧客情報や問い合わせの管理なども属人的なやり方であったため、商談などもうまく進まずにいたところ、Salesforceの「Sales Cloud」を導入。顧客の情報をcloudで管理し、商談の情報と連携させることで、管理者も商談の進捗を把握し的確に経営管理をできるようになっていきました。
商談成立後も、顧客の継続的な利用支援のため、「Einstein Analytics」で顧客の行動履歴や利用状況を分析。あまり利用のない顧客に対して的確に働きかけ、定着化・解約防止の施策を行いました。また、見込み顧客の行動分析では、各顧客に最適化した内容のメールマガジンを送付し、商談へつなげる工程も効率化しています。クラウドシステムの導入後2年間で、従業員数が5倍以上に伸び成長を続けています。
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マーケティング戦略実行に活用できるツール
マーケティング戦略を実行し、分析、改善していくステップでは、MA(マーケティングオートメーション)ツールの利用がおすすめです。
MAとは一言で表すと、マーケティングにおける活動の自動化や効率化を実現するためのツールです。特に見込み顧客に的確にアプローチし、顧客獲得を広げることを主な目的として利用されています。新規顧客を開拓するには、各見込み顧客の情報を収集し、興味や関心、行動やニーズに合わせて最適なタイミングで情報を提供することが必要です。その情報の分析、管理などを自動化、効率化するためにMAツールは利用されます。
MAツールでは、見込み顧客の情報を一元管理し、どの顧客がどの段階にあるかを誰でも把握できます。そのため同じ顧客に再度アプローチすることや、商談の内容などの重複を防ぐことや、顧客の検討段階を分析し、最適な内容でアプローチも可能です。顧客獲得後もダイレクトメールなどによる継続的なコミュニケーションを管理、効率化してくれます。
コロナ禍の影響で直に訪問する営業活動を行いにくくなってしまった現在、営業活動のオンライン化も急速に進んでいるため、その一環としてMAツールを活用する企業も増えています。MAツールについては以下の解説もぜひ参照してください。

マーケティング
オートメーション編
まとめ

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