サーキュラーエコノミーとは?3原則や3Rとの違い、企業の取り組み方を解説

 
最終更新日:2024.2.9

気候変動やエネルギー資源の枯渇、生態系の破壊などが問題となる中で、大量生産・大量消費社会から、持続可能な循環型社会への移行を目指す取り組みが、世界中で進められています。このような環境で、欧米を中心に注目されているのがサーキュラーエコノミーです。

ここでは、サーキュラーエコノミーの3原則、必要とされる背景、リニアエコノミーや3Rとの違い、企業がサーキュラーエコノミー構築を目指す際のポイントなどについて解説します。

サーキュラーエコノミーは廃棄物を出さない新しい経済システム

サーキュラーエコノミー(Circular Economy)は、資源の使用や消費を抑え、廃棄物を出さずに、サービスなどの付加価値を生み出す経済活動です。大量生産・大量消費・大量廃棄を前提とした現在の経済システムが、気候変動や環境汚染といったさまざまな問題を引き起こしたと考えられていることから、新しい経済システムが模索されています。
環境省はサーキュラーエコノミーを、「従来の3R(リデュース・リユース・リサイクル)の取り組みに加え、資源投入量・消費量を抑えつつ、ストックを有効活用しながら、付加価値を生み出す経済活動であり、資源・製品の価値の最大化、資源消費の最小化、廃棄物の発生抑止等を目指すもの」と定義しています。
 
 

脱炭素DXはじめの一歩 中堅・中小製造業 脱炭素経営のススメ

 
本資料では、脱炭素化に向けた社会的な動向の解説から、脱炭素経営に欠かせないデジタル化によるビジネスの可視化まで順を追って解説します。脱炭素化への基本的な基盤作りに役立つ知識や情報をわかりやすく紹介します。

リニアエコノミーとサーキュラーエコノミーの違いは、廃棄物に対する考え方

サーキュラーエコノミーとよく混同されるのがリニアエコノミー(直線型経済)です。両者は廃棄物に対する考え方が異なります。

リニアエコノミーは従来型の経済システムを指しています。リニアとは、直線的なという意味です。リニアエコノミーでは、多くの資源がリサイクル・再利用されることなく、一方的に消費され、廃棄されることを前提としています。

これに対し、サーキュラーエコノミーは、資源を回収し再利用することを前提とします。一度消費した製品も再資源化して、循環させるので、廃棄物という概念がありません。廃棄物があるかないかという点が、リニアエコノミーとサーキュラーエコノミーの違いです。

 
用語 解説(サーキュラーエコノミーと3Rの違い)
サーキュラーエコノミー
廃棄物や汚染を発生させないことを前提とする経済システム
リニアエコノミー
多くの資源がリサイクル・再利用されることなく、一方的に消費され、廃棄されることを前提とする経済システム
■リニアエコノミーとサーキュラーエコノミーの構造の違い
引用:環境省

リユースエコノミーとサーキュラーエコノミーの違いは、廃棄物に対する考え方

サーキュラーエコノミーは、リサイクルを中心とするリユースエコノミー(リユース経済)とも混同されがちですが、こちらも廃棄物に対する考え方が違います。リユースエコノミーは、廃棄される製品や原材料を資源と考え、その一部をリサイクル・再利用し、循環させる経済システムを指します。

ただし、すべての製品や原材料がリサイクルされるわけではありません。再利用されないものが、廃棄される点は、リニアエコノミーと同様です。そのため、廃棄物を出さないサーキュラーエコノミーとは、前提が異なります。

 
用語 解説(サーキュラーエコノミーと3Rの違い)
サーキュラーエコノミー
廃棄物や汚染を発生させないことを前提とする経済システム
リユースエコノミー
廃棄される製品や原材料を資源と考え、その一部をリサイクル・再利用し、循環させる経済システム

サーキュラーエコノミーの3原則とは?

国際的なサーキュラーエコノミー推進機関であるエレン・マッカーサー財団は、サーキュラーエコノミーの3原則として、以下の3つを挙げています。それぞれについて解説します。

<サーキュラーエコノミーの3原則>

  • 廃棄物や汚染を排除する
  • 製品・資材を最も価値の高い状態を保ったまま循環させる
  • 自然を再生する

廃棄物や汚染を排除する

1つ目のサーキュラーエコノミーの原則は、廃棄物や汚染を排除することです。リニアエコノミーでは、原材料の収集、製造、販売の過程で、廃棄物や汚染が発生します。また、作られた製品の多くは、最終的には廃棄物として捨てられ、埋め立てや焼却で処分することになるでしょう。元々、廃棄物や汚染を前提として設計されている経済システムです。一方、サーキュラーエコノミーは、消費された物をリサイクルするだけではありません。原材料の収集から製造、販売、消費まで、すべての工程で廃棄物や汚染が出ないよう設計することを前提とします。

製品・資材を最も価値の高い状態を保ったまま循環させる

2つ目のサーキュラーエコノミーの原則は、製品・資材を最も価値の高い状態を保ったまま循環させることです。製品のシェアや再利用、修理・改修などのほか、寿命を終えた製品を部品や原材料としてリサイクルするなどの方法で、製品や資材を価値の高い状態のまま循環させます。循環させて使い続けることで、新たな資源の消費も抑制できるでしょう。

サーキュラーエコノミーでは、修理やメンテナンス、リサイクルができない製品を作らないことが前提です。循環を前提として、製品が設計されます。

自然を再生する

3つ目のサーキュラーエコノミーの原則は、自然を再生することです。リニアエコノミーのように、一方的に自然から材料を得て、製造・消費し、最終的に廃棄していては、自然の資源は減っていくばかりです。

サーキュラーエコノミーでは、資源を廃棄せず循環させることで、自然の営みをサポートし、自然が本来持っているシステムによる自然の再生を図ります。

サーキュラーエコノミーが必要とされる理由は、現在のリニアエコノミーには多くの問題があり、持続可能ではないから

サーキュラーエコノミーへの転換が必要とされる理由は、現在のリニアエコノミーには多くの問題があり、持続可能ではないことがわかってきたからです。

リニアエコノミーの大量生産・大量消費・大量廃棄のシステムでは、日々、多くの資源が利用・消費され、最終的には廃棄物となります。これを続けてきた結果、天然資源の枯渇や森林破壊、気候変動、プラスチック汚染、生物多様性の喪失など、地球規模の環境問題が発生してきました。

国連によれば、世界人口は2050年には97億人に達すると推計されています。人口が増えれば、その分生活を維持するための資源が必要になりますが、地球の資源は有限です。限りある資源を消費するばかりの従来のリニアエコノミーでは、増えつづける人口を支えていくことができません。

リニアエコノミーからサーキュラーエコノミーへの移行は、このような、大量生産・大量消費・大量廃棄システムから生まれた環境・社会問題と、増えつづける人口をいかに支えるかという課題の解決策になると考えられています。

現在世界中で、サーキュラーエコノミーへの移行を目指す取り組みが進められています。国際機関や国家のみならず、企業も重要な存在です。サーキュラーエコノミーの原則に則った事業活動は、企業の事業活動の持続可能性の向上につながり、新たな競争力を生み出す可能性を秘めています。

 
 

新時代のビジネス戦略「サステナブル経営」

 
本資料では、SDGsをどのようにビジネスへ取り入れ、サステナブル経営を実現していくかを解説します。

サーキュラーエコノミーと3Rの違いは、廃棄物に対する考え方

サーキュラーエコノミーと3R(リデュース・リユース・リサイクル)は廃棄物に対する考え方が異なります。廃棄物を減らす取り組みとして、日本では長く、廃棄物を減らすリデュース、再利用を進めるリユース、廃棄物を再資源化するリサイクルの3Rが実践されてきました。

3Rは、人間の活動によって廃棄物が発生することは許容し、その廃棄物をできる限り減らそうというものです。リデュース、リユース、リサイクルによって、廃棄物は減りますが、廃棄物が発生すること自体は防げません。

これに対しサーキュラーエコノミーは、そもそも廃棄物や汚染を発生させないことを前提とする点が異なります。たとえば、リサイクルできないプラスチック製品に対し、できるだけ買わない、長く使うなどで廃棄物を減らそうとするのが3Rの考え方です。一方、サーキュラーエコノミーでは、循環できず、最終的に廃棄物になってしまう製品は生産しません。素材を変えるなどの手法で、使い終わっても循環可能な製品を設計するのがサーキュラーエコノミーの考え方です。

 
用語 解説(サーキュラーエコノミーと3Rの違い)
サーキュラーエコノミー
廃棄物や汚染を発生させないことを前提とする経済システム
3R
廃棄物が発生することは許容し、廃棄物を減らす取り組み

企業がサーキュラーエコノミーへの移行を目指す際の3つのポイント

サーキュラーエコノミーへの移行を実現するには、製品やサービスを作りだす企業の取り組みが欠かせません。新たな取り組みを進めることは、企業にとっても、資源コストの最小化や資源の安定確保、競争力向上などのメリットがあります。

企業がサーキュラーエコノミーの考え方に則って、事業構築を進めていく上での3つのポイントを解説します。

<生成AIの注意点>

  • 製品が循環可能かチェックする視点を持つ
  • 回収網を構築する
  • 社内外への情報を発信する

製品が循環可能かチェックする視点を持つ

製品が循環可能かチェックする視点を持つことも、企業がサーキュラーエコノミーへの移行を目指す際のポイントといえるでしょう。サーキュラーエコノミーの原則は、廃棄物や汚染を出さないことです。素材を環境に配慮したものに変えても、最終的に廃棄されてしまうなら、それはサーキュラーエコノミーの考えにもとづく取り組みとはいえません。最終的に廃棄物になることを前提とする設計の一部を手直しするのではなく、廃棄物を出さずに資源を循環させるよう、設計から見直すことが重要です。

回収網を構築する

回収網の構築も、企業がサーキュラーエコノミーへの移行を目指す際のポイントのひとつです。一度販売した製品を廃棄物にせず、再販売や素材化して活用するためには、利用者から不要になった製品を回収するしくみが必要です。すべてを自社で行うのは難しいため、他社との協業が重要です。パートナー企業と協力して、仕組みを作り上げていくとよいでしょう。

社内外への情報を発信する

社内外への情報発信も、企業がサーキュラーエコノミーへの移行を目指す際のポイントといえるでしょう。サーキュラーエコノミーの取り組みは、日本ではまだ始まったばかりです。自社の姿勢や取り組んだ結果を内外に発信することは、他社や他業界にも取り組みを広げるきっかけとなります。他社と協業しやすい環境の整備にもつながるでしょう。

サーキュラーエコノミーの5つのビジネスモデル

サーキュラーエコノミーには5つのビジネスモデルがあります。5つのビジネスモデルは独立したものではなく、組み合わせて採用することで効果を発揮します。たとえば、回収・リサイクルと循環型サプライチェーンの構築は同時に整備するものです。また、PaaSでのサービス提供と製品寿命の延長を合わせることができれば、収益性の向上が期待できます。

■サーキュラーエコノミーの5つのビジネスモデル

 
ビジネスモデル 特徴
シェアリング・プラットフォーム
宿泊施設や車、日用品など、設備、土地などの資産を、シェアリングという形で活用する
PaaS(Products as a Service)
従来の製品を所有することを中心としたビジネスから、利用時間での課金など、製品の利用を中心とした商業形態に切り替えていく
製品寿命の延長
修理やアップグレード、再販売による使用可能な製品の活用などで製品寿命を延長させ、顧客と長期的な関係を築いていく
循環型サプライチェーン
再生可能な原材料を安定的かつ経済的に使用するためのサプライチェーンを構築する。調達コスト削減や安定調達の実現などにつなげる
回収・リサイクル
生産から消費までのすべての工程で発生する廃棄物を回収し、再利用する。生産・廃棄コストの削減につなげる

Net Zero Cloudでサーキュラーエコノミーへの取り組みを始めよう

サーキュラーエコノミーへの移行を目指す取り組みは世界中に広がっています。日本企業も、この世界的な流れに合わせ、しっかりと取り組んでいくことが求められています。一方で、企業単独では難しい面があるのも現実です。

Salesforceでは企業が環境対策に取り組めるNet Zero Cloudを提供しています。Net Zero Cloudは、エネルギー消費や二酸化炭素排出量などのデータ化や、レポート作成などが可能です。より効率的に企業活動を管理してサーキュラーエコノミーを実現できるよう、セールスフォースのNet Zero Cloudの導入をおすすめします。

 
 

脱炭素DXはじめの一歩 中堅・中小製造業 脱炭素経営のススメ

 
本資料では、脱炭素化に向けた社会的な動向の解説から、脱炭素経営に欠かせないデジタル化によるビジネスの可視化まで順を追って解説します。脱炭素化への基本的な基盤作りに役立つ知識や情報をわかりやすく紹介します。
 
 

最新情報と斬新なアイデアを
メールでお届けします