株式会社ガラパゴス

Account Engagementのシナリオで顧客アプローチを最適化
情報一元化で各種業務を改革

Service Cloudと各種ツールの連携で勤怠・工数管理や帳票作成等の業務を効率化、
内部統制における情報管理体制が整備されてIPOに向けて大きく前進、
データにもとづくランクづけで過去リード・失注顧客の掘り起こしも可能に

広告クリエイティブ制作サービスなどで急成長中のテックカンパニー、株式会社ガラパゴス。IPOを目指す中で同社は、各業務の連携に欠かせないデータの可視化・共有が進まない、内部統制における情報管理体制が脆弱であるなど、システムに起因する多くの課題を抱えていました。
企業として次のステージへ進むため、同社は2022年、Salesforceを統合的なプラットフォームとして導入することを決断。Service Cloudを中心に各種ツールの連携による業務効率化、さらには追加導入したAccount Engagementによる営業・マーケティング改革など、短期間で多くの成果を上げました。成長速度が早く変化の大きいスタートアップ企業にとって大変参考になる同社におけるSalesforce導入の経緯や活用の方法などを紹介します。
 
 

1. IPOを目指す中、データにもとづく各業務の連携と情報管理体制が課題に

株式会社ガラパゴス(東京都千代田区)は、2009年の創業時から手がけるスマートフォンアプリの開発・運営、および2019年に開始した広告クリエイティブ制作サービス「AIR Design」の運営をビジネスの2本柱とするテックカンパニーです。AIR Designは、毎月200万件ものWeb広告をAIで解析し、そのデータを活用して「勝てるデザイン」の戦略設計から制作、運用後のフォローまでをワンストップで提供するサービスで、提供開始からわずか3年で500社以上に採用されました。それに合わせて組織と人員を拡充させてきた同社は、2022年現在、IPOに向けた準備を着々と進めています。

ただ、スタートアップとしてのそうした順調な成長にともない、社内的には経営・業務上のさまざまな課題に直面することになった、と取締役 CTOの細羽啓司氏は話します。

「積極的な営業・マーケティング活動をそれほどしなくても案件が途切れないアプリ開発事業とは異なり、後発のAIR Design事業においては、営業・マーケティング・クリエイティブ制作・開発・カスタマーサクセスの各チームが連携して活動し、さまざまな数字を見ながら一連の業務を最適化していく必要があります。そういう『The Model』のような業務プロセスは、弊社においては新たに取り組む、強化していかなければならない領域でした。また、IPOを目指す上での内部統制の整備という意味でも、情報管理の仕組みの見直しが求められていました」(細羽氏)

同社では2019年から、顧客・商談管理やマーケティングオートメーション(MA)などのツールを統合した別のクラウド型システムを利用していましたが、「かゆいところに手が届かないのが不満だった」と細羽氏はいいます。

「そのシステムでは顧客の情報や商談の確度、失注の理由などの管理を中心に行っていましたが、カスタマイズ性が低いため、一部の業務においてはExcel等を併用せざるを得ませんでした。
また、内部統制における情報管理体制という観点でも、たとえば承認フローやデータの変更履歴の管理、確定した情報の取り扱いなどの面で脆弱である、という課題がありました」(細羽氏)

 
 

2. 1つのプラットフォームで情報を一元化、各種ツールとの連携で多くの業務を改善

そうした課題を解決して企業として次のステージへ進むため、同社は2021年10月、Salesforceを統合的なプラットフォームとして導入する決断を下しました。製品選定の経緯について、細羽氏はこう説明します。

「選択肢はいろいろありました。内製もその1つでしたが、やはり開発メンバーの貴重なリソースは事業のコアな部分に振り分けたかったので、プラットフォームについてはベースとなる製品を導入してカスタマイズするほうがいいと考えました。
その上で複数の製品を比較検討しましたが、単にCRMとしての利用だけでなく、各種ツールと連携させて、勤怠・原価・工数管理やデジタルマーケティングから中長期的な関係性構築も含めた顧客接点の管理を1つのプラットフォーム上で行いたいということや、将来的にさらなる領域での利用もスコープに含める計画をしていたことから、柔軟性と拡張性の高さを重視してSalesforceを選びました」(細羽氏)

従来利用していたシステムからSalesforceへ乗り換えた同社は、顧客・商談等の管理を一元化しただけでなく、活用範囲をさまざまな業務へ拡大していきました。その1つが、あわせて導入したTeamSpiritとの連携による案件の工数管理です。経営管理部 情報システムチーム マネージャーの赤松洋輔氏は、その方法と成果についてこう話します。

「それまでは勤怠管理と工数管理がシステムとして連携されておらず、Googleスプレッドシートをつなぎ合わせて管理する作業が大変でした。そこがシステム的に接続されたことで、受注した各案件に対して誰が何時間作業をしたかをスムーズに管理できるようになりました。
情報システムの管理者として、従業員のデータへのアクセス権限を組織や規模に合わせて柔軟に設定できるようになったのは本当にありがたいですし、取引先や勤怠などのセンシティブな情報管理の信頼性が向上したことは、IPOを目指す上で大きな前進だと考えています」(赤松氏)

ほかにも、Salesforceの活用によって多くの業務が改善されました。たとえば見積書等の帳票の発行の自動化・効率化。以前は手作業でGoogleスプレッドシートのフォーマットに必要項目を入力してPDF化していましたが、帳票システムとの連携により、Salesforceのオブジェクトから簡単に帳票を作成できるようになりました。

また、インサイドセールスにおいても、通話音声の自動文字起こしツールと連携させ、顧客との会話をテキスト化してSalesforceに蓄積。それをフィールドセールスと共有することで、各顧客の課題やニーズに関する正確な共通認識を持って商談等を進められるようになりました。

さらに、承認フローや与信・反社チェックなど、事業部ごとにバラバラに運用されていた業務についても、オペレーションの共通化を実現。Salesforce導入の目的の1つだった内部統制の整備が大幅に進んだのです。

 
 

3. リード獲得~継続のデータを可視化し、顧客へのアプローチを最適化

同社の改革はそれだけに留まりません。MAツールに関してもAccount Engagement (旧Pardot)を追加導入し、マーケティング業務の改善に乗り出したのです。AIR Design for Marketing事業部 MSチーム インサイドセールスユニットリーダーの伊藤光氏は、Account Engagementの利用についてはService Cloud導入時から予定していたとし、次のように話します。

「従来のシステムでは、リード獲得から受注、継続までのデータを一気通貫で見るのが困難でした。たとえばどういうお客様が継続いただきやすいかなどを分析するためには、Google スプレッドシートの関数を使わなければならないため、毎日関数を組んでばかりいるような感じでした。
また、インサイドセールスから架電しても、すぐにアポが取れないお客様のほうが圧倒的に多いのですが、それまで使っていたシステムには一斉メールを送信する機能ぐらいしかなく、結局、クリックした方に人海戦術的に架電するしか方法がありませんでした。MAツールでさまざまなシナリオを組み、お客様に対してメールや電話で適切なコミュニケーションを取りたい、よりよいコンテンツをしっかり届けたい、とずっと課題を感じていました」(伊藤氏)

Account Engagementを選んだ理由について伊藤氏は、Salesforceとの連携性の高さはもちろん、前職で利用していたMAツールより使いやすく、詳細なシナリオを簡単に組めること、セールスフォース・ジャパンによる継続的な投資と機能追加により、今後もツールとして進化する期待感があったことなどを挙げます。

Account Engagementへの乗り換えによって、それまで実現したくてもできなかった多くのことが可能になった、と伊藤氏。どのタッチポイントでどういうアクションを取ったリードを獲得し、最終的に受注したか、あるいはしなかったか。そうしたデータを可視化してセグメンテーションを行い、詳細なシナリオを組んで顧客へのアプローチを最適化できるようになった、と伊藤氏は喜びます。

「『このお客様はいつ、どんな理由で失注したか』『このお客様に再度アプローチして受注する可能性はあるか』などのデータをもとに、過去リードや失注顧客をランクづけし、それぞれに最適なコミュニケーションの方法で掘り起こせるようになりました。今後は、さまざまな仮説を立ててセグメントの切り方やアプローチの仕方を変え、PDCA を回していきたいと考えています」(伊藤氏)

 
 

4. 統合的なプラットフォームの確立で見えてきた、会社としての次のステージ

Salesforceを各種ツールと連携させ、短期間でさまざまな業務改革を成し遂げた同社。その効果について、伊藤氏と赤松氏は次のように話します。

「以前はGoogleスプレッドシートで関数を組んで作成していた、リード獲得から受注までのレポートなどを一瞬で出せるようになり、業務が大幅に効率化されました」(伊藤氏)

「もともと管理部や人事部などにはITに不慣れなメンバーが多く、得意なメンバーにレポート作成等の依頼が集中するなど、業務の属人化が目立ちました。Salesforceによって、レポート機能の使い方などを自ら習得して業務効率化に活かそう、というポジティブな考え方が社内に広がり、業務の切り分けや属人性の排除が非常に進みました。また、全社横断で同じプラットフォームを使って業務をすることで、コミュニケーションロスが減り、各人の時間の使い方が変わってきたと感じます」(赤松氏)

細羽氏は、「導入から日が浅く、実現したいことの70%ぐらいしかまだ取り組めていない」としながらも、すでに大きな手応えを感じているようです。

「Salesforceによって、毎月の売上管理など、今まで個人に依存していて限界の見え始めていた領域を会社としてこれからどうしていくか、という経営陣を巻き込んだ議論をようやく進められるようになりました。また、営業やマーケティングのメンバーだけでなく、経理や内部統制のメンバーも含め、Salesforceという1つのプラットフォームにすべての情報が集まっていることをベースとして、各業務のオペレーションなどを同じ目線で話し合えるようになりました。会社として次のステージへ進むための土台が整った、という実感があります」(細羽氏)

 
 
 

その他のリソース

 

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