顧客データプラットフォームとは

CDP(Customer Data Platform)を利用してマーケティングデータを収集、統合、有効活用し、顧客やキャンペーンに関するこれまでにない新たなインサイトを取得する方法をご紹介します

 
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顧客データプラットフォーム(Customer Data Platform、以降「CDP(英語)」)とは、マーケティングテクノロジーの1つです。デジタルファーストのマーケティングチームが顧客データの管理やインサイト取得を簡単にできるツールなどが備わっています。こうしたツールには通常、顧客データベース、マーケティングオートメーション、さらにはマルチチャネルキャンペーンやリアルタイムで顧客とのやりとりを管理するツールなども含まれています。
CDPはユーザーレベルのデータの中央データベースとして非常に有用であり、顧客とのつながりに必要なインサイトに簡単にアクセスできるようになります。最新の『マーケティング最新事情』レポートでは、高い業績を上げている人の78%がCDPを利用していると回答したのに対し、業績の低い人では58%でした。
この記事ではCDPのこれまでの実績と将来性について探り、強力なマーケティングテクノロジーの1つであるCDPを使ってCRMやその他のテクノロジースタックと連携し、顧客データを最大限に活用させる方法についてご説明します。

CDPの役割

CDPはの主な役割は、「データの収集」、「データの統合」、「データの有効活用」、「データからのインサイト抽出」の4つです。

1.データの収集

CDPは、企業が保有するすべての顧客データの一元的なハブまたは格納先となる場所です。顧客データは単一の場所で整理され、企業内の誰もがアクセスできます。
それを実現させるためには、企業にあるすべての異なる顧客関係管理(CRM)プラットフォームや顧客データベースからデータを収集して紐付け、それぞれの顧客を特定する必要があります。データの収集対象には、通常はデータを共有しないマーケティングプラットフォームやサービスソフトウェア、Eコマースエンジンなどのシステムも含まれます。
異なる種類のデータを集めて統合し、すべてのエンゲージメント履歴を基に顧客を特定することを「顧客照合」と呼びます。

2.データの統合

企業にあるすべてのデータをCDPにまとめ、顧客IDを作成した後は、次のステップとしてデバイス間でIDを対応させます。具体的には、既存の顧客のID情報(メールアドレスや電話番号など)と、顧客になる前に共有した可能性のある匿名データ(匿名のクッキーや端末識別IDなど)を紐付けます。
デバイス間でIDを識別する目的は、カスタマージャーニーの全体像の把握に役立てることです。例えば、顧客が自身の情報を共有する前、あるいはコンテンツのダウンロードや購入を行う前でも、顧客がEメールのキャンペーンをきっかけにウェブサイトに移動した経緯などを確認することができます。

3.データの有効活用

完全に統合された顧客プロファイルをCDPで作成し照合させると、データがアクティブ化され、マーケティング担当者はリアルタイムで顧客体験をパーソナライズできるようになります。。
こうしたパーソナライズを実現するためには、CDP内の顧客データと、顧客とのエンゲージメントに利用しているその他すべてのテクノロジープラットフォーム(メール送信エンジン、デマンドサイドプラットフォーム、コンテンツ管理システムなど)を接続させる必要があります。

4.データからのインサイト抽出

CDPで作成した統合された顧客プロファイルがあれば、それぞれの顧客のデータカタログの確認や、カスタマージャーニー全体の追跡が簡単になります。それだけでなく、このデータを活用して顧客インサイトの取得、グループ分け、新しいオーディエンスへのリーチに向けて類似オーディエンスやペルソナの作成を行うこともできます。
CDPはすべての顧客データを一か所にまとめているため、マーケティング活動におけるリーチ、収益、ROI(英語)を証明する優れた情報源となります。
 
 

CDPの歴史

マーケティングテクノロジーは数多く存在し、通常頭文字の3文字で呼ばれています。CDPは、どのように誕生したのでしょうか。
CDPは現在最も人気のあるマーケティングツールの1つですが、そのアイデアは真新しいものではなく、マーケティング担当者による顧客データや顧客関係の管理方法を発展させた最新の「ステップ」です。
1990年代後半から、初期のCRMプラットフォームを基に発展を遂げてきましたが、30年近く経った現在では大きく様変わりしています。CRMは今やクラウドベースとなり、高度なAIと分析を活用して、マーケティング担当者がより優れた意思決定を迅速に行えるようになりました。
この10年ほどCRMの形式にアップデートを重ねた結果、CDPが誕生しました。CDPはマーケティングデータの信頼できる唯一の情報源であるため、マーケティング担当者は顧客の詳細なインサイトを収集し、異なるブランド間でも適切にセグメント化できるようになります。AI、自動化、機械学習が発達する前は、このレベルのセグメント化は不可能でしたが、今ではすべてのマーケティング担当者にとってのベストプラクティスとなっています。

CDPが有用な理由

多くのマーケティング担当者にとって、CDPの最大の価値はオーディエンスをセグメント化する能力です。CDPの機能を使うことで、顧客ごとに企業の様々なブランドとの関り方を確認し、パーソナライズやクロスセルを強化させる機会を特定できるようになります。
もちろん、CDPを使ってできることはセグメント化だけではありません。日常のマーケティングニーズに対応する使いやすいプラットフォームであることも重要なポイントです。顧客や見込み客のデータ分析、セグメントの構築、主要なオーディエンスの特定など、簡単に操作できる機能も備わっています。

CDPの必要性

オーディエンスのセグメント化以外にも、企業がCDPを必要とする大きな理由は3つあります。「除外」、「パーソナライゼーション」、「インサイト」です。

除外

マーケティング担当者によるデータ活用の特徴の1つに、ターゲットにしない対象の特定があります。これは「除外」と呼ばれ、正確にパーソナライズされたカスタマージャーニーを提供する際に必要とされます。
顧客のマーケティングデータと購入データも統合されたプロファイルがCDPにあれば、購入済みの顧客への広告を除外することができます。関連性のない広告を表示させず、新規顧客に限定して広告を出すことで予算を最適化できます。

パーソナライゼーション

顧客がウェブサイトに訪れていくつか製品を見たものの、購入せずに去ってしまうことがよくあります。CDPはそのアクセス履歴を顧客の統合プロファイルに追加し、Eメールやプッシュ通知など、顧客の好みのチャネルでパーソナライズされた提案をすることができます。
顧客の関心を引くコンテンツが表示された場合、ブランドとのエンゲージメント率は5倍に達することから、CDPによるパーソナライズ効果が絶大であることが伺えます。

インサイト

CDPで企業内のすべての顧客データと分析結果をまとめ、すべてのチームが利用できるようになることでサイロ化が解消され、インサイトを共有する機会が生まれます。
Eコマースデータやウェブサイトのアクセス履歴など、すべての顧客のマーケティングに関するやり取りを把握できれば、マーケティング、営業、サービス、その他のチームの誰もが顧客への理解を深め、よりパーソナライズされた関連性の高いエンゲージメントを提供する機会を獲得できます。

CDPで解決できる問題

マーケティング担当者が日々のマーケティング活動で直面する多くの問題の根本原因に取り組む際、CDPが活躍します。CDPが解決に役立つ具体例として、次の3つの課題があげられます。

分断されたデータ

データが分断されていると、顧客を理解し、有意義なつながりを作ることが難しくなります。マーケティング担当者が使用するデータソースの増加に伴い、すべてのデータをまとめる信頼できる唯一の情報源としてCDPを持つことがこれまで以上に重要視されています。異なるデータソースをCDPで統合することで、いつでも簡単に顧客インサイトを入手することができます。

顧客の識別

異なるすべてのデータソース間での顧客IDの照合機能に満足していると回答したマーケティング担当者は、全体のわずか3分の1にとどまりました。CDPは顧客データを一元化したハブなので、顧客識別に関する多くの問題を簡単に解決し、複数のソースからデータをまとめ、顧客ごとに統合プロファイルを作成することができます。

シンプルなセグメント化

データを整理し、顧客IDのプロファイルを一元化することは、より優れたセグメント化とターゲティングに向けた最初のステップです。優れたCDPで顧客に共通する特徴を自動的に見つけ出すことで、オーディエンスのセグメント化や、パーソナライズされたエンゲージメントをすべての人に簡単に提供できるようになります。
 

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CDPとCRMの違い

CDPの本質は顧客関係管理(CRM)ソリューションを新たに発展させたものであり、現在のデジタルファーストなマーケティングチームが求めるリアルタイムかつ高度なパーソナライゼーションに特化しています。
CRMとは、既存の顧客データを記録したものです。一方CDPは、CRMを含むさまざまなソースにある匿名のデータと既知のデータの両方を基に、より高度なテクノロジーを用いて顧客の統合プロファイルを作成します。CDPはあくまでもCRMの追加機能として構築されるものであり、代替ツールではありません。

CDPの選び方

市場には何百種類ものCDPがありますが、多くの場合その違いは「インサイト」と「エンゲージメント」の2つの重要な分野に見られます。
インサイト型CDPは、企業にあるさまざまなシステムから顧客データを統合・管理し、 そのデータを分析して有効活用することで顧客情報を一元化します。
エンゲージメント型CDPは、顧客データを利用することで、ウェブサイトやモバイルアプリなどのデジタルプラットフォーム上でのリアルタイムのエンゲージメントや顧客エンゲージメントを強化します。
現在CDP市場の大半を占めているのはインサイト型CDPとエンゲージメント型CDPですが、この2つの機能を同時に備えたCDPはほとんどありません。
CDPを選択する際、ステークホルダーはインサイト型CDPとエンゲージメント型CDPのどちらが自社のニーズに最適かを検討しつつ、両方の機能を備えた数少ないCDPの選択肢についても検討を重ねるべきです。
CDPの選択肢を絞り込むために、以下の側面から検討してみてください。

1.CDP導入の難易度

CDPの種類は、技術者を対象にした高度なものから使用しやすいものまで様々です。ご自身のチームにとって操作しやすいものを見つけることが重要です。

2.CDPとデータソースの統合の難易度

CDPは多数のテクノロジーシステムから大量のデータを取り込む必要があるため、統合の回数が多く、APIが必要になります。CDPのデータモデルが、自社のデータシステム(英語)と一致していることを確認しましょう。

3.IDの処理方法

さまざまなプラットフォームやデバイス間で顧客のIDを識別できるCDPである必要があります。

4.顧客のプライバシーに対する配慮

データベースのマーケティングでは、顧客のプライバシーを尊重することが必要不可欠です。GDPRとCCPAの両方に準拠し、将来的なプライバシー規制にも対応しやすいCDPであることを確認しましょう。

5.公開されているプラットフォームとの接続対応

CDPに統合する必要があるのは多数のデータソースだけでなく、顧客にリーチする際に使用するすべてのプラットフォーム(Eメール、Webサイト、ソーシャルメディアなど)も必要です。

CDPによるカスタマーサクセス

CDPを使用することで顧客データの管理が簡単になるので、マーケティングの成功率を高める方法は多数あります。数ある成功事例の中でも特に目を引く例をご紹介します。
米国中西部と南部で親しまれているコンビニチェーン店は、よりパーソナライズされたデジタル体験を顧客に提供したいと考えていました。顧客が関連性の高いエンゲージメントを求めていること、そしてブランドと従業員の安心感と親しみやすさをアピールすることの重要性を同社は理解していました。
この企業は、ポイント制のプログラムを開始して250万人のアクティブな顧客を獲得した後、顧客データを管理しやすくするためにCDPを使用しはじめました。CDPの導入前は、非アクティブな顧客へのエンゲージメントや、関連性のないメール配信の抑制が困難でした。ところが、CDPですべてのデータをまとめたことにより、それまで困難だった作業も簡単にできるようになりました。
CDPの顧客データを使うことで、マーケティングメールに表示するヒーロー画像を、直近で購入したピザの画像にパーソナライズできるようになりました。このわずかな工夫により、ピザだけでコンバージョン率が16%も向上しました。

CDPの今後

CDPはCRMシステムの発展形であり、CRMを補完するものであることがわかりましたが、今後はどのように形を変えていくのでしょうか。その他多数のマーケティングテクノロジーと同様に、主にAI、自動化、機械学習の向上に伴ってCDP分野でも将来的なイノベーション(英語)がもたらされるでしょう。
こうした高度なテクノロジーにより、CDPでのオーディエンスのインサイト獲得時間はこれまで以上に短縮されます。それだけでなく、特定のマーケティングアクションを自動的に登録し、実際にマーケティング担当者が入力しなくても実行できるようになると予想されます。現在のCDPによって、ほんの数年前までマーケティング担当者が実現不可能だったことを可能に変えたように、将来的なイノベーションがCDPの可能性を最大限に引き出すでしょう。
イノベーションが進むことで、マーケティングチームにとってのCDPの有用性はさらに高まり、そのメリットの範囲は顧客体験や情報チームなど、組織内のその他のチームにも及びます。
今後数年のうちに、CDPは企業全体で活用されるようになり、最もパーソナライズされた顧客体験をあらゆるタッチポイントで提供できるようになる見込みです。もちろん現在のCDPでも、マーケティングチームだけでなくその他の組織の人々の役に立つかを検討してみる価値は十分にあります。

まとめ

データを中心とする現在のマーケティングの中でマーケティング担当者が必要としているのは、大量のデータを簡単に使用し把握できるデータ管理ソリューションです。だからこそCDPは話題に挙がり、普及しています。
デジタルファーストのマーケティング担当者にとって、すべての顧客とやりとりできるよう導いてくれる強力で信頼できる唯一の情報源(英語)を備えた直感的でデジタルファーストな顧客データプラットフォームは、今後も必要不可欠です。顧客をしっかり理解でき、データを簡単にセグメント化し、あらゆる場所で顧客体験をパーソナライズできる機能を備えたCDPは、現代のマーケティング担当者のツールキットに欠かせません。
顧客データの持つ価値を引き出し、できる限りアクセスと管理を簡単にすることで、マーケティングだけでなくその他の組織全体の取り組みの中でも顧客体験を中心に据え続けることができるようになります。
 

顧客データを活用してオーディエンスを拡大し、ビジネスを成長させる方法をご確認ください。

 
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